3月26日から公開中の小関裕太、森川葵主演の青春ホラー映画『ドロメ男子篇』『ドロメ女子篇』。
前回の内藤瑛亮監督のインタビューでは、リアリティがありすぎる高校生たちのセリフが生まれた背景や、監督御自身の青春時代について伺った。
後篇となる今回は『ドロメ』の一風変わったホラー描写や女性陣の衣装など、現場の話を中心に聞いてみた!
観賞後さらに楽しむためにもぜひ読んでいただきたい!
――今回は『先生を流産させる会』でも組まれた松久育紀さんと共同で脚本を手掛けられたそうですが、どのような進行で脚本が出来上がっていったのですか?
「最初に僕がざっくりとしたプロットを書き、プロデューサーの田坂さんや松久さんと打ち合わせをして、方向性を決定していきました。初期は陰惨なホラーだったんですが、打ち合わせを経てコミカルなホラーへ転換しましたね。そこから男子篇・女子篇に分けてプロットを書いて、松久さんに渡して書き加えてもらい、戻って来たら直して、まとまったら打ち合わせをして……とキャッチボールのように執筆を進めていきました。リンク箇所はプロット段階でアイディアを出し合いました。『女子篇のここを男子篇のここに繋げよう』『男子が○○している場面で、女子は○○していたらどう?』みたいに。
一昨年の12月に『ライチ☆光クラブ』を撮影していたんですが、準備・撮影で僕が動けないときに松久さんが『ドロメ』の初稿を書き上げてくれて、撮影が終わったら、『ライチ』の仕上げをしつつ、『ドロメ』のホン直しをしました。
書く前からの共通認識として『1本だけ観ても成立する映画にしよう。ただし、いくつか謎を残しておいて、もう1本観たらその答えがわかるという仕掛けにしよう』と話し合っていましたね」
――その仕掛けとは女子篇には映っていなくて、男子篇には映っている霊のことですね。
「はい。男子篇にある、颯汰(小関裕太)にしか見えていない“母親の幽霊” (長宗我部陽子)の存在です。
女子篇を観ると何も映っていないので、女子篇だけを観た人は颯汰に対して『冷たい男子だな』という印象を持つかもしれません。でも男子篇を観ると彼にしか見えない霊がいて、颯汰が苦しめられていたことがわかるんです」
――撮影では母親の霊を実際に立てて撮影したのですか?
「そうですね。幽霊役はその場に立たないと、怖くならないですよね。でも女子篇で幽霊が登場しない同アングルのショットで、CGを使って消すことはしていません。『このカット、男子バージョンです! 幽霊出てきます』『女子バージョンなので、幽霊なしで同じ芝居やります』と呼びかけて、現場で2パターン撮りました」
――かなり神経を使いそうですね……! 今までもドラマ『悪霊病棟』など、幽霊を扱うことはあったと思うのですが、内藤監督ご自身は心霊スポットへ行ったり霊感があったりするのでしょうか?
「廃墟めぐりは好きでしたけど、幽霊はあんまり信じていないですね。
AV男優の加藤鷹さんが『幽霊は絶対存在しない。公序良俗に反しない形でしか出てこないからおかしい』と仰っていたのを聞いて、共感したんですよ。幽霊が元人間だとするならば、自分もいつか幽霊になる可能性があるわけじゃないですか。
でも自分が死んだ後に、わざわざ恨んでいる人のところへ行くかと考えると疑問です。
せっかくならハリウッド女優のお風呂覗きに行きますよね(笑)」
――たしかに(笑)。公序良俗に反する方向に行きますよね。
「そうなんです。クロエ・グレース・モレッツの日常を見に行きたいですよ。
逆に、身近な人のところへわざわざ行く幽霊は、束縛心も強かったんだろうなと考えて、颯汰のお母さんの幽霊を“死んだ後も子どもに過干渉し続けるモンスターペアレント”にしました」
――颯汰のお母さんの粘着ぶりは笑えるくらい激しかったです(笑)。
“触れるし、倒せる幽霊”を描いたのは、内藤監督御自身があんまり幽霊を信じていないからですか?
