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田原総一朗が東條英機邸で見たモノは?小林よしのりと『日本のいちばん長い日』トーク

8月8日から公開される原田眞人監督の最新作『日本のいちばん長い日』。
本作は第二次世界大戦末期に、東京大空襲を受け、ポツダム宣言受諾要求、広島・長崎の原爆投下を経て日本が降伏するまでが舞台だ。
多くの戦争映画とは違い、本作は戦場のシーンがあまり映らない。国政を動かす権力を持つ者たちを丁寧に描写している。
昭和天皇を1人の人間として、そして陸軍や内閣を悪人ではなく1人1人守るベき者のために奮闘する、血の通った者として描いているのだ。

本作の公開を記念して、ジャーナリストの田原総一郎氏と『ゴーマニズム宣言』の著者として知られている漫画家の小林よしのり氏が7月26日、松竹試写室にてトークイベントを行った。

『日本のいちばん長い日』二度目の映画化、昭和天皇の描き方の違い

『日本のいちばん長い日』は1967年に岡本喜八監督も映画化している。まず、トークイベントは本作と過去作の比較から入った。
田原総一朗氏が「昭和天皇が主役級に描かれた本作(2015年版)とは違い、前作は昭和天皇の出演が“後ろ姿のみ”だった。当時、映像化できなかった昭和天皇像を本作では描けていたのが印象的」と見解を述べる。
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小林氏は「いままで昭和天皇は『太陽』(2005)でイッセー尾形さんが演じたように、滑稽でチャップリンのような雰囲気で演じられていた。今回の本木雅弘さんはモノマネをせずに演じることで気品も生まれていてすばらしい」と絶賛。
たしかに劇中で、 昭和天皇のひたすらに国民のことを考え、「自分はどうなってもよい」とさえ口にする姿が印象的だった。

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小林氏は「昭和天皇は国民のことを考えて、国民と同じ食べものでいい! と清貧に堪えていた。むしろ軍部の方がいいもの食ってる。天皇自身と軍部の感覚がちがう」と指摘。

それを受けて、終戦当時小学5年生だったという田原氏が「戦争終わってから高級な缶詰が闇市で出まわっていたのを思い出す。ずっと軍部が食べ物をためていたんだろう」と回想した。

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田原総一朗が東条英機宅で見た、衝撃の手紙とは!?

松坂桃李が演じた畑中少佐を筆頭に、劇中、不敗の「大日本帝国軍」を率いて本土決戦に持ち込もうと奮闘する若き将校たち。その姿は狂気を孕んでいた。

小林氏は「将校も戦争に負けたら何が待っているのか、この国がどうなるか予想ができないので、悪いように考えてしまう。敗戦したら、天皇陛下が殺されてしまうかも……。男は奴隷、女の人はレイプされ、日本語が使えなくなるかもしれない……だなんて悲観してしまう。軍部以外の国民もそう。だからみんな玉音放送を聞いて泣くんです」と解説した。

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それを受けて、田原氏が今から20年ほど前に“太平洋戦争開戦時の首相”故・東条英機氏の自宅に行った時のエピソードを披露。
その時、東条元首相のお孫さんに「これを見てください」と何千通ものハガキを見せられたという。
そこには「意気地なし」「バカ野郎!」という“戦争をやめたこと”に対する糾弾のメッセージが書かれていたそう。
田原氏は「お上が弾圧したから戦争をやめられなかったとは断言できない。国民が被害者だったとは言い切れない」と指摘する。

それに対して小林氏は「当時は世界が帝国主義。植民地を持ってないと一流の国家として認められない」という太平洋戦争中の国際的な風潮にも触れた。
観客から「阿南大臣(※)がよく描かれていた。いままでのドラマでは、戦争推進派の鬼畜と描かれていたので、違和感を覚えた」という意見が。
(※太平洋戦争終結時の阿南惟幾陸軍大臣のこと。本作のメインキャラクターであり、役所広司が演じた)

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それに対して田原氏から「終戦後、世の中で日本軍は悪だというイメージがまん延し、ドラマや映画でも“陸軍=悪”として粗暴な人でなしに描かれるなど、大衆が持つ、軍に対する印象が単純化された。
でも、実際はそうとも言い切れない。やっと従来のイメージを壊す作品が出て来始めた」と新しい切り口の戦争映画の誕生を称賛していた。

政治は政治家だけに任せない、自分の頭で考えることが大事

本土決戦を望む将校、アメリカに支配されたくない国民、陸軍を鼓舞してきたものの、戦争を止めることが正しいと思っている阿南大臣……etc.

歴史の授業でクローズアップされていないことがおかしいと思えるほどに、終戦間際の日本は混沌としていたことが本作によってわかる。
「それぞれの思想や正義が入り混じり、誰も戦争の終わりを決められない。そこで天皇陛下に最終的な判断をお願いする。本来ならば聖断を仰ぐ(天皇陛下に決めていただく)のはルール違反だ」と小林氏が述べた。

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「危機があるなら、それを直視しないといけない。それを打開するためには武力での抑圧しかないのだろうか……ということまで、しっかりそれぞれの国民の頭で考えないといけない。政府の人間だから、頭がいいと決めつけちゃいけない」と二人で見解が一致していたのが印象的だ。
“歴史の教科書の行間”を日本映画最高の布陣で劇的に描いた作品。2015年に公開されたことに意味があるように思えた。

今回のイベントでのお二人のメッセージの中でも、「天皇陛下に最後に決定してもらう時代に逆戻りさせるな」というフレーズが筆者の23歳の心に突き刺さって離れない。
『日本のいちばん長い日』は8月8日(土)から公開。

(文:小峰克彦)

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