有村藍里、独占ロングインタビュー
16歳から芸能活動を始めたグラビアアイドルが、女優・有村架純の姉であることが発覚したのは2年前。全く意図せぬ夕刊紙のスクープ記事だった。それから2年。目立った活動を控えてきた彼女が、芸名から本名の有村藍里に改名し、活動を開始。5月には写真集を発売し、積極的なテレビ出演を続けている。
国民的女優の姉であることを公言し、バラエティに出演することで、時に批判の声も浴びることになる。今、彼女は何を考え、なぜ人前に立つのか。
この度、忘れられない何かをひきずって戦う人を応援する“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”では、有村藍里さんに独占ロングインタビュー。
“有村架純の姉であるという運命”を背負ってしまった、ひとりの女性の胸中を聞いた。
芸名から本名に改名 決意のきっかけ
妹のことが報道されてしまってからの2年間、ずっと悩んできました。私が活動してしまうと、妹に迷惑がかかるんじゃないか、と考えたこともあります。妹はどう思うのか。母はどう思うのか。報道されてしまった以上、 “有村架純の姉”と言われることは、絶対に前に出てきてしまう、切っても切れないものなので。どう仕事をし、生きていくべきなのか悩み続けました。
ただ今年、27歳になるということもあって、この先、後悔なく生きていきたいという思いが強くなりました。16歳で芸能界に入って、この10年、ずっと「自分を変えたい」と思ってやってきました。でも、振り返ったときに、甘えがあったり、熱意が足りなかったり、なんとなくやってきていた自分のことが恥ずかしくなったんです。
家族には仕事の話をしづらい時期もあったんですが、今後どうしていったらいいか、ポロッと悩みを吐露したら、妹は「別に好きなことしたらいいやん」って。母も「有村藍里という名前が好きだから、お母さんは本名で活動して欲しい」と言ってくれました。
ちょうど、写真集のオファーをいただいた頃ですかね。新しい一歩を踏み出すいい機会だと思って、そこから徐々に、本名でやっていく決意が固まっていきました。
家族に嫌われることが怖かった
本名とはいえ、有村の苗字で活動することは、売名行為といった批判を受けるリスクもある。怖くはなかったのだろうか。
私にとって、一番怖かったのは家族に嫌われることなんです。本名で活動することを家族がどう思うかが気になって、なかなか母にも妹にも自分から言い出せずにいました。でも、話してみたら二人とも好意的で、応援すると言ってくれたので、その時点でその怖さは消えました。
その他の人たちの意見が気にならないかといえば、それはもちろん気になります。改名して最初にバラエティ番組に出るときは「世間の皆様を不快にさせるんじゃないか」と色々考えました。ただ、私の場合、考えすぎると何もできなくなってしまうんです。「これは言っちゃいけないな」なんて考えすぎてしまって。今までもそれで後悔することが多かったので、もう今回は何も考えずにやろうと決意しました。自分でも意外だったんですが、そういう感じでバラエティに出て思いっきりやると、わかってくれる人はわかってくれるんですよね。
ブスだから、どうする?