「“倒せる幽霊”に関してはJホラーとアメリカンホラーの違いを意識する中で生まれました。
アメリカンホラーのモンスターや霊は基本的に触れられるし、倒せます。倒すことによって主人公が弱さを克服して、成長するストーリーが多いんです。
一方、Jホラーの場合、『呪怨』の伽倻子にしても『リング』の貞子にしても、幽霊は倒せない存在なんですよね。
日本のモンスターや幽霊は倒すことができず、主人公の成長が奪われているからこそ、怖い存在となるんです。
僕は子どもの頃から80年代の『エルム街の悪夢』や『チャイルド・プレイ』を観て育ったこともあって、自分の映画体験の根っこにあるのはアメリカンホラーだと思っています。
『ドロメ』はJホラー的な要素が前半部分にはあるけど、基本的にはアメリカンホラーです。だからモンスターや幽霊は触れるし、倒せるし、主人公は成長するんです」
――たしかに“主人公の成長”を感じました。『ドロメ』の観賞後に爽快感を覚えた理由がわかった気がします。男子編のラストで出てくる巨大な怪獣サイズのお母さんにはどんな想いを込めたのですか?
「倒したと思ったら、最後にぬっと復活するホラー映画のお約束が好きなんです。続編の予定は無いのにその布石を無理矢理ぶち込んで終わるという(笑)。
でも、同じ姿で出てくるのはつまらないので、初代『ゴジラ』の登場シーンを意識して、山の向こうから顔を出させました。怪獣映画も好きなんですよね(笑)」
――内藤監督の好きなものが詰まっているラストだったのですね! 物語の終盤でドロメちゃんをみんなで暴行するシーンが楽しそうで印象的です。
「あのシーンは、いろんなことから解放されて、お祭り状態なんです。森川さんは屋上の場面で、小関さんはお母さんとの対決で成長しているので、言うなれば打ち上げです(笑)。辺鄙な田舎町のお祭りっぽく映ればいいなと思って撮りました」
――みんなで楽しそうにドロメちゃんをボコボコにしている姿に、集団陶酔を感じていたので、お祭りと聞いて納得しました。ドロメちゃんの正体も最後まで明かされませんね。
「急にドロメちゃんが出てきても面白いかなーと思って出しました。ドロメちゃんは悪意が集まった泥の塊で、ドロメの本来の姿なんです。彼の泥が人間に取り憑くとソンビのようなドロメが生まれるという設定です」
――やたらかわいいですよね。ゲーム化されたり、劇場でグッズが販売されたりとキャラクターとしても立っていますし。ドロメの造形は監督が生み出したのですか?
「僕がイラストを描いて、特殊造形の百武さんに作ってもらいました。百武さんは『ライチ☆光クラブ』に出てくるロボット『ライチ』も作ってくれた方です。だから『ライチ☆光クラブ』に出てくる神様と『ドロメ』はすごく似ているんです。
僕にとっての神様や仏様は、だいたいこんな風にグチョグチョしていて、“ちょっとかわいい”姿なんですよね」
(左:『ライチ☆光クラブ』の神様 原案のイラスト 右:血と牛乳を塗る前の『ライチ☆光クラブ』の神様)
――内藤監督は元々、マンガ家を目指されていたこともあって、映画の中でもイラストを効果的に使われていますよね。自分の絵を積極的に映画に挿し込みたいという願望はありますか?
