ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

RADWIMPSの激動の3カ月を並走! 朝倉加葉子監督が見たRADの正体

メジャーデビュー10周年の人気バンド・RADWIMPSのドキュメンタリー映画『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』が3月11日から公開されている。

2015 年9月のDr.山口の病気による無期限活動休止でバンド結成以来の窮地に陥ったRADWIMPS。
10月の初のアジア・ヨーロッパツアー、11月の結成10周年を記念した胎盤(対バン)ツアーからラストのワンマンライブに至る激動の3カ月間を、朝倉加葉子監督が撮った。

朝倉監督はゆるめるモ!を主演に迎えたガーリーホラー『女の子よ死体と踊れ』や公開待機中の『ドクムシ』など、劇映画で注目されている新進気鋭の映画監督だ。
前作でインタビューさせていただいた時には「エモーショナルな映画が撮りたい」というコメントが印象的だった朝倉監督。

今回はRADWIMPSの10年間の集大成として劇的なドキュメンタリー作品になるかと思いきや、出来上がった作品は、メンバーや関係者の戸惑いが生々しいインタビューシーンや、ライブで起こるその日限りの化学反応など、いまのRADWIMPSを的確に切り取り、点で繋いだ“激動の3カ月間を並走するような映画”だった。
現場の感情を、鮮度を保ったまますくい取り、バンドの“通過点”をエモーショナルに撮った朝倉加葉子監督にインタビューを敢行。撮影時に感じたことや、時間の関係上、描き切れなかったRADWIMPSとのエピソードについて伺った。

朝倉監督が見た“RADWIMPS”というバンド

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――普段、劇映画を撮っている朝倉監督ですが、初めてドキュメンタリーを撮ってみていかがでしたか?

「こういう取材でもそうですが、ドキュメンタリーはどうしても“RADWIMPSはこういう人です”っていう話になるじゃないですか。
でもそのイメージは私の目から見た彼らでしかないので、私が言いきるのはおこがましいのではないかと感じる部分もあります」

――そう仰ってはいますが、朝倉監督が切り取ったRADWIMPSは素晴らしかったです!
初対面の時に彼らに感じた印象と、それが撮影を通してどう変わっていったか教えてください。

「撮影の初日にはじめてお会いしたときには、決してかっこつけず、非常に飾らない人たちだと感じました。
初日はリハーサルだったのですが、ミュージシャンが精神力と体力とテクニックが重要な、アスリートのような仕事だったことに気づいて、驚きましたね。
一緒に過ごしていくにつれて、それら印象は細かくなってはいきましたが、最初と変わることはなかったです。
そのおかげか、撮影自体が本当に楽しくて、それが3カ月間ずっと続いたという感覚です」

――彼らのライブを観たことがある人には、きっとアスリートという表現はしっくりきますね! 撮影を通して、“10年間続けて来たバンドの強さ”として何か感じましたか?

「彼らが10年間バンドを続けてこられた強さの一つは“等身大の自分を人に晒すことができる”という点ではないかと思いましたね。
リハーサルやライブの時も、“他人が見ている”という状態に非常に強い人たちなんです」

――“等身大の自分”といえば移動中の車内で、UNOをして遊んでいるシーンなど、メンバーの仲の良さに驚きました。監督は現場で彼らの仲の良さについてどう感じましたか?

「仲の良さには目を疑いましたね。10年やってきて、培われた関係性だと考えると納得もしますけど(笑)。
バンドというのは、なんだかんだ言ってビジネスパートナーでもあるので、もっとビジネスライクな付き合い方をしてもおかしくないんですけどね。
ビジネスだけの関係にならないところも、彼らの人となりを表しているように思えます」

――作品には映ってないけれど、現場で他にメンバー同士の仲の良さを感じたことはありますか?

「海外では、みなさんでよく買い物に行かれていました。野田さんと桑原さんが二人で買い物に行ったり、他にもメンバー同士で組み合わせを変えて出掛けていましたね。
そこにマネージャーさんがいるというわけでもなく、散歩やら観光やらお互いを誘っていました」

――高校生の友達みたいですね(笑)。

「そうですね(笑)。
ご飯を食べ終わってから、みんなでコンビニに寄って、部屋で飲むジュースを買う姿もみましたよ(笑)」

――3カ月間を通して、朝倉監督とRADWIMPSの距離が近くなるなど、関係性に変化はありましたか?

