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Perfume映画監督が語る3人の素顔「まるで一歩一歩進んできた木彫り職人」

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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現在開催中の第28回東京国際映画祭にて、10月24日(土)に公式上映される『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』。人気テクノポップユニット・Perfumeの初となるドキュメンタリー映画だ。

今年はPerfumeにとって結成15周年、メジャーデビュー10周年を迎えるアニバーサリーイヤー。本作は、そんなタイミングである2014年に行われた「Perfume WORLD TOUR 3rd」の世界ツアーと、今年3月の「S×SW 2015」でのライブイベントに密着した内容となっている。31日(土)より日米同時公開されることも決まっており、すでに日本だけでなく、世界中から注目が集まる。

監督を務めたのは、これまでにNHKで放送したすべてのPerfumeのドキュメント番組をプロデューサーとして手掛けてきた、佐渡岳利氏。Perfumeがブレイクするきっかけとなった曲『ポリリズム』がNHK・AC公共広告機構2007年度共同キャンペーンのCMソングに起用されたことから、同時期より音楽番組を通しての親交が始まった。
そんな佐渡監督に、本作のことや、監督だからこそ知るPerfumeについて、インタビューを行った。

Perfumeの成長を長年見てきたからこその“皮膚感”で

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――今回、約500時間という素材を撮ったということで、かなり膨大な量だったと思います。どういったポイントでシーンをピックアップされたのでしょうか。
「僕が一緒にいて、“ココは”と思ったところを基本的にはピックアップして並べたという感じですね。
車の中とかでは賑やかに、楽しそうにメンバーはしていますけど、集中してスイッチが切り替わると、すごくプロフェッショナルな目線になるので……そういうところは出せたんじゃないかなと思います。ああいう車の中や楽屋の中っていうのは、なかなか普段はファンの方も見られないと思うので、ぜひご覧いただきたいなと思いますね」

――作品としては、Perfumeを知らない方に向けて作ったのでしょうか? それともファンの方に向けてでしょうか?
「それは両方ですね。普段、僕はテレビを作ることが多いですが、テレビはどうしても、広くあまねく、“視聴者が対象を知らない”ことを前提に作るメディアですからね。
それと違い、映画はお金と時間を使って観に行こうと思っていただけるわけですから、少なくとも観客の皆さんは“Perfumeに少しは興味がある”ということですよね。だからそんな前提で作りました」

――そうなると難しくなるのかなと思うのが、ディープなファンの反応ですが……。
「そうですね。『そんなこと知ってるよ』『何も今さらそんな風に言われなくても』なんて……それは常に大丈夫かなと思いながら作りましたけどね。
えらそうに『初めて! ドーン!』なんて出して、『そんなの何回も観てるよ!』って思われちゃうかもしれないので。
ただ僕も、Perfumeとは長いお付き合いをさせてもらってますから。感覚……皮膚感て言うんですかね。それで作っていったところはありますね。『これだったら、ファンの方も喜んでもらえるかな』と」

――「ここはファンでもビックリするぞ!」というシーンはありますか?
「ダメ出し会議とかは、あんまり見たことないんじゃないかなって思うので、『こんなことやってるんだ』と思って見ていただけると思うんですけどね」

木彫り職人のように、一歩ずつ“技”を磨いてきたPerfume

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――Perfumeのみなさんとは、もう長いお付き合いになりますよね?
「ちょうど『ポリリズム』がヒットする前後くらいから始まって。ただすごくお付き合いが深くなったのは『MUSIC JAPAN』の司会をやってくださるようになってからですね。そのくらいから毎週のように会って……という感じですね」

――『MUSIC JAPAN』を担当されると、色んなアーティストをご覧になっていると思いますが、彼女たちのすごいところは、どこだと思いますか?
「本当に成長が止まらないというか。一歩一歩、確実に実力が上がっていって、より冷静に、客観的に自分たちを見つめられるようになっているのを、すごく感じるんですよね。
『ここでこうやっちゃったらお客さんも冷めちゃう』とか、そういうのが、一年前、二年前よりも、より正確にジャッジメントができるようになってきていて。
熱く表現するパフォーマーである自分と、それを客観的に見ることができる、ある種プロデューサー的な目線が、すごくいいバランスで成長してきてると思います」

――アーティストのドキュメンタリー映画というと、やはりAKB48の作品が浮かぶんですが、そこへの意識はありましたか?
「いえ、それはあんまりなかったですね。実はAKBさんの1本目の映画は僕も製作委員会で関わらせてもらっているんですけど。Perfumeは独自のスタイルがあるので、全然違うというか。特段、意識したということはないですね」

――AKB48の映画はドロドロしたヘビーなシーンも、ありのまま見せますが、本作は、葛藤はありつつも、観ている人のテンションを下げさせない明るさがありました。
「そうですね。彼女たちは小さい頃からエンタメの世界にいて、段々とステップアップしてきているので……ある意味、肝が据わってるというか。そこがすごいんですよね。
考えてることはあんまり変わっていなくて、スキルだけがどんどんアップしてる。例えば……木彫り職人の方が同じ作業を繰り返すうちに、どんどん技が卓越していって、名人になる……という感じに近いと思いますね」