「映画の中に絵を入れたいという願望はないですが、イラストの仕事がきたらうれしいなーとは思っています。
あと、劇中以外にも映画制作でイラストを使っていますね。僕が映画のアイディアを思いつく時は映像から発想がスタートするので、準備段階で絵を描いて説明すると、スタッフとイメージの共有がしやすいんです。
特に仕掛けが多い『ライチ☆光クラブ』とか、『ドロメ』の場合だと絵コンテが重要なので、話が進みやすいですね。
『この辺はCGで、この辺は造形物で、カメラの動きはこうしましょう』とすべて画で伝えられるので」
――あ、台本の中に絵コンテとイメージイラストのページがあるんですね。
「普通は入れないんですけど、入れた方が分かりやすいと思って制作部が入れたみたいです」
――屋上のシーンがわかりやすいですね……! 目のアップもある!
ファンにはたまらないですね、これ……。
家でホラー映画を観ている時のような、現実味のある冷静さ
――今回、ホラー映画らしからぬセリフに驚きました。ホラー映画を友達の家でワイワイ観ている時に、映画の中の幽霊や心霊現象にみんなでツッコミを入れているようなノリでしたね(笑)。
「今回は映画学校との同期のくだらないやり取りを高校生たちの会話に反映したんです。その同期と家で飲む時は、映画を流しながら、ワイワイするので『ホラー映画を観ながらツッコむ』という雰囲気は反映されているのかもしれません。
通常のホラー映画だと、幽霊の存在にピリピリと悩んだり、精神を病んでいったりするけれど、実際に心霊現象が起きたら、シリアスな心境にはならないと思うんですよね。『すげえ! 本当に幽霊いるんだ!!』とワクワクしてしまう気がするんです。
だから劇中でも、幽霊が見える颯汰に対する龍成(中山龍也)のリアクションが、“リフティング上手な人”みたいな扱い方なんですよね」
――たしかに(笑)。初日舞台挨拶でも「校舎に犬が入り込んだ感じ」と仰っていましたが、外部から来た何者かによってもたらされた非日常を楽しんでいる姿が印象的でした。ドロメに追っかけられながら「今すげー楽しい俺!」と叫ぶ龍成のセリフにもとても現実味がありましたね。
「『部活の合宿中に幽霊さんもモンスターさんも来ていただいてうれしい! ありがとう!』という心境ですよね。
霊やモンスターが現れることが、自分の生命や人生を揺るがすことではなくて、退屈な日常を彩ってくれている存在になると思ったんです。本当に見ていて羨ましいぐらいですよね」
――まさに一生の思い出ですね。
「思い出ですよね。なんか年を取って演劇部のみんなで集まった時に、『幽霊がいて、ドロメがいてさ……あの時楽しかったなあ!』という話になるんじゃないかと思います」
陰のヒロイン・木下美咲と堀ようこ
――今回、『ドロメ』役の木下美咲さんが素晴らしかったです。木下さんとも以前、オーディションでお会いしたんですか?
「いえ、今回が初めてです。ダメ元でお願いしたら、今回出てくれることになって驚きました。『共喰い』を拝見してすごく良い女優さんだとずっと思っていたのでうれしかったです。
今回のように、髪が長いとかわいらしい雰囲気ですが、実際はかなりショートカットで、大人っぽい方でした。髪型で印象がガラッと変わる女優さんですね」
――ぜひまた内藤監督の作品で木下さんがみたいです。元々、幽霊役として木下さんにオファーされたのですか?
「そうですね。幽霊役は生き生きしているよりは生命感がない、細くて目が大きい女性をイメージしていました。桐越先生が小春を気に入っていることに説得力が生まれるように、森川さんと雰囲気が似ている方を探していたので、木下さんでよかったです。桐越先生は、細身のちょっと病気っぽい女性が好きなんですよね」
――桐越先生が小春(森川葵)に頭ポンポンするシーンに繋がっていくのですね (笑)。
木下さんの首が締められる時の、目がアップになるのが、Jホラーっぽさを感じて怖かったです。
「眼球のアップが好きなんです。『ライチ☆光クラブ』のロケットパンチ打つ瞬間とか、『先生の流産させる会』だとお腹打たれるシーンなど、目のアップはほぼ毎回撮っていますね。白目が大きくなるように開き方も細かいイメージを共有しました。現場では何回も撮り直しましたね」
――泥まみれになって、痙攣しながら迫ってくるドロメも木下さんが演じられているんですか?
