ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

ゴーカイジャーから5年「考えるイケメン」山田裕貴に迫る

『海賊戦隊ゴーカイジャー』でのデビューから5年。世間では“イケメン俳優”のくくりに入れられてしまうかもしれないが、最近の山田裕貴はちょっと違う。「イケメンに偏見を持っている」と自称する、気鋭の劇作家・前田司郎氏に「イケメンを少し見直した」と言わしめた俳優なのである。

今回、主演映画『闇金ドッグス2』の4月9日(土)公開にあわせ、山田裕貴を取材させてもらった“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン”チェリー。現場につくなり「花見ー!」と叫ぶ、(取材日は東京で桜が満開になる前日)気さくな山田。

しかも、恋愛について聞けば「全然モテない……」と語りだす。もしその言葉が本当であれば、イケメンだけど、我々の味方かもしれない……。前田氏の「イケメンを少し見直した」境地に近づくため、役者としての考えや人との関わり方、過去の恋愛経験についてなどを聞いた……!

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「役半分・自分半分」ウソをつかないための芝居に対する姿勢

『闇金ドッグス』シリーズでは元ヤクザで闇金稼業を営む男・安藤忠臣役を好演。最近では、ドラマ『HiGH&LOW』で札付きのワルが集まる高校の番長・村山役など、“怖め”の役が続いている山田。まずは役と自分の結びつけ方について聞いた。

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――『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイブルーでデビューされた山田さんですが、最近は“怖め”の役が続いています。ご自身の素としては、どちらの方が近いのでしょうか?

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「人間ですから、全部の面を持ち合わせているとは思います。暗い部分もあれば、明るい部分もある。
でも僕は、“役半分・自分半分”でお芝居を作っていけたらなって思っているんです。
セリフだけで書かれてあることって、ウソというか、どうしても本物じゃないですよね。だから、怒っているのか、悔しいのか、悲しいのか、喜んでいるのか……。自分が経験したことだったり、その時の感情を思い出したりして、“あ、あの時これ思ったことあるな”とか、“この役もこう感じたりするのかな”っていうのを、引っ張りだしてきているんです。
だから、どれも自分といえば自分。その役は自分とは違う人生を生きているから、矛盾しちゃうんですけど……でもどれも、自分なのかなって思います」

「突拍子もない」「イジられキャラ」の山田裕貴が、とにかく大切に思うもの

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――今まで演じられた役の中で、一番自分に近いと思う役はありますか?

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「同じような経験をしたことあるな、っていうのは、『ストロボ・エッジ』の安堂巧くん。
一番入りやすかったのは、『HiGH&LOW』の村山という役が、一番ポンポン言葉が出てきましたね」

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――『HiGH&LOW』放映時には “イカれてる”と話題になっていましたね。とてもハマリ役だったと思うのですが、あれは山田さん自身にも、実際に不良だった時期が……?

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「いやいや、そういうことではないんですけど(笑)。でもたぶん、突拍子もないところがあるので……クレイジーな方なのかもしれないですね。そういう部分が自分には多かったので、やりやすかったんだと思います」

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――さっきも撮影中に突然、窓の外を見て「花見ー!」と叫んでらっしゃいましたもんね。

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「そう、思ったら出ちゃうんです。人を怖がらせたいっていうわけではないんですけど、とにかく突拍子がないんですよね」

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――では、映画『ストロボ・エッジ』の安堂巧役は、どんなところに共通点が?

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「高校生の頃、好きな子にフラれてすぐに、元彼と手を繋いでいるところを学校で見たんですよ。それはもう、今でも忘れられなくて……フラッシュバックがすごいんです。それがもう、安堂にとっての“真央と蓮のキス疑惑”(※)と重なっちゃうんですよね。それから、ちゃんと人を好きになるのが、ちょっと怖くなっちゃって……ってなるのが、“めっちゃわかるわ!”という感じです」

(※編集部注 山田さんが演じた安堂巧は、本気で好きで付き合っていた真央が、親友の蓮にキスしようとしているところを目撃してしまい、以降チャラ男になっていく、という役どころだった)

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――我々は、その実感のこもった山田さんの演技のおかげで、安堂君に感情移入して見ることができました! でも、実際の山田さんは学生の頃、かなりモテていたのではないでしょうか?

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「いやもう、全っ然です! それこそ2年半くらい、高校生活はだいたいその好きになったコで埋められていましたから。好きになるともう、本当に好きになっちゃって、止まらなくなっちゃうんです」

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――今は不特定多数の人に好かれる状況ですけど、それでも1人の人に好きになってもらいたい思いが強いのでしょうか?