「3カ月間で多少は距離が縮まったかもしれないですけど……ただ、私も自分の話をほとんどしなかったこともあって、近くなった、という感じではないですね。
関係性をしいて言うならば、本当に無理なく撮らせていただいたので、“一緒の時間を共有させてもらった”という感覚です」

――仲の良いRADWIMPSのメンバーの中に朝倉監督が入りこめたのは特別なテクニックか何かあったのでしょうか?

「私が何か特別なことをしたということは一切ないです。ただ彼らが飾り気のない、無防備な人たちだっただけですね。RADWIMPSの皆さんは、周りの方に普通に気も使うし、腰が低いのが印象的でした。
彼らはただただ音楽が好きで、バンドを仕事にしている人たちなので、今まで大事な音楽活動を削らないように、細心の注意を払ってきたことが窺えました。
きっと、自分たちが必要だと思ったこと以外は、やらないんです。
例えばテレビ出演や、望まないプロモーションなどは引き受けてこなかったからこそ、すれていない状態をキープできているのかもしれません」

撮影と編集について

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――ライブ直後の楽屋など、むき出しの彼らの映像が新鮮でした。
撮影するにあたって、カメラをまわすタイミングなどは決めていたのですか?

最初の頃は、RADWIMPSのみなさんに、カメラがいつでも回っている状況に慣れていただこうと思って、常に回していましたね。
私とカメラマンもいつでも撮影できる体制に自分たちを置くために、回ってなくても現場にカメラを置くように心がけていました。
あとは話が盛り上がってきた瞬間に“撮影をはじめた”という圧が強くないようにしたいなとは思っていましたね」

――たしかに、カメラと被写体の距離感のちょうど良さを感じました。
このスピード感のある3カ月を追っていく上で、全体を通して考えていたことはなんですか?

「私はこの3カ月間を見届ける係だと思っていました。
ドキュメンタリーのクルーは、『彼らの日々のライブがうまくいきますように』と祈るしか出来ないので。
仮に何か手出しをしてしまったら、彼らを撮るっていう行為にはならないですし。
ただ、そばで見ているだけで面白いので、『いい映画にしないといけない』と義務感にかられながら撮影をしていました」

――撮影中、監督として接しているときに、「彼らのこういう部分を見せたい!」という思いはありましたか?

「そういう意味では、日々取材なので、仮説をたてて、撮影して、また仮説を立てて、撮影して……という流れを繰り返していました。それこそ“こう見せたい”という構想はいっぱいあったような気もするんですけど、忘れちゃいましたね(笑)」

――このシーンの撮影時に仮説を立てたかどうかはわからないのですが、最後のツアーを終えた後に撮られたインタビューが、これ以上ないくらいかっこいい場面でした。

「私もそう思います。彼らと3カ月一緒に居て、思ったことがそのまんま野田さんの口から最後の言葉として発せられてうれしかったですね」

「編集はシナリオを書くようなもの」
“RADWIMPSと過ごした3カ月”の正体を考えた1カ月半

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――素材を編集するときは、どういう気持ちで編集されたんですか?

「彼らにぱったり会わなくなった1カ月半の間、『あの3カ月が何だったのか』をずっと考えていました。
彼らをどう解釈してどう表現するのかを考えるとても重要な任務だと思いながら編集していましたね。
編集はシナリオを書くような作業なんです。それによっていかようにも見せることができてしまうんですよね」

――作業中、「全部良くて削れない……」と悩む瞬間はありましたか?

「日々、濃密で色々なことがあって、面白い3カ月だったので、全部見せたいんですよね。でもそれだと違うし、全部見せられないなら、何を見せるべきなんだろうとずっと考えながら、編集をしていましたね。
でも、それは編集が始まるにつれて、どんどん自分の中で明確になっていったので、安心しました」

――ライブのシーンから最適なシーンを選び出すのも大変そうですね。

「そうですね……。海外のシーンも胎盤ツアーも膨大な素材から選ばなければいけないんですよね。
セッションのシーンでは、RADWIMPSと相手のバンドが、一緒にステージに立つことによって、お互いがお互いに反応しているのが印象的でした。
化学反応を起こして演奏をしている姿が素敵で……。ミュージシャンって羨ましいですよね」

――朝倉監督も映画の現場で「この役者さんとこの役者さんを合わせたらどんな化学反応が起こるだろうか……?」とワクワクを感じることはありますか?

「あ、それに近いと思います。映画の現場で“私と役者さん”との間だったり、役者さん同士、の間で生まれる化学反応に近いかもしれませんね」

例え形が変わっても、高い音楽的理想を叶え続けるバンド
朝倉監督が思うRADWIMPSの未来

 

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――朝倉監督が彼らより少し年齢が上であるということは関係性に作用しましたか?

