「松本、動きました」
時に、2025年11月1日午後9時――有料配信プラットフォーム「DOWNTOWN+」(以下「ダウプラ」)のこけら落としの生配信番組『LIVE+』にて、松本人志サンが発した第一声である。実に、2024年1月24日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)以来、646日ぶりにお茶の間に届けられた彼の肉声だった。
――というコトで、今回のテーマは、スタートして早5ヶ月が過ぎた「ダウプラ」である。“文春砲”に端を発する、なんとも理不尽な「私刑」によって、テレビと距離を置かざるを得なくなった松本人志サンが、所属事務所の吉本興業と立ち上げたオリジナルのプラットフォームだ。YouTubeのチャンネルでもなく、Netflixのコンテンツでもなく、独自の拠点で再始動を図るあたり、吉本の商魂が透けて見える(褒めてます)。まぁ、開始直後の喧騒も収まり、運営側もある程度慣れ、良くも悪くも落ち着いてきたタイミングで、件のプラットフォームを取り上げて考察するのは、いい頃合いかなとは思います。
さて――まずは冒頭の話の続きから。この日、生配信が行われたスタジオは、BSよしもとが運営に携わる、東京都墨田区のスカイツリー近くの「すみだメディアラボ」。同プラットフォームの拠点でもある。観客は「ダウプラ」の年額プラン1万1000円(!)を支払った登録者の中から、抽選で招待された約60人――つまり、松ちゃんのディープなファンだった。驚くのは、この生配信をPCやスマホでリアルタイムに視聴したユーザーは、松本サン曰く「うん十万人」にのぼったという。まぁ、30年以上もテレビの第一線で活躍してきたカリスマ芸人が2年近くも活動休止して、その復活第一弾、しかも生配信で何を語るのか――のインパクトを考えたら、そのくらいの視聴者数は不思議じゃないでしょう。
で、肝心の生配信の中身は――60秒のカウントダウンの後、まずはオープニングVTRが流れ、タイトルきっかけでカメラは暗転のステージへ。雷のSEが鳴り響き、舞台下手から黒スーツに金色ネクタイの松本人志サンが登場した。会場は割れんばかりの拍手と歓声。あちこちから「おかえりー」の声も聞こえる。

松本人志サンは646日ぶりに何を語ったのか
ステージ上の松本サン、いつまでも鳴りやまない歓声に、照れ笑いを浮かべている。見た感じ、トレードマークの金髪がやや伸びたくらいで、活動休止前とさほど印象は変わらない。観客らに会釈したかと思えば、顔をしかめたり、天を仰いだり、こめかみに人差し指を当てて思案する表情を見せたり――と、まるでJPがやるモノマネに自らを寄せるかのような素ぶりである(※実際、2回目の『LIVE+』のオープニングで、JPがこの時の松本サンの仕草を完コピして客前で披露した)。
1分間ほど、そんな時間が流れ、ようやく客席が静まっての第一声が冒頭の台詞だった。会場は再び拍手と歓声。それを受け、松本サンはややマジメなトーンでこう続けた。「えー、なんか日本のお笑いが最近しんどいと聞きまして……私、復活することにしました。よろしくお願いします」と深々と一礼。
この発言、スポーツ紙などが報じた配信記事で、文字面だけを見て「上から目線だ」「何様だ」みたいな批判の声がSNSに散見されたけど、生配信を見ていた人たちには、松本サンの表情などから、この“しんどい”が、昨今のコンプラ(コンプライアンス=法令遵守)やポリコレ(ポリティカル・コレクトネス=多様性の尊重)に縛られた“テレビの笑いのしんどさ”を指していたのは明白だった。要は、『ダウプラ』を立ち上げたのは、日本のお笑いをもっと自由にしたいから――と。
「“ダウンタウンプラス”って言ってますけど、ここで若手たちの番組もできたらエエと思うんですよ、ダウンタウン関係なく。そういうところからスターが生まれるかもしれないし…それから…あれですよね、うん……いろんな人たちが…こっから復活できたらいいな、と思ってます」
そう――ここでさりげなく、自身と同じく、いわゆるゴシップ報道でテレビを追われた同業者の人たちに救いの手を差し伸べている。おそらく、この生配信で松本サンが訴えたかった要素の1つが、このクダリだったと思う。
もちろん、松本サンは生配信でも笑いを取るコトを忘れない。「あの…信じてもらえないかもしれないですけど、たぶん…信じてもらえないかもしれないですけど…僕、2年ぐらい前、めっちゃテレビ出てたんですよ」――客席は大爆笑。復帰後、初ウケとなった。一気に会場の空気が和らぐ。
