ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第16回「かつてSMAPと呼ばれた男たち2017」

 思えば、2016年のテレビ界はいろいろありました。
 まず、ベッキーを襲った文春砲に始まり、朝ドラ『あさが来た』(NHK)の21世紀の同枠最高視聴率の更新、『報道ステーション』(テレビ朝日系)と『笑点』(日本テレビ系)の主役交代劇に、10月からは「日曜ゴールデン戦争」が勃発。暮れにかけてはドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の大ヒットに、こちらも文春砲に見舞われた『輝く!日本レコード大賞』(TBS系)の大ピンチ。極め付けは大晦日の『NHK紅白歌合戦』の疑惑の紅組勝利――etc.

 中でも、最もインパクトが大きかったのは、やっぱりSMAPの解散でしょうね。1月の解散報道スクープ直後に5人が生出演した『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の視聴率は31.2%。これ、2016年で『紅白』に次ぐ数字だったんですね。そして、12月26日に同番組は20年9カ月の歴史に終止符を打ったけど、920回に及ぶ全期間の平均視聴率は18.2%、最高視聴率は34.2%(ちなみに稲垣吾郎の復帰回)。こんなオバケ番組、後にも先にもありません。

 そんな次第で今回は、「かつてSMAPと呼ばれた5人の男たち2017」と題して、5人の新たなる第一歩に光を当てつつ、各々の番組を検証したいと思います。
 ――と、その前に、まずは前回実施したアンケート「あなたの2016テレビの記憶」の結果発表から進めていきます。しばし、そちらにお付き合いを。

「2016テレビの記憶」6位発表!

 前回のアンケートの内容は、「あなたにとって、2016年で最も印象に残ったテレビ番組とその理由を1つだけ教えてください」というものでした。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。
 では、まずは6位の発表から始めます。え? 随分、中途半端だって? まぁ、要は投票数が1票の番組がたくさんあったんです。とはいえ、どれも皆さん、熱い思いばかり。僕のコメント付きで紹介したいと思います。

6位(1票)

『逃げる女』(NHK)

「大御所・鎌田敏夫さんの重厚な作品でハラハラしながら見てた。毎回鎌田さんは名言を残してくれる。今回は“人はそれぞれの価値観を持って生きている”でした。」

昔から「鎌田サンが書くNHKの土曜ドラマにハズレなし」と言われてましてネ。同ドラマも期待通りの秀作でした。個人的には、仲里依紗サンの憑依的な演技に引き込まれましたね。あれはすごかった。

6位(1票)

『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)

「こんなにも気持ち悪くなくノウハウ本がドラマ化されたことはなかったから。」

水野敬也サンの著作『スパルタ婚活塾』を原案に、金子ありさサンがステキな連ドラに脚色した、いわゆるハウトゥドラマ。中谷美紀と藤木直人が自然に演じられたのがよかったと思います。ちゃんと物語が転がっていましたね。

6位(1票)

『万年B組ヒムケン先生』(TBS系)

「悪意を持って誠実に素人と向き合うスタイルが日村さんの実直さと重なっていた。」

僕も大好きな深夜番組です。レギュラーが日村サン、小峠サン、三四郎の小宮サンと、みんな、世のイケてない人たちにやさしいのがいい(笑)。

6位(1票)

『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)

「裏方の仕事で決して目立たないんだけれど、世の中を影で支えているすべての人々への応援歌的なテーマに感動した!!」

日テレ水10らしいクオリティの高いドラマでしたね。一般に、連ドラで出版モノって当たりにくいんですが、これは「校閲」という仕事を発見したのが勝因に。加えて、日陰のポストが組織を動かす、いわゆる『ショムニ』的な王道フォーマットもよかった。もちろん、石原さとみサンも素敵でした。

6位(1票)

『ちかえもん』(NHK)

「今年のNHKドラマは当たりが多かったけど、これからの時代劇の新たな道筋を示したという点で、この作品の意義は大きい。」

近松門左衛門が「曽根崎心中」を発表するまでのいわゆる前日譚(エピソード0)を創作も交えてドラマ化したもの。『ちりとてちん』の藤本有紀サンの脚本で、同ドラマで向田邦子賞を受賞。まさに、時代劇の新たな可能性を見せてくれましたね。主演の松尾スズキさんの演技も光りました。

6位(1票)

『重版出来!』(TBS系)

「古風な役柄がピカイチの黒木華さんが現代劇でもあの可愛らしさ!低迷する出版業界が枠組みを取っ払って番組に協力した背景も好感。」

小学館の人気コミックを名人・野木亜紀子サンが珠玉の脚色。黒木華サンがハマり役でしたね。オダジョーもいつものスカした役じゃなくて好感が持てました(笑)。小学館だけじゃなく、ライバルの講談社や、ロケで使われた三省堂書店の本店など、出版業界全体の協力体制も素敵でした。

