ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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関ジャニ∞“第三の声”安田章大の実力

今年になってからというもの、本サイト“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”のスタート当初からの人気連載『オチマンポコ論』が更新されていない……!

理由は明白。連載を担当する脚本家・演出家の福原充則さんは、2017年1月クール、主演・松坂桃李の日本テレビ系ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』の脚本を担当。そして、5月末からは関ジャニ∞・安田章大主演の舞台『俺節』の脚本・演出を担当し、6月24日(土)より大阪公演を控えている。すなわち、“忙しい”のである。

ということで、以下は、“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”編集長の霜田明寛が、読者の皆様に「連載は更新されてないけど福原さんは頑張ってます!」ということをお伝えするために、観劇をし、レビューするはずだったものの、関ジャニ∞・安田章大のあまりの熱演に心を打たれ、号泣し、安田クンの1歳下で、時代を共有してきたジャニヲタ男子だったこともあいまって、結果、過去まで振り返り、ほぼ安田クンを褒め称えることになったという『俺節』のレビュー記事です。
(※本稿では、ときに思い余って、ジャニーズ的な敬称のつけ方で安田クンと表記させていただきます)

そもそも『俺節』とは

舞台『俺節』は、『編集王』や『ギラギラ』、窪塚洋介の映画本格復帰作となった『同じ月を見ている』、などで知られる漫画家で、2012年に43歳の若さでその生涯を閉じた土田世紀の漫画を原作としている。

『俺節』の主役・コージは、あがり症だが天性の歌声をもった青年、という役どころ。そのコージが歌手を目指して青森から上京し、様々な人に巻き込まれ、そして巻き込んでいくストーリーである。

舞台版では、小劇場的なセリフの応酬の面白さもありながら、広い舞台を使い、音楽劇と言ってもいいほど、多くの歌唱シーンが繰り広げられる。また、異国の地からやってきたストリップ嬢との恋も描かれる。

音楽的な要素・成長物語であることをいったん忘れて、恋愛的要素にのみ着目して、ざっくりとしたイメージで言うと“ちゃんと女性に対して必死に責任をとろうとする『ミス・サイゴン』”といったら、さすがに端折り過ぎかもしれないが、そんな感じである。
(ちなみに『ミス・サイゴン』とは簡単に言うと“ベトナム人風俗嬢を好きになってしまった男が子どもまではらませてしまったのに、それらしき理由で別の女とちゃっかり結婚しちゃう話”だ)

音楽漫画原作での失敗例

さて、音楽が登場する漫画、とりわけ主役が“歌がうまい”“天性の歌声”、といった設定の漫画を原作に、映像化や舞台化などを試みるときは、言うまでもなくキャスティングが超重要である。

その役を演じる俳優の歌唱力に、作品自体が左右されてしまうからである。
それを避けるためには、例えば『NANA』の中島美嘉のように、歌手をそのままキャスティングするという安全策がとられたりする。また最近でいえばうまくいっていたのは、菅田将暉が映画『キセキ―あの日のソビト―』で、GReeeeNのボーカルHIDEを演じたパターンなどである(公開は6月の歌手デビュー前)。

一方で、歌唱シーンをごまかすと、一気に作品自体がシラケるという失敗例もある。2010年公開、漫画原作が映画化された『BECK』では、佐藤健演じるボーカリストが天性の歌声で人々を魅了させる、という設定だったが、肝心の歌唱シーンは、フワンフワン~♪という、気の抜けるような効果音が流れることで代替。クライマックスにはさすがに歌うのかと思いきや、最後のフェスのシーンにいたるまでその演出で、作品全体の説得力を大いに下げていた。

安田章大の演技力で立体的になったコージ

さて、そこで今回の『俺節』である。結論から言うと、安田章大がものすごいのである。
説得力、どころか、コージが漫画から3次元に飛び出てきて、漫画にはなかった(もちろん原作にも実際に音が聞こえてくるかのような迫力はあるのだが)実際の音を、声を聴かせてくれ、『俺節』という漫画を立体的に、現実のものとして届けてくれていた

しかも、ただ歌がうまい、だけではない。今回の舞台の場合、約3時間の中で、コージの成長を描かなければならない。さらに、あがり症というコージの設定上、うまく歌えるときと歌えないときがある。
そこを安田クンは見事に演じ分け、本当にコージが3時間の間で、原作と同様の時を重ね、成長しているように見えるのである。特に、うまく歌えないシーンにリアリティがあるからこその、うまく歌えているシーンの迫力は圧巻で、真に迫るものがある。
コージの本気と、「オラには歌しかねえ」との切迫感が声に乗り、原作漫画から飛び出し、立体化したコージが、観客の目の前に、本当に存在するように見えるのである。
特に最初に、コージが歌いだした瞬間と、前半のラスト、そして後半のラストの歌唱では、あまりの迫力になぜかシーンから巻き起こる感情とは関係なく涙が出てきたほどだった。

関ジャニ∞の歌

ここまで、安田章大の歌がすごい、と書いてきた。この安田クンの歌唱力に関しては関ジャニ∞のファンの方にとっては当たり前の事実かもしれないが、正直、一般的に浸透していたかと言われるとそうとも言い難いのではないだろうか。
やはり、一般的に、関ジャニ∞の、歌がうまいイメージを担ってきたのは、錦戸亮と、渋谷すばるの2人である。