「あんまり言わないでくださいね。ちょっと恥ずかしいことなんで。これはあんま言わないでほしいんですけど……今…干されてます」(爆笑)「めちゃめちゃ干されてます。凄くないですか? 布団だってこんな干されないっすよ」(爆笑)「イカだって一夜ですよ。シイタケだって、こんなに干されることはないと思います」(爆笑)「ですけどね。やっぱりこう…干されると…なんちゅうでしょう……旨味が増しますわ」(会場「お~!」拍手)
――とまぁ、そんな感じで、いつもの松ちゃんに戻って会場を大いに沸かせるなどあって、話はやがて、これから配信する「ダウプラ」のオリジナル作品の紹介へ。ソコからは、進行役にステージ前から松本サンに声をかける“天の声”のおじさん(※決してカメラが顔を抜かない!)も参加する。「誰やねん、お前!」と、ちゃんと松本サンのツッコミもあったりして、2人でやりとりしながら、予告編も流しつつ企画の趣旨や狙いなどを説明した。
それにしても、この天の声のおじさん、只者じゃない。語り口は饒舌で、話の引き出し方も上手い。松本サンとも近しい間柄なのは、二人の距離感から自然と伝わる。その正体は――長年、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)をチーフプロデューサーとして率いた元読売テレビの西田二郎サンなんですね。今はフリーの演出家として「ダウプラ」に携わっているらしい。
そうそう、この「ダウプラ」は、YouTubeにも公式チャンネルがあって、そちらでは予告編やショート動画、舞台裏のオフコメ等が見られるんだけど(もちろん無料)、その中に、このこけら落としの『LIVE+』の本番前に、客席を温めるために西田サンが披露した“前々説”も公開されていて――これが面白いのなんの。その辺のお笑い芸人より喋りは上手いし、観客の回しも手馴れてる。まぁ、テレビ局や広告代理店には、時々この種の“コミュニケーションオバケ”がいるんだけど(本当)、そちらもぜひ。バラエティを作る人って、こんなに面白いんだと感心します。
さて――そんな感じで、松本サンと天の声(西田サン)とのやりとりで、「ダウプラ」のコンテンツが一通り紹介された後、この生配信の締めくくりに、松本サンはこう語った。
「オレは今、なんかすごく楽しくて…。もっと早くしとけばよかったというか、面白いことだけをやってたらいいねんって、こんな幸せなことってないから。ホント、よかったなと思ってます。いや、応援してくれる皆さんあってのことやし、それといいチームがたくさん集まってくれて、松本人志とお笑いやりたいっていう人たちが本当に心強い…いや、ほんとに感謝っすよ。62歳になって初めて、素直に感謝っていう言葉が使えるように…だいぶ遅かったけどな(会場笑い)…いやぁ、何年やれんのやろな…(天の声「そんなこと言わんといてください」)…まぁまぁ(笑)できるだけ頑張りますよ」
――こうして、60分の生配信は終わった。60分と言ってもテレビと違ってCMがないから、ずっと気が抜けないというか、本人的には慣れないフォーマットで、こちらが想像する以上に大変だったと思う。とはいえ、646日ぶりに聴く松本サンの喋りはやっぱり面白く、まだまだ復帰に賛否の声がありつつも、改めて芸人・松本人志の存在感を知らされた1時間だった。
「ダウプラ」の目玉コンテンツ『LIVE+』
この『LIVE+』は原則、月に1回、松本サンが出演して生配信で行われるもの。ちなみに、こけら落としからひと月後の12月初旬の第2回の『LIVE+』では、前述の通り、冒頭でJPのモノマネがあったり、前回の生配信中に視聴者から寄せられた3万6000通(!)もの質問のいくつかに松本サンが答えたり、更なる新作コンテンツ紹介があったり、極めつけは“ビッグゲスト”と称して松本隆博さん――松ちゃんのお兄さんが登場して、曰く「7、8年ぶり」に兄弟で語り合った。
更に、年が明けて1月初旬に行なわれた第3回の『LIVE+』は、スタジオを飛び出して、新宿の吉本興業東京本部(松本サン曰く「悪の巣窟」)の屋外特設ステージで、お正月感満載で生配信された。目玉企画は、オンエア中に芸人に召集をかけ、時間内に来れた芸人に松本サンからお年玉が渡されるというもの。実際、昨年の『M-1グランプリ2025』準優勝のドンデコルテを始め、若手・中堅芸人が多数集まり、各々持ちネタを披露した。更に“ビッグゲスト”枠で近藤真彦サンとベッキーが登場。御両人とも過去に週刊誌報道でスネに傷を持つという共通点があり、今後の同枠の期待値を高める人選だった(褒めてます)。
