“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”オープン1周年を迎えて、赤字の危機に瀕している編集長の霜田。そこで、ネット業界の賢人たちに、あるべきネットメディアの姿を追い求めて、話を聞きにいくことに。
セブ山さんにマネタイズの心得を聞いた前編はこちら!
ネット業界サバイブの旅・2017。
続いてお話を伺うのは……。
人気ツイッタラー・田中泰延さん!
わたくし霜田とはなんとこの日、初対面です!
<プロフィール>
田中泰延(たなかひろのぶ):1969年・大阪生まれ。現在無職で、青年失業家を自称する。2016年末まで大手広告代理店・電通で働いていたコピーライター・CMプランナー。その言葉のセンスは糸井重里氏にも賞賛されている。『街角のクリエイティブ』で『田中泰延のエンタメ新党』を連載中。 Twitter:@hironobutnk
実は田中さんとはSNS上での交流はあったものの、やっとお会いできました。しかし、記事を更新する度にRTしてくれる田中さんなら、きっとチェリーのことをわかってくれているはず!
今もっとも信頼できるテレビ指南。もはやこれ書籍。なのにタダで読めるんですよ皆さん。しかもまだ前編。柴田秀利、正力松太郎、井原高忠…仕組みそのものを作って世の中を変える男たち。
指南役のTVコンシェルジュ「王者日テレの歴史」
https://t.co/Yjaerz3T69— 田中泰延 (@hironobutnk) 2017年3月11日
霜田:いつも指南役さんの連載『指南役のTVコンシェルジュ』を絶賛していただいてありがとうございます!
田中:あの連載、素晴らしいですよね。チェリーさんのブッキング力は素晴らしいですが、なかでも指南役さんというチョイスはちょっと異質でもあり、素晴らしいです。というか、この短い間にもう3回も素晴らしいと言いましたね。
霜田:ありがとうございます。
田中:言ってしまえば、指南役さんの連載がタダで読めてしまうというのがチェリーさんの素晴らしいところですよね。もうあれは本ですよ。
霜田:素晴らしい感想をありがとうございます。4回目の素晴らしいが出ましたね。
田中:よく数えてください。5回言ってます。
霜田:『指南役のTVコンシェルジュ』は、本になるようなクオリティのものをWEB上に無料でおいておきたい、というところから始めたものでもあるので嬉しい感想です。指南役さんには、あんなに素晴らしい原稿をいただけて、頭が上がりません。
田中:指南役さんは「ザ・リアル・ジェントルマン」だと僕は思っています。今日直接お会いして、さらにその思いを強めました。エンターテインメントの文法、というものをきちんとふまえて言葉を繰り出される。ちなみに、殺伐としたTwitterの世界の中で、本当の意味でのジェントルマンは、2人しかいないんですよ。糸井重里さんと、指南役さんです。
霜田:ほほうー! ジェントルマン、とはもう少し詳しく言うとどういうことなのでしょうか?
田中: きっとあれだけフォロワーがいれば、変なリプライが飛んできてると思うんですよ。それなのに、マイナスの発言がないんですよ。2人はずっとプラスの発言のみ。僕なんて、毎週キレてますよ(笑)。
霜田:それは、なんでなんですかね。
田中:指南役さんの本にもありますが『ジョージ・クルーニーだったらどうする?』という思考法だからですかね。つまり紳士たる者、どんな時でも余裕を持って振る舞えと。まあ、せっかく横にいるので、ご本人に聞いてみましょうか。
(同席してくださっていた指南役さんに)
指南役:いえいえ、そんなそんな。でも、ひとつ言えるとしたら、かっこいいオトナたちを見てきているから、じゃないでしょうか。
田中:やっぱり、指南役さんはホイチョイ・プロダクションズと深く関わるお方ですからね。ホイチョイのみなさんは、馬場康夫さんはじめ、「育ちがいい」んですよね。「貧しくない」って、文化を作るのには大切な側面もあるんですよ。人を恨むとか妬むといった感情とは無縁で、ひたすら楽しもうというアイデンティティなんでしょうね。
霜田:そこは、指南役さんの連載を起点に、広まってもらいたい空気ですね。貧しい貧しくないといえば、さてさて、ここからはお金のこともお伺いしたいのですが……。
田中:明日、失業保険をもらいにいく僕にそれを聞きますか!
