ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

神木隆之介×入江悠 “わかりづらいもの”への対峙の仕方

1999年にドラマデビューし、俳優としての存在感をどんどんと増している神木隆之介。そして、2009年に『SR サイタマノラッパー』が注目を集め、この2~3年、『日々ロック』(14)、『ジョーカー・ゲーム』(15)とどんどんと商業映画をおくり出している監督・入江悠。

その2人がタッグを組んだ……! 原作は 2011年に上演された劇団「イキウメ」の舞台『太陽』。2014年には蜷川幸雄演出、綾野剛&前田敦子出演の『太陽2068』としても上演された話題作だ。批評性も高いこの作品に、監督・入江悠、主演・神木隆之介コンビはどう挑んだのか……!?

そこで、映画『太陽』の公開を前に、この2人の対談を企画。お互いに持っていた印象から、この作品への対峙の仕方、今後の展望など、たっぷりと語り合ってもらった……!

入江→神木「こんなにやりやすい人がいるんだ」

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――まずは入江監督から、神木さんに持たれていた印象を教えてください。

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入江「『妖怪大戦争』くらいから見てますからね……。僕なんかよりも先輩というか、色んな監督とお仕事されていて、色々な演出の良いところも悪いところも知っているんだろうな、と。プロデューサーから『神木くんぐらい人柄が良い俳優さんはいない』と言われていましたしね」

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――そして実際、お仕事をされてみてどうでしたか?

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入江「こんなにやりやすい人がいるんだ……と感じましたね。この役に関して、全面的に神木くんを信頼できました。神木隆之介という人が感じたものがそのまま出てくれば、この映画にとっては良いはずだ、という確信が持てたんですよね。
 
だから、具体的なロケーションを決めて、俳優さんが揃ったら、後はじっと観察する感じでした。こんなことが起きたら、神木くんが演じる鉄彦は『どういうリアクションするんだろう?』『どういう風に動くんだろう?』ってワクワクしながら待っている感じですよね。修正をする、という感じではなく“見ていられる”という感じでしたね」

神木→入江「長回しで撮影をする監督、という印象でした(笑)」

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――神木さんは、入江監督にはどんな印象を持たれていましたか?

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神木「長回しで撮影をする監督、という印象でした(笑)。『SR サイタマノラッパー』を観させていただいて、長いシーンがいっぱいあって。今回の台本を読みながらも、『ここが長回しなのではないかな』と予想して読んでいたのですが、撮影に入ると、予想外のところが長回しでした(笑)」

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――実際に長回しの撮影を経験されていかがでしたか?

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神木「長回しのシーンを観ている時も、すごく臨場感を感じるんです。でもそれ以上に演じている時に臨場感があるんです。切らないからこそ、肌に痛々しく相手の感情が伝わってくるんです。
 
状況が一秒ごとに変わっていくので、登場人物の感情の変化を肌で感じられるんです。相手の心が動いた瞬間が、ちゃんとわかるというか、それに共感したり、感化されたりするんです。もちろん、その相手の感情の変化についていけない瞬間もあります。だから、お芝居というよりも人間対人間という感じで、すごくスリルがあるんです」

叫ぶだけはダメ 神木流“怒る演技”

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――痛々しいくらいの感情、という話で言うと、ある悲劇的なシーンで、神木さん演じる鉄彦が怒りを爆発させているところが印象的でした。

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入江「じだんだ踏んでたよね。じだんだ踏むって、多分脚本にもなかったし、僕自身、生でじだんだを踏んでる人を初めて見ました(笑)」

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神木「あれだけ怒っていたら、手を出したいはずなんです。あのシーンは、近くにフェンスがあったのですが、わざわざフェンスまで行くと、間が空きすぎる。そうすると、地面しかないと思ったんです」

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入江「おおー、なるほど」

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神木「どう怒るかというのはやっぱり考えます。ただ怒鳴り散らして叫ぶだけでも、意味が無いというか、逆に軽いだけになってしまいますよね。迫力があればいいわけでもなく、どういう怒り方なのか、ということが問題だと思います。特に鉄彦の怒りを表現する時は、ただ怒るだけではないだろう、と考えていました」

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入江「じだんだも脚本には書いてはいなかったけれど、それが不正解ってことはないですからね。僕が考えていたタイミングとは違う、くらいのことはあっても、神木くんの解釈が違うってことは多分ないだろうと、撮影前から思っていました。完成したものを見ても、いまだに新しい発見がありますよね」

入江映画は「言葉にできないものをやりたい」

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――神木さんの演技はもちろんですが、作品自体が、色々な解釈ができるタイプの作品でした。

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神木「今の僕にとってこの作品を理解するのは、かなり難しいと言っても過言ではなかったです。作品が完成して、観させていただいた時に感じた以上のことを、感じられるようになるのは、まだまだ先だろうな……」

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入江「僕も近いですね。でも今回は、それぞれの俳優さんが感じたことが、もし別々の方向を向いていてもいいんだろうなと思っていました。だから、あえて神木くんも含めて、作品の解釈など、突っ込んだ話はしないまま撮影に入っていきましたね」

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――解釈の統一を、言葉で事前にしなくても大丈夫、というジャッジはどうしてされたのでしょうか?

