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オタクほどじゃないけど何かにハマる女子 その心理を「セーラームーン」から読み解く

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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このコーナーでは、深く広がる愛でもって、“何か”にハマる女子を「オクウ(ヲク)」と名付け、紹介していきます。
*「オクウ(ヲク)」の意味についてはこちらから

今回は、女子たちにとっても伝説的な「好き」の対象である「セーラームーンヲク」について!

女子が愛してやまない「セーラームーン」の魅力とは

『美少女戦士セーラームーン』。言わずと知れた、日本を代表するコンテンツなわけですが、生誕20周年を迎え、ここ数年大きな盛り上がりを見せています。
そもそも、“セーラームーン世代”と言われる今のアラサー世代においては、セーラームーンが好きじゃない女子の方が少ないかもしれませんが、それでも中には、「ちょっとその愛、すごいね!!」と、こちらが圧倒されてしまう程にセーラームーンを愛している女子が存在します。
ここであらためて、女子をトリコにし続けるセーラームーンの魅力とは何なのか?
「セーラームーンヲク」に教えてもらいました。

「セーラームーンヲク」に聞いてみた ~その1~

まずは29歳・小売業勤務のSさん。
六本木ヒルズで開催されていた『美少女戦士 セーラームーン展』帰りのタイミングでお話を聞かせてくれたのですが、「当時自分が遊んでたおもちゃも展示してあって、懐かしかった!」と興奮気味(?)に、こちらの画像を送ってくれました。

sailormoon02

しかしSさん、意外にもセーラー戦士で特別好きなキャラはいないそうです。
なぜなのか? それもまた、ひとつのオクウの愛の形なのか? 聞いてみました!

セーラームーンで好きなキャラクターは……いない

私も戦いたい!! 二面性のあるキャラが好き

interviewer

――ではまず、好きなセーラー戦士を教えてください!

oku01

「絶対聞かれると思ったんですが、いないんですよね〜……。言うなれば、“箱推し”です。他の作品でもそうなんですが、私の場合、自分を投影できたり、似ていたりするキャラか、もしくは憧れのステータスを持っているキャラを盲目的に好きになるんです。セーラー戦士には、それに当てはまるキャラがいないんですよね。わたしにとってリアリティがないキャラ設定なのかな……? でも、大好きなんですけどね。不思議!」

hosoku

セーラームーン世代の女子たちには、たいてい「一番好きなセーラー戦士」がおり、「誰が好きだったか」の回答次第で、その人の幼少時代やパーソナルな部分を読み取ることができるという、いわば世代間共通の特技があるのだ!
(例:セーラームーンが好きな子は主役をやりたい目立ちたがり屋、セーラーマーキュリーが好きな子は優しくておっとり系が多く、セーラーマーズが好きな子はハイヒールやセクシーさに憧れていた子が多い……など)
Sさんのように、「特別に好きなキャラはいない」というセーラームーン世代の女子は珍しい。

interviewer

――つまり、みんな同じくらい好き、ということですか?

oku01

「うさぎちゃんとレイちゃん(※)が僅差で一歩前ですが、基本は同じぐらい大好きかと! うさぎちゃんはやっぱり、美少女戦士セーラームーンの主役であり、象徴なので。レイちゃんは、なんですかね〜。……あ、さっき言った、“似てたり憧れたりする”のが、レイちゃんかもしれないです。黒髪ロングで、いじわる言うけど、友達のこと考えてて……みたいなところが。私も好きな人ほどいじわる言う方なので(笑)。レイちゃんで言うと、北極での“じゃあ、ちゃちゃーっとレイちゃん、やっつけてきまーす!”(※)が、レイちゃんの性格を物語っていて、一番好きです!!!!!!」

※うさぎちゃんとレイちゃん…月野うさぎことセーラームーン。火野レイことセーラーマーズ。

hosoku

(※)は、セーラームーンのアニメ第45話のエピソード。
セーラー戦士5人は敵との最終決戦に向かっていくが、一人、また一人と、次々と仲間たちが倒されていってしまう。最後に残ったのが、セーラームーンとセーラーマーズ。自分もつらいのに、「セーラームーンを守る」という使命感を胸に、泣きじゃくるセーラームーンの手を引き進むセーラーマーズ……。セーラームーンを勇気づけるため、最後まで“セーラーマーズらしく”強く気高い女性として気丈に振る舞い、最後の敵に向かっていくのであった……!という、セーラームーンの中でも屈指の号泣エピソードです。

interviewer

――ちなみに、Sさんが憧れるステータスを持ったキャラクター、というと?