霜田:すみません(笑)。大手広告代理店を退職するという英断をされた田中さんだからこその、お金感もあるのではないか……と。
田中:お金の話といえば、いまはコンテンツはタダで読める時代だね、という話になるんですが、チェリーさんは突如入ってくる動画広告のような、記事を読んでいるのを遮るような広告を入れたりしていないですよね。
霜田:そうですね。読んでもらうことが第一なんで、読むことの邪魔になるものは本末転倒だと思いまして。
田中:これは、メディアコンサルタントの境治さんもおっしゃっていましたが、ああいう、スマホで記事を読むときに急に画面を邪魔するような広告って、面白くなくて、誰の得にもなってないですよね。今はスマホで広告を見せるときに、読む側も喜んでくれるやり方を、いちから考えないといけない時期だと思うんです。それを思いつけば21世紀の佐藤雅彦さんになれるのだと思います。
霜田:確かに……それはもはやWEB業界全体の課題ですね。そういった広告とはまた別の、お金の儲け方として記事広告というものがあるのですが、それについてはどうお考えでしょうか。
(ここで、同席していた阪南大学国際コミュニケーション学部教授の大野茂先生も参戦!)
<プロフィール>大野茂さん 1965年東京生まれ。電通〜NHKでの勤務を経て、現在、阪南大学教授・関西学院大学常勤講師。研究分野はメディア・広告・キャラクター。著書に『サンデーとマガジン~創刊と死闘の15年~』(光文社)など。
大野先生:記事広告が難しいのは、企業の宣伝部の人もよくわかっていないから、PV(ページビュー)や、接触回数でしか、上司に報告できない、ということなんですよね。そして、その上司たちは、さらによくわかっていない。
今の20代半ばの人が中間管理職になるくらいにならないと、効果的なWEB広告へのコンセンサスはなかなか得られないと思うんですよね。記事広告のガイドラインもこれからより厳しくなっていくと思います。ユーザーの目も鋭くなっていくから、“スポンサーにやらされている記事”はすぐバレるようになると思います。そうすると、広告効果とPV数は比例しなくなりますよね。
霜田:そうですよね。ただ一方で、スポンサーに頼まれずに、自発的に、本気で商品を褒めても、“それでお金をもらう”ことまでには大きな壁があるような気がします。
大野先生:ええ、最近の『鳥貴族』の盛り上がりには、田中さんのツイートのパワーがかなり寄与していると思うんですよね。でも、『鳥貴族』からお金をもらっているかといえば、一銭ももらっていない。逆に、例えば「本当は田中は『鳥貴族』に金をもらってた!」なんてことになったら大炎上でしょう。
田中:一銭ももらっていませんからね(笑)。好きでやってるから、熱意が伝わるんでしょう。でも、大金を稼がなくても、好きが伝わったほうがいいですよ。僕自身もそうだけど、自分の“好き”が伝わることをやって、ギリギリ食えればいいと思ってるんですよ。
霜田:もはやWEB業界どうこうに留まらず、“生き方”を教えていただいた気がします。田中さん、指南役さん、そして大野先生、ありがとうございました! しかし、初対面なのに田中さんのいきなりの仲良し感はなんなんでしょう(笑)。『チェリー』でもなにか始めてもらえそうな予感がします。
<田中さんの教え>
大金をもらうことよりも、本当の「好き」を伝えることのほうが、大事。
田中:でも小金とか中金くらいは欲しいです。はい。
そんなこんなで、濃厚な大人たちとの時間は過ぎ……。個人活動している方々のお話が聞けたので、次は、組織に属する人に話を聞きにいく方向に。
個人だと「ギリギリ食えれば……」という発想にはなれても、企業だと「いやいやそんなのぬるいね!」ということになりかねない……!
ネット業界サバイブの旅もついに佳境に。次回は、サイバーエージェントグループのアノ人にお話を伺います!
後編はこちら!
セブ山さんにお話を伺った前編はこちらです!
(取材・文:霜田明寛)