ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第9回「『推し』のせいでどんどん理想が高くなってしまいます」

チェリー誕生から6年。編集部平均年齢26歳で始めたこのサイトも、気づけばアラサーたちが運営するものに……。
「童貞をひきずっている」というコンセプトで始め、その志は変わらないし、相変わらずひきずり続けてはいるものの、編集長の霜田に至っては34歳。このままアラフォーを迎えてはマズいのでは。「オトナ童貞」が「大人」になるための儀式、それはもしかして今まで考えることすら避け続けてきた「結婚」なのでは!?

そう考えた霜田と創設メンバーの小峰は、チェリー編集部内唯一の女性であり既婚者、2人の子供の母でもある菱山に教えを請うことにした。

今回、議題に上がったのは「推し」がもたらすおもわぬ弊害。小峰は、「推し」がいることで恋愛しづらくなったと語るが……!?

■いまのアラサーは「推し活第一世代」で、理想が高い?

小峰「最近、一人の時間にSNSの『恋愛あるある』的なアカウントをよく見てしまうんですよ」

菱山「意外な趣味ですね」

小峰「20~30代前半の東京の私大出た男子、まさに僕なんですけど……のインサイトをよく言い当てているものが多くて、ハマります。例えば『“理想が高すぎる”と、見た目や性格の悪さよりも恋人ができない理由になり得る』とか。特にこの説には妙に納得します」

霜田「なるほど。恋人を作る上でのそもそも理想が高すぎる問題。婚活のネックにもなるとよく言いますよね」

小峰「僕なりに分析したのですが、その原因として『推し』と呼ばれる存在の影響が大きい気がしていて。というのも、僕らの世代って、中高生でAKB48が全盛期。思春期の頃に『お金さえ払えばアイドルに会えるのが当たり前』という感覚が植え付けられている『推し活第一世代』だと思うんです」

菱山「たしかに。その頃からいわゆる『推し活』が始まり、いまや女性にもメンズ地下アイドルやらホストやら、お金で会える身近な『推し』を作ることが広まっていますよね」

小峰「僕らの世代からお金さえ払えば『推し』に会えるという風潮が始まってしまったから、なかなか現実の恋愛にまで目を向ける余裕がなくなっている気がします。本来だったらまず向けるべきは自分の周りなのに。男女共に飛躍して『推し』を優先してしまっている現象が起きています」

霜田「それって、周りの恋愛対象と、『推し』を同系列に並べて比べることにもつながりそう」

小峰「聞いた話だと、自分が暮らすコミュニティにも『推し』がいて、いざその人と付き合えると冷めてしまう現象もあるらしいです」

菱山「『推し』の見えている部分だけで性格や内面を脳内で補完してしまう分、ちょっとでも自分の理想と違うと冷めてしまう現象ですね」

小峰「そのせいで、個人の幸福度も下がっていっているのでは? と感じます。実際に僕も20代の頃はあまりに手軽に理想の女の子にアクセスできるから、女性そのものに夢を見すぎてしまっていて。その結果、30歳を過ぎて寂しくなってきている状況です」

■親世代の恋愛とのギャップが激しい問題も

菱山「それは早く夢から覚めないと! あと、個人的には、我々世代の理想が高まっている原因はもう一つあると思っています。それは、バブル世代の恋愛とのギャップ問題。女性は、親世代の『男性が奢ってくれて当たり前』『高級車での送迎が当たり前』といった恋愛を、幼い頃から理想として植え付けられているから、白馬の王子様願望が強い。でも、今って男性がものすごく稼げるわけでもない。男性からしても、女性から高すぎる要求をされるのは困るし、普段、自分が与えたお金分の見返りを与えてくれる『推し』を見ている分、自分の彼女を『面倒だな』と思ってしまう。その悪循環で男性も女性も『お金』さえ払えば自分の理想を叶えてくれる『推し』を優先することにも繋がるのではないでしょうか」

霜田「男性も女性も、自分の見せたくない部分を見せなくて良い、相手の見たくない部分は見なくてもいい『推し』を推している方が恋愛よりラク、ということもあり得そうですよね」

■目の前の美女よりも、「過去の自分」と向き合ってしまうオトナ童貞

菱山「でも、AKB48の“お金を払って握手する商売”を国民が肯定していたわけですから。もう当たり前の価値観として「推し」からは脱却できないですよね」

小峰「しかもSNSを見れば美男美女だらけだから、『僕の近くにもこんな子がいるかもしれない!!』とも思ってしまいやすいですよね。嫌な話ですが、女性のルックスに対して求めるハードルがどんどん厳しくなっている気もします」

菱山「現代は男女ともにハードルが上がりきった状態なのだから、自分自身も高みを目指して、お金を介さずに理想の相手と恋愛するしかないのかもしれないですね。お金でショートカットしようとせずに、正攻法で関係値を作る努力をする」