「木下さんがドロメに取り憑かれて、泥まみれのバケモノになっている設定なんですけど、変身後は別人が演じています。普段、闇や死をテーマにした暗黒舞踏をやっている堀ようこさんという女優さんにお任せしました。編集でスピードは少し変えていますけど、基本的には僕がイメージを伝えて、堀さんの発想した動きがそのまんま映っています」
――監督もドロメの動きについて演出されたんですか?
「はい。『襲う側だけど、本人は苦しんでいるように見せたい』と伝えたら、堀さんが痙攣をまじえた見事な動きをしてくれました」
――そうだったんですね! 堀さん演じるドロメは腕を上げて、手を前に出して迫って来たのに、ドロメ化した他の人たちは手を下に垂らしたまま迫って来ていたのが印象的でした。
「ドロメ化した役者全員にも、堀さんと同じ動きを試したんですけど、ちょっと微妙で。動きの大きなバケモノ芝居は、堀さんのように、ある程度舞踏の素養がないと難しいと判断したんです。そこで、堀さんがドロメチームの中心となって、周りのドロメ化した人物はあまり意識がないという設定にした結果、手も頭も下げたままで動いてもらいました。堀さんだけは足し算で、周りの人は引き算でいく作戦です。
みんなが顔を上げると、統一感がなかなかとれないんですよね」
――泥を口から垂らすなど、ドロメへの変身は大変そうですが、役者さんにとってはやりがいがある面白い役なのではないかと思いました。ドロメ化の撮影は苦労されましたか?
「肌を出して、濡れた泥を身体に塗るので、役者の皆さん寒かったと思いますね。
3月に撮影していたんですけど、まだ気温も低かったので。
キャストでいうと、大和田さんがゾンビ好きなのを元々知っていて、今回お願いしたんですけど、上手でしたね。菊池さんや岡山くんもよかったです。
皆さんにはシンプルな動きの指示をして、演じてもらいました。各自がどうしたら気持ち悪く、怖くなるかを探ってもらった感じです。そこから全体を見て、統一感のあるように調整する指示をしていきました」
――菊池さんのドロメは“女の形をした妖怪”という感じで本当に怖かったですね……。ちなみにドロメが口から垂らす泥は何で作ったのですか?
「あんこです。『牛乳王子』の牛乳はピシャっとかけていましたが、『ドロメ』ではドロッとした、ネチョッとした感じが欲しかったので、色んなパターンでやった結果、あんこになりました。口に含むものなので、食べ物じゃないといけないんですよね」
森川葵の衣装が象徴するもの
――冒頭で男子篇も、女子篇も両方「パーパパラッパ」という歌を歌っているシーンで始まったのですが、どのような意図があったのですか?
