ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第十一回 「夢を諦めたくなるウンコの話」【お悩み相談⑤】

 世の中の様々な事象を下半身に絡めて語るこの連載も2016年の最後の回になりました。来年も続くのでしょうか。ドキドキですね。さて、今回もお悩み相談をしてみたいと思います。29歳・OLのMさんから年下の彼氏についての相談メールをいただきました。

【お悩み】「彼氏に歌手をやめて欲しい」

 「(前略)私の彼はアルバイトをしながら平井堅さんのような歌手を目指しています。(中略)ただ、彼はもう27歳ですし、カラオケで聞くと確かに歌はとても上手いのですが、彼の作るオリジナル曲に関しては、詞も曲もどこにでもある歌にしか聞こえません。しかし私は歌を評価する知識もセンスもないので、はっきりと才能ないと思う的なことも言いづらいです。とにかく彼に歌手を諦めさせる方法はないでしょうか?

 えー、まず以前のお悩み相談で、売れない役者の方からの「いつまで役者を続けるべきか?」というお悩みに答えているのでこちらも参考にしてください。

才能ある人は辞め時を見失いがち

 似たような相談ですが、今回の方が難しいですね。彼が「他人から反対されても夢を追い続ける」ということを美談と捉えるタイプの場合、さらに難易度が高いです。しかも彼は“歌はとても上手い”とのことで、こういったそれなりに才能があるという人は辞め時を見失いがちです。また、あなたに歌を評価するセンスがあるかどうかに関わらず、才能云々の話は「俺とお前は価値観が違う」と言われるだけだと思います。
 とにかく彼自身の判断基準で“辞める”と思ってもらえるほうに誘導するヒントを与えるしかありません。

 ※以下、食事中以外の時に読み進めてください。

ウンコ経済

 そのヒントのひとつとして「ウンコ経済」というものをご提案します。
 世の中にはスカトロというジャンルがあるのは、Mさんもご存じだと思います。私が某エロDVD配信サイトで軽く調べた範囲だけでも、今月125本のスカトロDVDの新作が発売されています。平均単価が5千円、全てのDVDが1本しか売れてなかったとしても、今月ウンコに対して約65万円のお金が動いたことになります。もちろん、それぞれのメーカーが制作にかかったお金を回収して次々と新作を出している現状を踏まえると、各タイトルにつき1本しか売れてないということはありえないので、実際の売り上げは月650万、いや6500万、もしかして……と、ウンコ経済への想像はどんどん膨らみます。
 とにかく、ウンコ経済として推測される最低額の月65万以下の金額しか稼いでいない歌手は、もうウンコ以下といっていいでしょう。ウンコほどの価値もない歌を歌う、スカトロよりマニアックな歌手です。

“ウンコ以上か以下か”

 これはお金を基準にした話なので、「お金のために歌っているわけじゃないから」と彼氏は言うかもしれません。その通りだと思います。金を稼ぐからいい歌なわけではもちろんありません。
 「どんな性癖も俺は尊重する。故にどんなに俺の歌がマニアックでも尊重しろ」と言うかもしれません。その通りです。
 「スカトロでもそんなに稼げるなんて夢があるな。俺の歌も負けてられないぞ〜!」と言うかもしれません。その通りです。
 彼が何を言おうが構いません。Mさんは、その日はそのまま帰りましょう。同居してるなら寝てしまいましょう。深夜、彼氏は一人になって思うでしょう。

 「俺の歌はウンコほどの魅力もないのか……」

 彼の基準の中に“ウンコ以上か以下か”という項目が自然と作られるでしょう。彼は毎日ウンコをする度に自問します。「俺の歌はこのウンコよりも人を惹きつけることが出来ているのだろうか?」

 そうした自問の中で、彼氏が今まで以上に歌に奮起するかもしれません。それはそれでいいでしょう。私は夢を追いかけることを否定はしません。
 少し現実を受けいれて、歌手を目指しつつも、就職してくれるかもしれません。いいことだと思います。サラリーマンでも夢は追うことはできます。夢は現実といくらでも併走できるという話は、まぁすると長くなるし、今回はまだ夢と現実の二択で悩んでいる世代の話なので、この話はまだしません。
 落ちこんできっぱり歌手の夢を諦めるかもしれません。Mさんが一番求める結果です。ウンコ以下の彼を、しっかりと支えてあげてください。歌以外の部分に、ウンコ以上の魅力がきっと沢山あるでしょう。

世の中にあるほとんど全てのものが愛の対象

 結論は急ぐ必要ありません。
 彼もあなたもウンコとその愛好者について今までになかったほど考えてください。そうすることで“世の中にあるほとんど全てのものが愛の対象である”ということに気付くでしょう。
 それに気付いた後であらためて身の回りの世界を見た時、彼は「歌よりも愛する夢」を見つけられるかもしれません。あなたは「いつまでも売れない彼」を愛することが出来るかもしれません。今の「夢と現実の狭間でちゅうぶらりんの関係性」こそを愛することになるかもしれません。
 その全てが愛すべき選択になり、その結果起きる物事の全てが愛おしい人生のピースになるのです。
 
 「毎朝自分の身体から一番愛するモノが出てくるんだぜ! 俺は愛の生産者さ!」

 どこかでスカトロマニアがそんな風に叫んでいます。 
 さぁ、あなたも負けていられません。

 全ての選択を、愛と共に。

(文:福原充則 イラスト:佐藤由紀奈)

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