ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

女優・桜井ユキ“自分への夢の言い聞かせ方”

女優・桜井ユキ 映画初主演!

女優・桜井ユキ。近年では、フジテレビ系ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』や園子温監督の映画『リアル鬼ごっこ』で強烈な存在感をしめし、徐々に活躍の幅を広げてきた。そして、10月21日(土)公開の『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTYリミット・オブ・スリーピング ビューティ』で、ついに映画初主演を飾ることとなった。

女優を目指す主人公オリアアキを演じ、恋人役・カイトを演じるのは高橋一生。さらには満島真之介や成田凌も出演、監督を務めるのは、今回が商業デビュー作となる1991年生まれの新鋭・二宮健という布陣だ。

前身のサイト時代も含めると、当“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”2回目の登場となる桜井ユキさん。人生に強い意志をもって、今回30歳を迎えての初主演作まで突き進んできた彼女に、これまでを振り返りながら最新作の魅力について語ってもらった。

ときどきよぎる“女優の道を進まなかった自分”

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――映像の美しさもさることながらセリフのひとつひとつも美しい映画でした。桜井さんに響いたセリフはありましたか?

桜井「監督が書かれたセリフは、ひとつひとつ響くものがありました。どれかあげるなら、高橋一生さん演じるカイトの『それでも世界は、素晴らしい。』っていう言葉ですね。映画自体のコピーにもなっちゃってますけど……。ただ『世界は素晴らしい』のではなくて、『それでも』がつく。すごく好きな言葉です」

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――きっと桜井さんが『それでも』にあたる人生経験を積まれてるからより響くんですかね。桜井さんが演じられたアキも女優を目指していて、『それでも世界は、素晴らしい。』と言ってもらえるまでの『それでも』にあたる部分が劇中で描写されています。

桜井「アキは10代の頃に女優を志して、でもしばらく何も行動できない日々が続きます。誰しも、そういったもどかしい段階というものはあって、私もその気持ちはよくわかります。私自身は、23歳の頃女優を志して、行動をすることができましたけど、行動できなかった自分を考えるとちょっとゾッとしますよね」

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――ときどき“今の道を選んでなかった自分”がよぎることもあるんですか?

桜井「そうですね。色々なことが消化されないまま歳を重ねていった自分を考えることもありますし、それでゾッとすると同時に、お芝居と向き合ってよかったなと思います。アキも女優として売れる前と売れた後では別人物だと思って演じましたが、やっぱり人はどの道に進むかで人間性まで変わってきてしまうと思うので」

「戻りたい過去は…ない!」

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――ちなみにアキは劇中で“過去の一番幸せだった瞬間”に飛ばされます。桜井さんが過去に飛ばしてもらえるとしたら、飛ばしてもらいたい地点はありますか?

桜井「うーん……ここで面白い答えができればいいんですけど……。私、本当に戻りたい過去がなくて。今も日々楽しいですし、20代前半からは、歳を重ねるごとに幸せになっているんですよね。もちろん、“もう一度会いたい人”とかはいますけどね。できるなら過去になんて戻りたくない……って言い方をすると後ろ向きに聞こえちゃうかもしれませんけど(笑)。前向きな意味で、私に“戻りたい過去”はない!……ですね」

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――ちなみに『叶った夢を持続させなきゃいけない』というセリフもありましたが、今のその楽しさが持続しないんじゃないかと不安に駆られたりすることはないですか?

桜井「状況って良くも悪くも続くものではないと思ってるんですよね。だから、ポイントで捉えないようにしていて、変化が起きることへの想定と覚悟はしていますね。それは不安という意味ではないけれど『続くものなんだ』とは思わないようにしています」

年齢を重ねることで無意識につくられる“リミット”

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――そうして年齢を重ねてこられて、今回初の主演映画に。監督の二宮健さんは桜井さんより年下です。年下の監督とのタッグというのはいかがでしたか?

