ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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“可愛すぎる”JK監督が34歳の高校生を描く 松本花奈監督インタビュー

新人映画監督の登竜門としても名高いゆうばり国際ファンタスティック映画祭。
今年『脱脱脱脱17(ダダダダセブンティーン)』で審査員特別賞と観客賞を受賞したのが18歳の松本花奈監督だ。
松本監督はこの春、高校を卒業したばかりで、撮影当時は17歳の現役高校生。

中学生時代から映画を撮りはじめ、16歳の時に撮影した『真夏の夢』が昨年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映されたことで、映画監督としてのキャリアを本格的にスタートさせた。

かなり美人なこともあり、教室でも青春を謳歌していることが予想される松本監督。
しかし最新作『脱脱脱脱17』は、王道の青春リア充映画ではなく“34歳の男子高校生と17歳の女子高生が逃避行をする”という前代未聞の内容だった。二人の逃避行の行き先がストリップ小屋というのも衝撃的だったが、何よりストリップシーンでストリッパーのバストトップをしっかり映しているという大胆さにも驚かされる。
そんなギャップすさまじい松本花奈監督に『脱脱脱脱17』の現場と御本人についてインタビューを行った。

17歳が映すストリップ小屋

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――『脱脱脱脱17』は大人のスタッフの方を集めて撮られたのですか?

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「いえ、基本的には学生で6、7割が自分より1つ上の子たちです。照明と制作だけ大人の方に入ってもらいました」

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――二人旅の中盤、重要な行き先としてストリップ小屋が出てきたことに驚きました。

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「寺山修司さんの『書を捨てよ町へ出よう』を観てから、アンダーグラウンドな雰囲気に憧れがあったので、ストリップ小屋で撮影しました。
『書を捨てよ町へ出よう』にはストリップ小屋は出てこなかったんですけどね(笑)。
あと“高校生”と“ストリップ”という要素が普通は結びつかないからこそ合体させてみたかったんです」

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――17歳だとストリップ小屋にはなかなか入れないかと思うのですが、実際に取材で行かれたのですか?

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「もちろん、ストリップ小屋は、行ったことがなかったです。撮影することが決定した後、4回ほど行きました。
お客さんがヤジ飛ばしていることを想像して書いたのですが、実際の客席はシーンとしていてイメージと全然違いましたね(笑)」

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――ストリップ小屋の踊り子たちが大人数なのに、それぞれのキャラクターがどんな性格なのか一目で伝わってきました。あの個性の強さはどのように演出されたのですか?

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「実際に撮影したストリップ劇場で働いているストリッパーの方など、“演技をしなくてもいい、素の魅力”をお持ちな方が多かったので、“そのまんまの良さ”を活かせるように演出をしました。日本最高齢で72歳のSM女王様にも出ていただいています」

『脱脱脱脱17』で描かれた歪んだ大人たち

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―― “34歳の男子高校生と17歳の女子高生が逃避行をする”という異色の青春映画を撮ることになったきっかけを教えてください。

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「いちばん最初は『ボーイミーツガール』という、とてもありきたりな題名で、ただの高校生の男の子と女の子のラブストーリーを書いていました。でも執筆中にだんだんつまらなくなってきてしまって……(笑)。
逆に大人を主人公にした話をちょろっと書いてみたのですが、あんまり実感がわかなかったんです。
 
そこで『“高校生映画”と“大人の映画”を合体させてみよう!』と思って『脱脱脱脱17』の脚本を書きはじめました。
日常ではありえないことを映画ではやりたいと思っていたので、“17歳の女の子と34歳のおじさんが一緒に旅をする”という非日常的な作品を撮ることができてうれしかったですね」

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――『脱脱脱脱17』が高校生として撮った最後の作品になりましたね。

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「はい。『真夏の夢』でやり残した表現を、卒業する前に映画にしておきたかったんです。
17歳になる前に作りたかったという気持ちも題名に表れています」

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――今回はノブオをはじめとして“歪んでしまった大人のキャラクターたち”が印象的でした。

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「主人公のノブオに関しては、かなり自分を投影させています。
あとは 『先生らしくない先生がいてもいいのに』と普段から自分が思っていたので“生徒の目の前で女性の教育実習生にちょっかいをかけてしまう”男の担任の先生を登場させました」

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――34歳の高校生・ノブオ役を演じた鈴木理学さんの“純粋で青春まっただ中”な演技が素晴らしかったです。この役ができる人をみつけるのには苦労されましたか?

