ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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“岩井俊二と篠田昇”を須賀貴匡&津田寛治が語る

龍騎の2人がゆうばりで映画を語る……!

2002年『仮面ライダー龍騎』での共演が出逢いだったという俳優・須賀貴匡と津田寛治。
2人の対談の場所となったのは、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の会場。
2016年の映画祭では、須賀貴匡さんが審査員に。そして、津田寛治さんは、この映画祭に、ほぼ毎年訪れているというほどの映画好き。

ということで、前編で龍騎について振り返ってもらった後は、当時からしていたという深~い映画トークに。2人が敬愛する岩井俊二監督と、岩井作品に欠かせないカメラマンだった、故・篠田昇さんへの想いを語ってもらった。

一生セックスできなくてもいいから、こんな映画を作りたい

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――2002年当時はどんな映画の話をされていたんですか?

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津田「ジム・ジャームッシュのこととか」

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須賀「青山真治さんの話とか」

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津田「したねー。俺もちょこっと出てたりしてたからね。黒沢清監督の話とか」

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須賀「塩田明彦さんの話とか……」

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――洋画から邦画まで、なんとなくおふたりの趣味がわかってきました(笑)。ちなみに須賀さんは、龍騎の頃のインタビューなどで、影響を受けた映画として岩井俊二監督の『スワロウテイル』をよく挙げていらっしゃいました。

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津田「俺も『スワロウテイル』は大好きですね。その話もしたよね、きっとね」

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須賀「そうですね、岩井さんの話もよくしましたね」

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津田「俺もかなり影響を受けた映画なんだよね。須賀っちはあれ見てどう思った?」

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須賀「衝撃的で、ちょっと頭の整理がつかなかったですね。そういう変な状態が続いていく感じで……」

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津田「そうだよね、それくらいの衝撃あったよね。
主人公の女の子が小っちゃい頃に、お母さんがセックスしてるあいだ、ずっとトイレで待たされてるっていうシーンがあるじゃない。あそこで、アゲハチョウが逃げていこうとするんだけど、ドアがパシンと閉められたところに、チョウが挟まる場面があるんだよね。
 
俺、何故かあれ見た時に、もうホントに、どんな人生になっても、これから一生セックスできなくても、結婚も出来なくても、どんな不具者みたいなことになってもいいから、こういう映画作りに参加したいって、心から思っちゃったんだよね。
あの胸のざわめきは何なんだろうね……。本当に岩井俊二は日本が誇れる監督だよね」

オッサンは理解できていなかった岩井俊二のスゴさ

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――津田さんの情熱に、ちょっと今泣きそうです……。初めて『スワロウテイル』をご覧になったとき、津田さんはおいくつだったのでしょうか?

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津田「30歳をまわっていたんですよ。それで『津田君は30過ぎてるのにスワロウテイル好きなんて不思議だね』ってよく言われたんですよね。
『あれは20代が喜ぶ映画なんだよ、津田君珍しいね』って言われることも多くて、30歳を過ぎてる人は、スワロウテイルをよくないって言っていたんです。
 
でもおっさんの言うことを聞いてると『ストーリー展開がない』とか『リョウ・リャンキ(※編集部注:『スワロウテイル』内の役名。江口洋介さんが演じている)も、あいつがもっと色々やるのかと思ったら何もやらずに、ただ普通に生活してるだけじゃん』なんて言うんですよね。
俺はそれを聞いたときに『この人たちはホントに古い感覚なんだ』って思ったんです。あの映画は、そこがすごいんじゃないですか。何も起こらない日常の切り取り方がすごいのに、『この人たちはそこに気づいてないんだ……』って思った記憶がありますね」

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須賀「岩井さんは時代よりも早かったんでしょうね」

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津田「あの頃の次世代の監督だったんだろうね。ゆうばり映画祭に来てると、今の次世代の監督の作品がたくさん上映されていてね。そこに、自分がどういうふうに反応するのか、っていうのも面白いよね」

名カメラマン・篠田昇さんに怒鳴られた日

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――ちなみに、津田さんは岩井俊二監督の『四月物語』に出演されていますよね。主役の松たか子さんが『武蔵野大学』入学直後に入る、釣り部の先輩の役が印象的でした。

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津田「あれはオーディションで勝ち取った役で、僕がまだどこの馬の骨ともわからないのに岩井さんが使ってくれたんです。
あのとき、現場で段取りを教えてもらったあとに、僕はひとりで練習をしていたんです。そうしたら、カメラマンの篠田昇さんが、練習している俺をずっと見ていたんですよ。カメラマンの人にそんなことされたの初めてだったから驚いてね。この人は今までのカメラマンと違う、役者を見るカメラマンなんだ、って思いました」

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須賀「僕は篠田さんに怒られた思い出があります」

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津田「えっ、怒られたの?(笑)」

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須賀「龍騎をやる前なんですけど、利重剛さんが監督をされた『クロエ』っていう作品に、エキストラとして参加したんです。そのときのカメラマンが篠田さんで、『邪魔なんだよ!』って怒鳴られて……。
『怖ぇ……これが映画か……』とびっくりした反面、『この人にきちんと撮ってもらえるようになりたい』とも思ったんですよね。
その後、龍騎も終わって、『魁!!クロマティ高校THE★MOVIE』のときに、実はB班のカメラマンに篠田さんをお願いしていたらしいんですよ」

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津田「B班で?(笑)」

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須賀「そうなんです。でも、もうそのとき篠田さんは病気になられていて……。それできたのが福本さん(※)だったんです」

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津田「篠田さんの愛弟子のね」

(※編集部注 福本淳。カメラマン。行定勲監督作品を中心に多くの作品を担当。最新作は『魁!!クロマティ高校THE★MOVIE』の山口雄大監督作品『珍遊記』)

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須賀「津田さんのおっしゃる“役者を見るカメラマン”を継がれている方ですよね。それで、夢は叶わずだったんですけど、篠田さんに撮られたい、と思っていましたね」

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津田「篠田さんは俺らにしてみたら、憧れのキャメラマンというか……。世界で言ったらクリストファー・ドイル的な感じのキャメラマンだもんね」

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――おふたりの映画トークが濃厚で、この関係性がとても羨ましいです。14年前の龍騎の頃からこんな感じなんですね。

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津田「尽きないよね。でも、この間、須賀っちと飲んでるときに『僕は津田さんに騙されちゃったからなあ』って言われたんだ(笑)」

須賀さんは、津田さんに何を騙されたのか……? 後編では、津田寛治さんの須賀貴匡愛が爆発

(取材・文 霜田明寛)

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