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シュールな言葉遊びが魅せる“大人の絵本”エドワード・ゴーリー展に潜入

ソーシャルトレンドニュース編集部

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華々しき鼻血――これを見た瞬間、衝動で思わず手が伸びた。

タイトルの勢いと可愛らしい表紙の色、そして鼻をハンカチで押さえる人が倒れる横でそっぽ向く人達……。異なる要素がごちゃっと混ざり合いながらも上手くバランスをとっているというなんとも不思議な雰囲気を持っている。
この繊細なタッチと風刺的な挿絵はアメリカの絵本作家、エドワード・ゴーリーの代名詞。白と黒を基調にヒヤリとした薄暗い絵柄、それに添えられる謎めいた文章が人々を惹きつけ世界中にカルト的な人気を誇る彼。正直、何が言いたいのか分からないこともあるものの、思わずまた手にとってしまう、そんな作品を数多く生み出している。

「Aはエイミー かいだんおちた」と書かれた横に、ふわりと階段から落下する少女の絵が描いてある。衝撃的な幕開けをする彼の代表作“ギャシュリークラムのちびっ子たち”は、アルファベットの順にこども達が死んでいくというもの。人の不幸を単調に、さも当たり前のことのように表現する彼の作品はこどもを殺す作品が圧倒的に印象深く、こども達には見せられない、いわば“大人向けの絵本”というジャンルで取り扱われている。

アルファベット順で物語を綴っていく作風は彼がよく好んで使ったもので、私が購入した“華々しき鼻血”もアルファベット順に副詞を並べ、言葉遊びを愉しんだというもの。

難解な彼の言葉と素朴な表情の主人公たちは、いつの間にか読者を魅了してしまう。突如、少年の前に現る露出狂や乱暴にプディングを提供するウェイトレスまで。普段は隠れている人間の本質に近いところを独自の切り口で展開している。

 

そんな彼に関する展示が、銀座のヴァニラ画廊にて、ひっそりと開催されている。
知る人ぞ知る隠れ家のようなギャラリーには、控えめではあるものの惜しみなくその世界が溢れている。

入り口すぐには作品のような不気味さなど感じさせぬオレンジと黒のボーダー柄セーターを着た猫たちがお出迎え。実は“(作中で)こどもを殺しても、猫は殺さない”とまで言われるゴーリーの愛猫家具合がひしひしと伝わってくるエントランス。

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奥へ進むとゴーリーが手掛けてきた数々の仕掛け本、いわゆる“とびだす絵本”などの作品がキチンとならべられている。

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実際に作品に手を触れることはできないものの、壁には仕掛け本をめくるムービーが映し出されているため中までゆっくりと閲覧することができる。

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作品たちの他にも、骨のようなものでつくられたシャンデリアや、カラスや骸骨などのオブジェが不気味ながらも綺麗に陳列され、まるで風変りなカフェのような感覚に陥ってしまいそうになる空間。

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そして順路を進んでいくとゴーリーの作品の数々が立ち並ぶ物販コーナーに。
まだ発売されて間もない新刊「むしのほん」(河出書房新社)や、ポストカードなど他ではなかなか手に入らないグッズの販売も行っている。

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もちろん絵本の試し読みもできるがゴーリーによる後味の悪さを感じさせないそのイラストと巧妙な文章により、不幸な物語を読み進める手は止まらなくなってしまうだろう。

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私の思わぬ戦利品はこの2冊

 

今回お邪魔したヴァニラ画廊では、1月10日までと残りわずかな日数ではあるものの濱中利信コレクション2「ゴーリー・ライブラリー/Gorey Library」として展示を行っているそう。1月12日からの展示は一転し、体験型アトラクション展覧会「怨念ガールズアパートメント」がスタート。ゴーリー展をはじめ、大人だけのゾクり体験ができちゃう新スポットに銀ブラついでに足を運ぶのもありですね。

(文:大木真冬)

ヴァニラ画廊 -Vanilla Gallery-
〒104-0061 東京都中央区 8-10-7 東成ビル地下2階
12月2日(火)~1月10日(土)
濱中利信コレクション2「ゴーリー・ライブラリー/Gorey Library」
入場料 1000円

1月12日(月)~1月24日(土)
LINKFACTORY presents「怨念ガールズ アパートメント~秘密の花園 内覧会~」
入場料 1600円

http://www.vanilla-gallery.com/

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