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「はい。まず最初にノブオと同世代の知り合いのおじさんにお会いしました。子供ぽさが欲しかったのですが、案の定、中身も34歳の方で……。
その後にちょっと大げさな演技をする方がいいなと思ったこともあって、舞台をやっている方を探していたら鈴木さんを見つけました。
はじめてお会いした時に、無邪気な雰囲気だったり、思い切りニコっと笑ったりするお顔が、まさに私がイメージしたノブオだったので即決してお願いしました」

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――鈴木さんには見ているこっちまでニコニコさせてしまう純粋さがありますよね。
他にも“身近な人に異常に執着する”リカコのお母さんが生々しくて実在感を強く覚えました。

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「リカコのお母さんほどではないですが、“ちょっと歪んでいる人”には会ったことがありまして……。その“ちょっとの歪み”を積もらせて、リカコのお母さんを描きました」

松本花奈を作った映画と本

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――松本監督に影響を与えた映画作品を教えてください。

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“くだらないことに本気な”映画が好きですね。
具体的には松居大悟監督の作品が好きです。違う監督ですけど、一番好きな映画は『横道世之介』ですね。昭和ぽい映画が好きなので」

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――『脱脱脱脱17』を観ると、平成の世ではなかなか見られないアングラ感も漂っていて「昭和ぽい映画が好き」なことが伝わってきます。
本もよく読まれるとお伺いしたのですが、御自身に大きな影響を与えた作品はありますか?

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「一番印象に残っているのは、映画化もされている『悪の教典』です。中3の頃に読んで、だーっと一気に読んでしまいました。
あと最近読んだ絵本なんですけど、『もう ぬげない』という絵本が好きでした。5歳の男の子の上着が脱げなくなってしまうという話です。いい意味でとてもくだらないので、是非皆さんに読んでいただきたいです」

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――絶対読みます! 本もお好きなのに、小説ではなく、映画を撮るという表現を選んだのはなぜですか?

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「映画は“一人で書いて、みんなで撮って、みんなで編集して、完成したものをみんなで観る”という一連のプロセスが魅力的だと感じています。人と接するのがすごく好きなので、自分一人で完結してしまう小説より映画の方が向いているのではないかと思いました。あとは単純に映画館がすごく好きなんです」

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――本作で大人のスタッフやキャストをまとめ上げた監督から“人と接するのが好き”と伺うと説得力があります。今後はどんな作品を撮っていきたいですか?

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「被写体として、男の子を撮っていきたいです。女子を撮ると自分を投影しすぎてしまって恥ずかしいので……。男の子はさらけ出しすぎないでちょうどいいんですよね」

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高校の教室、夜のプール、親と不仲な自分の家、ストリップ小屋。
それぞれの場所に漂う情感を、松本花奈監督は鮮度を保ったまま封じ込め、スクリーンに映し出す。
『脱脱脱脱17』に出てくる教室やプールの描写がまぶしく、そこに映る人たちが魅力的なのは、彼女が青春まっただ中にいる高校生だからではないだろう。
映画の舞台として選んだ場所の持つ空気、そこで生活をする人たちの機微を精度高く読み解き、映像に昇華させる能力を持つ映画監督だからだ。
“女子高生映画監督”という小さい肩書きで見られなくなった彼女が、歳を重ねるにつれて何を選び、どんなドラマを映すのか。
自由になった実力派映画監督から目が離せない。

(取材:霜田明寛 小峰克彦 文:小峰克彦)

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■『脱脱脱脱17』作品情報[監督・脚本・編集]松本 花奈
[企画]直井 卓俊
[プロデューサー]上野 遼平
[撮影・グレーディング]林 大智
[照明]陸浦 康公
[録音]浅井 隆
[美術]藤本 カルビ
[音楽]the peggies
[キャスト]鈴木 理学 北澤 ゆうほ 祷 キララ■MOOSIC LAB 2016 関連イベント

MOOSICO2
【日時】4月17日(日)OPEN:17:30/START:18:00
【場所】ロフトプラスワンウエスト(大阪府大阪市中央区宗右衛門町2-3 美松ビル3F)
【TALK】直井卓俊(MOOSIC LAB主宰)、酒井麻衣監督(いいにおいのする映画)、松本花奈監督(脱脱脱脱17)、藤村明世監督(見栄を張る)、田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)映画チア部、祷キララ(女優・『脱脱脱脱17』出演)
前売:¥1,800/当日:¥2,000(飲食代別)

MOOSIC LAB 2016 KICK OFF PARTY!
【日時】5月7日(土)OPEN:12:00/START:13:00
【場所】新宿ロフトプラスワン(東京都新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2)
【LIVE】神宿、北澤ゆうほ(the peggies)
【TALK】直井卓俊(MOOSIC LAB主宰)、酒井麻衣監督(いいにおいのする映画)、松本花奈監督(脱脱脱脱17)、伊藤祥監督(愛のマーチ)、中山剛平監督(神宿スワン)、青木克齋監督(最低で最悪な最高)、北原和明監督(フェスティバル)、幸洋子監督&食品まつり(電気100%)、山田佳奈監督(夜、逃げる)etc.
前売:¥1,500/当日:¥2,000 ※要1オーダー(500円以上)※前売券は4/9(土)よりe+にて発売

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