「“弟感”みたいのは全くなかったですね(笑)。私は、映画のスタッフでもあまり年齢を気
にしたことがないんですよね。
彼らも、もう立派に10年間RADWIMPSとしてやってきていますしね。3カ月通して、同じクリエイターとして、彼らの10年間の日々に本当にリスペクトするようになりました」

――Mr.Childrenやスピッツといった大御所バンドとRADWIMPSとの共演シーンは素材としてはたくさんあったと思うのですが、会場の雰囲気とRADと彼らの関係性を表したシーンを毎回切り取られていたことに感動しました。

「本編には使ってないですけど、セッションパートだけでなくオリジナルのライブパートやリハーサルの風景、立ち居ふるまいに至るまで、すべてかっこよくて……現場の雰囲気を感じさせる場面を選びましたし、作品の中にも忠実に反映できたと思います」

――後輩バンドのplentyやきのこ帝国のコメントが、彼らが普段ステージで全く見せない“音楽が好きでしょうがないバンド少年やバンド少女の顔”をしていたのが、とても素敵でした。このシーンの撮影で印象的なことはありますか?

「皆さん、ミュージシャンである前に音楽を聞くのが大好きな方たちなので、一人のリスナーの観点でRADWIMPSのことを語っているんです。
やっぱりみなさん顔が素晴らしかったですね。このシーンも含め、もっともっと使いたいところはいっぱいありました」

――周囲にいるスタッフの方々もRADWIMPSの音楽が好きな方ばかりだと思うのですが彼らも時折、“音楽ファンの表情”になるのですか?

「スタッフの方たちは、身内なので、また違う熱を持っていましたね。
映画の中にも出てきますけど、皆さんRADWIMPSのチームに自分が居ることをとても誇りを持っている方がとても多いんです。

彼らが、ライブやツアー、新曲制作やアルバムリリースなど、商業的に考えなくてはいけない部分が絶対的に出てくる場面でも、一番大事にするのは“RADWIMPSの音楽”という軸が絶対的にブレないんです。
芯にあるものが、『RADWIMPSがやる音楽を成功させるんだ』という一点だけなので、一緒に仕事をしている人たちはとても気持ちがいいと思うんですよね。

彼らの核にあるものが、非常に明快だし、高い理想を叶えるのって嬉しいじゃないですか。その音楽に自分が全力を注げることに対しての喜びを持っている姿が美しいなーと思って見ていました」

――理想の職場環境ですね。この作品を見て、10年間うまくいってきたバンドであることが、とても伝わってきました。
一方で野田さんの「こんなに汗をかくライブあと何年できるんだろうな」というセリフに、彼らの30歳という年齢を実感して、ファンとして少し怖くもあります。
朝倉さんから見て、RADWIMPSは5年後10年後こうなっていくのではないかという予想はありますか?

「今までの10年は伝聞でしかないのですが、バンドとして大きくなろうとしながらやってきた10年間だったんだろうなと思いました。
だからチームにもアットホームな雰囲気がある一方で緊張感がありますし。
スタッフの方も「彼らは本当に慣れ合うことが出来ない」と言っていて、それは彼らが常に新しい音楽をやっていこうとする姿勢の表れだと思うんです。

「シンプルにいい音楽を作るんだ」「ライブでいい演奏するんだ」という彼らの指針だけは、5年後10年後も絶対に変わらないし、どんな形になっているのかは分からないけど、その強度や純度は永遠に変わらないんだろうなと思います」

RADWIMPSというバンドのターニングポイントを追体験させてくれる貴重なドキュメンタリー作品『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』。

その中で最も印象的だったのが彼らの音楽に対する意識の高さと、それを支えるスタッフの熱量だった。中学・高校時代に彼らの楽曲に触れ、“自身の青春時代の挿入歌”のような思い入れがある方にはより本作が響くかもしれない。
かつてイヤホンの向こう側にしかいなかったRADWIMPSというバンドの、仕事人としての美しさに、同じ大人として心震えるはずだ。
本作は3月11日~3月31日まで公開。

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(取材:霜田明寛 取材・文:小峰克彦 カメラ:浅野まき)

公式サイト:『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』

監督:朝倉加葉子

RADWIMPS
野田洋次郎(Vocal&Guitar&Piano)
桑原彰(Guitar)
武田祐介(Bass)
山口智史(Drums)

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