チェリー誕生から6年。編集部平均年齢26歳で始めたこのサイトも、気づけばアラサーたちが運営するものに……。「童貞をひきずっている」というコンセプトで始め、その志は変わらないし、相変わらずひきずり続けてはいるものの、編集長の霜田に至っては37歳。「オトナ童貞」が「大人」になるために、男女観をアップデートしなければ!
今回、議題に上がったのは「子育ての大変さ」問題について。産後の女友達からあるメッセージをもらったという小峰。育児中の女性の本音を、小学生の双子育児中の菱山に聞いた!
【編集部員プロフィール】
霜田(シモダ):1985年生まれ。一昨年結婚したがオトナ童貞性は健在。
菱山(ヒシヤマ):1991年生まれ。かつてビッチ女子大生名義で活動していた。双子の母。
小峰(コミネ):1991年生まれ。現在未婚のオトナ童貞。
■産後の女友達から小峰へ、SOSが届く
小峰「最近、仕事で関わった映画の宣伝をSNSにあげると、同業界で産後の女友達から『いいなあ。私はもうそっちの世界には戻れないな』とメッセージが来るんです。この表現が正しいかわかりませんが、病んでいる雰囲気で。心配ですし、なんと声をかけたらいいのかわからないんですよ」
(※小峰は映像制作の会社でプロデューサーとしても活動中)
霜田「小峰君との信頼関係があるからこそ送っているんだろうけど、なかなかヘビーなメッセージだね」
小峰「そうなんですよ。ましてや僕は結婚もしていないし、子どももいない。しかもその友達はわりとこれまでキャリアが順風満帆だったんです。彼女にそんな言葉を言わせるなんて、いったいどれだけ出産・育児が大変なのか、今のうちから知っておきたいなと思って」
菱山「そういうことならお任せください!!」
■トイレに行く時間すらない、産後育児の実態
霜田「菱山さんは双子を出産されてますもんね。小峰君の女友達の気持ちはわかるものですか?」
菱山「めちゃくちゃわかりますね。育児って幸せなことではもちろんあるのですが、異常に大変だし、孤独で閉塞感があるんです。『もうこの家庭の檻から自分は出られない……』って誰しも感じることだと思いますよ」
小峰「いま、滞りなくお仕事をされている菱山さんからは想像できないです」
菱山「そうですよね。でも、ここまではもう本当に大変でしたよ。産後1年間は仕事を休んでいたのですが、育児が忙しすぎて記憶がないです」
小峰「えー!! そのレベルなんですね」
霜田:「『忙しくて記憶がない』ってKinKi Kidsがデビューの頃を振り返って言うのと同じフレーズですね」
菱山「たしかに、人気アイドル級の忙しさかもしれません(笑)。だって、平均睡眠時間が3時間とかですよ。双子で授乳の時間も夜泣きもズレていたからというのもありますが、それにしても子供って0歳児~1歳半くらいまでは夜まとまって寝てくれないんですよ」
霜田「仕事が忙しすぎて睡眠時間を削る経験もあるかと思うのですが、どちらが辛かったですか?」
菱山「育児の睡眠不足ですね。どんなに疲れていようが寝ていなかろうが、子どもは否応なしに泣くので。でもそれって、何もできない子どもが生きる上で当たり前で仕方ないこと。親としては対応しないと、最悪子どもの死と隣り合わせですからね」
小峰「仕事だったらある程度自分のペースが保てたり、休憩したりできるけど、育児はそうもいかなそうですよね」
菱山「そうなんですよ。私は産後仕事復帰した時、一人でランチを食べた時に嬉しすぎて泣きました(笑)。それでも私はまだ良い方で、母親の中には育児中トイレ行くタイミングすらなく、膀胱炎になる方もいるくらいですよ」
霜田「ブラック企業どころの話じゃないですよね」
菱山「そうなんです。しかも産後のダメージって、交通事故レベルなんですって。そんな状態で24時間育児がスタートします」
霜田「交通事故にあったくらいのダメージってことですか!それは壮絶ですね……」
