ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

「自分より守りたい人ができた」杉咲花が語る『湯を沸かすほどの熱い愛』

『とと姉ちゃん』を経て、半年ぶり・2回目の登場!

“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”2回目の登場となる、女優の杉咲花さん。前回のインタビューは、高校卒業直後。ゆうばり国際映画祭での受賞時にお話を聞いてから半年ぶりだ。
この半年間、放送されていた朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』では、高畑充希演じる主人公の妹・美子役を演じ、世間的な注目も高まっている中、朝ドラ後初の公開作品となるのが映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。

『湯を沸かすほどの熱い愛』ではガン宣告を受けた主人公・双葉(演・宮沢りえ)の娘、安澄を演じる。作品自体の完成度の高さもさることながら、杉咲さん自身の演技も、役とともに壁を乗り越えた感のある、珠玉の演技。取材時もずっと、宮沢りえさんのことを「お母ちゃん」と呼び続けるのも違和感がないほど、本物の家族のように存在していた。

今回のインタビューでは、宮沢りえさんと母娘のように見えるまでの役作りの過程や、杉咲さんの演技が特に光っている3つのシーン、そして実際の母親との関係性などを聞いた。

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演技というより、過ごしているようだった

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――まず、この映画に参加することになったときの感想をお聞かせください。

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「『トイレのピエタ』の公開日の翌日が、この『湯を沸かすほどの熱い愛』のクランクインで初日だったんです。それで『また大事な人が病気で死んでしまうのか……』という悲しい思いになったのと同時に、だからこそ大事に時間を過ごしたいな、とも思いました」

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――実際にどんな時間を過ごされたんですか?

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演技をしているというよりは、本当に自分が過ごしていたようだったんです。私自身が今まで生きてきた中で、死に触れることがなかったからか、作品の中なのに、色んなことがリアルに起きているような感覚でした。
だから、作品の中で、もっと喋りたかったな、とか、今になって『おかあちゃんに会いたい』という気持ちが湧いてきたりすることはありますね」

宮沢りえと毎日メール

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――そんな、“おかあちゃん”を演じられた宮沢りえさんとは、どう関係性を作っていかれたのですか?

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「監督に、クランクインする前に、妹の鮎子を演じた伊東蒼もこみで『3人で家族になってほしい』と言われたんです。それで、連絡先を交換して、毎日メールをすること、1日1枚は写真を送り合うことを約束しました」

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――監督なりの意図があったんでしょうね。

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「監督には『みせる芝居じゃなくてみえる芝居をして欲しい』と言われました。だから、こうして、映っていないところでメールをしたりして、家族でいられる状態を作ってから現場に入る。それが“見える”ことに繋がるのかな、と私は解釈しました」

「敬語やめていいですか?」と聞いて後悔

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――それで、実際にメールのやり取りをされたんですか?

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「まずは家族3人と監督との4人でご飯を食べました。そこで連絡先を交換したんです。そのときにお母ちゃんは『よろしくお願いします、みたいな挨拶もナシ!』とおっしゃったんです。その時点で、妹の鮎子(伊東蒼)は、敬語をやめて話していたんですね。ただ、私はさすがにその場では、宮沢りえさんに敬語なしで話すことがためらわれたんです。でも、その方がいいんだろうな、とは思っていました。それで、その日、家に帰ってから『敬語をやめていいですか?』ってメールしたんです」

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――宮沢りえさんと敬語なしで話をする。なかなか勇気のいる行為ではありますよね。

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「はい、もうそのメールを私が送ってから、返事が来るまでの間、すごく後悔をしていました。『送らなきゃよかった』『私は何を言っているんだろう……』と。でも、『もちろんだよ』という返事がきたんです。『現場に入ってからも、何回やり直ししてもいいからね』ということも言ってくださって、そこから、宮沢さんに対する緊張感のようなものは一切なくなりました」

これだけ愛してもらったら頑張れる

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――おふたりが本当に親娘として生きていたことがわかるエピソード、ありがとうございます。さて、ここからは、特に印象に残った3つの場面について聞いていければと思います。まず、杉咲さんの演技には冒頭10分で心をつかまれたのですが、開始早々、安澄は学校で自分の絵の具を無理矢理出されてしまったり、制服を盗まれてしまったりするイジメにあいますよね。

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「あそこでは監督から『お母ちゃんが買ってくれた絵の具だよ』と言われたんです。だから、いじめられているということよりも、お母ちゃんのことを考えて悲しくなることが多かったんです。それに、ここまでお母ちゃんに愛してもらっていたら、どれだけ恥ずかしい思いをしても、お母ちゃんのために頑張れるな、と思ったんです。だから、その後に、教室で安澄がとる行動も、なんの違和感もなくやれました」

「どうしようもなく悲しかった」港のシーン

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「この作品は主に栃木でロケをしていたんですが、このシーンは静岡の港までいって撮ったので、空気も変わりました。あそこは監督の『OK』の声も違ったんですよ。私の中でも強く記憶に残っているし、作品として見ても印象に残っているシーンです。撮りながら、どうしようもなく悲しくて、どうしたらいいかわからないところまでいった記憶があります」

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――こうして振り返ってみると、大事なシーンの連続ですね。

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「はい、大事なシーンがいっぱいあって、乗り越えられるか不安でもありました。でも、やり遂げていくうちに『よし、なんとかできた。じゃあ、次また頑張ろう』という想いでやっていった感じです」

あえて顔をあわせずにのぞんだシーン

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――とはいえ、終盤の病室でのお母ちゃんとのお別れになるシーンは相当しんどかったんじゃないですか?

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「あのシーンを撮る前の数日間、撮影でもお母ちゃんに会えなかったのですが、まず私は、その数日間会えなかっただけでしんどくて。会いたくて会いたくてしょうがなかったんです」

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――あのシーンの宮沢さんを見たときの安澄の雰囲気は、そうしてできあがったものだったんですね……。

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「そのシーンの撮影のとき、監督に頼んで、本番まで、お母ちゃんと会わないようにさせてもらったんです。本番までの挨拶やテストの間に、お母ちゃんのその姿に慣れてしまうのが怖かったんですよね。だから、テストも、私がやったら、部屋を出て別の場所で待機して、その間にお母ちゃんがテストをやって……というかたちで、本番では憔悴しきったお母ちゃんを初めて見る瞬間を撮ってもらいました

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――そんな土台の上にあった、あのおふたりの名演だったんですね……。ありがとうございます。最後に、杉咲さんの実際のお母さんとの関係性を教えてもらってもいいですか?

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何かあったときに、自分よりも母親のことを守りたいなと思うので、やっぱり一番愛している人なんだな、と思います」

自分よりも守りたい誰かがいる、というのは、まさにこの映画の中の“お母ちゃん”の発想。いや、むしろ、安澄として生ききったことで、19歳の杉咲花さんに、“お母ちゃん”の魂がのりうつったのかもしれない。『湯を沸かすほどの熱い愛』は10月29日(土)公開。

(取材・文:霜田明寛 写真:浅野まき)
スタイリスト:武久真理江
ヘアメイク:須田理恵

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映画『湯を沸かすほどの熱い愛』

10月29日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー

キャスト:宮沢りえ、杉咲花、篠原ゆき子、駿河太郎、伊東蒼/松坂桃李/オダギリジョー
脚本・監督:中野量太
配給:クロックワークス
©2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

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