桜井「私たちって、歳を重ねるごとに、無意識に守りに入ってリミットをつくっている部分があると思うんです。色々な制約や人の目を気にして、自分でリミットを設けて、その手前で何かを抑えてしまっているというか。二宮監督は、そのリミットを、若さのエネルギーで跳ね除けているような感じがしました。常識にとらわれないで、自分のみたいものをただただ純粋に表に出していく感じが、この作品にもあらわれているのではないかと思います」

フラットでいてくれた高橋一生

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――そして共演は、高橋一生さんです。どんなコミュニケーションを取られましたか?

桜井「高橋さんとは、役について話たりすることはなかったですね。どこのラーメン屋が美味しいとか、そういう会話をしていて(笑)。ずっとフラットでいてくださるので、とても演じやすかったですね」

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――高橋さんと2人のシーンで好きなシーンはありますか?

桜井「なかなか選べないですけど……ひとつあげるなら、アキがカイトに『私の夢は女優』と打ち明けるシーンです。アキはあのとき初めて人に自分の夢を打ち明けて、カイトに受け入れてもらえる。現場で私自身も、すごく幸せな感覚になりました

夢は自分に言い聞かす

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――夢を言って、それを受け入れてもらえる人に出会えたという素晴らしいシーンですよね。ちなみに、桜井さん自身は、自分の夢を周りに言えるタイプでしたか?

桜井「バンバン言ってましたね(笑)。誰かに知ってほしいというよりも、自分の中にあったから、口に出して発信してた、というくらいの感覚ですけど」

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――それに対しての周りの反応はいかがでしたか?

桜井「親を含めて『へーそうなんだ』くらいに聞き流してたんじゃないですかね(笑)。私も周りの反応は全く気にしてなくて、自分に言い聞かせてたんだと思います。自分の中に溜めておくよりも、他人に対して言うことで、言ったからにはならなきゃみたいな感覚も生まれますしね。私意外と頑固なんですよ(笑)。振り返ってみて、口に出すって大事だなとは思いますね」

“引き返す自分”を見たくない

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――逆にアキには、女優という夢に対して立ちはだかってくる人もいました。桜井さんにもそういう経験はありましたか?

桜井「アキと形は違えど、やっぱりこのお仕事をやる上での、壁となるものは存在しますよね。それは人に限らず、状況だったりもしますけど、もちろん私にも壁だらけの時期がありました。なんとなく地上を見上げながら、体は泥に浸かっている感覚というか」

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――その壁ってどういう気持ちで乗り越えてきたんですか?

桜井「それが原因で、くじく自分が嫌なんですよね。何かが起こったことで、引き返す自分を見たくないんですよね。一度引き返してしまったら、ずっとそこに縛られて、泥の中で身動きがとれなくなってしまう気もして」

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――桜井さんは引き返さずにここまで進んでこられました。

桜井「徐々に、ですけどね。何か自覚しているターニングポイントのようなものがあるわけではなく、作品に対してただただホントに必死にやってきただけなんです」

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――泥の中に浸かっている感覚の人は多くいると思います。最後にそういった人に桜井さんなりのアドバイスがあれば教えてください!

桜井「まずは、今ある環境から出ることじゃないでしょうか。浸っている方がラクだったり、出ることを阻もうとする人もいたりすると思うんです。私も後ろ髪をひかれるような出来事もありましたけど、そういった出来事も全部おいて、地上に出る決意をするというか。何かを持ちながら地上に上がるということは、できない場合もあると思うんです。そういうときは何かを置いていく覚悟、というのも必要なのかなと思います」


強い言葉だが、柔らかい表情で、真摯に語ってくれた桜井ユキさん。彼女がさらに飛翔する未来が、一瞬見えた気がした。

(取材・文 霜田明寛)
(photo:yoichi onoda)

【関連情報】
映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』
10月21日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:アーク・フィルムズ
Ⓒ2017 KingRecords
【出演】
桜井 ユキ
古畑 新之、佐々木一平、新川 將人
成田 凌、山谷 初男、満島真之介
高橋 一生

原案・脚本・監督:二宮 健

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