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「もちろん役者としてはたくさんの人に認められたいですけど、プライベートでは1人の人に好きになってほしいというか……自分の好きな人に好きになってもらえたら嬉しいです。でも、なかなか上手くいかないですよね」

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――山田さんが上手くいかなかったら、全ての男が上手くいかないと思います(笑)。

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「全然そんなことないですよ! ずっと超イジられキャラでしたから。イジられて、みんなが笑ってくれればいいやって思っていたんです。女子からも男子からも、小学校の頃から変わらず、です。だから今も、どこの現場でもそういう風になりますね」

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――なぜそういう発想に至ったのでしょうか? イケメンですし、ブスッとしていても、成り立つ気もしますが……。

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「僕、すごく嫌いなんです、そういうの! 一番大事なのは内面だって思っているから。外見なんか関係ないって思っています。
もちろん外見を褒めてもらうのも嬉しいですし、こういう仕事もしているので、むしろ言われなきゃいけないのかもしれないですけど……。役者としてもそうだし、友人にしてもそうだし、いろんな人に“中身がいいよね”って言われたいのが、一番です。
自分が尊敬する役者さんたちも、本当に中身が素晴らしい方たちばかりです」

「思わなきゃ言わない」多くの映画監督との出逢いから導かれた1つの答え

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――では、これまでで、「この役者さんは内面から尊敬できたな」という人はいますか?

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「たくさんいらっしゃいますけど……今回の現場で言うなら、黒田大輔さんですね。お芝居の入り方が、本当に素晴らしいなと思いました。
例えばちょっと息が上がっていなきゃいけない時のお芝居の直前に、急に腕立てをしはじめたんです。“ガーッ”と走って、監督の“よーい”の掛け声で、そのまま演技に入る……みたいな感じでした。
そういう外的なものから内面をどんどん作り上げていくっていうやり方も素晴らしいですよね」

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「でも、黒田さんは外的なものから作り上げていくだけじゃないんです。
僕、黒田さんとは共演はなかったんですけど、前田司郎さん(※)を介して、これまでも何度か顔を合わせたことがあったんです。
そのとき黒田さんが話していたのが、“役半分・自分半分でいいんじゃないか”っていうことでした。
ないものは作ってもウソになっちゃうから、どうにか自分の中から見つけなきゃいけない。悪い感情でもそこをちゃんと増幅させて、自分の中身から出すっていうお芝居を、黒田さんはされていると思います。
 
そういう内面からのアプローチもできるっていうのは、すごく尊敬しますし、僕もそういう考えでやっていてよかったんだ、と思えました。今回、一緒にやっているシーンでも現場で生まれてくる感情がいっぱいあったんです。
黒田さんとやっていると僕自身が“お芝居してんな”、じゃなくて、“ああ、生きてんな”っていう感覚になれたというか……それがすごく楽しかったです」

(※編集部注 2015年2月に行われた前田司郎によるワークショップに山田裕貴が参加。それをきっかけに、2016年8月19日(金)からは、作・演出・前田司郎×山田裕貴主演舞台『宮本武蔵(完全版)』が上演される。黒田大輔は、前田司郎の主宰する劇団『五反田団』の公演に多く出演している)

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――「自分の中に持っているものを増幅させる」というのは、たとえば日常で怒りが湧いた時や、悔しさが湧いた時に、それを保存しようとしているのですか?

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「そうです。だから、今こうやってしゃべっていながらも、“どれくらいのスピードで”、“どれくらいのトーンでしゃべっているのか”っていうのを、なんとなく覚えておくんです。“取材を受けている”というシーンがきたら、それが全部お芝居に使えますから。
そういうのを記憶しておくようにしようと、いつも意識しています」

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――お芝居に対してそういう意識が芽生えたのは、最近のことなのでしょうか?

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「そうですね。最初は、とにかくがむしゃらでした。とにかくやろう、やろうとしちゃっていた感じです。
例えば『ゴーカイジャー』はデビュー作だったので、より“出してく演技”になっていたと思うんです。
でも、出さなくても、“思っていれば伝わる”っていうのを教えてくれたのが、『ストロボ・エッジ』の廣木監督です。
 
前田司郎さんや三浦大輔さん、行定勲さんのワークショップにも行ったりしたので、いろんな映画監督の方々にお話を聞いているのですが、本当に、みなさんがおっしゃるのが、“お芝居なんて誰でもできるんだから”っていうことなんですよね。
 
“思えばできる”んだから、“やろうとしなくていいんだよ”っていうことを、おっしゃっていました。なので『闇金ドックス』の時は、主演というのもあったし、安藤忠臣っていう人間像を、すごく固めていっていたんです。
でも続編となった今回は、セリフに書いてあっても、“思わなきゃ言わない”ようにしました。
 
といっても、セリフに書いてあるということは、なにかしら意味があるということ。それを自分なりに解釈して、咀嚼して、そうやって、ちゃんと“思ってから言う”ようにしました。
“ちゃんと生まれたものを大事”に、っていうのを、自分なりに悩んで考えてやってみて、やっと自分で、お芝居というものを掴めてきたのかなという感じがしています。
まだまだだとは思いますけれど、今回もそういう感覚でやれたので、よかったですね」

本当は「人見知り」だけど、それじゃ「もったいない」

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――山田さんはデビューから約5年経ちますが、イケメン俳優という括りをされる人がたくさんいる中、主演も任されて、役者としてここまで順調に進んできていると思います。
ご自分では、他の人と比べて、どこがよかったと思いますか?

