音楽的黄金期再び!“みんなが花”から“みんなが奇跡”へ SMAP新曲は『世界に一つだけの花』以来の全人類肯定歌

SMAPが再び音楽的な黄金期を迎えている。新曲『Yes we are』は4月21日付オリコンランキング1位で、52作連続のトップ10入り記録を更新。しかし、黄金期である理由はその売上ではなく、楽曲の中身にある。

名曲『がんばりましょう』の時代を彷彿とさせる『シャレオツ』、そして『世界に一つだけの花』以来の全人類肯定歌といえる『Yes we are』と、昨年から今年にかけ、SMAP楽曲が、90年代中盤からゼロ年代前半の勢いを取り戻しているのである。

『世界に一つだけの花』以降、もはやSMAPが何を歌うかは、国民の意志の反映であり、よっぽど信頼できるマニフェストとも言える。そこで今回はSMAP楽曲が再び輝きを取り戻し、黄金期を迎えるまでの歴史を、歌詞の観点からひもときたい。

 

■“大人”として国民的応援歌を歌ったこの10年と、90年代の“ひねた若者”期

 

この10年のSMAPは、例えばオリンピックのイメージソングになりそうな、前向きな国民的応援歌を歌うことが多かった。

05年には戦争について言及する『Triangle』が、06年には、“ようこそ日本へ”と、愛国心と日本の女性の美しさを歌い上げる『DearWOMAN』がリリース。07年の『弾丸ファイター』のように“ポジティブ前進あるのみさ”と、やみくもに前向きに煽るようなものも。この07年~08年の時期は、セールス的にも一旦の落ち着きを見せるようになる。

だが、もともとSMAPは、単なる前向きソングではなく、クールな前向き感を得意としていた。その感じは

仕事だからとりあえず 頑張りましょう

と歌う『がんばりましょう』に代表される。94年時点のSMAPとしては自身最大のヒットとなったこの曲。「何でも前向きに」ではなく、“仕事だからとりあえず”頑張る雰囲気は、バブル崩壊後の閉塞感漂う時代にフィットした。

続く『たぶんオーライ』は「人生オーライ」ではなく“人生たぶんオーライ”、97年の『ダイナマイト』も「いいんじゃない」ではなく“でもいいんじゃない”と歌う。

このように、前向きではあるものの、全体的にはどこか諦めた中での、素直ではない若者ならではの、ひねた前向きさが特徴だったのが90年代半ばから後半にかけてのこの時期。

今や“大人”として、道徳的に正しいことを歌うSMAPも、90年代後半は、まだまだ“若者”だったのである。

 

■『世界に一つだけの花』の大ヒットで背負った重責

 

この“若者”から“大人”への楽曲の変化の最大の分岐点となったのは、03年発売で、現在もSMAPの最大のヒット曲である『世界に一つだけの花』。“ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン”と歌うこの曲は、広く愛される一方で、当時「生まれたままで特別なんだからそのままでもいい、と何もしない若者をうむ」などとの物議までかもした。

当時、メンバーは20代後半から30代前半で、年齢的にも“大人”として、メッセージソングを歌える年頃に。音楽や英語の教科書にまで載ってしまったこの曲以降、名実ともに国民的アイドルとなってしまったSMAPは大きな宿命と重責を負うことになる。

SMAPが何を歌うかはその時代の空気の反映でもあり、希望の像でもある一方、国民の意志の誘導にもなりえてしまう。そんな影響力の中で、SMAPは正しいことを前向きに歌うメッセージソングを発するしかない時期が続く。

国の代表がうかつなことを言うと失言扱いされ、口が重くなっていくように、SMAPの楽曲のリリースペースも年1というスローペースに。

(ちなみに2011年、ジャニーズ事務所の後輩で共演も多いKis-My-Ft2がデビュー曲『EverybodyGo』で「掴めNO1!」と、しれっと先輩の言ったことを否定している)