oku01

「生活に二面性があるキャラが好きですね。他の作品ですけど『BLEACH』の一護(※)みたいなキャラ。高校生活もあるけど、内緒で死神もしないといけない、みたいな設定に憧れます。だから変身モノは好きなのかも! セーラームーンは、誰が好きというよりも、中学生がセーラー戦士として戦うというストーリー自体が好きですし、“変身モノ”+“戦う女の子”だから、余計にですかね~。私も戦いたい!

※BLEACH…久保帯人による漫画。『週刊少年ジャンプ』にて連載中。主人公の黒崎一護は、高校生であり、死神でもある。

interviewer

――戦いたい!! ……誰とですか!?

oku01

「悪と?(笑)」

セーラームーン世代が生まれる心理的メカニズム

ボーイッシュな子も、ドリーミングな子も、あの頃みんな“少女”だった

interviewer

――では“変身モノ”で見た場合、セーラームーンにしかない魅力ってありますか?

oku01

「やっぱり世界観ですかね〜。なんともいえない、武内直子(※)が作り出す、あの世界観がいいです!」

(※)武内直子…『美少女戦士セーラームーン』の原作者。

interviewer

――“世界観”について、ちょっと疑問に思っていたことがあるんですが……。セーラームーンが好きな子って、ボーイッシュなファッションをしている子もいるし、必ずしも、あのドリーミングな世界観が好きな子、というわけではないと思うんです。それでも個人の趣向に関わらず、みんながあの世界観が好きだと言うのは、女子たちにとって共通の魅力があるってことなんだと思いますか?

oku01

「ボーイッシュだとか、ドリーミングだとか、個人的な趣向が形成される前に見ていたアニメだから、ですかね? いわゆる“セーラームーン世代”と言われる子たちは、当時小学校低学年で、中学生や大人に対しての憧れが反映されているものだから……ではないかと。当時、中学生以上だった人たちは憧れという目では見てはいないから、そこまでドハマリしないのかもしれません」

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interviewer

――確かに……! 先ほどSさんが“憧れのステータスを持つキャラクターを盲目的に愛する”と言っていましたが、それで言うと、当時の小学生にとっては、セーラー戦士自体が“おしゃれで強いお姉さん”という憧れのステータスだったわけですもんね。しかも何気に、麻布に通う中学生だし!!

セーラームーンから広がる愛

愛するが故に、その対象が広がっていく「オクウの愛」。セーラームーンきっかけで広がった愛について聞いてみました。

ずばり、宇宙!!

oku01

「ずばり、宇宙ですね! セーラームーンって、戦士は太陽系の惑星の英語名じゃないですか。で、そこから、星座とかギリシャ神話とかに飛び火して、今日に至ります。部屋のコーディネートは宇宙をイメージしてるし、JAXAの講演とか聞きに行くし。天文宇宙検定3級(※)もとりました。宇宙系のイベントがあれば、友達と一緒に参加してます!」

hosoku

※天文宇宙検定・・・天文・宇宙に関する日本の検定試験ですが、公式ページを見てみると、こう書いてありました。
「天文宇宙検定は、単に知識の有無を検定するのではなく、“楽しく”、“広がりを持つ”、“考えることを通じて何らかの行動を起こすきっかけをつくる”検定でありたいと願っています」
……えっと。具体的にどういうことかはわかりませんでしたが、なんだかすごく「オクウの愛」っぽいコメントだと思いました!!

ちなみにこちらが、宇宙をイメージしたというSさんのお部屋のカーテン。

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そしてこちらが、天文宇宙検定3級の合格証書。メーテル……っ!!

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一応、知らない人のために補足しておきますと、メーテルは漫画・アニメ『銀河鉄道999』(松本零士原作)に登場する美女。
セーラームーン、宇宙、アニメ、メーテル……と、なんだかいろんな要素が絡み合っていて、これまた「オクウ」な愛の広がりを感じさせるのであります……!