続く2月の第4回の『LIVE+』では再びスタジオに戻り――なんと第1・2回からセットチェンジ。ステージに腰掛ける松本サンを、観客が至近距離から取り囲んで観覧するスタイルに。昔のフジテレビの『冗談画法』の司会の泉麻人サンを彷彿とさせる(この例え分かる人いるかなぁ)距離感の近さに、“ここだけの話”感が一層高まったのは言うまでもない。実際、この日のトークテーマが、松本サンの生い立ちから半生という、まさにプレミアムな話。個人的には過去一の傑作回だったと思います。
そして、3月上旬に行われた最新回の『LIVE+』では――おっと、こちらはまだ本サイトでアーカイブが見られる(※生配信は1ヶ月間アーカイブを公開)ので、そちらをぜひ。えっ? まだ契約してないから見られない? ならば――この辺りで「ダウプラ」を未見の方たちのために、同プラットフォームのアウトラインの解説と行きましょう。
冒頭でも触れたけど、月額1,100円(年額11,000円)の有料プラットフォームである。ちなみに、Netflixが月額1,590円(※CMなしのコース)、FODプレミアムが月額1,320円というコトを考えたら、“ダウンタウン”という単一ブランドで、ほとんどのコンテンツが同プラットフォームでしか見られないとはいえ、この価格設定は、まあまあ強気と言えなくもない。それでもスタートから2週間あまりで加入者が50万人(!)に達したというから、初動は大成功と見ていいでしょう。
ちなみに、同プラットフォームは、Amazon Prime VideoやU-NEXT、ABEMAの加入者なら、それぞれのサイトで月額770円を足せば視聴できる。但し、ここで見られるのは「ダウプラ」のオリジナル作品のみ。ダウンタウンの2人が出演した過去番組のアーカイブや、先の『LIVE+』などの生配信は見られない。個人的には『LIVE+』が「ダウプラ」の目玉だし、ニュースバリューも高いので、せっかく契約するなら、やはり本体のプラットフォームで視聴するのをお勧めします。
現状、「ダウプラ」は何を見せてくれるのか
では、「ダウプラ」は、具体的にどんなコンテンツを見せてくれるのか。大きく3つに分けられます。生配信、オリジナル作品、そしてアーカイブです。生配信とは、先の『LIVE+』を始め、『お笑い帝国大学(OIU)』の講評など、要は生で配信するコンテンツのこと。今のところ月に2~3度の頻度で行われている。配信から1ヶ月間はアーカイブが見られるので、オンタイムで見逃しても大丈夫。先にも述べた通り、ニュースバリュー的には、この生配信が最も話題になりやすい。
2つ目がオリジナル作品である。ぶっちゃけ、「ダウプラ」の成否を左右するのが、こちらの一群。要は松本人志サン自ら“企画者”となって、様々な「笑いの作品」を届けるというもの。そのジャンルは幅広く、大喜利やトーク企画など地上波テレビに近いコンテンツから、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)にも通ずる、いわゆる実験的な企画の類い、そして海外へのフォーマット販売を狙ったリアリティショーまで様々。面白ければ(視聴回数やSNSの反響などがよければ)、それぞれエピソード2、エピソード3と続編が作られる。今一つの反応なら、様子見と。まぁ、地上波テレビと違って、放送コードのような縛りがないので、基本なんでもできるが、その分ハードルが上がるのも事実。言い訳ができない分、これはこれでシビアな世界である。
そして3つ目が、過去にダウンタウンの2人が携わったテレビ番組やドラマ、映画、ライブなどのアーカイブである。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の2ショットトークを始め、ドラマ『明日があるさ』(同)、映画『大日本人』、ビデオ作品『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』、コントライブ『寸止め海峡(仮題)』等々――。ほとんどが、これまで未配信のコンテンツばかりなので、これはシンプルに嬉しい。中には『寸止め~』の一部コントのようにDVDにも未収録だった作品もあり、まさにお宝。