■再びあえての若者路線『Joy!!』『シャレオツ』

だが、昨年、再び分岐点が訪れる。『世界に一つだけの花』のシングルリリースから10年が経った2013年は、3曲を発売。

50枚目のシングルとなった『Joy!!』は“あの頃の僕らを思い出せ出せ”とまるで自分たちに向けたように歌い、“無駄なことを一緒にしようよ”と、道徳的には正しくないことを呼びかける。そして、この曲の雰囲気から察するに、思い出すのは、まだ“若者”だったころ、20年前の“僕ら”だ。

続いて年末に発売されたのは『シャレオツ』。

だって嘘はついてないでしょ 全然問題ないって本当に問題ない

“だって”の開き直りも、嘘はついてないから問題ないという論理も、かつての道徳的な正しさとはだいぶ距離が空いている。“がっかりする事もないでしょ 全然問題ない”と、全体的にあきらめている中でも頑張る感じは、『がんばりましょう』の“若者”時代を彷彿とさせる。ただただ煽るのではない、閉塞する時代においてのクールな応援歌だ。

“正しい大人”という衣を自ら脱ぎ捨て、あえて“若者”調の鼓舞をする。SMAPが90年代後半の路線に回帰したようにも感じられる2曲である。

 

■『Yes we are』に溢れる向田邦子イズム

 

『Joy!!』『シャレオツ』と2曲続き、もう1回この路線に回帰し進むのか……という矢先、リリースされたのが新曲の『Yes we are』である。“OLさんも サラリーマンさんも 車掌さんも 遠くの大統領さんも”と多くの職業を個別で呼びかけ、誰だって奇跡なんだと語りかけるこの曲。

『みんなが花』から『みんなが奇跡』へ。は、『世界に一つだけの花』以来の10年ぶりの本気の全人類肯定歌と言える。

だが、10年の時を経たSMAPは、単なる生まれたままを全肯定する歌には終わらせない。『世界に~』になく『Yes we are』にあるのは時間軸である。呼びかける対象は、様々な職業についている仕事をしている人たち。ただ生まれたままオンリーワンと歌うのではなく、“誰だって 軌跡 軌跡 俄然 奇跡”と、人生の『軌跡』を経た上での『奇跡』なのだと呼びかける。

同じ肯定歌ではあるものの、生まれたままのその人ではなく、ちゃんと時を重ねて生きているその人その人を肯定するのだ。

それを象徴するのがこの部分。

嫌いなアイツも
別れたあのコも
100
年経ったら自伝小説のキャスト
主人公は誰?
キミでしょ僕でしょ
最後は笑えるノンフィクションにしよう

俯瞰すれば人生は笑える、という人生をしっかりと重ねた人だからこそのこの目線は、例えばこんな作家の目線に近い。

向田邦子脚本によるドラマ『阿修羅のごとく』。このドラマの中で、色々な騒動に巻き込まれた四人姉妹の年老いた父親は、自分に言い聞かせるようにこうつぶやく。

「十年たったら、笑い話だ」

 

■最後は笑えるノンフィクションにしよう

 

今年のSMAPの大仕事としては、この夏に『FNS27時間テレビ』で5人揃っての司会というものがある。FNS系列から『笑っていいとも!』という国民的番組が消えたあとに、この5人が初めての総合司会をする、その先に何が待っているのか。

ちなみに約20年前の1996年。『FNS27時間テレビ』の前身となった、約30時間の番組『FNSの日十周年記念1億2500万人の超夢リンピック』では、SMAPは番組パーソナリティとして出演していた。司会には北野武や明石家さんまという豪華な布陣。

番組では『がんばりましょう』のサビが流れると、必ず踊らなくてはいけないというルールが課せられた。まだまだ若者だったSMAPは、必死に踊り続け、番組を盛り上げていた。

『がんばりましょう』から20年。『世界に~』から10年。年齢的には完全に大人になってしまったSMAP。だが彼らは自身も日本も色々あった20年を経て、あえての“若者”感やさらなる“大人”としての、僕らへの肯定を歌い上げてくれている。

色々な『軌跡』を作ってきたこの日本の人々の20年を、そしてこれからを、未来から振り返った時に笑えるノンフィクションにしてくれるのは、やっぱりまだまだ彼らなのだと信じている。

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