男の夢を具現化する天才監督にインタビュー!
森田剛さんの映画初主演作となった『ヒメアノ~ル』。監督を務めた吉田恵輔(よしだけいすけ 吉の字は「上が土」で「下が口」)さんは、『さんかく』といった作品をはじめとして、童貞性の強い男性や、若い女性がふとした瞬間に見せる恐ろしいほどの色気を描写させたら日本で右に出るものはいない名監督。まさに童貞をひきずる“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン”チェリー読者のためにいる監督……といっては失礼だが、尊敬してやまない監督だ。
さらに……!吉田恵輔監督は『ばしゃ馬さんとビッグマウス』で関ジャニ∞の安田章大さん、『銀の匙 Silver Spoon』でSexy Zoneの中島健人さんと、連続してジャニーズ俳優たちを起用してきた監督である。
そして我々は、ジャニーズを勝手に応援しているチェリーである。
(参考:岡田准一クンになりたい!ジャニオタ男子がエヴェレストトレーニングに挑戦)
ここは、話を聞きに行かない理由がない……! ということで、チェリーでは吉田恵輔監督にロングインタビュー。前編となる今回は、5月28日(土)公開の最新作『ヒメアノ~ル』について聞いた。
取材冒頭、我々が自己紹介をすると、「ちょうどいいサイトだなあ~」と相性の良さを笑いながら、アニキのように気さくに語ってくださった吉田恵輔監督のお話をご堪能あれ……!
男は自分を棚に上げて女子の浮気に傷を受ける
――チェリー読者たちは、佐津川愛美さん演じるユカにひたすら魅了され続けると思います。
「佐津川さんには、俺がかわいいと思うことだけを、ただひたすらやってもらったんだ。古谷さんの漫画は全部、モテない男が、すごくかわいい女のコに好かれるってパターンなんだよね。なんか夢があって、俺は好きなんだ。現実は違うけど(笑)」
――僕らとしても、今回含め、そういう吉田監督の作品に夢をもらっています。ただ、劇中で、濱田岳さん演じる主人公が、ユカに、これまでの経験人数を聞いて、答えてもらったにも関わらず、大きなショックを受けるところは非常に現実的でした。
「あれは、原作にはない、本当にあった話なんだよ(笑)。俺の男友達が22くらいの女のコと付き合ってて、過去の話をしてたらしいんだ。で、俺の友達は彼女に『ごめんね、俺は君と出会う前に100人の女とセックスをしているんだ。だから、正直に言ってもらって全然大丈夫なんだけど、これまで何人とした?』って聞いたんだって。そしたら、その22くらいの彼女が『え、50人……くらい?』って返してきたらしくて。俺の友達はそれを聞いて、めっちゃ傷ついて『もう別れる!』って取り乱してたんだ」
選ばれし者への壁を乗り越える男を描きたかった
――めっちゃ面白い上に、僕らの心に突き刺さってくるエピソードですね。確かに、男は往々にして自分のことを棚に上げますよね。
「だよね。自分はつきあってる間に、他の女のコと3回浮気してても、平気な顔してるくせに、彼女が他の男と1回でも浮気したら気が狂いそうになるよね」
――ですね! ですね! あとは、初体験の年齢も重要です。初体験の年齢が中学生だった場合、それはもう別世界の住人です。
「高校生になったら、彼氏もできて、初体験もするのは許すよ。でも、ユカみたいに14歳なんて言われるとね。もうそれは、クラスで何本かの指に入る選ばれし者。そうすると、自分が選ばれていない側であることを自覚することになってキツいよな。
男がこじらせてた場合、初体験が自分は20歳超えてて、相手が14歳だったら、勝てる気しないよね。経験人数も、絶対に相手の方が経験あるわけで、もう大きな壁だよね。今回はその壁を乗り越える男を描きたかったんだ。そのショックを受けてる男ってさ、ちょっとかわいいじゃない」
――なんだか、自分たちが肯定された気分です! 他の童貞的な描写で、思い入れのあるシーンはありますか?
「一緒にコンドームを買って帰るところだね。男が大胆な勝ちを確信した瞬間を大事にしたんだ。童貞には経験値も勇気もない。それを女子がリードしてくれる感じが良いよね」
――しかも、リードしてくれる女性なのに、そこはかとないロリ感があるという。
「俺が好きなのは、ロリ系なんだけど、年齢ではないの。一番好きなタイプの女性は、YUKIさん。俺より年上なんだけどね」
振った女は思い出さないけど、振られた女のことはずっと覚えてる
――ちなみに、監督の『さんかく』では、高岡奏輔さん演じる主人公が、小野恵令奈さん演じる中学生に恋をして夢破れますよね。ロリ系……というか、幼い女性への恋は結実しないものなのでしょうか?
「要は、自分のものにできちゃうとダメなんだよ。一番いいのは、幼さを武器に俺らを翻弄してくれること。『ロリータ』っていう映画があるんだけど、あの映画に出てくる女子は猫みたいなんだよ。さっきまで懐いていたのに、すっていなくなる。そうすると、その猫のことは忘れられない。振った女は思い出さないけど、振られた女のことはずっと覚えてるだろ?」
――思いっきりそうですね! いつも思い出すのは、ヤれた女の顔ではなく、ヤれなかった女の顔です。
「でも、それが1番幸せなんだよ」
相手の好きを確信すると、慣れと飽きが始まる
――ど、どういうことでしょうか?