「10代の少年少女の魅力をセリフのやりとり以外でも出したかったんです。“小説やマンガにはない心地よさ”を表現したいと思った時に“歌ってみんな踊る”という描写が映画だからこそ伝わる手法だと思ったので」
――小春は最初からその歌にのっていなかったですね。
「そうですね。曲にのらないことで、みんなとの距離感を表しました。男子と女子が一緒に花火を上げるシーンでの歌は、クロスハイタッチをしているところやエンドロールにもアレンジを変えて使っています。冒頭と花火のシーンは自分でも気に入っています」
――『ドロメ女子篇』の冒頭で女子三人が素足で、森川さんだけ黒タイツだったのが印象的でした。
「小春には恋愛に対するトラウマがあるので、あまり女性らしさを出せない子にしようと考えていました。彼女だけ脚を出さないようにするのは衣装部からの提案でしたね。
髪の毛もこけしみたいにベリーショートになっています。
また、変化が欲しかったので、他の3人はジャージも結構可愛いけど、森川さんはあえてダサいジャージを着てもらいました。序盤でダサい服を着ていた子が最後にロリータファッションという女の子らしい服を着ることで、恋愛にもう一度向き合えるというストーリーになっています」
――衣装が小春の心境を表していたとは……! ピンク色のジャージから身体のラインを出したスパッツまで、練習着はみなさんのキャラクターを表現していますね。
「そうですね。キャラクターが立つ衣装を着せたいと言う願望は強くありました。
三浦さんは外したロックTシャツを着ていて、遊馬さんはピチピチな感じで……etc.と衣装さんと決めていきました。
森川さんにはダサいからこそグッとくるジャージをすごく着せたかったので満足しています」
――ジャージがお好きなんですね(笑)。
「駅のホームで運動部の部活帰りであろうジャージ姿の女の子を見かけると、かわいいなーと思ってしまいます。着させられている感というか……機能性だけを重視している服には独特の可愛さがありますよね。
逆にオシャレの主張が強い人は苦手で、例えば『私、ゆるふわ系です!』という自意識の圧力を感じて、『ウザいなー』と感じてしまう時があります(笑)」
『パズル』の夏帆にも通じる、『ドロメ女子篇』の森川葵覚醒シーン
――内藤監督の他作品にも通じる強いこだわりを感じたのは、森川さんがバットで次々にドロメをなぎ倒していくシーンです。『パズル』の夏帆さんのメッタ刺しに続き“弱い立場にあった女子が暴力を振るう”名シーンでした。
「僕の欲望なんでしょうけど、弱い女性が暴力的になった瞬間に、いちばん感動するし、萌えるんです。
ラジオの『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』をよく聴いているんですけど、中でも『有吉のそれわかるー!』という、コーナーが好きなんです。“どの女優からどんな風に乱暴されたいか”という願望をリスナーが送って、有吉さんが『それわかる!』というだけのコーナーなんですけどね(笑)。『真木よう子から左わき腹に蹴りを入れられたい』『エマ・ワトソンから顔面に唾を吐きかけられたい』『テイラー・スウィフトにおしっこをかけられたい』など、共感が止まらなくて(笑)。
『ライチ☆光クラブ』でも、中条さんがゼラを罵倒するシーンは原作より過剰にしています」
――“綺麗な女の子が誰かをボコボコにする姿が見たい”ではなく“ボコボコにされたい側”なんですね!
「されたい側ですね。僕もラジオの前で『それわかるー!』とよく言っています」
――中条さんに注目して『ライチ☆光クラブ』をもう一度観ます! ちなみに森川さんは現場ではノリノリで、屋上のシーンを演じられたのですか?
「いや、バットで人を殴ることに遠慮していましたね。もちろん森川さんはダミーのバットを持って、受ける人はお腹にマットを仕込んでいます。
現場では『遠慮しちゃうとそれが画に出るから、むしろ思い切りやったほうが、テイクが少なくて済むんだよ』といっても、遠慮してしまう……時間をかけて撮りました」
――容赦ないシーンになっているので、そのエピソードには驚きです。
そのシーンで、ドロメたちから勢いよく吐き出される泥は、CGですか?
「そうですね。口から吐き出した少量の泥をCGで加工して大量にみせています。
担当のスペイン人技術者ベニートさんが最初に出してきた映像をチェックしたら、すごくいっぱい吐いていて驚きました。
本当はあんなに吐かせるつもりはなかったんですけどね(笑)」
――すさまじいスピードと量ですよね(笑)。
「それでも一番最初はもっと激しかったんですよ。ドバーっと滝のようにエンドレスに吐き続けていて、さすがに量が多すぎで(笑)。
短く、パンッと吐いているように修正してもらいました」
――ベニートさんはノリノリだったんですね(笑)。
もう一点細かい箇所でいうと『ドロメ』の声はどなたの声を録音されたのですか?