菱山「私は帝王切開で子どもを産んでいますが、普通、お腹を切る手術したらしばらくは安静にしますよね? でも、産後は翌日から即授乳。母乳は血液から作られるので、交通事故に遭ってすぐに他人に輸血している状況なんですよ。しかも特に最初の頃は1時間連続で寝られたら良い方で……。カオスですよね(笑)」
小峰「グッとリアリティが増しました。恥ずかしながら、想像の範疇を超えていました」
■福田萌子の産後キラキラ投稿は、なぜ炎上したのか
菱山「産後の大変さっていまいち世間に伝わらないんですよね。SNSのママアカウントはキラキラ投稿に溢れていますし。みんなもっと大変アピールしていいと思うのですが」
霜田「SNSでいうと、最近初代バチェロレッテの福田萌子さんが出産されて、産後の行動が物議を醸していましたね。産後すぐに「ケアホテル」なる施設に泊まり、生け花したり、運動したり……正直ちょっとキラキラして見えてしまったのですが、みんながああいう感じではないですよね?」
菱山「あれが世の妊婦の姿だと思われたら、たまったもんじゃないですよ(笑)。私は産後、まともにご飯食べる時間も睡眠時間もない中で、常に動かなくてはならず、母乳も垂れ流しで、今より8キロくらいゲッソリしていました。キラキラの対極にいました」
小峰「やはりあれはどう考えても特殊パターンですよね」
菱山「でも個人的には本来、萌子さんのように好きなことをして養生するのが、産後のあるべき姿だと思います。だって交通事故に遭ってるわけですから。日本は産後ケアの概念があまりないですが、たとえば中国なんかは、産後1ヵ月間程度、ケアホテルのような専門施設に入ることが浸透しているようです」
小峰「日本で暮らしていると、産後ケアホテルの存在なんてまず聞かないですもんね。それこそ萌子さんの投稿で知りましたよ」
菱山「日本の産後ケアホテルって、めちゃくちゃ高額なんですよ。萌子さんが泊まっていたホテルも一番安い部屋で一泊4万2千円。萌子さんの部屋は1泊12万円ですね。私の友人で唯一、産後ケアホテルを利用していたのは、実家が都心のビルを複数持つ資産家の子女でした。まさに萌子さんパターンの富豪」
霜田「だとしたら嫉妬の声も集まりそうですよね」
菱山「いま育児で辛い思いをしている人からしたら『結局お金かよ!』と、トゲトゲした気持ちになりますよ。あと、『産後もこんなにキレイに生き生きできます!』みたいな姿を影響力ある人に発信されると、産後の辛さがますます無きものにされそうで、モヤります。なので、私は声を大にして、産後は本当に辛い! ということを伝えていきます!!」
■リスキリングよりも、母親一人の時間をまずは作るべき
霜田「産後の辛さが認知されていない問題で言うと、以前、岸田首相の『育休中にリスキリングを』という発言が波紋を呼んでいましたね」
菱山「岸田首相は萌子さんのインスタ見て少子化政策決めているんですかね?(笑) 先日も少子化担当大臣が『子育て世代の声を聴く』って選んだ相手が神田うのさんでしたし……。萌子さんもうのさんも何も悪くないけど、異次元の資産家じゃないですか。とことん庶民の感覚からズレてますよね」
霜田「たしかに(笑)。ウクライナに『必勝』って書いたしゃもじ送ったり、いつも感覚はズレてますよね」
小峰「しゃもじの件は『人が死んでるのにスポーツの試合感覚だ』とSNSでも批判を受けていましたね。少子化対策も国民という駒を増やそうくらいにしか思ってないのかも。菱山さん的に育休中のリスキリングについてはどう思われます?」
菱山「24時間育児をしていると、自分が自分でなくなってくる感覚に陥って、焦りは感じるんです。大人と会話がなくて社会から疎外されるし、キャリアはどんどん置いて行かれる……と、謎の自己嫌悪モードに突入するので、『何か学ばなきゃ!』『スキルを付けなきゃ!』という気持ちにはなるんです。それこそ、小峰さんにメッセージを送った女友達はいまこのフェーズなのではないかと」
小峰「そうか。じゃあ一応、ニーズはあるんですね」
菱山「でも、その前にそもそも眠る時間すらないのに、いつどう勉強しろと? と思うんです。まず政府がやるべきは、母親が一人の時間を確保できる体制を作る。そこからですよ。それこそ産後ケアを充実させたり、保育施設を増やしたり。その子どもと離れている時間に眠るでも自分磨きをするでも勉強するでも、何をするかは母親の自由なはず」