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「セーラームーンヲク」に聞いてみた ~その2~

つづいて、2人目のセーラームーンヲクは、29歳・WEBデザイナーのYさん。
彼女は子どもの頃からセーラームーンが好きだったものの、当時はお母さんから怒られるので、こっそり隠れて漫画を読んでいたそう。そんな抑圧の時代の影響もあってか、大人になってから生誕20周年で上演された2013年のミュージカルを観に行き、セーラームーン愛が再熱した模様(ちなみに彼女は「テニミュヲク」(※)という一面も)。

※テニミュ…ミュージカル『テニスの王子様』の略。

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そんな彼女の過去と今のセーラームーン愛の広がりを聞いてみます!

セーラームーンのココが好きだった!

科目ごとに守護キャラクターを決めていた

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「小学生の頃、セーラー戦士5人それぞれの下敷きを、5種類ずっと持ち歩いていました。“次は○○ちゃんの時間だ~”って感じで、それぞれの教科の守護星というか、守護キャラクターのようなイメージでしたね。国語=赤=マーズ、算数=青=マーキュリーというように、教科のイメージカラーとセーラー戦士のカラーを合わせていました。うさぎちゃんは万能で、なんでも!みたいな。でも下敷きとして使うことよりも、とにかく持っていることが幸せで……。実際はセーラー戦士の下敷きとは別に、汚れてもいい普通の無地の下敷きを使っていたような気もします(笑)」

hosoku

若干、話は脱線しますが、「教科ごとのイメージカラー」って、なんとなく共通の認識としてある気がします。教科書やノートの色がそうだったからかもしれませんが、国語は情緒的な詩や文学を学ぶ教科だから、暖色の赤、算数は冷静に思考する教科だから寒色の青……といったように、内容に合わせたイメージができるのは、ヲクたちにも通ずるものがあるかもしれません!

interviewer

――下敷きを使わずに、ただ眺めていたんですか? 何がそんなに“綺麗だ”と思わせたのでしょう?

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「たぶん、5人全員が揃っているのが好きだったんです。下敷きの他にも、単行本カバーのイラストを5人分切り取って、カードのように持ち歩いていて。それを並べては眺めていましたね~。セーラームーンの影響からか、同じ形で色違いっていうものを集めるのが大好きでした。色鉛筆とか、糸とか、ボタンとか……。糸とか何に使うでもないのに……謎ですよね。でもセーラー戦士がみんな好きだったから、何でも5色揃えたかったんです」

セーラー戦士の魅力を語る!

レイちゃんは「自分がなりたかった女性像」

interviewer

――ちなみに、セーラー戦士では誰が好きでしたか?

oku02

「子どもの頃は、レイちゃんが好きでした。綺麗で気高くてかっこいいイメージで、自分がなりたい女性像に近かったんだと思います。凛としていて精神的に自立していて、他の戦士よりも大人びた印象でした。巫女さんっていうのも特別な感じがしてましたね」

大人になってから気づいた、まこちゃんの魅力

interviewer

――なるほど~! じゃあ今も変わらずレイちゃん推しなんですか?

oku02

「でも大人になってから見返すと、まこちゃん(※)がすごく魅力的に思えてきて! 子どもの頃に見えていたまこちゃんって、身長が高くてパワーも強いけど、中身は乙女で初恋の先輩の面影を追い続けていて……小さい頃の自分のなりたいイメージ像とは遠く感じていたんです。
 
自分の身長が高くなかったのもあって、私はそっち側じゃないなと。乙女っていうよりはかっこいい女性になりたいと思っていたし……。フリフリとか乙女っぽいモチーフをあえて遠ざけていた子だったんです。でも大人になってから“セラミュ”で“ユウ ジュピター”(※)を観たら、“まこちゃんってこんなに可愛かったっけ……!?”となり(笑)。みんなを守ってくれる“まもちゃん”(※)を、私が守りたい!みたいなのが、かわいすぎて……!」

※まこちゃん…木野まことこと、セーラージュピター。
※ユウ ジュピター…2014年のミュージカル『美少女戦士セーラームーン -Petite Étrangère-(プチテトランエール)』で、モデルの高橋ユウが、セーラージュピター(木野まこと)役を演じた。
※まもちゃん…地場衛(ちばまもる) こと、タキシード仮面。通称まもちゃん。

interviewer

――子どもの頃からすると、憧れる女子像が変わったってことでしょうか?