まぁ、個人的には、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)のコントを一番見たいけど、こちらはまだラインナップになく、そのうち加わるのを期待しましょう。更に、権利関係が許せば、同じくフジテレビ系の『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』のアーティストたちとのトークシーンも見られないだろうか。実現すれば、こちらもお宝映像になるのは間違いない。
――というトコロで、新サービスの開始から半年も経たないプラットフォームとしては、現状、それなりに充実したラインナップだとは思う。ただ、アーカイブはいつか弾が切れるし、生配信は月に2~3回で習慣的に見るものではない(だからプレミアム感がある)。となれば、毎日とは言わずとも、2、3日ごとにアクセスしてくれるユーザーを繋ぎ止めるには、やはりオリジナル作品の更新が肝になるでしょう。
指南役選「ダウプラ」傑作コンテンツ10位→6位
そこで、ここからは独断と偏見で指南役が選んだ「ダウプラ」傑作コンテンツ・ベスト10の発表&解説と行きましょう。対象は生配信、オリジナル作品、アーカイブ全てひっくるめて。とりあえず「ダウプラ」でコレは見ておいて損はないというコンテンツと思ってください。
第10位『7:3トーク』(オリジナル作品)
「餃子を作りながら…」「洗濯物をたたみながら…」等々、何か作業をしながら、松本サンとゲストが“7割くらいのトーク”を交わすコンテンツ。トークを生業の1つとする松本サンらしいギミック(仕掛け)で、いわゆる“抑えたトークから繰り出される笑い”こそ至高である、と。これ、映画『アパートの鍵貸します』などで名匠ビリー・ワイルダー監督と何度も組んだ俳優ジャック・レモンが、ある授賞式で「自分はワイルダー監督からいつも同じことを言われる。――“Less”(抑えて)」と語ったエピソードを彷彿とさせる。要は、演者はつい過剰に自分を魅せたがるが、抑えた芝居こそ観客を魅了すると。おそらく、松本サンが狙う“7割トーク”の真意もソコ。たぶん、ソレを最も理解してトークしていたのが、小池栄子サンの回だったと思う。
第9位『松本人志と○○したい!』(オリジナル作品)
他のコンテンツは基本、松本サンの立ち位置は「ナビゲーター(案内人)」か「ジャッジ(審査員)」なのに対して、このコンテンツは珍しく「プレイヤー・松本人志」が見られる点がレア。まだ本数は少ないが、千原ジュニアさんの回では2人がアドリブコント(演劇でいうエチュード)に挑んだ。お題は「楽屋挨拶」で、各々立ち位置を替えた前後編が見られる。意外にもジュニアさんがテンパったり、松本サンが周到な仕掛けを用意したりと、腹の探り合いから生まれる心理戦が面白い。
第8位『寸止め海峡(仮題)~松本人志ライブ~』(アーカイブ)
1994年に松本サンが週刊朝日に連載していたコラム(後に『遺書』として出版)で宣言して、有言実行で開催した入場料1万円のコントライブ。当時、ダウンタウンは半ばアイドル的人気で、登場しただけで歓喜するティーンの女性客らを排除する意味合いもあったという。松本サンが企画・構成・出演を務め、他に今田耕司サン、東野幸治サン、板尾創路サンらも参加。全6本のコントだが、おすすめは、この中では分かりやすい「柳田という男」と「ランジェリーヤクザの男」の2本。31歳の才気走った松本ワールドが楽しめる。
第7位『大喜利GRAND PRIX』(オリジナル作品)
基本は、『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)と同じ大喜利対決である。違うのは、プレイヤーである芸人自らお題を作り、本人以外が回答するトコロ。MCは元TBSアナの国山ハセンさんで、回し・テンポ感ともいい仕事をしてる。見どころは、『IPPON~』が大喜利界のトップリーグなら、こちらはいわば“サッカーのJ2”。その分、中堅芸人の中から大喜利の才能を見つける楽しみもある(例えば、マユリカの阪本サンとか)。あと、お題で面白かったのは、椿鬼奴サンの「私が必ず『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と答えますので面白くなる質問を考えてください」が白眉。作家ではなく、芸人がお題を考える意味がこういうコト。