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入江「この映画に限らず、よく『この作品で何を伝えたかったんですか?』というのはインタビューで聞かれたりしますよね。でも僕は、映画では言葉にできないものをやりたいと思っているんです。言葉にできるってことは、それを文章にして書けば伝わるじゃないですか。でも、そういった文章やラブレターで書くような、言葉では伝わらないものを映画では作りたいんです。だから、この映画は描こうとしているものがすごく豊かなので、一言で言えない、というところにすごく魅力を感じていたんですよね」

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「古舘寛治さんは仲の良い先輩という感じ」

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――さて、後半では、他の出演者の方のお話を伺えればと思います。
神木さんと古舘寛治さんは映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』に続いての共演ですね。

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入江「今回の撮影が『TOO YOUNG~』のあとだったんだよね。古舘さんが『また神木くんと一緒にできるんだよー』ってめちゃくちゃ喜んでいて。子どもみたいに(笑)」

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神木「今回の撮影では、ご飯の時も、待ち時間もずっと一緒にいました。僕にとっては仲の良い先輩という感じです」

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――お2人はどんな話をされるんですか?

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神木「たわいもない話がメインです(笑)。『古舘さん、ケータイ替えればいいじゃないですか』『いやいや違うんだよ、俺のこだわりは』『僕のケータイ見てください』というような感じで……」

古川雄輝は別次元の人

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――劇中では、神木さん演じる鉄彦が憧れる森繁富士太役を演じられた、古川雄輝さんはいかがでしたか?

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神木「一目見た時に、絶対この人は頼りになる人だ、と思いました。すごく優しくて、博学で、僕とは真逆のテンションの方なんです。別の次元の人と会話をしているような(笑)。でも、似た空気がないからこそ、鉄彦として憧れられたんだと思います」

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――劇中でも、人種が違いますもんね。鉄彦は“キュリオ”と呼ばれる旧人類で、森繁は“ノクス”と呼ばれる新人類です。

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神木「無機質で人間離れしているノクスという人種の役柄に、すごく合っていたんです」

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入江「彼はプライベートでも何をしているのかが全く読めない人だよね」

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神木「わからないですよね。『古川くん家のイス、磁石で浮いてるんじゃない?』っていう感じの(笑)。椅子しかない白い部屋に住んでいるイメージです」

神木隆之介は恋愛モノをしてみたい!?

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――それでは最後に今後、やってみたいことなどあれば教えてください!

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入江「でも、神木くんはもうやってないジャンルとかなさそうだよね」

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神木「それが、ひとつだけ、大きく欠けているものがあるんです……」

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入江「え、なになに?」

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神木「ラブストーリーです」

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入江「あれ、ラブストーリーはやってないの?」

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神木「ラブストーリーがメインのものはないんです。映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』もラブストーリーではあるのですが、地獄がメインのお話なので(笑)」

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入江「まあ、確かにかなり変化球だよね」

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――では、恋愛中心のものをやってみたい、と。

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神木「そうですね。昔で言うと『恋空』とか、最近で言うと『黒崎くんの言いなりになんてならない』のような恋愛系の漫画原作は、あまりやらせていただいたことがないんです」

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入江「普通、逆だよね。地獄行ったりしないで、先に恋愛するよね(笑)

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――入江さんはやってみたいジャンルなどありますか?

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入江「僕はSFが好きなんで、やってみたいですね。ハリウッド映画には多いですけど、日本映画でSFはすごく少ないと思うんで……。パニック映画とか、宇宙人が攻めてきたり、地球が滅亡するようなものをやりたいですね。SFという意味では『太陽』は僕にとって入り口だったのかもしれません」

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神木「いつしか監督がラッパーとなって攻めこむとか……」

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入江「いやいや、そんなスキルはないです(笑)」

長いキャリアにも関わらず、過去の作品もハッキリと記憶していて、サービス精神たっぷりに語ってくれた神木隆之介さん。そして、絶大な信頼をおいて、優しくそれを見守る入江監督。『太陽』は、監督の語るように、言葉にしづらい作品である。これを“わかりづらいもの”という言葉にしてしまって切り捨ててしまうことは簡単だ。だが、2人はそれぞれのアプローチでこの『太陽』に真剣に対峙した。そして対峙の仕方は違えど、入江監督が「神木くんの解釈が違うことはないと思っていた」と語っているほどに、土台となる信頼が大きいことを、取材中に幾度も感じることができた。映画『太陽』は2人の信頼関係が結実し、確かな存在感を持った映画として僕らの前に現れてくれている。

(取材:佐藤由紀奈・霜田明寛 文:霜田明寛 写真:浅野まき)

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■作品情報
『太陽』 角川シネマ新宿ほか 公開中
©2015「太陽」製作委員会
原作:前川知大「太陽」  脚本:入江悠、前川知大
監督:入江悠
主演:神木隆之介、門脇麦
古川雄輝 綾田俊樹 水田航生 高橋和也 森口瑤子
村上淳 中村優子 鶴見辰吾 古舘寛治
2016年/日本/129分/5.1ch/ヨーロピアン・ビスタ
配給: KADOKAWA
公式サイト:eiga-taiyo.jp

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