ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

須賀貴匡&津田寛治が振り返る「2002年の仮面ライダー龍騎」

2002年、平成仮面ライダーシリーズの第3作として放送された『仮面ライダー龍騎』。シリーズ最多13人のライダーが戦うというバトルロワイヤル的な設定、イケメンヒーローブームの波、戦いを拒む主人公……。当時、様々な側面から話題になり、14年経った今でも色褪せない名作となっている。

龍騎で主人公を演じたのは、俳優・須賀貴匡。その後、朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』『カーネーション』などのNHKドラマをはじめ、映画『魁!!クロマティ高校THE★MOVIE』など多くの作品に出演する俳優となっている。

そして、龍騎で、主人公の勤める会社の先輩役を演じたのが俳優・津田寛治だ。龍騎で出会った2人は、今や同じ事務所に所属する先輩・後輩に。龍騎以来、仲良くし続けているという。そこで『チェリー』では、2人の対談を企画。
龍騎の話はもちろん、2人をつなぐ映画の話など、3回にわたって、存分に語ってもらった。初回の今回は、14年前の龍騎の話から……!

「こんなに映画好きな人が仮面ライダーになるとは……」

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――おふたりの出逢いは『仮面ライダー龍騎』だと思うのですが、そのときの初対面の印象から伺わせてください。

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須賀「津田さんは、僕にとって初めて会った大人の俳優さんなんです。僕は仮面ライダー龍騎をやる前は、カラオケビデオやエキストラといった仕事が多くて、セリフもまともに喋ったことがなかったんですよ。だから津田さんは、僕が初めて役というものをいただいた現場にいた、大人の俳優さんなんです。そして、僕が一方的に映画を観ていたので『あ、あの津田寛治だ!』っていう感じだったのはとてもよく覚えています。
 
それからは、今に至るまでする会話は映画の話がメインですね。当時、津田さんは週に1回スタジオにいらっしゃって、まとめて撮るというスタイルだったんですが、津田さんがいらっしゃると『この映画どうでした?』『僕、この映画観ましたよ』といった会話をしていくんです」

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津田「俺もびっくりしてね。まさかね、主演の男の子がこんなに映画好きだと思っていなくて。やたらがむしゃらで、『売れるんだ! おれは売れてベンツ買って湘南に別荘立てて……』みたいな夢を抱いた青年が来るのかと思ったら、そういう感じがまるでなかったんです。須賀っちは当時から映画をすごく観ていたので、びっくりしたし、すごく嬉しかったのを覚えています」

主役なのにかっこつけていなかった須賀

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――当時はイケメンヒーローブームと言われていて、龍騎だけでも13人のライダーが登場し、若手俳優が演じて人気を博していました。その中で須賀さんは、津田さんからはどう見えていらっしゃったんですか?

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津田「あれだけライダーがいた中でも、独特でしたよね。須賀っちは主役なのに、かっこつけてなかったんです。かっこいい13人のライダーがいる中で、その頂点にスパーンといてもいいのに、須賀っちが一番頼りなくて、かっこつけていなかったんですよね。
 
他のライダーにはすごくかっこつけている人もいたけど、そのバランスがすごくよくて。だからこそ、『仮面ライダー龍騎』という作品は良いんだと思ったんですよね。
他のかっこいい奴らの中で、『自分はもしかしたら正義のヒーローじゃないかもしれない』と思って右往左往している。そんな姿が、見ている人と近い、等身大に近いライダーという像にハマって素晴らしかったんです。須賀貴匡という俳優が、まさにどんぴしゃにリンクしたというかね。
 
そして、他の俳優たちが、自分をどうかっこよく見せるかを考えている中で、須賀っちは他人を見る俳優だったんです。自分をというより他の人を見て『この人はこんなだ』なんて言いながら、いつもにこにこしている。喋るより聞き役の人だったんですよね。引いたところで見ている感じとか、面白かったですね」

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――確かに、須賀さんは当時のイベントなどでも、一歩引いている姿が印象的でした。須賀さんご自身も、演じる城戸真司も、かっこつけすぎていないことで、視聴者目線で一緒に「正義とは何か」を探しにいけた作品だった気がします。

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須賀「あの作品自体が“正義とはなんぞや”という問いになっていたんでしょうね。そういう、正義について真剣に向き合った枠もなかなかないじゃないですか。だから、そういう意味で、あの枠は残してもらいたい枠ですよね」

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津田「スタッフさんもほんと真剣に作ってましたね。プロデューサーさんも龍騎がきっかけで、本を1冊出してたもんね(※)。正義とは何かって、人類の永遠のテーマだよね。革命派が正しいのか、体制派が正しいのか……。
でもやっぱり、正義の味方っていう言葉が一番しっくりくるのは仮面ライダーですね。ウルトラマンとか他にもあるけど、正義の味方というよりは宇宙の救世主みたいなイメージ。僕なんかは子供のころから慣れ親しんでいるし、正義の味方という言葉はずっと昔から仮面ライダーのためにあったような気がする

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――当時、見ていた僕たちも、相当に正義について考えることができました。正直、若い時代にあの作品に触れることで人生や価値観が変わる、くらいの衝撃を受けた人も多いと思います。

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須賀「この間、別の現場の若いアクションマンの方と話したんです。その方が『実は、昔、仮面ライダーのイベントで須賀さんと握手をしたことがあるんです』って言ってくれて。そういう人が、実際にこの世界に入ってきて一緒に仕事をしているというのは嬉しいですよね」

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津田「須賀っちの仕事を見て、憧れてこの世界に入ってきてくれたんだ……」

※編集部注:『ヒーローと正義』 (寺子屋新書) 白倉伸一郎(著)

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――ちなみに当時はどんな映画の話をされていたんですか?

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津田「ジム・ジャームッシュのこととか」

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須賀「青山真治さんの話とか」

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津田「したねー。俺もちょこっと出てたりしてたからね。黒沢清監督の話とか」

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須賀「塩田明彦さんの話とか……」

龍騎の時代を振り返ったあとは、2人の弾む映画トーク!
中編後編では、2人の好きな映画や監督、そしてカメラマン・篠田昇さんとのエピソードや、津田寛治さんの須賀貴匡さんへの想いまでたっぷりお届け……!

(取材・文:霜田明寛)

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