ただ、課題もいくつか。そもそもプレイヤーが出題者になるモチベーションが現状、見えにくい。例えば、いい回答が続出したら(つまり場が盛り上がったら)、一定の基準を設けて出題者にも点数をあげていいのでは?(※それにより、最終問題で出題者になるプレイヤーのゲームセット問題も解消する)
第6位『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』トーク(アーカイブ)
言うまでもなく、今日のダウンタウンのベースを作り上げた伝説の2ショットトークの傑作選である。まだ松本サンの髪型がスタンダードだった90年代前半から見られるので、まぁ貴重。当時の時代背景も感じられて、シンプルに面白い。これまでDVDでしか見られなかったので、配信で楽しめるのはありがたい。
指南役選「ダウプラ」傑作コンテンツ5位→1位
続いて、いよいよ上位の発表です。まだ「ダウプラ」に加入すべきか迷ってる方々、まずはお試しでひと月だけ入って、これら5つを視聴してから判断してもいいと思います。
第5位『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』(アーカイブ)
1997年に『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)が諸事情から終了。翌年、松本サンが「ミュージシャンがアルバムを出すように、定期的にコントを発表したい」と、98年から99年にかけてリリースした「約束」、「親切」、「安心」の3本のビデオコント集である。セットがドラマ並みに豪華(リアル)で、1本あたりの製作費は1億円とも。出演者はダウンタウンの2人を始め、『ごっつ』でお馴染みの面々+『ガキ使』のココリコと安心できる座組。3本とも面白いが、個人的には第1作の「約束」を推したい。中でも珠玉が若者4人組でスカイダイビングに出かけるコント『古賀』である。

同コント、とにかく古賀を演じる板尾サンのキャラが秀逸。実は、松本サンのコントの作り方は他の芸人の方々と少々違って、一般的なコント台本はなく、大まかな話の流れと、登場人物のキャラ設定が提示され、あとは半ばアドリブで進行しながら作り上げるスタイル。『古賀』も同様に、板尾サンは松本サンから大まかな話の流れと古賀の立ち位置のみ伝えられ、ソコから自分でキャラを練り上げたそう。天才の仕事である。
第4位『ZONE05』(オリジナル作品)
FUJIWARA藤本、鬼越トマホーク金ちゃん・良ちゃん、スリムクラブ真栄田、チャンス大城の5人が、四畳半程度の密室に閉じ込められ、5時間ギブアップせずに過ごせたら100万円もらえる…というゲーム。但し、部屋は“ある法則”に従って四方の壁が段々と狭まるギミック。さて――というリアリティショーである。要は「イカゲーム」だけど、参加者たちの心の不安が、“狭まる壁”とリンクして可視化される様子が“テレビ的”で面白い。
結論から言えば、笑えて、人間ドラマもあって、ちょっと感動して、ちゃんとリアリティショーとして成立している。それにキツさの描写がおそらくテレビ的にNG(見ればわかります)なので、これをネットでやる意義は大いにある。但し、鬼越の良ちゃんも指摘してるように、賞金100万円は安い。地上波でやれないからこそ、この手のゲームの賞金は出し惜しみしないほうがいいと思います。
第3位『芯くったら負け!実のない話トーナメント』(オリジナル作品)
おそらく現時点で、松本サンがダウプラのオリジナル作品として考案した企画の中で、一番当たってるのがコレ。実のない話とは「面白くない話」のコト。芸人8人が1対1のトーナメント戦を重ね、面白くない話をし続けた者が優勝するルールである。
これ、何が画期的って、今の芸人はアドリブに長けた者がほとんど。半ば本能的にトークにオチを付けてしまい、逆に実のない話をする方が難しい(トラップになる)という逆転の発想である。つまり、トーク力に長けた芸人ほど苦戦する(事実、千原ジュニアさんは苦戦していた)。そして、同コンテンツのもう一つの肝が、ジャッジを務める松本サンの瞬発力。一歩間違えれば凡戦になりかねないゲームを絶妙なひと言で笑いに変える。こちらは逆にアドリブがフルスロット。その対比の構図がまた面白い。
第2位『松本教授の笑いの証明』(オリジナル作品)
実は「ダウプラ」が始まった当初、僕が最も期待していたコンテンツがこれ。教授・松本人志と助教授・小峠英二が「未知なる笑いの真実」を求め、様々な芸人に“笑いの実験”を課して検証するもの。ただ、今のところ本当に面白いのは、♯1の「笑い飯」編と♯4の「陣内大喜利」編の2つくらい。なので、もっと頑張ってほしいという期待も込めて、この順位に。