6位(1票)

『クイズ スター名鑑』(TBS系)

「タレント名鑑時代から視聴率は良くなかったけど、復活を待望している視聴者からの声が大きくなったのかまさかの復活。」

TBSの至宝・藤井健太郎サン演出の伝説の番組が名前を変えて復活! とはいえ、日曜ゴールデン戦争に巻き込まれ、視聴率は思いのほか苦戦中。裏の『日曜もアメトーーク!!』と視聴者層が被っているような……。面白いだけに、もったいないですね。

6位(1票)

『プリンセスメゾン』(NHK-BSプレミアム)

「ひとりで生きることを真摯にだけど楽しく描いたドラマは初めて。出演者が歌う演出と選曲センスも良かった。」

森川葵と高橋一生の名優2人ががっぷり四つ。連ドラでは珍しい「家探し」をテーマにした秀作でした。NHKのBSは時々、こういう神ドラマを作るから油断できません(笑)。

6位(1票)

『江戸川乱歩短編集Ⅱ』(NHK-BSプレミアム)

「明智小五郎役に女性の満島ひかりをキャスティング。低予算ながら前衛的な映像で実写化しました。」

「D坂の殺人事件」や「心理試験」など、乱歩マニア垂涎の初期短編集のドラマ化。とはいえ、明智役に満島ひかりを当てるなど、普通じゃない作り。演出に賛否両論ありましたが、これはこれでありだと思いました。

6位(1票)

『ハロウィン音楽祭2016』(TBS系)

「スタッフがちゃんと遊んでるのが伝わる番組。」

出演ミュージシャンたちが全員、仮装しないといけない“縛り”が痛快でしたね。一夜限りで復活した『ザ・ベストテン』も最高。肩に力が入りすぎず、かといってふざけすぎず、丁度いい塩梅だったと思います。2回目もありそう。

6位(1票)

『徹の部屋』(AbemaTV)

「お酒を飲みながら、Twitterでも時間を共有できる生番組は今後たくさん出てくるだろうと思う。」

幻冬舎の見城徹サンがMCを務めるトーク番組。日曜夜ならではのお酒も入った大人テイストが持ち味ですね。秋元康サンや林真理子サンなど、見城サンの幅広い人脈から呼ばれるゲストが、下手な地上波の番組より豪華(笑)。

6位(1票)

『フリースタイルダンジョン』(AbemaTV)

「ヒップホップの“ドープ”な世界を身近なものにした。」

あの人気の深夜番組が、いつの間にかAbemaTVでも見られるようになっていたとは、僕も知りませんでした。なんとウィークデイに、1日2回の再放送。これはファンにはありがたい。

 ――以上、6位の発表でした。皆さん、なかなか熱い思いだったでしょ?
 では、続いて5位から2位の発表です。あなたにとって、2016年で最も印象に残ったテレビ番組とその理由は――?

「2016テレビの記憶」5位→2位

5位(2票)

『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)

「会話の内容とテンポの良さに毎回圧倒された。ゆとりって一括りにして馬鹿にしちゃいかんて。」

脚本・宮藤官九郎。僕は2016年でベスト3に入る傑作だと思います。主役3人(岡田将生・松坂桃李・柳楽優弥)の台詞がとにかくリアル。特に柳楽クンが珠玉でしたね。ゆとり世代ど真ん中の新入社員を演じた太賀の演技も最高(笑)。女優陣も、安藤サクラをはじめ、ぱるるや吉岡里帆も“攻め”の芝居。もっと視聴率が取れてもよかったと思います。

3位(3票)

『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)

「石田ゆり子(アラフィフ)の圧倒的な破壊力。」
「久しぶりにラブコメ見ました。今そうだよなとおしゃれ感。」

野木亜紀子サン脚本の社会派ラブコメ。もう説明はいりませんね。登場人物に誰一人として悪人がいない――それでもちゃんと物語を作れることを証明しました。それができたのは、作り手一人一人に高い志があったから。だから、普段はテレビを見ない若い人たちも、たくさん見てくれました。そして、役者陣も最高。主役のガッキーは抜群にキュートだったし、相手役の星野源も絶妙のハマり役。何より、石田ゆり子サンが同ドラマで再評価されたのがよかった。これが2016年の何よりの収穫(笑)。「ドラマのTBS」の復活を印象付けた、間違いなく2016年のナンバー1ドラマだったと思います。ドラマもまだまだ捨てたもんじゃない。

