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まえだまえだ兄「弟には負けてます」大作映画に異例の主役起用!中学生俳優3人を直撃

松竹の前後篇超大作・主要キャストは“演技経験ナシ”も含む33人の中学生

現在大ヒット公開中の映画『ソロモンの偽証』。前後篇の超大作で、オープニング2日間で9万人超を動員した前篇に続き、11日に後篇が公開されたばかり。

出演者には佐々木蔵之介、尾野真千子、永作博美……と豪華な名前が並ぶが、作品の中心となるのは、1万人から選ばれた、33人の中学生キャストたち。主演を飾るのは、藤野涼子。この作品が女優デビューとなり、芸名も、役名と同じ藤野涼子となった。
これほどの規模の大作で、無名の新人や、一般公募のキャストたちが中心となるのは異例のこと。そこで、中学生キャスト3人に話を聞いた。

登場してもらったのは主演の藤野涼子と、是枝裕和監督作品『奇跡』に主演した、前田航基。そして、中島哲也監督作品『渇き。』で注目を浴びた清水尋也だ。
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(左から前田航基、藤野涼子、清水尋也)

そう、1万人の応募者から選ばれたキャストではあるが、藤野は演技経験がゼロだったのに対し、前田と清水の2人は、日本映画界の中でも、独特の現場を体験した上での現場入りとなった。3人から見たこの映画の現場はどんなものだったのだろうか。

新人・藤野涼子を救った先輩女優のひとこと

――「初主演にも関わらず堂々たる演技!」というのが前篇を見た方の大方の感想だと思うでのすが、藤野さんの中でうまくいったというポイントはありますか?

藤野「自分でうまくいったかどうかは、正直まだわからないんですよね(笑)。もちろん、現場にいるときもわからなくて、監督がOKとおっしゃったときも、自分が納得行かないと、くよくよしてました」

――そんなときは、大人の先輩方が助けてくれたりしたんじゃないですか?

藤野「夏川結衣さんから『くよくよひきずらないで、監督がOKって言ったらOKなんだよ』って言われて安心しました。ご自身も若い頃から演技をされていた方なので、私がワケがわからなくならないように、色々とサポートしてくださいましたね」
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是枝監督は勝手な僕をいい風に撮ってくれた

――前田さんは、今回の現場はどうでしたか?

前田「成島出監督が、明確なイメージができている方だったので、自分のせいで現場が止まったらどうしよう……と怖かったです」

――以前に是枝監督の『奇跡』で経験も積まれていますし、そんなに怖がらなくてもいいんじゃないでしょうか?(笑)

前田「『奇跡』のときは、監督にその場でセリフを伝えられて、それを自分の言葉で言う感じだったんです。だから、僕が勝手にやっているのを、監督がいい風に撮ってくれた、という感覚だったんですよね(笑)。あのときは、監督が役を自分によせてくれる感じだったんですけど、今回は自分から役によせていく感じでしたね」

中島哲也監督は、現場で試させる人

――清水さんも以前に『渇き。』で中島哲也監督という、いい意味で普通ではない現場を経験されていると思うのですが、今回と違いは感じましたか?

清水「役柄も監督も正反対で、環境が違う感じはしましたね。中島監督は、役者に自由にやらせる人なんです。『台本に書いてあることだけやってもつまらない』『もっと好きなだけやってみろ!試せ!』という感じだったんです」

――現場で臨機応変に変わっていく感じなんですね。一方、今回はどんな感じたったんでしょう?

清水「成島監督は、現場の時点で、監督の中で画や理想が的確に見えている感じがしました。ですから、そのビジョンを忠実に再現していくためにあわせて芝居をしていかなきゃ、と、違う気の引き締まり方がありましたね」
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兄弟で俳優であるということ

共に日本映画界を代表する監督の現場を経験し、今回も新たな経験を積んだ、前田航基と清水尋也。2人にもうひとつ共通するのは、兄弟で俳優であるということだ。

前田航基に関しては、お笑いコンビ『まえだまえだ』としての活躍を認知している人も多いかもしれないが、『奇跡』でも兄弟役で共演した、前田旺志郎の兄にあたる。一方、清水尋也の兄は中島哲也監督の『告白』に出演、最近では『死んだ目をした少年』で主役を飾った清水尚弥だ。兄弟で俳優であることは2人にはどう影響を与えているのだろうか。

――前田さんは俳優・前田旺志郎にはどういう意識を持っているんですか?

前田「弟は唯一のライバルだな、と思っているんです。他の俳優さんは、うますぎてライバルだなんて、とても言えないんですけど、弟にだけは、負けていたとしても、負けたくないという気持ちは強いんで……」

――弟さんには負けているという意識なんですか?(笑)

前田「勝っているとは言い難いですね……どうなんでしょう?(笑)。
まあお互い得意分野が違うので一概には言えないですが……。弟には自分の中で納得できるような勝ち方をしたい、と思って頑張っています。でも弟なので、ちょっと言いにくいような、率直な感想を言ってくれるのはありがたいですね」
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――清水さんは、兄弟で感想を言い合ったりするんですか?

清水「家では恥ずかしいので、感想を言い合ったり、芝居の話はしないです。ただ、1回だけ兄と同じ作品に出演したことがあるんです。そのときは、家で会うときと関係性が違いましたね。挨拶もきちんとしますし、敬語を使って、先輩後輩として接しました」

――普段はどんな関係性なんですか?

清水「家族としては兄弟喧嘩をすることもありますけど、兄が芝居をしていなかったら僕も始めてなかったので、尊敬できる役者さんだ、と思っています。負けたくないし、負けるわけにはいかないですね」
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本物の両親よりも両親に思えた

――お二人は、それぞれの兄弟に刺激を受けているとのことでしたが、藤野さんは今回の現場で刺激を与えてくれた存在はいましたか?

藤野「やはり、両親だった佐々木蔵之介さんと、夏川結衣さんですね。撮影の途中で、本物の私の両親よりも、この2人が本当の両親であるかのような感覚を覚えたんです。ちょっと言い方は難しいのですが、演技がうまいお二人がいる、というよりも、そこに両親がいる、という感覚で……。そこがわからなくなるというか、正直、演技なのかどうかということも忘れるくらい入り込ませてもらったという感じです」

――ベテランのお二人が、藤野さんをこの世界に導いてくださったということでしょか?

藤野「そうですね、そういう空気をつくってくださったお二人をとても尊敬しています。なので、今回は、“演じていく”というよりも、受け身だった感覚です。例えばイジメのような、目の前で起きていることを、ありのままに受け止めていく、ということの連続でした」

確かに、スクリーンの中に、本作の設定となっている1990年代初頭の中学生が生きているかのように感じられた本作。しかし、演じた彼らは、90年代後半からゼロ年代生まれ。もちろんその時代を生きてきたワケではないのだが……。そこに彼らの卓越した演技力を感じられる作品となっている。

(文:霜田明寛)
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