逆に、マイナスな意見ばかり気にしていると、私のことを本当に応援してくれている人に失礼だな、と感じるようになりました。
容姿をブスと言われるのは前からなんですが、以前は「あー、私ってブスなんだ……」と落ち込んでいたんです。ただ最近は「じゃあブスだから、どうする?」と考えられるようになったのが大きな変化です。髪型やメイクやファッションで、女のコはいくらでも変われると思うんですよ。私もかわいいって言ってもらえたら嬉しいし、年齢とか気にせずに、色々と研究して頑張ろうと思っています。誹謗中傷も、全部ありがたいと思って受け入れると、嫌なことがなくなるんです。そうやって、マイナス思考からプラス思考に切り替えたら、仕事も楽しくなってきて、私にとってありがたいお話も、舞い込むようになりました。
不安だった写真集 「守るものは何もない」
ただ、今でこそ本名にして、写真集を出せてよかったと心から思えますが、露出度も高いですし、最初は不安でした。私、自撮りが得意な方なんですよね(笑)。でもそのせいで「自分はこの角度じゃないとダメだ」っていう思い込みも激しくて。
写真集の撮影では、下から仰ぐように撮られたカットも多いので「顔のお肉、大丈夫かな……」なんて不安もよぎりました。ただ出来上がりをみたら、自分の思い込んでいた角度以外でも、キレイに撮っていただいて。カメラマンさん・スタイリストさん・ヘアメイクさんといった皆さんのお陰で、固定観念を覆されたような感じです。
思えば、自撮り写真のプロとして有名になりたいわけではなく(笑)、仮にブサイクだったとしても、テレビで動いている姿もひっくるめて、自分ですし。なんでも晒そうと思えるようになったのも、この写真集がきっかけです。悪い意味ではなく、もう、守るものは何もないんです。
自分でも「芸能人に向いてない」と感じる
話を聞いていて、10年間タレントとして活動していながら、全く前のめりではなく、明るいタイプでもないことに、いい意味での違和感を感じた。思えばバラエティー番組出演時には「私には何もない」と過度に自虐したり、過去には共演者に「愛想がない」と言われる場面もあった。
昔は、グラビアアイドルがたくさんひな壇に座って喋るような番組に出させてもらったこともありました。「グラビアアイドルだから、もっと元気ではっちゃけたイメージで頑張らなきゃ」と思っていたんですが、実際は、全くそういうタイプじゃないので……。
最近は、素で番組に出ているせいもあってか「芸能人に向いていないんじゃない?」なんて意見もよく目にします。でも、それ、自分でも感じてるんです(笑)。「人前に立つの、向いてないんやろうな」って、いつも自分で思ってます。でも、やれることはやりたいし、後悔はしたくない。やらないで消えるくらいなら、やらせてもらえる環境があるうちは、なんでもやりたいんです。
ちなみに、「私には何もない」っていうのは、自虐じゃなくて本当です(笑)。誇れるような特技も、深く語れる趣味もない。今は、そんなありのままの私でも必要としてくれるオファーがあるなら、なんでもやってみたい、という心境なんです。でも、写真集の握手会でもファンの方にもそういう方がいたんですが、少しずつ、こういうタレントっぽくない私が好きだって言ってくれる人も出てきて、それは本当に嬉しいことです。
今は忘れられる方がつらい
最後に、ファンへの気持ちを問うと、涙を浮かべながら語ってくれた。そして、いわゆるアンチの人達に対しても正直な気持ちを吐露してくれた。
こうして私が何もかも晒して生きてもなお、好きでいてくれる人たち、さらには「そこがいい」って言ってくれる人たちには、本当に勇気づけられます。その人たちのお陰で、私は生きていられます。
一方で、誹謗中傷する人たちにも怒りはなくて。もちろん、ブスって言われ続けて「えっ、そんなに?」とは思います。でも、逆に、何も言われないほうが悲しいんだろうなって思うんですよ。今は、それだけ注目していただいているということなので、意見を言っていただけるほうが幸せだなって。忘れられるほうが、今はつらいと思います。
嫌いって言っている人たちも、いつか好きって言ってくれるように、頑張りたいと思います。
逃れられない運命を背負い、それでも前に立つ覚悟を決めた人の姿は強く、美しかった。
(文・取材:霜田明寛)
(photo:Yoichi Onoda)
有村 藍里(ありむら あいり) 1990年8月18日、兵庫県生まれ。26歳。身長162cm。 スリーサイズ:B83(Dカップ)・W60・H88
16歳から芸能活動を始め、関西を拠点に広告モデルやグラビアで活躍。 ’15年にそれまで伏せていた有村架純との姉妹関係を夕刊紙に報じられる。 ’17年春、自身初の写真集出版を機に実名に改名、再スタートを切った。■関連情報
有村藍里写真集 『 i 』
定価:本体3,300円(税抜) A4変型 96ページ 講談社より発売中
各電子書店にて、特典カットつきの電子版も発売中