『ライチ☆光クラブ』内藤瑛亮監督インタビュー 残酷映画をシネコンでかける意義

2月13日から公開され、27日より拡大公開となる映画『ライチ☆光クラブ』。
野村周平や中条あやみなど、若い世代に人気の俳優を使いながら、原作の残酷描写を容赦なく実写化している。
内藤監督は『先生を流産させる会』で実際に起きた事件をモチーフに、思春期の少女が持つ残虐な一面をスクリーンに焼き付け注目を浴びた。

さらに『パズル』では清純派女優・夏帆に、強烈なトラウマを抱えた破滅的な少女を演じさせ、“人を殺すことで浄化される”青春を描き、映画界の重鎮から称賛された。
ソーシャルトレンドニュースでは、次世代のホラー・残酷映画監督の代表である内藤監督にインタビュー。第一回第二回に続く、第三回目は“シネコンで上映される残酷映画の役割”を中心に“本作のラストを含めた内藤監督映画の残酷描写”についても話を伺った。

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――日本のいまの青春映画についてどのような印象をお持ちですか?

「いま日本の青春映画はどちらかというとキラキラ系の作品が多いですよね。
きっと“イケてない若者”は、いまシネコンで上映されている青春映画に対して、『自分には関係ない』と思っているはずです。
僕はやっぱり“イケてないグループの人たちが共感できる作品”を、観客としても観たいし、自分も作るならそちら側の話を撮りたいと思っています」

――監督の以前の作品に比べて、公開規模が大きくなって、例えば『orange-オレンジ-』などのキラキラ系の青春映画が公開されているような、大きな劇場で本作が上映されますね。
比較的大きい規模で撮影・公開できたからこそ、新たに挑戦できたことはありましたか?

「予算があった分、残酷描写をハードに撮ることができましたね。
イケメン目当てで『ライチ☆光クラブ』を観に来た女の子が『『orange-オレンジ-』にしておけばよかった……』と後悔するくらい派手にやろうと考えて撮りました(笑)。
ぜひ男子にも観に来て欲しいです。残酷描写も案外、笑いながら観られると思うので」

『ライチ☆光クラブ』という残酷映画が誰かの青春を救う

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――“誰かを殺したい”と思うくらい追いつめられている人も『ライチ☆光クラブ』を観た後は、欝屈とした感情が少し晴れるのではないかと思います。
映画ファン以外のお客さんも多く訪れるシネコンで、本作のような「残酷な作品」が上映されることの意義をどのようにお考えですか?

「僕は10代のころマリリン・マンソンが好きで、彼の歌に救われていました。
大人たちは『こんな残酷な歌は青少年に悪影響がある』というのですが、本人は『むしろいい影響を与えているのだ』と主張しました。
マンソンが歌った『みんな残酷な感情を持っているんだよ』というメッセージは、同じような感情を抱き孤独を感じていた人に、『あぁ、僕だけじゃなかったんだ』と平穏を与えたと思います。

でもコロラドで事件(※)があった時に、犯人がマンソンのCDを持っていたことで、彼はスケープゴートのような扱いを受けました。ネガティブなイメージばかりが蔓延して、“残酷な表現が与えたポジティヴな効果”は、表には現れない難しさがあります」
(※1999年、アメリカ コロラド州にあるコロンバイン高校で13人の死者を出した銃乱射事件。犯人の生徒2名は日常的にスクールカーストの最下層としていじめにあっていた)

10ninnme(右:10人目の人格 ロボット・ライチ)

――マリリン・マンソンが内藤監督に救済を与えていたんですね。今回、監督は『ライチ☆光クラブ』で、どのような救いを描いたのですか?

「まず原作を読んでいて、最後の殺戮の場面に浄化作用があると思いました。
“光クラブ”に居る9人のキャラクターが、鬱屈を抱えた少年の内面に存在する9つの人格であるように感じて、物語の中で、それぞれがぶつかり合っているようにも見えました。
その9人が作り上げたロボット・ライチはいわば10人目の人格です。最後に10人目の人格の手によって、残りの9人が全部消えるんです。
その展開がある種、救済だと言えるのではないかと思っています。

救済のシーンはいじめられっこや不登校の人が観に来たら、スカッと暗い靄が晴れるような気分になるのではないかと期待しながら撮りました」

内藤瑛亮監督が語る“血”

――『パズル』では登場人物の顔に血が霧のようにかかっていたのが印象的でしたが、今回の『ライチ☆光クラブ』では滝のようにかかっているようにお見受けしました。
血の色も『ライチ☆光クラブ』の方が濃いように思えます。

「『パズル』は明るく、ファンタジックな画を作りたかったので血がピンク色に見えるように工夫しました。本作は“光クラブ”に所属する彼らの“黒い欲望”を表現するためにも、血は赤黒くしています

――内藤監督の『パズル』を絶賛していた園子温監督はよく「映画の中の血は詩」だと仰っていますが、今回、内藤監督が血の描写に込めた思いはありますか? 