錦戸亮に関しては、関ジャニ∞結成よりも前、2000年の時点で、期間限定のユニットではあるもののSecret Agent として歌った曲が東山紀之の主演ドラマ『平成夫婦茶碗〜ドケチの花道〜』の主題歌に。ジャニー喜多川も「ジャクソン5の再来」と称賛したという声変わり前の高音ボイスが、お茶の間に届いている。
その後も、NEWSとの掛け持ち期もあったことや、最近でいえばNHK『トットてれび』での坂本九役など、一般的に歌唱力の高さが認知されるタイミングは多かった。

また、錦戸のように、デビュー後のグループ外での露出が多かったわけではないが、歌唱力の高さが知られていると言えるのは渋谷すばるだ。特に、2015年に公開された映画『味園ユニバース』では、記憶を失い、歌に生きる男を熱演。歌謡曲も歌い、映画公開と同時期にソロデビューもしている。

一方、安田章大に関しては、2013年の映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』などで、歌唱シーンなどがあるものの、脚本家を目指す役とあって、大きく歌がフューチャーされているわけではない。
もちろん、この2年間、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系列)といった音楽番組で、関ジャニ∞全体の音楽性の高さは認知されつつあるものの、今回のこのタイミングで、安田に『俺節』のコージという役が巡ってきた意味は大きいと言える。

コージと安田が重なる瞬間

それは、単に安田クンの歌がうまく、コージが歌がうまいという設定だから、ではない。舞台の中で、コージと安田クンの人生が重なる瞬間があるのだ。

今回の舞台版『俺節』は、もちろん原作を元にしているものの、ところどころに福原節がうなっている。青春時代に原作に触れ、原作を愛する福原さんにより、ストーリーのエッセンスは崩さないようにした上で、福原さんオリジナルのセリフが存在するのである。

そのひとつがコージを見出すレコード会社の男・戌亥(演:中村まこと)のセリフだ。

「板の上で見世物になるには隙間のある人間じゃなくちゃならないんだよ。
客が自分の思いを乗せる、託す、そういう隙間だよ」

と、売れる者の資格をあげる。

そして、コージについてこう語るのだ。

「あいつは隙間だらけだ。あいつの隙間には人が集まる」

思えば、関ジャニ∞は、ジャニーズの中でも異例の演歌デビューかつ最初は関西限定発売。当時のレコード会社・テイチクの屋上でおこなわれたデビュー会見は、嵐のハワイでのクルーザーに乗ってのデビュー会見などと比較され、今でこそ笑いに変えられているが、当初は“ジャニーズのエースが満を持してデビュー”という感じでなかったことは確か。そう、関ジャニ∞は、王道の完璧なアイドルではない“隙間の魅力”が徐々に広まっていくことで人気を得たグループであり、それはジャニーズの中でも隙間の位置だったとも言える。

さらに、その関ジャニ∞の中でも、前述した錦戸や、バラエティで活躍するメンバーなどと比べ、やはり安田クン自身が隙間の上に生きて、そしてやっと今の立場を手にした人と言えるのではないだろうか。

本人も過去のインタビューで自分の人生を振り返ってこう語っている。

「すごくきわきわな道なんですけど、それはすごく新しいものが見える道やとも思うんです。どうせ生きるんやったら、僕は見たことのない新しい景色を、色を、見たいなって思うから」
(Myojo 2012年6月号)

『俺節』という楽曲が安田章大の人生に重なる


そして、もうひとつ重なるのは、これは原作通りの部分ではあるが、コージの盟友・オキナワ(演:福士誠治)との別れである。自分の意思ではなく、歌手として売れるべく、オキナワと袂を分かつ決断をせざるを得なかったコージ。そして、それでもどこかでオキナワを信じるコージ。
ここに、関ジャニ∞からメンバーが脱退している事実や、また関ジャニ∞前に安田が関西Jr.
内で結成していたバンドV.WESTのメンバー全員がデビューできているわけではないことなどがよぎるのである。
さらには、関ジャニ∞の結成前、バンドのドラムに大倉忠義を推し、社長に「1カ月後のリハーサルで、大倉がドラムを叩けなかったらあなたが責任を取りなさい」と言われても、大倉を信じ続けた安田のエピソードもよぎる。

そうして、安田のこれまでの人生がリンクし、コージに重なった時、クライマックスで歌われる『俺節』。

俺が俺と言う時は
   俺とお前で俺だから
      俺の俺節 お前節

横山裕が母を想って作った楽曲『オニギシ』が、奇しくも、横山の母の死後、横山の人生に乗ったように、安田の32年の人生が、2017年の今、『俺節』という歌に乗るのである。

もちろん、本人と重なることだけが、その役を演じる意味、全てではない。しかし、観劇後に原作を読んだ際、コージが、安田章大に映って見えることも加味されて、やはり、このJr.入りから20年のタイミングで安田章大にコージという役がやってきたのは必然に思えるのである。

(文:霜田明寛 撮影:阿久津知宏)

■関連情報
俺節公式サイト

Twitter:https://twitter.com/orebushi
【東京】2017年5月28日(日)~6月18日(日) TBS赤坂ACTシアター
【大阪】2017年6月24日(土)~30日(金) オリックス劇場 

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