3位(3票)

『あさが来た』(NHK)

「百年後(現代)に生きる女性が活躍出来る礎を作ってくれた百年前の女性の物語に、転職活動中勇気づけられました。」
「この番組が始まった時、丁度入院した時期で前半クールは殆ど病室で視聴してました。退院後もずっと視聴、元気で過ごせたのはこの朝ドラのお陰です。」

個人的には2016年のナンバー2ドラマだと思います。過去の朝ドラをリスペクトしつつ、“江戸時代スタート”というチャレンジングな試みも。天真爛漫でありながら、深い芝居ができる主役の波瑠をはじめ、玉木宏やディーン・フジオカなど、脇の役者さんもみんなよかった。それもこれも、大森美香サンの珠玉の脚本があったから。21世紀の朝ドラ最高視聴率も納得のクオリティでした。

2位(4票)

『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)

「最終回の最後の最後まで、被災地への震災復興支援の呼び掛けをしていたからです。風化させてはいけないと強く思います。」
「20年以上続いたテレビのバラエティの中でポジティヴで楽しい番組だったから。」
「(最終回)スマスマの最後をどう見せてもらえるのか、単なる思い出だけで終わってしまうのかをずっと息を詰めて見ていました。」
「ずっと持ち歌を歌わせてもらえない中で、歌に乗せた感情が伝わるのをはっきりと感じました。セットも照明も素晴らしかった。」

2016年のテレビ界はSMAPに始まり、SMAPに終わったと思います。同番組は、まさにその象徴的存在。20年以上もプライムタイムで高視聴率を維持した番組なんて、日本のテレビ史上、他に類がありません。今では当たり前の、アイドルが料理やコントに挑戦する流れを作ったのも、この番組から。また、ハリウッドスターなどの海外セレブが来日して出演する番組としても貴重な存在でした。まさしく日本を代表するテレビ番組だったと思います。感謝。

 ――以上、5位から2位の発表でした。さて、いよいよ1位の発表。となれば、残るは、あの番組しかありません。あなたにとって、2016年で最も印象に残ったテレビ番組とその理由は――?

「あなたの2016テレビの記憶」第1位

1位(5票)

『真田丸』(NHK)

「面白い大河は以前もあった。ただ最終話まで、脚本、役者、音楽その他スタッフのクオリティが高く、上田をはじめ地域一丸となり、主要人物以外も視聴者に愛された…」
「出演者の出る別の番組のネタ込みでTwitterで盛り上がる事も多くて本当に楽しかった。伊賀越えを逃げ恥に重ねたりねw」
「毎回テレビの前で笑ったり泣いたりうなったり、とても楽しめたから。」
「スタッフワークは言うに及ばず、それを基礎にSNSや登場人物ゆかりの地を巻き込んだ「視聴者との共犯関係」の構築が抜群に巧かった。」
「最後にオープニングきたやつ。SNSで盛り上がれたのもいい。昔はテレビ見た次の日にその話題とかになるけど、今はテレビの話はしないし。共有できるのがTwitterになった。」

三谷幸喜サン渾身の脚本。時に筆が滑りすぎてコメディに走ることもあったけど、総じてクオリティが高かったと思います。特に物語の前半、草刈正雄サン演ずる真田昌幸が実質的主役だったパートは、近年の大河に類を見ない神脚本でしたね。それと、やはり珠玉は44話の「築城」の回。物語のラスト、堺雅人演ずる真田幸村(信繁)が「決まっているだろう、真田丸よ!」と発した後、タイトルが出てオープニングが始まる神演出は、まさに鳥肌もの。SNSもその瞬間、沸騰(笑)。あのアバン・タイトルをやりたいがために、第1話からアバンを入れなかったという、三谷サン流の壮大な伏線でした。

 ――という次第で、以上、昨年暮れに実施した「あなたにとって、2016年で最も印象に残ったテレビ番組とその理由は?」のアンケートの結果発表でした。

 さて、少々前置きが長くなりましたが、いよいよここからが今回の本題、“かつてSMAPと呼ばれた5人の男たち”の2017年の第一歩。そこに光を当てつつ、各々の出演番組を検証してみたいと思います。

先方はやはりこの男、稲垣吾郎

 2016年12月31日をもって解散したSMAP――。
 年が明けて、最初にドラマ出演を果たしたのは、やはりあの男でした。かつてSMAPの中間管理職と呼ばれた、稲垣吾郎である。