で、「笑い飯」編は、同じ漫才を何度も披露して「何回目が面白いか?」を検証するもの。驚いたのが、1回3分の漫才を一切編集せずに、ちゃんと6回見せたコト(それだけで18分!)。地上波では絶対にできない暴挙である。もっと驚いたのが、笑い飯のテクニックの素晴らしさもあるが、何度同じ漫才を見ても、ちゃんと面白いコト(本当)。そして助手の元フジテレビの久代萌美アナ(この人、割と核心的なコトをサラッと言います)が何気に語った「やればやるほど、自分が好きな部分がより面白くなります」が多分、この検証の答えなんですね。考えてみれば、それが“ギャグ”(お約束、くり返し)の原点である。

そして、もう1つ面白かった回――自他ともに“大喜利下手”を認める陣内智則サンに「時間があれば大喜利の答えは面白くなるのか?」を検証したもの。お題を出して、初日→3日後→1週間後と、各時点の答えを書いてもらい、その成長過程を観察した。笑ったのは、やはりというか初日の答えで、「30人くらいいたら、1人くらい持っているでしょ。何?」の問いに、「ギザ十」と答え、松本サンに「本当の質問に答えただけ」と呆れられたのと、「この人、絶対ケンカ強いだろ。どんな名前?」のお題に、「ケイン・コスギ」と答え、久代アナがボソッと「初日とはいえ…」とツッコんだのに爆笑した。ただ、検証結果自体は1週間後の答えで、陣内サンの回答が一応覚醒。ある程度、仮説は正しかったと証明された。ただ、その直後にスタジオでもう一波乱あるので、ソコはご自身でお確かめください。
まぁ、課題としては、面白い回とそうでもない回との差が大きいので、新作をアップデートするペースを落としてもいいから、検証のクオリティを上げてほしいですね。
第1位『LIVE+』(生配信)
そして――1位は、いわずもがな先にも紹介した、月に1度の生配信の『LIVE+』である。数々の笑いの企画を考える松本サンだけど、実は最も得意とするジャンルが「アドリブ」なんですね。『ガキの使い』の2ショットトークがその最たるものだし、『ごっつ』のコントも、キャラ設定と話の流れだけ作り、後は基本アドリブである。『HEY!HEY!HEY!』のアーティストたちとのトークも、『ダウンタウンDX』のゲストたちとのトークも、大まかな流れはあっても、細部はアドリブ。そんなトークの達人・松本サンが生放送で、しかもテレビのように放送コードを気にせず喋るのだから、これが面白くないはずがない。もちろんピンの喋りが一番だけど、今後はとある事情でテレビにあまり出ない…というか、出られない芸能人の方々のサプライズゲストにも期待したい(笑)。
指南役選「ダウプラ」期待のコンテンツ
さて、ここからはベスト10には漏れたものの、企画の意図は悪くないコンテンツを、改善点などを挙げつつ、紹介したいと思います。
『サンノミ』(オリジナル作品)
1対1がサシ飲みなら、ゲスト2人を呼んで、3人で飲むのが“サンノミ”と、企画の発想自体は他愛のないものだけど(笑)、初回のゲストが山田孝之サンに赤西仁サンと、いきなりの本気モード。一気に有望コンテンツになった。たぶん、ゲストを友人関係にある2人にしたのは、ピンでは出てくれない人をツモりやすくするため。となると、俄然、“番宣以外ではテレビのバラエティ番組に出てくれない”クラスの大物ゲストを期待してしまう。
例えば、アメリカには23時台に各局とも伝統的なトーク番組(NBCの『ザ・トゥナイト・ショー』やCBSの『レイト・ショー』等)を持っている。人気司会者が本物のセレブをゲストに招いて、ちょっと砕けたトークを繰り広げるのがウリで、ゲストがポール・マッカートニーだったり、トム・クルーズだったり、バラク・オバマだったりして、豪華さと砕けたトークの対比でよくニュースにもなる。日本に同種のトーク番組はないので、そんな類のプレミアムなトーク番組を狙ってほしい…と、これは僕の勝手な願望である。
『お笑い帝国大学 OIU』(オリジナル作品/生配信)
かつて、フジテレビの深夜番組『一人ごっつ』シリーズで行われた視聴者参加型の大喜利企画「全国お笑い共通一次試験」の令和版。しかし、当時はあんなに面白かった企画が、今回は今一つハネていない印象。原因をいろいろと考えてみると――回答の仕方が、前は記述式だったのに、今回はスマホやPCからの応募。大喜利の面白さって、ある種のフリップ芸というか、手書きの文字の面白さが割と占めてるな~と改めて気づかされましたね。うーん…。