小峰「やっぱり勇気を出すしかないんですかね。そこで問題なのが、美女を前にすると自分の恋愛の暗黒歴史を思い出してしまい、どうすることもできなくなってしまう問題

霜田「それはオトナ童貞あるあるかもしれない」

小峰「かなり前に、チェリーでもミスiDとデートする企画をやりましたよね。その時にも、デート中に目の前の女性が何を感じているかよりも、自分のコンプレックスと対話してしまっていました。デートの失敗・成功も、“過去の自分を越えたかどうか”という判断基準になってしまいがち」

菱山「この企画自体、2017年ですが、5年間で成長がないのが悲しきオトナ童貞の性……!記事でもお相手の女性から『楽しかったけど、ドキドキ感が足りなかった』と評されていますね。本当に、女性からしたらすごく寂しいし、誠実じゃないですよね。いつまでも過去の恋愛を引きずっているようで……」

小峰「大人になった今なら、その言葉の意味は理解できます。お相手に対してどうアプローチできたかだけに集中しないと、失礼でしたね。当時デートしていただいたユンさんごめんなさい!!」

■まずは、「過去の自分」からの脱却が必要!

霜田「ただ、あえて言いますが、明らかに容姿や肩書きが自分より“高い”相手と真正面から向き合うのは茨の道ですよ。当たり前ですが、僕らが“高い”と感じる女性は、さらに高い視点で男性を見ているから。傷つかないメンタルを持って恋愛をしないと、それこそ画面上で『推し』を見ていた方が確実に幸せですよね」

菱山「そうですね。過去に囚われている限り、成長の痛みがないからある意味ラクですもんね。過去の自分と向き合っていないで、まずは傷ついてもいいから目の前の美女に挑戦するメンタルがオトナ童貞には必要!

小峰「痛いところ突きますね……。でも、僕みたいにいわゆる文化系の人間ってどんなに頑張ってもいわゆる美女にモテることが難しくないですか? 美女は格闘家とかスポーツ選手と付き合うことが多いし」

菱山「そこは系統の違いといではなく、才能がある人は才能がある人じゃないと価値観が合わないんだと思います」

小峰「そう思うと元モー娘。のゴマキ(後藤真希)とオンラインゲームで知り合った一般サラリーマンのパターンに一番夢を見てしまいますよね、文化系男子としては。もちろん不倫はダメですが」

霜田「あれは夢ありまくりですよね(笑)。たぶん、動じないマインドが必要なんだろうな。よく女性アイドルも自分を知らない人を好きになるとか言いますよね」

菱山「だからゲームとかオンライン上での出会いの方が功を奏したんですかね。相手が誰だかわからないし。最近だとタレントの新山千春さんがマッチングアプリで彼氏を作ったことも話題ですよね」

■幸せな恋愛のためには、自分の「真の理想」を言語化しよう

小峰「結局のところ、僕はどうしたらいいのでしょうか。もはや上がりきってしまった理想は下げたくない。で、特に才能は無いし過去にも囚われているし」

霜田「過去に囚われるのは少しずつ変えていこうよ。ちなみに、菱山さん自身もジャニオタで『推し』がいるタイプの方ですが、現実の恋愛とどう折り合いをつけましたか? 『推し』もいながら結婚生活も楽しそうなので」

菱山「私の場合、SNSなどを見て『こういう人と恋愛したい!』とはあまり思わないタイプですね。『推し』と現実世界を完全に切り離しています。とは言え、自分の中で、楽しい恋愛ができそうな相手を細かく言語化しています。価値観が一致するように」

小峰「それってやっぱり顔面とか金銭感覚とか?」

菱山「いや、すごく具体的なのですが、私は『23区の道を理解していて運転できる杉並出身の男性』です(笑)」

霜田「ハードルが高いんだか低いんだかはわからないけど、かなり狭い!! なぜそんなに具体的?」

菱山「私のホームグラウンドが杉並なので、大体同じ生活水準だろうという予測と、デートをする際にスマートに車を走らせてほしいので……」

小峰「『年収○○以上! タワマン住みで!』とかではないんですね」

菱山「もちろんそういった方も素敵だと思うのですが、その条件だけだと、そこに至るまでの人生が見えてきませんからね。極端な話、もしかしたら投資詐欺でタワマンに住んでいるかもしれないし。私の場合、育ってきた環境がなんとなく同じような男性との恋愛が一番楽しいと感じます。『美男美女か』『スペックが高いか』というざっくりとしたハードルの高低を意識するより、いかに自分の幸せを具体的に言語化できているかが大切なのではないでしょうか」

霜田「そうか、女性を前にした時に『僕にとってはハイレベルな美女』といった判断基準自体が間違っているのかも

菱山「そう思っている時点で、これまでの自分の恋愛と比べていますから、過去の自分から脱却できていませんよね」

小峰「なるほど……。だとすれば僕も中央線沿いの狭い居酒屋でデートしてくれる人の中に運命の女性がいる気がする……!」

ROAD⑨ 真の理想を細かく言語化していこう。

(構成:菱山恵巳子)

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