oku02

「小さい頃は憧れが強くて“なりたい!”が先行していましたが、今は“なりたい!”の他に“友達になりたい!”とか“見守りたい!”とか、そういう気持ちも生まれました。大人になっても、絶対にセーラー戦士の誰かにはその思いを投影できるので、そこで“ああ、どの子もかわいいいんだな……”って、あらためて気づけたっていうか」

人生経験を積んだら、うさぎちゃんの偉大さに泣けた

interviewer

――「みんな違って、みんないい」みたいな?

oku02

そうそう! そうなんですーーー! 結局、みんないいんです!! 漫画も今あらためて読み返すと、うさぎちゃん以外の4人って、すごく心に傷を抱えていて、それをつなげてくれるのがうさぎちゃんで……うっ(泣)」

interviewer

――ちょっと泣きそうになってますが、具体的にどんなところにグッとくるのでしょう……!?

oku02

「小さい頃、自分は人の輪の中にいるうさぎちゃんにはなれないと思っていたんです。それに、いつもはドジなのに、最後は強くて主人公でいいなぁって羨ましい気持ちもあって。でも今は、色々なコミュニティを経験してきて、自分が一人で寂しい時に声をかけてくれる子がいたらとても嬉しいし、その一言って難しいんだなと気づいたんです。いるだけで周りを明るくしてくれるのって才能なんだな、と。
 
他の4人はうさぎちゃんにはできないことができるけど、うさぎちゃんみたいに周りを明るくしたり、人をつなげたりするのは少し苦手だったからこそ、心からうさぎちゃんを大事に思っていたんだな……ということが、やっと大人になって実感として分かりました。……うう、泣けるッ!

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interviewer

――うんうん! わかります! 「みんな違って、みんないい」なんて、子どもの頃は「?」というか、いろんな人間関係を経験しなくちゃ実感できないですもんね~……。でもその多様性の素晴らしさみたいなものって、例えば“○○レンジャー”とか、キャラクターがたくさん出てくる他の作品には感じないのでしょうか?

oku02

「みんな違って、みんないい、という点では同じだと思います。でもセーラームーンは、“普通の制服をきた女の子たちが戦士になって戦う”っていうところに憧れがあるんだと思います。戦隊モノを見ても、戦隊に加わりたい!とは思わないけど、セーラー戦士にはなりたい!って思います、私は(笑)

セーラームーンから広がる愛

愛するが故に、その対象が広がっていく「オクウの愛」。セーラームーンきっかけで広がった愛についてYさんにも聞いてみました。

惑星、宝石、洋服、キラキラ……

oku02

「セーラームーンを読んで、惑星とか、宝石に興味を持つようになりました。“何かが視えます”みたいなスピリチュアルなことはあまり信じないんですが、宝石や鉱石には力があるって言われると、そうなのかも……!と思います。本物の鉱石じゃなくても、ビーズを買ってきてイヤリングにしたりしていますね。
 
あとは服やドレスを見ていると、これはうさぎちゃんぽいな、とかこれは亜美ちゃん(※)ぽいなって、勝手に脳内で着せ替えしたりもします。そういえば小さい時、セーラームーンの着せ替えブックが特に大好きだったなあ~……。あと“月”とか“ハート”とか、そういうキラキラした単語を聞くと、どうしても反応してしまうのは、セーラームーンの影響だと思いますね~」

※亜美ちゃん…水野亜美こと、セーラーマーキュリー。

ちなみにこちらが、実際にYさんが持っているというジュエリーや石。ガ、ガチの水晶じゃないですか……!

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「セーラームーンヲク」の愛をまとめてみる

と、いうことで! 今回のヲクのケースをまとめてみます。

<2人の共通点>
・セーラームーンの世界観が好き!
 
・セーラー戦士になりたい!
 
・セーラー戦士は、結果、みんな大好き!
 
・セーラー戦士つながりで、惑星関連も好きになっちゃう!

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女子の“好き”は果てしない――。
次はどんな○○ヲクの心の中が明らかになるのか!?
こうご期待!

(文・イラスト:佐藤由紀奈)

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