「相手が自分のことを好きだ、って確信した瞬間に慣れと飽きが始まるんだよ。悲しいことに、常に自分を傷つけたり、裏切ってくれないと、夢中にはなれないんだよ。その女の傷つけ方が酷ければ酷いほど、そいつのことは、自分の根っこの深い深い部分に残るんだよ」
――その話は、男女が逆だとどうなるんでしょうか?
「うーん……同じじゃないかなあ。女も、『○○ちゃん大好きだよ』っていつも言ってくる男より、ちょっと浮気してそうだけど、会うと優しい男のほうが、ずっと残りそうだけどね。だから……これまでの話をまとめると、童貞ってある意味幸せってことなんだよ」
チェリーと書いて“宝物”と読む
――再び……どういうことでしょうか?
「スラム街の奴が、マクドナルドでビッグマックを1回食べてみるとするよね。これ、超幸せだろ?もしかしたら、ビッグマックを食ったあとの人生で、さらにステーキが食べたい、みたいな欲望が湧いてステーキも食えるかもしれない。でも、富裕層の奴はもう、その先がないんだよ。今以上がないから、『今日もあのステーキでいいか』ってなるんだよ」
――なんだかお話を伺っていると、スラム街の人たちの人生のほうが、富ではない豊かなものがある気がします。
「そう、スラム街の奴は夢を見れるんだよ。ビッグマックを食う夢を見れるんだよ。童貞の奴も同じだよ。チェリーボーイの奴はそのチェリーの時間を大事にしろよ!」
――なんだか、人生を肯定できるような気がしてきました!
「チェリーって書いて“宝物”って読まして」
――わーーーーありがとうございます!
「あれ、でもこのサイトをやってる君たちみんなが童貞っていうわけじゃないんだよね?童貞時代のことを強く覚えてるってだけだよね?」
――残念ながら完璧な童貞ではないですね……。
「知ってしまったのか……」
――はい……。でも、僕たちが宝物を持っていたことは忘れずに生きていきたいと思います……。
監督も実はジャニーズ好き
――ちなみに僕たち、オトナ童貞のためのサイトでもあるんですが、ジャニヲタ男子の編集長の意向によって、勝手にジャニーズを応援するサイトでもあるんです。
「俺もジャニーズ好きなんだよ! 真面目に向き合おうとしてたら、好きになっちゃったんだよね。森田剛くんに対しても、もちろん仕事中は普通に一緒にいられるんだけど、コンサートに行くと、一瞬でファンに戻るんだよ(笑)。もう森田くんが別人に見えて、『あれ、今、ステージの上から気づいてくれた?』って感じでテンションが上がっちゃうんだ!」
――男だけど、ステージ上のジャニーズの方と目があったり、手を振られるとテンションが上る感じは、非常によくわかります!(笑)監督がジャニーズ好きであることが伝わってきて嬉しいです!
ジャニーズは常に一生懸命
――では、ここからは今回の森田剛さんを中心に、ジャニーズ好きでありながら、3本連続でジャニーズ主演映画を撮られた監督に色々と聞ければと思います。
“V6の森田剛”を好きであればあるほど、今回の役に森田剛さんを当てはめるのは勇気がいったんじゃないでしょうか?
「そこは逆に本当の意味で森田剛くんを知っていたから、キャスティングできたのかもしれない。森田くんの良さって、暗い目をして、暗い芝居ができることなんだよ。『いいお父さん役をやってもらおう』と思ったら、もっと他のジャニーズの人がいたかもしれない。でも、森田くんはそっちじゃない。これまでの舞台で、暗い役を演じた経験もあるしね」
――確かに、これまで暗い芝居をしてきた集大成のような森田剛さんを見ることができました。撮影現場での森田さんの印象を教えてください。
「落ち着いているけど、話しかけると、テンションを上げてくれる。あとは、ピュアだね。芸能界に20年もいたら、ちょっとぐらいスレてもいいだろうって思うんだけど(笑)。
でもこれは、今まで一緒にやってきたジャニーズのみんなに共通してるかもしれない。みんな一生懸命で、ピュア。常に仕事をもらいたての人たちのような一生懸命な姿勢なんだよ。すごいよね。俺の地元の友達にはひとりもいないよ、そんなピュアな人たち(笑)」
ジャニーズタレントの魅力を語ってくれた吉田監督。次回は、その監督の鋭い観察眼や創作テクニックに迫ります!
(取材・文:霜田明寛)
映画『ヒメアノ~ル』
出演:森田剛 佐津川愛美 ムロツヨシ 濱田岳
監督・脚本:吉田恵輔
原作:古谷 実「ヒメアノ~ル」(ヤングマガジンKC所載) 音楽:野村卓史
製作:日活 ハピネット ジェイ・ストーム
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
配給:日活
公式サイト:www.himeanole-movie.com
©2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会