『日本で一番悪い奴ら』イベント  客席の元受刑者からの熱いメッセージが飛び出す

「日本警察史上、最大の不祥事」と呼ばれている、実際の事件をモチーフにした映画『日本で一番悪い奴ら』が6月25日(土)から公開される。

本作は北海道警察の刑事・諸星(綾野剛)が、警察社会で結果を出すために、でっちあげ・やらせ逮捕・おとり捜査・拳銃購入・覚せい剤密輸など、あらゆる悪事に手を汚していく、ハイテンション青春犯罪ムービー。

本作の公開に先立ち、監督の白石和彌と、『凶悪』に引き続き『日本で一番悪い奴ら』でも音楽を担当している安川午朗がApple Store銀座開催の“Meet the Filmmaker”に登場した。
かねてから『日本で一番悪い奴ら』の取材を行ってきた編集部としては、見逃せない「“日悪”裏方対談イベント」に潜入!

会場がApple Storeということもあり、会場には関連製品を手に持ったスタイリッシュなAppleユーザーの姿が。一方、映画ファンと思しきもっさりとした人々も来場し、満員の中、イベントがスタートした。

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綾野剛「加齢臭を作るために焼き肉を食べて歯を磨かない」

白石監督の口から、“綾野剛に対する世間のイメージ”を揺るがす、仰天エピソードが飛び出す。
一人の人間の20代~50代を演じた綾野は、中年時代を演じる前日は、加齢臭を発するために焼き肉を食べて、翌朝は歯を磨かず、あえてにんにく臭いまま現場に来ていたという。

白石監督は「映画を観ると、彼の役作りが生きていると感じてもらえると思います。『歯垢がほしい』とずっと言っていましたから。普通なら思いつかない発想ですよね(笑)」と座長の役者魂をうれしそうに語っていた。

安白石和彌と安川午朗の出会いは石井隆監督の現場

前作『凶悪』が映画賞28冠に輝き、スターキャストが揃った『日本で一番悪い奴ら』の公開が迫っている、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍をしている白石監督。

そんな彼も20代の頃は、制作進行として、『GONIN』シリーズなどで知られる石井隆監督の現場で豚汁を作ったり、お弁当配りをしたりと演出とは直接関係のない仕事をしていたそう。
当時、石井監督の劇伴を担当していた安川もよく現場に来ており、白石監督の仕事であるお弁当配りを手伝っていたという。

その頃、白石監督から「いつか、映画を撮る時、安川さんに音楽をやっていただきたいです」と頼んでいたそう。
そのお願いに対して、「撮る機会があったら言ってね。何も考えないで頼んでくれていいから」と安川は返し、今日にいたる約束をしていた。

数年後、白石監督がデビュー作『ロストパラダイス・イン・トーキョー』を撮ることになり、あらためて音楽を頼まれた時のことを安川が振り返る。
「白石くんから『ギャラは5万で……』とか言われて、『いらないよ、ギャラなんて!』と言いましたね(笑)。脚本も相当面白かったんですよ」と付き合いの長さと信頼感を感じる、心あたたまるエピソードを披露。

『犯罪者の脳の神経には、絶対にノイズが流れている』

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会場には、新人刑事時代の諸星が、ヤクザ社会に飛び込む覚悟を決め、闇社会の人々に名刺を配りまくるシーンの劇伴が流れる。

そこで、本作の音楽に関して安川は「稲葉さん(※本作の原作者で、モチーフとなった稲葉事件の中心人物)から当時の写真を見せていただき、青春を謳歌しているようにしか見えなくて驚きました。撮影の時に、白石監督が『この映画は犯罪者の青春ムービーなんですよ』というキーワードをくれたので、そのテーマを元に音楽を作り始めたんです」ときっかけに触れる。

