「4月に拳銃の所持で逮捕されて、留置所に9日間入っていました。出てくると、マスコミやネットのリンチが多く起きていて…・・…それに対して、叩かれる人たちはすぐには反応しないんです。でも今、自粛してる場合じゃない。まわりには止められたけど、何かを作って立ち上がろうと思いまして、この映画を撮りました」
4月の拳銃所持事件への「返答」として作られた豊田利晃監督の最新作『狼煙が呼ぶ』。キャストには、渋川清彦、高良健吾、浅野忠信、松田龍平、中村達也ら日本映画を牽引する面々が集まった。
今年7月に完成すると、渋谷・福岡・京都でジャパンプレミア上映が行われ、すべてソールドアウト。16分の短編映画でありながら、全国の映画館が上映を熱望した。
そして満を持して9月20日より「全国一斉上映 のろし一揆!」として、公開が決定!
ミニシアター全国一斉公開も、16分の作品が映画館で通常公開されることも、日本初だ。
まさにお祭り興行初日、渋谷ユーロスペースで舞台挨拶が行われた。
「令和元年の5月1日に脚本を書いて、6月に撮影、7月に公開と、かなり短いスパンで作ったのに、9月に全国でミニシアター一斉公開ができたのは、映画館の心意気だと思います」と豊田監督はまず感謝を述べる。
豊田作品の初期から欠かせない常連俳優であり、本作主演の渋川清彦は「とにかく本当にかっこいい映画なので、何度も観て、毎回鳥肌立ってます」と絶賛。加えて「まあ、(鳥肌が立ったところは)自分が出てるところだったりするんですけど(笑)」と呟くと、会場から爆笑が起こる。
この映画が演技初挑戦となるmiuは「歳を取っても見返して、初心に戻りたくなる、そんな映画です」と思い入れを覗かせた。
この日の客席はモード系の若者からド派手な髪の中年男性まで、普段のミニシアターではあまり見かけない、ライブ会場のような顔ぶれ。客席からもかけ声が飛び、明るさが絶えない。
豊田監督は「短い映画じゃないとメッセージが込められないと思いました。16分で何ができるか考えた時に、新しいジャンルを作る気持ちで撮りました」と作品を紹介。
農民役として出演したロックバンド・アナーキーの仲野茂も「豊田監督の作品のファンで、(監督デビュー作の)『ポルノスター』から観させてもらっているんですけど、今まで映画はドラマだと思ってたんです。でも『狼煙が呼ぶ』は“画がかっこいい”これがまさに映画なんだな、と思います」と画の強さで楽しむ“新しいジャンル映画”としての魅力に触れた。
音楽を担当した切腹ピストルズの飯田団紅は「一揆って言葉は物騒に聞こえるかもしれないんですけど、本来はみんなで協力する・団結する・1つの目的に向かって集まるって意味らしいです。狼煙が上がって終わりじゃなくて、作り手とか観客とか関係なく、これから色んな場所でどんどん上がって行って欲しいですね。今日から始まる狼煙一揆を、一緒に盛り上げましょう!」と呼びかけた。
舞台挨拶が終わると、切腹ピストルズのライブが始まり、笛と太鼓、三線の爆音が「のろし一揆」のスタートを告げる。
『狼煙が呼ぶ』は フォーラム山形(山形県)、チネ・ラヴィータ(宮城県)、フォーラム福島(福島県)、シネ・ウインド(新潟県) 、あつぎのえいがかんkiki(神奈川県) 、 シネマ ジャック&ベティ(神奈川県) 、伏見ミリオン座(愛知県) 、シネマート心斎橋(大阪府)
シネ・ヌーヴォX(大阪府) 、元町映画館(兵庫県) 、シアターシエマ(佐賀県) 、日田シネマテーク・リベルテ(大分県)、シネマ5(大分県)、別府ブルーバード劇場(大分県)
宮崎キネマ館(宮崎県)、ガーデンズシネマ(鹿児島県)、Denkikan(熊本県) シネマ尾道(広島県) 、横川シネマ(広島県) 、上田映劇(長野県) 、高田世界館(新潟県)、ほとり座(富山県)、福井メトロ劇場(福井県) 、シネマート新宿(東京都)爆音映画祭in松本(長野県) で一斉公開中。
(取材・文:小峰克彦)
豊田利晃監督 最新短編映画『狼煙が呼ぶ』
企画・プロデューサー・監督・脚本・編集 :豊田利晃
音楽 切腹ピストルズ
エグゼクティブプロデューサー:出原知之 プロデューサー:村岡伸一郎 撮影:笠松則通 美術:渡辺大智
衣裳:宮本まさ江 メイク:佐藤光栄 助監督:佐和田惠 制作担当:鍋島章浩 特機:小塚和也 サウンド
デザイナー:北田雅也 スチール:菊池修、名越啓介 デザイン:大橋修 制作.配給:宣伝
IMAGINATION豊田利晃自伝 『半分、生きた』
2019年9月25日発売(※ユーロスペースなど劇場では販売中)