ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

震災から4年…3月11日に見ておきたい映画3選

「エンターテイメントは必要なのだろうか」

2011年、東日本大震災が起きた時に、エンターテイメントに関わる誰もがこう思ったのではないでしょうか。

当時、業界の端くれにいた僕自身も、この問いを色んな先輩方にぶつけていきました。

ある脚本家は「今は何も書けない」と言い、ある大ヒットマンガの編集者は「震災が起きても、僕の伝えたいことの芯は変わらないから、変わらずに創作を続ける」と言っていました。

震災のあとに表現をするということ

2011年の震災の直後、週刊ポストで、北野武さんはこんなコメントをしています。

“この震災を「2万人が死んだ1つの事件」と考えると、被害者のことをまったく理解できないんだよ。(中略)そこには「1人が死んだ事件が2万件あった」ってことなんだよ。”

2万件の事件には2万通りの、いや、1億5000万通りの受け取り方があるので、表現者として震災に触れることは覚悟のいることでもあります。ある人にとっては楽しいものが、ある人にとっては悲しいものにうつるかもしれないからです。

あの2011年の3月の数日間、エンターテイメントは不要だったかもしれません。
何かをすると「不謹慎」という言葉が飛び交い、テレビは震災関連以外の番組の放送を自粛していました。誰もが、そんな娯楽よりも、生きていくことを欲していたのかもしれません。

しかし、あれから4年が経ち、エンターテイメントは消えませんでした。
その後に生まれた作品たちは、震災が起きたという事実を変えることはできません。ですが、あの日起きたことの意味を、見え方を変えさせてくれるような作品も生まれました。

震災から4年経ったこの日。もしかしたら、僕たちのその後に光を差し込ませてくれるかもしれない映画をご紹介します。

「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on少女たちは傷つきながら、夢を見る」
(2012年1月公開 監督:高橋栄樹)

AKB48の1年間を追うドキュメンタリーシリーズの第2弾は2011年の彼女たちに密着。冒頭から東日本大震災の話で始まり、被災地支援活動として東北の各県をまわるAKBのメンバーの姿が映し出されていきます。自分たちに何ができるのか戸惑いながらも、アイドルという仕事を続けていく、いや、続けなければならない彼女たち。

劇中で、大島優子さんは、こう赤裸々に語ります。

「今までAKBは自分の夢のためのステップアップのための場所だったんですけど、(中略)AKBで日本を元気にできたらな、って考え方が……違う目標が生まれました」

この大島さんのコメントに象徴されるように、2010年AKBを追った第1弾が、主にメンバーが自分の夢を語る構成だったのに対し、第2弾となる本作は、自分たちが社会に何をできるのかを考えていく構成。利己から利他へと、震災が彼女たちに与えた変化が垣間見える作品になっています。

一方で、アイドルという仕事とは何かを考えさせられる場面も多数。特に注目すべきは、2012年の3月11日の黙祷中に号泣し、過呼吸で倒れた前田敦子さん。この劇中でも、過呼吸になりながらも、ライブステージに立つ姿が映しだされます。未曾有の大災害が起きた年に、人の前に立ち何かを発信するということの重責。一度は倒れた前田さんが『フライングゲット』のイントロで満面の笑顔で立ち上がるシーンは、アイドル史に残る名シーンと言えるでしょう。

奇跡(2011年6月公開 監督:是枝裕和)

厳密に言えば、震災前に制作されている本作は、不思議と2011年の震災後の世界にシンクロします。
離れ離れになっている家族がひとつになって欲しいと、火山の噴火を願う少年。しかし、ギリギリで願うのをやめて少年はこう言うのです。
「家族よりセカイをとってん」
自分の夢よりセカイの幸せを願うようになるその姿は、震災後の多くの人々や、ドキュメンタリー内でのAKBのメンバーの姿とも重なります。

震災後にCMが「勇気づけられる」と評判になった九州新幹線(2011年3月12日に全線開業)が舞台となっているのも不思議な奇跡に感じられます。

『JAPAN IN A DAY』(2012年11月公開 製作総指揮:リドリー・スコット)

2012年3月11日。震災から1年経ったその日、日本中の様々な人々が撮影した、それぞれの1日を、つなぎあわせて1本の映画にしたこの作品。
救えなかった後悔を語る救急隊員、家族をなくした人々、といった被災地に生きる人々の1年後が迫ってくることはもちろんですが、その他の地域で生きる人々の、何気ない1日もあわせて映し出されるのがこの作品の特徴です。あの日の1年後であるからこそ、普通の日こそ美しいということに気づかせてくれる、珠玉の1作となっています。

生きてきた軌跡の昇華が誰かに光を差し込ませてくれる

「エンターテイメントは必要なのだろうか」
自分に、社会に、事件や災害が起きた時に、僕たちはまた問われることになるかもしれません。

でも、4年前にあれほどの大きな災害が起きた後も、多くの人たちは表現することをやめませんでした。

表現者たちも、僕たちも、生きていくことをやめずに4年間が経ちました。みんながちゃんと生きてきた軌跡がこのように作品に昇華し、誰かに光を差し込ませている。
この4年間のこの事実を、答えとして持っていようと思います。

(文:霜田明寛)

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