あと、参加者が前は本名だったのに、今回はニックネーム。この種の企画って、ある種の様式美で、“共通一次”とか“大学”とか権威づけをするなら、参加する側も本名で応募する“マジメさ”が不可欠かも。それに、今回は1つの問題に一人10回まで回答可能。まぁ、そんな大学試験はないし、そこまでやって応募数を増やしても、あまり意味はないかな~と個人的には思います。それよりも、応募数は減るかもしれないけど、本名縛りにして、一問につき一人一答にして――それで集まった回答のほうが、ある種のクオリティが担保され、結果的にお得な気がします。
それと、いっそ応募は、問題用紙をサイトから応募者自身で印刷してもらい、手書きで記入して郵送するアナログなスタイルに戻すのはどうでしょう。あと、ユーザー同士の投票はぶっちゃけなくてもいいかな~と。それよりも、作家と若手芸人をフル動員して、とにかく下読みの精度を上げる。そうして厳選された回答(現行の1000から100くらいに減らしてもいいかと)の中から、スタジオで松本サンとゲストの“教授陣”がピックアップして講評する。そうそう、この採点方法にもひと言。ぶっちゃけ、採点はピックアップした当事者1人の独断でいいと思います。ゲストの方々はどうしても松本サンに遠慮して、松本サンが選んだ作品の点数が甘くなりがち。それは番組として、視聴者への見え方として――あまり得策じゃない気がします。
――おっと、ちょっと注文が過ぎたけど、企画を愛するが故の注文とお許しください。
“降臨、浜田雅功――”
で、最後はやはり、この人に触れるしかない。相方の浜田雅功サンである。現状、浜田サン絡みのコンテンツは、ラジオ『ごぶごぶ』やテレビのバラエティの『浜ちゃんが!』などのアーカイブを除けば、昨年暮れに開催した“浜田画伯”による初の個展「空を横切る飛行雲」の舞台裏を追ったドキュメント『浜田雅功と黒い線』くらいしかない。まぁ、その内容の感想は控えておきましょう(お察しください)。

となると、今後の最大の焦点は、やはり浜田サンがいつ生配信の『LIVE+』に登場するか…だと思います。当然、「ダウプラ」にとって、こけら落としの松本サンの646日ぶりの第一声以来のインパクトになるのは間違いない。なんなら、2020年を最後に途絶えている『ガキの使い』の2ショットトークの6年ぶりの復活とも――。毎月じゃなくていいから、年2回くらいは、『LIVE+』でダウンタウンの2ショットトークを見たいと願っております、ハイ。
あとは――まぁ、浜田サンならではの「オリジナル作品」も期待したいですね。あの「結果発表~!」のひと言で、どんな番組も面白くする能力は、浜田サンにしかできない唯一無二の特殊能力。ぜひ、“MC:浜田雅功”が最も生きる企画を作家の皆さん、お願いします。
「ダウプラ」の未来に立ちはだかる“お笑い界の3人のカリスマ”
最後に、この『ダウプラ』の今後の展望を少々。正直、現状よりもっと高みを目指してほしいし、もう一度プレイヤーに戻って、日本の笑いを牽引する一角になってほしい。そのためには、現状、日本のお笑い界を牽引していると思われる3人のカリスマ(個人の感想です)にどう肩を並べられるかがカギに(※ぶっちゃけ、彼らのほうが後輩だけど、お笑いの世界はシビアである)。
で、ここからは、令和のお笑い界の3人のカリスマの話を少々――。1人目は……というか1組目は、「ラジオのカリスマ」ことオードリーである。いわずもがな、ニッポン放送の『オードリーのオールナイトニッポン』は、首都圏ラジオ聴取率調査で2016年から58回連続で首位を独走中。今やスポンサー数は、同番組史上最高の42社と、もはや異次元の領域にたどり着いた感がある。更に一昨年の2024年、番組開始15周年を記念して東京ドームで開催した『オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム』は5万3000人ものリスナーを動員。ライブビューイングや配信を含めると、実に15万以上が同イベントを視聴したという、もはや生ける伝説。お笑い界のファンマーケットで、現状、彼らに並ぶ存在はいないと見ていいでしょう。
