ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第一回 「童貞のままやりまくるために」

あなたはご存じですか?世の中にはやりまくってる童貞がいるということを。

あなたが今、実際に童貞だとしましょう。それ故に童貞感のある表現に共感を持っているとしましょう。ザーメンくさい歌詞を歌うパンクバンドや冴えない日常を描くマンガ家の作品に共感を持っているとしましょう。

あなたが好きなその方々たちは、やりまくっておられます(私調べ)。

やりまくる童貞風の男たち

冒頭の言葉をより正確に書くとしたら、「やりまくっている童貞風の男がいる」ということでしょうか。
彼らへの共感は粉々になってしまったでしょうか? それとも「そうだろうとは思っていたよ」という感じでしょうか?

「童貞」というワードが本来の意味から広がり、「童貞をこじらす」、「中二病」などの言葉の力も借りて勢いを増してから、もうずいぶんと長い時間が経ちました。すっかり「童貞感」も市民権を得て、その“感”に惹かれる女性も山ほどいることが確認されています。そして当然、その女性達とねんごろしている童貞風男達がいるのも確認されているのです。

彼らは人付き合いが苦手なふりをし、あらゆるものに卑屈な態度を取ってみせ、さえないオーラをプンプン発しながら、そのオーラにある種の女性が寄ってくることを知っています。草食のフリをしながら「草食動物も交尾はするし、スケベだし」ということなのでしょうか。

あなたも童貞風ヤリチンになろう

で、ここで提案です。

あなたも彼らの作品のファンであり、似た人種なわけですから、真似をして童貞風ヤリチンになってみませんか?

「いや、無理だね」とあなたは言うでしょう。
「そりゃ表現者はモテるだろうけど」と。「でも俺は楽器も弾けない、絵も描けない」と。「童貞感に惹かれる女がいるわけではなく、童貞感をうまく作品に昇華できる才能がある男がモテているだけではないか」と。

大丈夫です。才能がなくてもモテるんです。

なぜなら世の中には才能がないということに共感する女性が沢山いるからです。

才能はなくてもモテる

童貞感の周辺世界では確かに「才能」がもてはやされます。思春期に鬱屈を溜めこんでしまった人間は、容姿ではなく才能でもって復讐しようとするからです。ルサンチマンってやつです。
でも、才能を持つ人はわずかです。選ばれた人だけです。
同じようなルサンチマンを抱えているからという理由で好きになった表現者が、いつしか本来の才能を発揮し始めてまぶしい光を放つようになったことに対して、「売れたら変わっちゃったね」などと疎むファンがいます。
そういった人達の中に「共感はできるが、自分を置いてきぼりにはしない程度の錆びてる才能」を好む人がいます。
そういった人達の共感を得ればいいのです。

「錆びてる才能がここにいるよ」

ですから面白いかどうかは二の次、三の次で、とりあえず「錆びてる才能の持ち主がここにいるよ」と宣言するつもりで、なんでもいいので作品を作ってください。
テーマは「本音をさらけだす」とかがいいと思います。
ほとんどの人間が本音を隠して生きているものですから、羞恥心を捨て、自分をネタにした赤裸々な作品を作れば、それだけで芸にはなります。面白い必要はありませんよ。錆びてていいんです。当然、売れる売れないも関係ありませんが、「バカな世間に迎合しない芸術活動をしているせいで売れないオレ」というアピールをした方が、よりモテます。

成長なんてもってのほか

問題はそういう女性は、あなたを好きなわけではなく、「ダメ男を愛してあげてる私……、そんな私が好き」と思っている可能性が大きいですが、その点は贅沢言わずに受け入れましょう。セックス出来るんですから。
さらに、そういったタイプの女性と関係を長続きさせるためには、「あなたは成長してはいけない」という条件がつきます。ダメなあなたを好きになってもらっているので成長なんてもっての他です。これも受け入れましょう。セックスが、セックスが出来るんですから。

ちゃんとセックスするべき理由

別にそこまでセックスしたくないというあなた!
バカなこと言ってないで、ちゃんとセックスするべきです。

いいですか?
例え、嘘でも打算でも仮初めでも性欲だけでも、それでも身体を合わせれば、そこに“愛”が生まれますし、それがほんのかすかな愛だったとしても、世の中のその他のほとんどのことより尊いです。

それが愛です。

“冴えない私生活をさらけだした内容の大して面白くない創作活動を行うだけで、ある一定のタイプの女性にモテる”んです。
簡単ですよね。では、鼻歌からで構いません、歌を作って歌いましょう。絵を描いてマンガにしましょう。映画を撮り、演劇をし、小説を書き、ステップを覚えて踊りましょう。

モテます。やれます。愛が生まれます。

(文:福原充則 イラスト:佐藤由紀奈)

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