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「なんだろうな……(しばらく考えて)。
“スーパー負けず嫌い”なところ

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「“あれ出られそうだったのに”、っていう作品に他の人が出ていたりすると、“ああもう、ムリ!!”って、もう、テレビを観られなくなっちゃうんです。
諦めてないんですよね。何もかもに。
過信じゃなくて、ちゃんと見て、“俺ならこうやる”、“やれる”っていうのが、なんとなくあるんです。周りからしたら、じゃあもっと上手くやれよって思われちゃうかもしれないですけど、根拠のない自信があるんだと思います」

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――その根拠のない自信って、生まれつき持っているものなのでしょうか?

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「いや、全然です。僕、本当に人見知りで、もともとはこんなにしゃべれないですしね。臆病だし、不安症だし、外に出たくないタイプだし……(笑)」

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――話していると、まったくそんな感じがしないです……!

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「もともと、すごく緊張するタイプなんです。わかってくれている人の前ならいいんですけど、“初対面なんて、絶対無理!”みたいな感じでした。今でもその名残はちょっとあるんですけど、昔は得意ではなかったんです」

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――ということは、この業界に入ってから、人との関わり方が変わったのでしょうか?

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「そうですね。コミュニケーションをとらないことが、もったいないと思ったんです。
もしかしたら、この現場でしか会えないかもしれないってなった時に、“あれ言っておけばよかった!”っていうのがいっぱいありました。
もっと話せばわかることもあるし、苦手だなと思っていた人でも、話してみたら全然そんなことなかった、ということもありますしね。
 
やっぱりこの世界は、その人のイメージというものがすごくあるじゃないですか。だからちゃんと言葉を交わすってことが、すごく大事だと思います。それは日常生活でもそうだと思うんですけどね。
もっと人を知りたいし、人を大事にしたい。その時にしゃべっている自分の感情が、お芝居に使えるかも、っていう風に思った時に、“ああ、どんどんしゃべろう”って思えました。
そもそも、本当は“宴会部長気質”なんですよね」

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――難しいですね(笑)。いじられキャラだし、宴会部長気質だけど、外に出るのが嫌で、人見知りという……。

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「なので、そういう自分の長所をうまく使って、短所はなるべく隠して……でも、ちゃんと認めて。
どうにか上手く人と接するっていうことをやっていけば、味方も増えてくれるんじゃないかなって思うんです。
それに、俳優をやらせてもらうようになってから、すごく人が好きになったんですよね。“どんなことを考えているんだろう”、とか、“何を思っているんだろう”、っていうのが、楽しい」

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――今まではあまり関わらなかった人とも話すようになったりしたのでしょうか?

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「男女問わず、ちゃんと人と接してみようって思うようになりましたね。芸人さんやアーティストの方とも友達になったりしています。
そうしたらちゃんと、自分の発する言葉にも真実味が出てくるのかなって思うんです。上辺で接するよりも、本気で語るっていうのを心がけていますね」

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――最後にメッセージをお願いします。

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「『闇金ドッグス2』は人間の汚い部分がリアルに感じられる映画だと思います。強い意志や逆境を跳ね返す力がないと痛い目にあうよっていう。そうした世界で安藤が絶対に負けじと生きてる姿を見せられたらいいと思っています。ずっと続けていきたいので、僕の成長と安藤の成長を楽しみにしてもらいたいです」

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冒頭で挙げた劇作家・前田司郎氏は、山田裕貴を主演に抜擢した舞台『宮本武蔵(完全版)』上演決定にあたり「イケメンもイケメンなりに悩んでいるのだなあ。顔じゃなくて芝居を見せたい」とコメントしている。

“イケメンなりに”という言葉をそのまま拝借してしまうのは若干失礼かもしれない。だが、人との距離の取り方から、現場のテンション、そして、その時間の自分を、後に演技に使うことまで……。取材という時間ひとつとっても、最大限に頭をフル活用させて動く俳優・山田裕貴は“考えるイケメン”であるような気がした。

(取材・文:チェリー編集部)

■ヘアメイク:仲田須加 スタイリスト:小田優士(Creative GUILD)
衣裳クレジット
・GDC
・Marbles
・DOWBL

■作品情報
『闇金ドッグス2』
4月9日(土)公開
出演:山田裕貴
青木玄徳、黒田大輔、菅野莉央、谷田歩、十貫寺梅軒
波岡一喜、伊藤裕子
監督:土屋哲彦
企画・配給:AMGエンタテインメント
(C)2016「闇金ドッグス2&3」製作委員会
公式サイト:http://yamikin-dogs.com/
twitter:https://twitter.com/yamikin_dogs
facebook:https://www.facebook.com/yamikin.dogs

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