<現実と夢が同時に存在する時間>ジョン・カビラが語るアカデミー賞の魅力

2月は日本でもアメリカでも、映画賞の授賞式シーズン。そんな中でも世界的な注目が集まるのが、現地時間2月28日に開催される第88回アカデミー賞授賞式。人気コメディアンで俳優のクリス・ロックが11年ぶりの司会を務めることでも注目を集めている。日本では、2月29日(月)午前9時から、その様子をWOWOWが独占生中継。番組ではジョン・カビラさんと、高島彩さんが案内役を務める。そこで、ジョン・カビラさんにインタビュー。今年の見どころや、楽しみ方、アカデミー賞の意義についてなどを聞いた。

セレモニーにもドラマがある

――ジョン・カビラさんの案内役も10年連続となりました。これまで、ご覧になってきたアカデミー賞の中で、これは心に響いた、という瞬間があったら教えていただけますでしょうか?

「いきなり難しい質問ですね……(笑)。それぞれのセレモニーに必ずドラマがあるんです。だから、“特に”を挙げるのは難しいのですが……。
“ベン・アフレックが他の賞は獲れなかったけれども、プロデューサーとして『アルゴ』で作品賞が獲れた瞬間”だったり、“『ディパーテッド』でマーティン・スコセッシが獲ったときに、盟友・ルーカス、コッポラ、スピルバーグがそこにいたとき”は宝物ですね。そういった夢のような瞬間を皆さんと共有できたのは非常に嬉しいです」

レオナルド・ディカプリオに……獲らせてあげてください!

――それでは、今年ジョン・カビラさんが起こって欲しいと願っているドラマはありますか?

「個人的には……レオナルド・ディカプリオに獲らせてあげてください、と思ってしまいますね。“司会者としてそんなに肩入れしていいのか”というご指摘は甘んじて受け入れますが!(笑)
ただ、レオナルド・ディカプリオ主演の『レヴェナント:蘇りし者』が受賞すると、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が2年連続受賞することになるんですよね。そうすると、
監督賞の2年連続受賞は、第22回と23回のジョセフ・L・マンキーウィッツが、『三人の妻への手紙』、『イヴの総て』で達成以来、史上2人目になるんです。これは非常に稀なことで快挙!です。

“どこに己は立っているのか”を問いかける作品たち

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――今年のジョン・カビラさんは、『レヴェナント』とレオナルド・ディカプリオ推し、ということですね(笑)。

「ええ、そうならなかったときの、カビラの顔も楽しみにしていてください(笑)。『レヴェナント』は、究極の復讐劇であり、人間にとってプライドとは何なのかということを鋭くえぐった作品です。
『レヴェナント』に限らず、今年ノミネートされた8作品には“どこに己は立っているのか”ということを考えさせられる映画が多いんですよね。セクシュアリティを描いている『キャロル』、個人の尊厳を踏みにじられたのは許されないというところから、社会正義をどう勝ち取っていくかということを描いた『スポットライト』。性と死と個人のプライド……色々なものが詰まっていますよね」

クリス・ロック起用から考えるアカデミー賞司会者が試されていること

――ノミネート作品の選び方にも一定の意図は感じられますよね。俳優部門と監督賞の候補者が2年連続で白人ばかりだったこの候補者20人が、2年連続で全員白人で、黒人のノミネートがないことも物議をかもしました。

「ええ、ただ司会は誰が見てもアフロ系のクリス・ロックです。もう己そのものが問われるわけですよね。“俺が今ここに立っている意味は何なのか”“求められるのは何なのか”といったことを考えるはずで、さらに、司会者としてのハードルが上がったわけです。でも、それをたぶん僕らが想像している遥かに上のレベルで、軽々と越えてくれるだろうなと思って、楽しみにしています。暴走なのか、あえての落ち着きなのか……もしくはそれを交互に出してくるのか……。まあ、クリス・ロック節、炸裂でしょうね。

過去の司会者を見ても、当然、司会者の起用にも意図があるわけです。エレン・ジェネレスさん(2007年・2014年)はレズビアンの方だし、クリス・ロックは誰が見てもアフロ系だし、セス・マクファーレン(2013年)は多才だけれども、ギリギリのユーモアでも売っている方です。時代の息吹や空気を読み取りつつ、どこまでそれを表現するのかっていうことを、彼らは常に試されているんです。司会者の第一声がどんな声なのか、から注目ですね」

――単なる賞の発表ではない、色々な緊張が入り混じっているのを感じます。

「ショービジネス界に限らない、アメリカの今を感じることができるでしょうね。特に、今年は大統領選挙の年ですからね。どこかの国では、きっと政治の話はしませんもんねえ(笑)」

――ええ、今の日本では自粛か圧力か、どちらにしろ話題は出ないでしょうね(笑)。そう考えると、夢のような世界だと思っていたアカデミー賞が、現代社会へのメッセージも内包していることに気づけて、俄然興味が増してきました。

腑に落ちる世界と、絶対に手が届かない世界が、両立するのがオスカーなんです。“エンターテイメントでここまでリアルに今を捉えることができるんだ”と心が震えつつ、夢のような世界もそこにあるわけです。ケイト・ブランシェットが身に付けたドレスが、ものすごく豪華だったり……。そんな世界と、“司会がえぐるリアル”が両立している生放送……これは本当に稀有な時間だと思います」

日本にとって米アカデミー賞は、最高に豪華な予告編

――そんなアメリカのアカデミー賞の授賞式の様子を、日本で見られるのがこの番組です。ただ、日本では、まだ公開されておらず、これから公開される作品も多いですよね。

「ええ、そう考えると、アカデミー賞はめちゃめちゃ豪華な予告編ですよね。扉をノックできる番組なんですよね。皆さん、“観てもいない映画だし、わからない”ってお感じになるかもしれないけれども、ちょっと待ってくださいよ、と。“こんな残念そうな顔をしていた”“こんなスピーチをしていた”というところが先に見られる。映画の方も気になってきますよね。導入としては最高なんじゃないですかね」

――日本では、同時通訳の生放送と、その後、字幕版で2回放送されます。

「2度おいしいですよね。2度、その日の内に見られるっていうのは、あまたあるオスカーを放送している国と地域でも日本しかないんじゃないですかね。字幕の場合は完全にオリジナルの方の声がフルで聞こえるわけですよね。そうすると、声が微妙に震えている、とか、強調して喋っていた、とかいったことがわかるんですよね。賞だけではなく、映画自体もそうですよね。いい映画だな、と思って2回目を観ると“あっ、これ見えてなかった”といった発見があるじゃないですか。なので、2回目も追体験するのはオススメですね」

WOWOWでは日本時間29日(月)の朝9時から生中継の同時通訳版、夜9時からは字幕版が、3月5日(土)にはダイジェスト版が放送される。日本のアカデミー賞とはまた違った、時代の空気に切り込んでいく授賞式。2016年の同時代を生きる者として目に焼き付けるチャンスである。

(取材:小峰克彦・霜田明寛 文:霜田明寛 写真:浅野まき)

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■関連リンク
生中継!第88回アカデミー賞授賞式(WOWOW)
http://www.wowow.co.jp/extra/academy/
【放送日時】2月29日(月)WOWOWプライム
午前9時~ ※二カ国語(同時通訳)
午後9時~ 字幕版

【案内役】ジョン・カビラ/高島彩
【レッドカーペット・ナビゲーター】武田梨奈/尾崎英二郎
【スタジオゲスト】斎藤工/町山智浩/大根仁

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