 時に、1月6日23時15分。林真理子原作ドラマのSP版『不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~』(テレビ朝日系)がそう。稲垣の役は、栗山千明演ずるヒロインの前の夫。大手金属メーカーの営業部課長でありながら、極度の潔癖症とマザコンという、典型的なダメ男の設定だ。だが、このダメっぷりが実にいいのである。
 昨年のレギュラーシーズンの頃は、同じ役でもまだミステリアスな芝居をしていたものの、このSPになると、もはや針を振り切ったように、珠玉のコメディーリリーフへ。子作りのためにピンクのパジャマを着こなしたり、市原隼人演ずる音楽評論家の通彦にパンチを食らって鼻血を流したりと、もはやそこに、往年の国民的アイドルの面影はない。そう、これこそが、役者・稲垣吾郎の強みである。

 思い返せば、SMAPのメンバーで、最初に連ドラにメインの役どころで出演したのも、稲垣吾郎だった。
 時に1989年4月3日、NHK朝ドラの『青春家族』がそう。彼が演じたのは、清水美沙演じるヒロインの弟役で、当時、SMAPのメンバー全員がオーディションに臨み、彼に白羽の矢が立ったのだ。

 あれから28年――今や主役のみならず、脇役としても活躍する。そう、稲垣吾郎という俳優は、日本が誇る貴重なバイプレイヤーでもある。
 SMAPで最初に連ドラで顔が売れた彼だが、ひょっとすると――かつてSMAPと呼ばれたメンバーの中で、最後までドラマで活躍し続けるのも、彼かもしれない。

作り手たちが最も使いたい役者、草彅剛

 俗に、今、テレビドラマの作り手たちが最も起用したい役者が草彅剛といわれる。それは、「草彅剛」というフィルターを通すことで、作りたいドラマの幅が広がるからである。その現象は、かつて音楽業界で、名うてのミュージシャンたちがこぞって山口百恵に楽曲を提供したがったこととよく似ている。山口百恵というフィルターを通すことで、創作の幅が広がるという理由だった。
 そう、俳優・草彅剛――。彼の強みは、まさにその役の幅にある。人のいい青年からクールな刑事、自閉症の青年から天才的知能犯まで、まるで役に憑依するかのように、どんな難役も演じてしまう。

 この1月クールの『嘘の戦争』(フジテレビ系)もそう。海外帰りの凄腕詐欺師の役だが、実にいい。アイドル出身で、これほどヒール役が似合う役者も珍しい。
 同ドラマはそのタイトルが示す通り、2015年1月クールの『銭の戦争』に続く「復讐」シリーズである。カンテレの制作で、演出・三宅喜重&脚本・後藤法子の座組は前作と同じ。それだけに前作同様、抜群に面白い。
 その反響は数字にも表れている。初回視聴率は11.8%。これ、同枠の前クール『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』の初回値より3ポイントも上がったんですね。昨年、年間通じて1つも平均二桁に乗せた連ドラがなかった今のフジを思えば、大健闘でしょう。続く2話・3話とも二桁を維持しているのが、何よりも物語る。

日本の深夜番組は中居正広でできている

 このごろ、とみに感じることがある。それは、深夜にボーっとテレビをつけていると、やたら中居正広MCの番組に出くわすのだ。
 事実、月曜日は『Momm!!』(TBS系)、火曜日は『中居正広のミになる図書館』(テレビ朝日系)、水曜日は『ナカイの窓』(日本テレビ系)と、中居クンがMCを務める番組が3連チャン。局はバラバラだが、いずれも深夜23~24時台の番組。そして――どれもバツグンに面白いのだ。

 『Momm!!』は、かつてはミュージシャンをゲストにトークする番組だったが、今や歌自慢の素人オーディション番組に様変わり。ルールは、歌ってる途中で観覧席の100人がもう聴きたくないと思ったら、強制終了するシステム。歌自慢が集う番組のMCを中居クンが務めてる時点で、もう面白い。
 『中居正広のミになる図書館』も色々変遷があって(バラエティ番組はそういうものです)、現在は、ゲストが実践する健康法や美容法を専門家が判定する番組になっている。中居クンの役割は、10人近くいる出演者たちの回し役。これが実にうまい。
 『ナカイの窓』も、毎回、テーマに応じた複数のゲストとのフリートークを通して“核心”に迫るというもの。時に自虐ネタも交えつつ、これも回しの天才・中居正広の真価がいかんなく発揮される番組だ。

 いずれの番組にも共通するのは――とにかく「滑らない」こと。ここで忘れてはならないのは、彼はお笑い芸人ではなく、アイドル出身なのだ。そして、これも大事な要素だが、中居正広というMCの存在が、番組を女優やミュージシャン、アスリートもゲスト出演できる、ワンランク上の存在へと押し上げているのだ。だから巷の深夜番組と違い、ついつい見続けてしまう。