――本作を観て、そこが本当にすごいと思いました。大人になっていっているはずなのに、全くスレてないというか。
「そうですね、人柄が変わっちゃったということは全然なくて。僕らもいろんな方を見てきているので、中には『ずいぶん雰囲気変わったな』と思うような方もいますけど、彼女たちは本当にあのまんま。僕らへの接し方も全然変わらないし。ただ、アーティストとしての実力だけが順調に上がってきているという感じゃないですかね」

歯車のように噛み合う、3人の全く違う“役割”とは

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――本作では3人がセットリストを真剣に練り直すシーンが多々ありますが、Perfumeがそんな風に成長できたのは、どんなことが大きいのでしょうか?
「そうですね……3人でいることの大切さをすごく感じます。1人だけのアーティストだったとしたら、こういう感じになってないんじゃないかな。
作中のインタビューでも語られていますけど、それぞれ役割がはっきりしていて。新曲の『STAR TRAIN』の歌詞にも入っていますけど、“歯車のように噛み合う 力は一人じゃ伝わらない”っていう……。素晴らしい歌詞だなと思ったんですけど、本当にPerfumeそのものなんですよ。3つの歯車がガチッと噛み合って、1つの素晴らしいアーティストになる、という風に思いますね」

――3人の役割とは?
「“のっち”の、いい意味での“何も考えてない感”(笑)ていうのは、すごくメンバーにポジティブな影響を与えているし、“かしゆか”の真面目さには、僕らも助けられることがあるんですよ。『あれってまだやってないですけど、いいんですか?』『あ、忘れてたかも。ありがと、ゆかちゃん!』みたいな(笑)。“あ~ちゃん”はひらめき系ですから、常におもしろいアイデアを出したりして。本当にその3つがうまく噛み合っている感じがしますね」

――とてもいい関係性ですね。映画を観ていても、女子グループ特有のギクシャク感を感じませんでしたが、普段からよく知る監督の前でも、そうなんですか?
「凍りついた雰囲気なんていうのは、これまで僕は体験したことはないですね。このツアー中も、一度も」

――本作の中でもとても驚いたのが、“のっち”のミスを、みんなで爆笑しているシーンでした。切り替えの早さが女子グループには珍しくて、すごくいいなと(笑)。
「そうですね(笑)。あそこまで大胆に行くと、いいんじゃないですか。ちょっぴりした失敗じゃなく、ワイルドすぎる失敗だから」

――あれをカットしなかったのも、すごいなと思いました。
「あまりにもおもしろいから……(笑)。でもこれ、普通ダメだろうなとは思ったんですけど、おもしろいからいいかなと思って編集に入れていたら、メンバーも超大ウケで。“のっち”はどこかで覚悟を決めてくれたらしいですけどね。最初は『マジ、これ使うんですか……』と思ったと思いますけど」

彼女たちの明るさと、ひたむきさは、涙を誘う美しさ

――最後に、「こんなPerfumeの作品を作りたい」といった未来像はありますか?
「Perfumeがこれから先、どういう風になっていくかは僕もわからないですけど、間違いなく世界に対して、より深いアクションをしていくことになると思いますから。テレビなのか、映画なのかはわかりませんけど、またぜひご一緒できればと思いますけどね。
紅白に初めて出た時もそうだし、ドームを初めてやったり、ワールドツアーを初めてやったり……節目節目で、たまたまですが一緒にいることができたので。可能なら、最後までお付き合いさせていただきたいと思います」

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監督が語るように、この映画を観ると、3人でいることの意味や、織りなすパワーを再確認することができる。Perfumeと同世代の女性である筆者からすると、スレることなく、ただ“Perfume”を極め続ける彼女たちには、頭が下がる思いだ。映画は海外ツアーの記録が淡々と流れていくが、LAやNYのステージ後に彼女たちが達成感から見せた涙には、こちらも思わず号泣してしまった。こんな風に、ひたむきさから流れる汗と涙に勝るものなんてない、と思ったのだ。
Perfumeのファンに限らず、「頑張る女の子」に勇気をもらいたい人にはおすすめの映画だ。

(文:佐藤由紀奈)

『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』
出演/Perfume(a-chan、KASHIYUKA、NOCCHi) 監督/佐渡岳利 音楽/中田ヤスタカ(CAPSULE)
主題歌/Perfume「STAR TRAIN」(ユニバーサルミュージック)
配給・宣伝/日活  (C) 2015“WE ARE Perfume”Film Partners. 公式HP http://we-are-perfume.com/
海外配給/ライブ・ビューイング・ジャパン  海外上映HP http://liveviewing.jp/screenings/we-are-perfume-eng/

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