『呪怨』の俊雄くんの声を少し柔らかくしたような音が耳に残っています。
「ドロメ化した人物たちは僕の声です。監督が声を出す『呪怨』スタイルですね。ドロメちゃん本体は、着ぐるみの中に入った女性の安田真弓さん。口に湿ったパンをつめこんで、『おおお』とうめいたり、パンを吐き出してはないものの嗚咽してみたり、試行錯誤しながら録音しました。スタジオの足元がパンくずだらけになってしまい大変でしたね」
――幽霊の声の録音は楽しそうですね!
口にふくんだ“湿ったパン”にはどのようなこだわりがあったのですか?
「前作の『ライチ☆光クラブ』でゼラ役の古川雄輝さんにパンを口に含んで、神様のセリフを言ってもらっていました。
でも、もごもごしすぎてセリフがよく分からないので、ちょっとパンを含ませるのを抑えたんですよ。今回は謎の呻き声なので、思い切り口に詰め込んでやりました」
前作『ライチ☆光クラブ』では、内藤監督お得意であり、今までの作品よりもさらにドス黒く進化させた“徹底した残酷描写”と原作ファンも納得の高いフィクション性を保ったアンダーグラウンドな世界観が話題を呼んだ。
その分、今回の『ドロメ』では、『ライチ☆光クラブ』でフィクションを成立させるために切り捨てた“青春まっただ中にいる高校生のリアルな心境”を“岡山天音の男子校的なアドリブ”を筆頭に、めいっぱい解放した。
今後の新作も既存のイメージを核として、さらに幅の広さを見せてくれるにちがいない。
シネマート新宿では、内藤監督の過去作が、毎週金曜日の『ドロメ』最終回上映後に一挙上映されるそう!
新作が待てない人、初期の内藤監督の衝撃に触れたい人は注目だ。
(取材・文:小峰克彦)
『ドロメ【男子篇】』、『ドロメ【女子篇】』
監督:内藤瑛亮『先生を流産させる会』『パズル』
脚本:内藤瑛亮、松久育紀『先生を流産させる会』
主演:小関裕太、森川葵|出演:中山龍也、三浦透子、大和田健介、遊馬萌弥、岡山天音、比嘉梨乃、菊池明明、長宗我部陽子、木下美咲、東根作寿英 他
製作:「ドロメ」製作委員会(日本出版販売、TCエンタテインメント、TBSサービス、是空、レスパスビジョン)|2016年|カラー|5.1ch|ビスタ|【男子篇】92分|【女子篇】98分|配給:日本出版販売|宣伝:太秦|©2016「ドロメ」製作委員会|3月26日よりシネマート新宿ほか全国順次”2作品同時”上映中!
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【STORY】
海が見渡せる山の上にある男子校・泥打高校と山の麓にある女子校・紫蘭高校は来年から共学になることが決定している。来年の統合を見据えて両校の演劇部は合同合宿を男子校で行う事となった。颯汰(小関裕太)たち男子校部員は女子との出会いに胸を膨らませ、女子部員たちの到着を待ち、小春(森川葵)たち女子校部員は男子との出会いに期待と不安を抱きながら男子校へと続く山道を向かう。その道中、女子たちは崖の下で泥まみれになった観音像を見つける。男子校に辿りつき、いよいよ男女合同合宿が始まったのだが、恐ろしく、そして奇妙な出来事が次々と部員たちに襲いかかる。そして、次第にそれは昔から村に言い伝えられている“ドロメ”の仕業であるという事が明らかになって行く…。果たして“ドロメ”の正体とは!?高校演劇部の合宿を舞台に同じ時間軸で進行する男子、女子の物語を2つの視点、2本の作品として描く新感覚の“シンクロ・ムービー”!【男子篇】で観るか?【女子篇】で観るか?甘酸っぱい恋愛あり、友情あり、どこか憎めない新種のクリーチャー“ドロメ”が巻き起こす、恐怖と笑いが入り混じる青春ダブルアングル・ホラーがこの春誕生!
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