女優・佐津川愛美「自信がない」の真意とは……?
『蝉しぐれ』『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『渋谷』といった多くの邦画で、この10年以上、強い存在感を出し続けている女優・佐津川愛美。2016年には、4本の映画作品が待機。その1本目を飾るのが、吉田恵輔監督の最新作『ヒメアノ~ル』でのヒロイン・ユカ役である。
『ヒメアノ~ル』は、女子をかわいく撮らせたら右に出るものがいない吉田恵輔監督の演出のもと、佐津川愛美演じるユカが、恐ろしいほどの魅力を放っている作品となっている。
さらに、我々“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン”チェリーとしては、濱田岳さん演じる童貞・岡田くんがこのユカと恋仲になっていく様子も、刺激的。まさに岡田くんのような青年を主要読者としている我々としては、ささりまくりの映画なのである。
そこで、今回、チェリーでは佐津川愛美さんにインタビュー。すると、佐津川さんからまさかの「自信がない」発言が。我々チェリーとシンクロするこの言葉の真意とは……?
チャラチャラしていない人が好き
――僕たちとしては、佐津川さん演じるユカが、岡田くんを好きになるという設定が、とても希望的でした。佐津川さんご自身は、岡田くんのような男性をどう思われますか?
「岡田くん、チャラチャラしていないところがいいですよね。私は、チャラチャラしている人が苦手なんです」
――さらに希望が湧いてきます!
「岡田くんは予告編では『冴えない』って煽られていますけど、世話を焼いてくれる面もありますよね。ユカちゃんは、最初に見た瞬間から、彼のことをいいなと感じていると思うんです。私自身も一目惚れって、すごく憧れているんですよね。私は、結構考え過ぎちゃうタイプなんで……。ちょっとファンタジーかもしれないけど、ああいう一目惚れができたらいいですよね」
吉田恵輔監督の「かわいい」を体現
――今回、佐津川さんが演じるユカも、ファンタジーなんじゃないかっていうくらいかわいかったです。
「本当ですか! 嬉しいです。原作のユカはもうちょっとクールなんですけど、今回は吉田恵輔監督の意向で、かわいい女の子にしたい、ということだったんですよね。でも、私は“男子がかわいいと思う女の子”は、なかなかわからないので、監督の理想の『かわいい』をひたすら演じていたという感じです」
初めての王道の“かわいい”役
――正直、佐津川さんの新境地なのではというくらい、かわいくて、射抜かれてしまいました……。
「安心しました! 王道のヒロインのストレートにかわいい役は、あんまりやったことがなかったんですよね。そのポジションに今までいなかったというか、これまでは、暗かったり、何かを抱えている……という役どころが多くて」
――確かに、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の主人公の妹役のような、何かを溜め込んでいるイメージだったので……。でも、今、明るく喋ってもらえていて、とてもギャップを感じています。
「あんまり喋らないほうがいいよ、ってよく言われるんですけどね(笑)」
周りを気にしないユカがうらやましい
――いやいやいや、喋っていただいても魅力は増すばかりです! では、ユカというひとりの女の子を、佐津川さんご自身が見て、どう思われますか?
「ユカは、思ったことをそのまま実行して生きてきたコっていうイメージなんですよね。周りを気にせずに、自分がやりたいと思ったことをするところがうらやましいですね」
――ということは、佐津川さん自身は、周りを気にするタイプの方なんですか?
「特に今までは、ユカとは真逆で、人の目をものすごく気にするタイプでしたね。これをしたらどう思われるだろう……なんてことを気にして生きてきてしまいました。でも、最近は、人の目を気にせず生きていこうって思うようになりましたね」
自信がないから周りの目が気になった
――確かに、人の目を気にされているような雰囲気は、デビューの頃から漂っていましたし、そういう役も多かったですよね。
「自分に自信がないから人の目を気にしてしまっていたんですかね。だから最近の私のテーマは、自分に自信をもって、明るく生きていこうってことなんです」
――逆に、僕らのテーマとしては、なんでこんなにかわいい女優さんが、自信がないんだろう、ってことなんですけど(笑)。
「ええっ、全然かわいくないですよー。かわいい女の子の役は、本当にかわいいコたちがやっていると思っていたので、今回のユカの役も、果たして自分にできるのだろうか、と自信がなかったくらいです」
2つのシーンがリンクするクライマックス
――ちょっと、ここまで言うのを控えていたんですけど……あまりに「自信がない」を連呼される佐津川さんに、もうひと褒めさせてください。『ヒメアノ~ル』では、ただかわいいだけじゃなくて、エロさもありましたよ!
「それは嬉しいです! 『佐津川エロいなあ』って言われたら嬉しい、って思っていたんですよね。クライマックスのシーンは、2つのシーンがリンクするような、監督の演出プランがあることを聞いていたんですよね。そこが印象に残ったらいいな、と思っていたので、リンクするもうひとつのシーンに登場されている山田真歩さんの姿勢や表情を研究するようにしていました」
――そうなんですね! その甲斐あってか、あの2つのシーンの相乗効果は本当に素晴らしかったです。完成された作品を見てどうでしたか?
「正直、最初に見た時は『私、もっとできたんじゃないかなあ』って思うところはありました。でも、どの作品もそうなんですけど、撮影のときに手を抜いたってことは一切ないんです。だから、大丈夫。今まで真剣に取り組んできたっていう自負はあるんです。自信がないことと、真剣に取り組んできた、ってことは別なんです」
かわいくない、自信がない……。佐津川さんから出てきた言葉は、“真剣に取り組んできたからこそ見える世界”を見据えての言葉なのかもしれない。
(取材・文:霜田明寛)
佐津川愛美さんから、チェリー読者へ独占メッセージ
映画『ヒメアノ~ル』
出演:森田剛 佐津川愛美 ムロツヨシ 濱田岳
監督・脚本:吉田恵輔
原作:古谷 実「ヒメアノ~ル」(ヤングマガジンKC所載) 音楽:野村卓史
製作:日活 ハピネット ジェイ・ストーム
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
配給:日活
公式サイト:www.himeanole-movie.com
©2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会