ベストセラーから14年 今度はJKの数を減らします
2001年に発売され、当時の中高生を中心に爆発的な人気を博し、200万部を突破したベストセラー『リアル鬼ごっこ』。度重なる映像化もあいまって、大きなブームを巻き起こした。あれから14年……。鬼才・園子温監督が『リアル鬼ごっこ』を映像化。キャッチコピーには「全国のJK(女子高生)の皆さん、あなたたちはちょっとふてぶてしいので、数を減らすことにします。」という、おどろおどろしいコピーが。
現代のJK(女子高生)たちはこの映画をどう見たのか。7月11日の全国公開に先駆けておこなわれた女子高生限定試写会に潜入。上映後の彼女たちと直接対話し、園子温版『リアル鬼ごっこ』について、さらに、彼女たちと映画との関わり方について聞いた。
がっ、しょっぱなから感想を執拗に聞く取材側の僕・29歳の霜田に女子高生は「え、つくった人?」とのカウンターパンチ! 世の中にはつくった人じゃなくても、感想を聞きたい人たちがいるんだよ……! ということで、彼女たちとの格闘の結果から得た“女子高生が見た園子温版リアル鬼ごっこ”をご紹介!
女子高生には真野人気
トリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜のトリプルヒロインの本作。誰がよかったかを聞くと、「3人目の人だけ知らなかったけどキレイ」「あの人美人じゃない?」と、真野恵里菜を推す声が。『新宿スワン』『ラブ&ピース』『みんな!エスパーだよ!』に本作と、今年公開の園子温作品4本に出演し、女優としての評価も高まっている真野に女子高生からも人気が集まった。「既にカワイイことは知っていた」トリンドル玲奈や篠田麻里子はもちろんだが、“真野恵里菜の美しさを発見した”作品になったようだ。
「よくわかんない!」の大合唱
作品の感想を聞いてみると、女子高生から一気に「よくわかんなかったー!!」との大合唱が。「よくわからなかった人、挙手!」と煽ると、なんと学校の授業のように、全員一斉に手があがった。
「全然鬼ごっこしてなくね?」「リアル鬼ごっこじゃなくね?」「サトウはどこ?」と原作との乖離を指摘する声も。
そこで、質問を変え「楽しかった人?」と聞くと、なんと、これまた全員一斉に挙手! つまり彼女たちにとって『リアル鬼ごっこ』は「よくわからないけど、楽しかった」映画となったよう。
「よくわからない」けど、「また見たい」
他にも、この日の鑑賞者におこなった記述式アンケートを見ると、総回答数39人のうち
「怖かった」:36人(92.3%)
「怖くなかった」:3人(7.6%)
と、90%以上のJKが「怖かった」との答え。
「怖かった。また見たい」との声もあり、今の女子高生たちは「【怖かった、よくわからない=見たくない】になるのか!?」と思ったが、むしろ逆。どうやら彼女たちは【よくわからないけど、また見たい】という、くだらない論理や、つじつまを気にしない、かなり超越した映画の見方ができるようだ。
実は伝わっていたメッセージ
しかも、「よくわからない」といっても、作品のテイストやメッセージ性が伝わっていないか、というと、実は全くそうではないのもすごいところ。感想には「エロかった。グロかった」と園子温ワールドを真っ向から味わっているものも多かった。
さらに「『シュールに耐えられなくなったらおわりだ!』って言葉が本当に感動した」との感想も。これは、劇中で“シュール”というアダ名をつけられている、冨手麻妙演じる女子高生が口にする、本作のテーマとも深く関わってきそうなセリフ。
「よくわからない」と言いつつも、実は大事なところはきちんと吸収しているよう。そして、そんな彼女たちは、よくわからないことを悪しきこととせずに、むしろ、よくわからないことすらも、楽しんでいるように見えた。
映画の料金は「“ねぎし”くらい」「高くない」
そこで、最近の女子高生たちは映画とどのように向き合っているのかを探るため、映画に関する質問をぶつけてみた。
まずは、おそらく彼女たちにとって高いと感じているだろう、映画の鑑賞料金。(現在、高校生料金は1000~1500円)しかし、「高いと思う人!」と聞くと、10人中「高い」が2人、「普通」が6人、「安い」が2人。意外に映画の値段を高いとは感じていないようで「“ねぎし”くらいだしね」と、1000円前後で牛たんが食べられる、『牛たん・とろろ・麦めし ねぎし』を引き合いにあげた。
参考にするのは芸能人より、友達のツイート
さらに、「見に行く時に何を参考にするの?」と聞くと、一斉に「友達のツイート!!」との声。芸能人よりも友人の感想を参考にするよう。「つまらなくても面白くてもなんか書く」そうで、「映画行くとだいたい写真撮って感想と一緒にあげるよね」とのこと。
「じゃあ、今日も撮るの?」と聞くと「やべ、そうだ、撮んなきゃ」と慌てる女子高生たち。なぜだか、取材していた僕を含め、ポスターで、トリンドル玲奈がしている『おびえ顔』ポーズをしながらの大・撮影大会に。
その日の夜には、複数あげられており……
5000人近いフォロワーのいる霜田でもなかなかつかない50ふぁぼをかるがる達成していたり…
画像加工されたものや、
さらには『リアル鬼ごっこ』の公式アカウント、ソーシャルトレンドニュースの公式アカウント、取材した霜田の個人アカウントをまとめたツイートまで出るほどの高度な情報整理術!
そうか、こうやって広がっていくのか……と、女子高生の波及力の高さを実感。
『リアル鬼ごっこ』は監督の個人的なトラウマや怨念も多分に反映されているのでは……と思うほど、女性の恐ろしい部分を炙りだした作品。しかし、少なくともこの作品を見に来た女子高生たちは、どちらかというと『ラブ&ピース』で麻生久美子が演じているようなのような、まだまだピュアさを持ち合わせた女子たちだった。
(文:霜田明寛)
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『リアル鬼ごっこ』
7月11日(土) 全国ロードショー!
©2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会
配給: 松竹、アスミック・エース