 そう、日本の深夜番組は中居正広でできている。

“普通の人”目線になれる、香取慎吾

 香取慎吾といえば、やはり2001年から続く長寿番組『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)ということになる。同番組は、流行りものや、今“来てる”現象をマーケティングの視点から紹介する構成。若い女性視聴者を意識して作られており、とにかくスタジオセットやVTRのセンスがいい。なんたってナレーションは、生ける音楽DJの神様、小林克也である。
 そして、何より珠玉なのは、この番組における香取慎吾の立ち位置。いかに普通の人になれるか――そこなんですね。知らないことは知らないと言い、お笑い芸人のような過度なリアクションは控え、イマイチならイマイチ、感動すれば感動したと、ありのままを口にする――一見、誰にでもできそうだが、普通、芸能人は自分を高く売ろうとするもの。その点、香取慎吾という男は、臆せず普通になれるのだ。

 よく、彼は感性の人といわれる。事実、趣味の画家としての腕は一級品だし、初期の頃に出演した野島伸司脚本のドラマ『未成年』では、難しい役どころの知的障害者の“デク”を見事に演じた。「BISTRO SMAP」における恒例の“おいしいリアクション”も、彼ならではのライブ・パフォーマンスだ。
 だが、僕は一方で、彼をかつてSMAPと呼ばれたメンバーの中で、最も“普通の人”目線に近づける人だとも思っている。メンバーを代表して、SMAPのコンサートの演出を担当してきたのも、誰よりもファンの目線に近づけるからである。

 恐らく――今回の自分たちの解散におけるファンの「スマロス」を最も痛切に感じているのは、彼じゃないだろうか。
 それだけに今年、アーティスト・香取慎吾がどんな道へ歩み出すのか、目が離せない。

スター木村拓哉の宿命

 最後に、木村拓哉である。
 言うまでもなく、日本のドラマ史上に輝く大スターである。フジテレビの『HERO』(1stシーズン)の全話30%超えは、彼にしかできない偉業だ。
 そんなスターがSMAP解散後に最初に選んだドラマが、TBS日曜劇場の『A LIFE〜愛しき人〜』である。意外にも、彼にとって初の医療ドラマだ。

 さて、その内容――。キムタク演ずる主人公の沖田一光は、10年間アメリカのシアトルで修業して、一流の腕を身に付けた天才外科医。初回、柄本明演ずる院長が心臓疾患で倒れ、その手術のために颯爽と凱旋帰国する――。
 この時、僕は「あーこりゃドクターXと同じだわー」と危惧したが、意外にも沖田は最初の手術で失敗する。米倉涼子演ずる大門未知子の決め台詞「私、失敗しないので」と違ったのだ。
 僕は感心した。「なんだ、キムタクやるじゃん!」

 医療ドラマは、要は人間ドラマである。それは、かの田宮二郎の遺作となった『白い巨塔』の時代からそうで、同ドラマは大学病院を舞台にしながら、そこに描かれたのは医者という“人間”だった。主人公も医療ミスをするし、人間的な弱さもある。その意味で、同じく医療ドラマの初回にキムタクに失敗させた橋部敦子サンの脚本は見事だったし、それを受け入れたキムタクも素晴らしかった。

 僕は、キムタクドラマが成功する鍵は、何より彼の立ち位置にあると思ってる。要は、スーパーマンとしてセンターに君臨するよりは、ちょっと屈折していて、脇にいる方が似合うということ。そして派手なオモテ舞台を嫌い、職人に徹する。例えば、『HERO』がその典型だ。そして、今回の『A LIFE~美しき人~』もこのパターンに入る。そう考えると、同ドラマが面白くないわけがない。

 なんたって、脇の俳優陣も素晴らしい。竹内結子、浅野忠信、松山ケンイチ、及川光博、木村文乃――皆、ピンで主役を張れる逸材ばかり。ともすれば多牌になりがちだけど、それをまとめ上げるのは、やはり橋部サンの脚本の力だろう。
 この中でも特に見逃せないのが、松ケンと木村文乃の2人である。松ケンは同ドラマのいわば“裏主人公”。今後、彼が医師として成長する姿が描かれるはず。そして、ちょっとサバけた木村文乃の使い方もバツグンにうまい。

 ――以上、2017年。かつてSMAPと呼ばれた男たちは“5者5様”のスタイルで歩き始めた。
 1つ確かなことは、これまで同様、この5人抜きで日本のテレビ界は成り立たないということ。そして今年も――この5人から目が離せないということ。

 5人に、エールを。

(文:指南役 イラスト:高田真弓)

ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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