「僕の作品に限らず、特にホラー映画における血の描写はすごく象徴的です。
ホラー映画は女性の主人公が多いですが、“女性にとっての血”と聞くと、生理や初潮といった、ある種成長を意味するものだと考えられます。

『パズル』も同様ですが、女性キャラクターが血を浴びると、その子が“大人になった”、“成長した”、“困難を乗り越えた”という意味になることが多いです。
一方、“男性にとっての血”は、単純に死や暴力へと直結します。
本作ではゼラやジャイボが内臓を醜いものとして嫌悪し、血まみれになることから遠ざかりたいと思っているのに、他者には赤い血を流すことを求めています。
自分は嫌だけど他人には暴力を振るうという、“男子が持つ暴力的な思考”が本作における血の意味づけです」

――本作は大人の描き方が抽象的で、終始、子供側の目線で描かれているように思えます。大人を具体的に描くことや大人の視点は意図的に排除されたのですか?

「ゼラの登場シーンも少年時代から始まりますが、暗い少年たちの内面世界に突入していくつもりでこの世界全体を考えました。“大人の世界”は彼らにとって象徴でしかなく、実感もないのです」

――だからこそ派手に殺せるんですね。
「そうですね。実際に画面には中学生と労働者と商売女しか基本出てこない、ひどい世界なんです(笑)。ちなみにこれ以上に世界を広げていこうとすると、お金が足りなくて作りこめない……という予算的な問題もありました。だからこそ思い切って象徴化された世界に突き進むことにしました」

少年や少女たちはなぜ“人を殺せる”のか

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――『先生を流産させる会』でも“女教師への嫌悪感”や、“大人を理解できない感情”があったから、主人公の中学生が先生を攻撃できたと思うのですが、その感情を内藤監督はどのように捉えていますか?

「昔よくいた、人を恨んで殺人を犯す人は、相手のパーソナリティを認識した上で行為に及んでいたと思うんです。一方で、近年の少年犯罪で見られる“理由のない、発作的な人殺し”の在り方は、相手の内面や人間としての実感を受け入れてないというか、知ろうともしていないという印象があります。
『人を殺してみたい』という動機の人たちって、本当に相手は誰でもいいんです。
彼らは“殺す”という行為ですら自分のパーソナリティな世界の中で終始しているように思えます。相手の状況や気持ちまでは考えていないのです」

――映画で描くときはそういう狂気を抱えている人たちに視点が向きますか?

「モノづくりをする上で、10代の頃に受けたショックに一番影響を受けていますね。
それこそ酒鬼薔薇聖斗が同学年なので、未だにあの頃の気持ちに立ち返る時はあります

――他の取材で御自身のことを『人を殺さないで大人になれたことが驚き』という主旨のことを仰っていて、欝屈とした青春を送った人たちにとっては、とても共感するフレーズではないかと思いました。なぜ内藤監督は御自身が殺す側にならなかったと思われますか?

「僕はホラー映画とかをいっぱい見ていて、残酷なもの、怖いものが教育に悪影響を与えるんだって言われてテレビから排除された世代ですけど、逆に逃げ場所があったから道を踏み外さずに済んだんです。デトックス効果ですね。ホラーのおかげで、人を殺さない大人になれました。
むしろ青春・純愛・キラキラ系の映画ばかりだったら息苦しくて、『こんな社会なくなればいいのに』と思うはずです。キラキラ系ばかり上映している映画館に火をつけようって発想になると思います(笑)」

――そうですよね、わかります!
「自分と同じような苦しみや考えを持っている人の存在が欝屈とした若者に平穏をもたらすのではないでしょうか。僕が監督した作品も、血まみれだけど、いえ血まみれだからこそピースフルだと思っています

不登校の学生やいじめられっこでなくとも、欝屈とした感情を抱え、拠り所を探している人は少なくないはず。
もちろんしんどい人でなくとも、日本映画における最先端の残酷表現や、自分が過ごしてこなかった青春をのぞくために、映画館へ駆け込んで、ぜひ『ライチ☆光クラブ』を観てほしい。
内藤監督が撮った残酷描写が、自分自身の中にうごめく、真っ黒い感情との向き合い方を教えてくれるはずだ。
『ライチ☆光クラブ』は2月13日(土)から全国公開。

(取材:小峰克彦・霜田明寛 文:小峰克彦 写真:浅野まき)

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【作品情報】
主演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音
監督:内藤瑛亮
脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮
原作:古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』(太田出版)
配給・宣伝:日活  制作:マーブルフィルム
©2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会
公式HP:http://litchi-movie.com/

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