次に話は前作『凶悪』の音楽の話にも及ぶ。白石監督が「安川さんに、音楽を作ってもらおうと思い、『凶悪』のオールラッシュ(※音楽のついていない、映像素材を繋げたもの)を観てもらったんです。観終わったら、外でものすごい勢いでタバコ吸いはじめて……その時に、安川さんから『時間をくれ』と言われました。その日から1、2週間後に連絡がきたのですが、その間、安川さんはずっとノイズを作っていたそうなんですよ。『犯罪者の脳の神経には、絶対ノイズが流れているはずだ。その音を探していた』というんです」と映画ファンにはたまらない、劇伴の制作裏話を披露。

銀行強盗がシートベルトをする時代のエンターテイメント

『日本で一番悪い奴ら』には、新人時代の諸星が、犯人を乗せた逃走車を追いかけるシーンで、助手席に座る先輩から「シートベルトする刑事がどこにいるんだよ!」と怒鳴られるくだりがある。

そのシーンのネタバレをした白石監督が「いまは銀行強盗もシートベルトをしないといけない時代なんで」と昨今の表現規制を揶揄するジョークを言うと、会場にその日一番の爆笑が起きる。

しかし白石監督は続けて「いや、バカにしているわけではなくて、みんな悔しい思いをしてるんだろうなと思ったんです」と話し、「クリエイターはみんな振り切りたいんですよ。でもテレビや映画がどんどん当たり障りのない表現になっていく傾向にあるので、環境がそれを許さない。でも、クリエイターには勇気を持って表現をしてもらいたかったので、このシーンを入れました」と同業者へのエールを表明した。

「刑務所でも『日悪』を流して欲しい」元・受刑者からのお願い

質疑応答のコーナーでは、ある男性が「今からここに居る皆さんをびっくりさせることを言うんですけど……」と立ち上がり、「僕、先月末まで刑務所入っていたんです」と口をひらく。そこで白石監督が、この方を沈黙にさらしてたまるか、と言わんばかりに食い気味に「はい」と相槌を打つ。

元受刑者の男性は続けて「こういうジャンルの映画は刑務所内では、国が見せないようにするんですが、僕はあえて『日本で一番悪い奴ら』のような作品を、反面教師的な意味でも、見せたほうがいいと思っています。監督からぜひ、刑務所にプレゼンをお願いします」と発言。

そんな申し出に対し白石監督は「刑務所に限らず、世の中がインモラルなものに蓋をしがちになっている。でも、不道徳なものを見ることは、道徳を学ぶ上で必要だと思います。両方知った上で、どう判断させていくのかが教育だと思います。
ただ、この作品が刑務所内の教育によい影響を与えるかは、作った私としても分かりません(笑)。でも、かけあってみますね」と返し、和やかな雰囲気の中、イベントが終了した。

「僕は刑務所に戻る人間を減らしたい」

編集部の記者が、イベント後、質問をしていた元受刑者の男性に直撃した。
「6年間刑務所に居たので、浦島太郎状態なんです」と笑っていた彼に、先ほどの勇気ある行動について聞くと、「前科を持った人は立ちションベンをしただけでアウト。すぐに逮捕されます。普通の人が何となく許されていることが、僕達には許されないんです。そんな外の世界に馴染めない前科者も多く、刑務所を出た4割の人間は再犯を犯して、塀の中に戻ってしまいます。僕は刑務所に戻る人間を減らしたい。そのために見たこと、聞いたことは、多くの人に伝えたいですし、そのためになんでもやって行きたいです」と志を打ち明けてくれた。

「前にこのイベントの告知を見かけて、今日はどうしても来なきゃいけない気がしたんです。映画も必ず観ます」と彼自身、本作の公開を待ちわびている様子だ。
公開前にも関わらず、ルールやモラルだけでは救いきれない感情を動かしはじめている『日本で一番悪い奴ら』は、6月25日(土)より全国ロードショー。

(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)

■関連リンク
映画『日本で一番悪い奴ら』
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」(講談社文庫) 1月15日発売
監督:白石和彌 脚本:池上純哉  音楽:安川午朗 主演:綾野 剛
企画:日活・フラミンゴ 製作:日活 配給:東映・日活
(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会 www.nichiwaru.com 公式twitter:@nichiwaru

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