春ですね。
40才ともなると、季節の変わり目の夜なんかには、一人で晩酌しつつ、過去を振り返ったりします。思い出は最高の肴ですね。
そんな夜、一番思い返すのは、人生の節目、節目を彩った“あのみなさん”のことです。あのみなさんが、今、何をしているのかなぁと考えているだけで空が白んできます。
世間ではあのみなさんのことを“ヤリマン”と呼んだり、なかには“公衆便所”なんて蔑称を使う方がいますが、ありえないと思います。許せません。私はあのみなさんを“おさせさん”とか“おやらせ様”と呼んでいました。知人のN君などは“いい人”と呼んでいます。
「あの子、ほんとにいい人なんだよね」
って、N君が言ったらそういうことです。
もちろん私も学生時代などは、その種のタイプの女性をヤリマンと呼んでいたこともあります。これは時代と地域と偏差値によって差はあると思いますが、私の高校では3人とすればもうヤリマンと呼ばれていました。
しかし男子生徒だけで何百人もいたわけで、そのうち3人としただけでヤリマンとは迷惑な話です。改めて振り返ると、ヤリマンのあの子は「誰とでも寝る」イメージとは裏腹に、ほとんどの男とやっていなかったわけですから。
つまり、男にはヤリマンにやらせてもらえる男ともらえない男の二種類がいて、後者の方が圧倒的に多いことになります。これがどういうことかと言いますと、やらせてもらえた男はですね、結構な優越感を得られるわけです。選ばれし者ですから。これはなかなかの自信につながるんですね。生きていく上での。
「ヤリマンとやれると自信がつく」。
学生時代ならこんな言い回しの結論になります。まぁなんかガキの理屈です。嫌な気持ちになる方もいるでしょう。しかしこれは当時思っていたより、もっと、ずっと重要な結論になりました。
年齢を重ねていく中で、人は人生の壁にぶち当たり、なんとか迂回して見つけた脇道、ヤブ道、けもの道をはいつくばって進んでいたら、今度は崖に突き当たり、俺はもうダメだ。死にたい。消えてしまいたい。なんて経験を繰り返します。そんな時、いつだって救ってくれたのは、恋人や友達や教祖さまなんかではなく、おやらせ様との一晩だったように思います。
おやらせ様(※メンタルが綱渡りしてる方はここでは除外します)はその多くが、人との距離感が絶妙で、相手の心の中にするっと入るのが上手な方々ですから、鬱屈した気持ちを相談すると、共感してくれて、助言をくれて、なんだか問題が解決したような気持ちにしてくれます。真っ暗闇に唯一の味方が出来たような気分になります。こういった、「気持ちがつながった」ことで沸き起こる前向きな感情は、話上手な人間との間でも生まれます。でも、ほんとはそんな感情は、朝になったらやっぱり消えてしまう幻なわけで、それをおやらせ様の方々は、気持ちだけでなく「身体もつながった」という事実によって、なんとか幻じゃなくひとかけらの現実にしてくれるし、それを握りしめて、男は満員電車に乗って仕事に行くんです。
若い頃の結論は時間を経て、
「いい人にさせて頂くと生きる希望が湧いてくる」
と変化しました。
だからね、私がなにが言いたいのかと言いますとね、女性のみなさん、ヤリマンになれとは言いません。言いませんよ?ただ、いい人になって欲しい。ソクラテスも「善く生きよ」と言ってます。意味はたぶん違いますけど、勢いで引用しましたよ。
だって、あなた!今までの人生で、“人に生きる希望”を与えたことありますか?あ、り、ま、す、か?
ないなら、改めて自分の周りを見回してください。落ちこんでいる男性はいませんか? 死んでしまいそうな男性はいませんか? 生きる希望を与えるチャンスです。別に手当たり次第やる必要ないんです。嫌いな男に希望を与えなくてもいいです。
でも!でもね!あなたが「生きる希望」と書かれたカードを持っているってことは知っていて欲しい。知ってさえいれば、それを使うタイミングと相手が現れた時に、見過ごしてしまうことがなくなりますから。
一人一人が正しいタイミングで、誰かに希望を与える。そのことで少し世の中が良くなる。あなたのいる世の中が良くなる。あなたの授けた希望はいつかあなたに返ってくるんです。
今、世の中はどんどん悪い方へと流れています。
カードを手に立ち上がりましょう。
あなたの下半身から、
希望が、
世界へ染みこんでいく。
(文:福原光則 イラスト:佐藤由紀奈)
チェリー編集部より
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今回のコラムの言葉を使えば“おやらせ様”である主人公が、世界に希望を染みこませていく様子を映像に昇華させた傑作です。
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