霜田「そもそも『勉強しろ』と言ってくること自体、めちゃくちゃ上から目線ですよね」
菱山「勉強なんて自発的にしかできないこと、大学受験2浪した岸田首相ならわかりそうなものですが……」
小峰「圧倒的想像力の欠如ですね」
菱山「育児中の母親は日中、ダラダラ過ごしていると勘違いしているとしか思えないですよ」
■育児において、「母親しかできないこと」は存在しない
霜田「ここまでかなり身につまされる話です。今後、もしも僕や小峰君が父親になったとして、どういう行動をとればいいのかも教えてください」
菱山「やはり1秒でも早く帰って一緒に育児をすることですかね。もちろん仕事を頑張ることは家族の為でもありますが、育児の大変さはリアルタイムで経験しないとわからないですから」
小峰「そうですよね。菱山さんの話を聞いて、これは体験しないと実際のところはわからないと感じました。それぐらい想像以上だったので」
菱山「なので、当事者として育児を体験してください。あくまで体を貸して子どもを産んだのは母親ですが、親であることは男女に差はないですからね。『手伝う』『サポート』というスタンスも私は気にくわないです(笑)。育児で女性しかできないことは、直接の授乳だけですから。それだって母乳を冷凍保存しておけば、哺乳瓶から男性があげられます。もはや男性にも『全部自分がやる』くらいの責任感を持ってほしい。肉体的に死にそうなダメージを女性が受けているのなら、男性は回復の手立てを打つのが、人として普通の行いではないでしょうか」
小峰「言われてみたらそうですよね。育児は母親が担当、という認識がまだ世の中にはありますが、決してそんなことはないはず」
菱山「ちなみに私の周りでは、『夫の育児への不参加』を理由に子どもが幼いうちに離婚する方もちらほらいます。一番大変な時期に一緒に頑張らない人が、この先の人生自分に寄り添ってくれると思えないそうで、私もおおむね同意です。それほど、育児は夫婦にとって大きな壁なんです。きちんと一緒に乗り越えたか押し付けたかで、人生変わります」
■育児をしてこないと、社会人としても嫌われる時代
霜田「逆に二人で乗り越えられれば、夫婦の信頼関係はより深いものになりそうですよね」
菱山「そうだと思います。まさに、私は夫が育児を一緒に乗り越えてくれたから、今も付き合っている時のテンションでの『好き』が持続している節があります。
あと、最近は夫婦間だけでなく、(子どもがいる男性の中で)育児をしっかりしてきた男性の方が社会的信頼も得やすい気がしていて」
霜田「育児を妻に押し付けている男性は、それこそアップデートできていないヤバイ奴の烙印が押されそうですよね」
菱山「私も心の中で見下してしまいますもん(笑)」
霜田「どんな言動から『この人育児してきてないな』ということがわかりましたか?」
菱山「前職で時短勤務をしていた時、夕方に『良いな~菱山さん、もう帰れて』と言ってきた子持ち先輩男性社員とか、フリーランスになってから自宅が事務所という話をしたら『だったら子ども見ながら仕事できるね』と、言ってきた取引先の子持ち男性とか。会社に子ども連れて来てやろうかと思ったくらいですよ(笑)」
小峰「その発言はヤバイですね。育児をしっかりとすれば、妻との信頼関係も築けるし、良き社会人にもなれる。大変な分、人生においてはプラスですね」
菱山「何よりそれだけ大変でも、子どもは可愛いですからね。可愛い瞬間を傍で見ておかないのは損ですよ」
霜田「たしかに! なんだかあまりに育児が大変そうで逆に物怖じしていましたが、幸せな瞬間はたくさんあるんですもんね」
小峰「メッセージをくれた女友達の気持ちも、少しかもしれないですが理解できましたし、男性として知っておくべきことが学べました。ありがとうございました!」
ROAD⑭ “育児をする”は結果、自分のためにもなる。
(構成:菱山恵巳子)