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本田哲也氏がカンヌ2018に見た、インフルエンサーマーケティング成人式

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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広告、マーケティングに関わる者であれば、毎年のカンヌ・ライオンズ関連ニュースを気にしないわけにいかない。たとえ自分自身が賞レースに関わっていなかったとしても、これからの広告やマーケティングのあり方におけるヒントがたくさん詰まっているからだ。特に今年は、カンヌは大きな変革期を迎えたという声も多い。

PR部門の審査員経験を持つ、ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長・本田哲也さんに、今年のカンヌでひと際注目を浴びた“インフルエンサーマーケティング”の観点から振り返ってもらった。

“インフルエンサー”が正式なテーマとして採用された初年

――“インフルエンサーマーケティング”という観点で見た時に、今年のカンヌはいかがでしたでしょうか。

「すでに色々なメディアなどでも報道されていることですが、カンヌのアワードは今年から大きく刷新されました。ちょっと拡大しすぎだよねという世界的な批判を受けて、部門数を減らし、会期も8日から5日に縮め、スリム化の再構築を図ったんです。その中で、9つのトラック(カテゴリー)が新たに設定されています」

――REACH、COMMUNICATION、CRAFT、EXPERIENCE、INNOVATION, IMPACT、GOOD、ENTERTAINMENT、HEALTHの9つですね。

「この9つのトラックの中に26のライオン(部門)があるのですが、実は”REACH“の1つとして、初めて“Social&Influencer”というのができたんですよ。これまでもインフルエンサー絡みのエントリーやセッションはたくさんありましたが、独立した扱いではなかった。それが初めて、カンヌとして正式に主要テーマとして扱った訳ですから、大きな変化です」

トップ企業が鳴らした“インフルエンサーへの警鐘”

――このような扱いになった背景としては、世界的には今後どんどんインフルエンサーマーケティングを増やしていこうということなのなのでしょうか?

「この注目度の高さについてはいい意味もありますが、一方で悪い意味もある。カンヌでは、毎回P&Gやユニリーバといった巨大マーケティング企業のCMOなんかが出てきて、リーディングカンパニーとして何かしらを発表する。世界的に影響力のある場なわけですが、今年は“インフルエンサーマーケティングに警鐘を鳴らす”という風潮がありました」

――現地の速報レポートでも、インフルエンサーに対する厳しい意見を書いたものが目立っていました。

「少し前のアドフラウドの問題とか、胡散臭いデジタルアドを一掃しようという流れは、2年前にP&Gが発信してからのもの。この健全化の次なる矛先が、インフルエンサーマーケティングになったということです」

――消費者やブランド保護の観点で、業界としてより良くしていこうという流れですね。

「脚光を浴びるほどに、フォロワーを購入する“フェイクインフルエンサー”なんかも増えてきた。そういった中で、怪しいインフルエンサーやエージェンシーは淘汰されなければならないというメッセージを、トップマーケターがバシッと言ったのが今年です。インフルエンサーマーケティングに従事する人間にとっては、グッドニュースであり、場合によってはバッドニュースでもあり……という感じではないでしょうか」

インフルエンサーマーケティングは“成人式”を迎えようとしている

――では、今回のカンヌの発表をもって、インフルエンサーマーケティング業界は変わっていくという予感はありますか?

「絶対に変わると思いますね。ひとつ象徴的なのは、トップ企業やプラットフォーマーたちが、自分たちでガイドラインを作るぞという宣言をしたこと。おそらく年内くらいに、検討委員会のような組織が立ちあがるかもしれません」

――日本でいうとWOMJのような、もともと口コミマーケティングのガイドラインを決める業界団体はありましたが、それとは違ったものでしょうか?

※WOMJ…WOMマーケティング協議会。クチコミマーケティングに関するガイドラインを定めている。

「今回の話は、もっとダイナミック。トップ企業やプラットフォーマーが主体になるわけですからね。個人的にはこういった整備の流れについてはどんどんやってほしいと思っていますし、2005年くらいからインフルエンサーマーケティング周りを見ている立場としては、“いよいよ成人の時が来たか”、という思いです」

「インフルエンサーマーケティングのもとになるものが生まれて、いろんな紆余曲折を経て成長しつつ、でもまだ子どもだから、ある程度のヤンチャも許されていた、と。ところが段々と存在感を増してきて、いろんな人や社会に関わるようになって……もう大人なんだから、ちゃんと社会のルールは守らなきゃね、というところまで来た。だから今は、インフルエンサーマーケティング成人式の時です

――ちょうど20年くらい経つということで、まさにですね。

インフルエンサーネイティブの消費傾向に

「今まではインフルエンサーマーケティングは若者にリーチするためのものというイメージでしたが、その年代は後戻りしませんから、今後はもう、インフルエンサーに影響されて何かを買う世代というのは、どんどん広がって、当たり前になっていく。デジタルネイティブ、ソーシャルネイティブの次は、インフルエンサーネイティブでしょうね」

――好きなインフルエンサーをフォローし、その人の発信によって行動するのが、世代として当たり前になるということでしょうか?

「20年後くらいには、『えっ! わざわざお店に行って店員さんの説明を聞いて買ってたんですか?』とか、『企業の広告だけで買ってた時代があったんですか? すごい!』みたいに言われるかもしれない。ちょっと大げさに言っていますけどね(笑)」

――あり得る未来だと思います。

「車や家のような高価なものはさすがにインフルエンサーの発信だけで買うということはないと思いますが、化粧品やお菓子のような低関与なものであれば、この流れは加速していくでしょうね。あとは旅行なんかもそう。今ですら“インスタ映え”で行き先を選ぶ時代。いつか『えっ、“地球の歩き方”を読んで旅行先を決めてたんですか?(驚)』なんて言われるかもしれませんね」

――言われてしまうんですかね……(苦笑)。

「そんなことが当たり前になっていく。だからもう、いずれはインフルエンサーマーケティングなんて言葉も段々と無くなるのではないでしょうか。マーケティングとして溶け込んでしまうので、わざわざ仕分けることもなくなる、そんな時代がきっとやってくるはず」

成熟した市場で、どうプランニングしていくか

“インフルエンサーマーケティングの成人式”というワードが特に印象に残った今回のインタビュー。第三者発信による“自由度”がインフルエンサーマーケティングの大きな価値ではあるものの、市場が成熟していくためには、やはりある程度のルールを決めることは必要不可欠だ。

来年以降、“成人”を迎えたインフルエンサーマーケティング業界で、どのような戦略を立てていくべきか。多くのエージェンシーやPRパーソンにとっても、変革の時となるかもしれない。

(文:佐藤由紀奈)

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