あと、直近では若林正恭サンの初の小説となる『青天』(文藝春秋)が発刊2週間で28万部を売上げる大ヒット。お笑いの本業と合わせて、文芸方面でも着実に結果を残している。となると、単なるファンマーケットに収まらない、一般層への広がりも伺えます。そうそう、アイドルグループ「日向坂46」のOGや現役組の、最近のラジオ界での活躍ぶりがアイドル界隈で図抜けてるのも――テレビ番組『日向坂であいましょう』(テレビ東京系)で長年、MCのオードリーに鍛えられた成果という声も。そう、意外な分野にもオードリーの影響力が見られるんです(笑)。
続いて、2人目のカリスマは――オンとオフの境界線が曖昧で、その言動一つ一つが話題になる、いわば「SNS時代のカリスマ」――粗品です。もともと、宮迫(博之)サンへの歯に衣着せぬ物言いなど、ネタか本気か分からない煽り芸が持ち味。昨今はソレに更に磨きがかかり、 昨年3月の『YTV漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)のガチ審査を皮切りに、同年12月の『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』の審査でも異例の長尺コメントを連発するなど、表舞台で堂々と煽り倒す芸を確立して、いよいよ一皮むけた感がある。侮れないのは、多くの識者が指摘してるように、その煽りは単なるダメ出しじゃなく、ちゃんと論理的で、且つ根底にはお笑いへのリスペクトがあるのがミソ。
そして、先日(3月7日)には、「吉本の社員に粗品アンチがおる事件について」と自らYouTubeに動画を上げて、“事件”を告発したのをキッカケに、東京・渋谷よしもと漫才劇場にてオールナイトライブ『粗品VS漫才劇場~アンチコメントの変~』を緊急開催。キャパ214席に対して7500件もの応募が殺到し、チケットは即時完売。更に配信チケットも3万7000枚を売り上げ、吉本芸人主催公演史上、過去最高を更新したという。もはや、どこまでがネタで、どこからリアルか分からない男――それが粗品である。
更に言えば、粗品は「あのちゃん」との絡みという“時代”に即した強力なフックも持っている。2人がラジオやテレビで絡むコトで、またSNSがよくバズるのだ(褒めてます)。今でもネタにされるけど、前に『クイズ☆正解は一年後』で、2人の仲が週刊誌で熱愛と噂されてると有吉サンに振られた際、粗品が「それはもうね、あのちゃん次第」と巧妙にかわすと、あのちゃんは「粗品はセフレ止まり」とぶっ放して、粗品が「どんな女やねん!」と突っ込むという見事なコンビワーク。粗品も凄いが、あのちゃんはもっと凄い(笑)。実に強力なタッグである。
「ダウプラ」の前に立ちはだかる最大のライバル
さて、お笑い界のカリスマ――最後の一人は、かの『水曜日のダウンタウン』の演出を務めるTBSの藤井健太郎サンである。いわば「バラエティのカリスマ」。2009年、30歳の時に『クイズ☆タレント名鑑』を立ち上げ、2014年に『水曜日のダウンタウン』をスタート。松本サンをして「(テレビ界で)唯一チャレンジしている」と言わしめた鬼才である。彼については、あれこれ語るより、このコンプラやポリコレの厳しい時代に、果敢に挑み続ける『水ダウ』のラインナップを見れば一目瞭然だろう。
そんなエッジの立った同番組が、更に一段と“深化”したと思われる企画が――先の1月下旬に2週に渡り放送された「きしたかの高野10m高飛び込みリベンジ」である。まず、前段として、昨年11月に「紙飛行機×高飛び込みキャッチ」なる荒唐無稽な企画(東京03の飯塚サン曰く「誰かが見た夢なの?」)がオンエアされ、みなみかわ、きしたかの高野、ちゃんぴおんず大崎、モグライダーともしげ、本多スイミングスクールの5人が二晩かけてミッションをクリア。――が、話はソレで終わらない。5人の中で唯一、10mの高飛び込み台から一度も飛べなかった高野サンが「飛びたかったのに(周囲の)押しが足りなかった」と、責任転嫁とも取れる問題発言。ならば、「今度は日本中から押してもらいましょう」とばかりに、急遽“生放送”が組まれたのが、件のリベンジ企画だったと。
しかし、まぁ、これが凄かった。キー局のプライムタイム(22時台)に、薄毛のぽっちゃりおじさんが10mの飛び込み台の上に立ち、それもアップで抜かれ続け、飛ぶ飛ぶと見せかけて、全然飛べない様子を生放送で延々とオンエアしたのだ。ただ――これが面白いのなんの(※狭義の笑いに留まらず、人間ドラマも含む広義の面白さ)。SNSには生でオンエアを見てる視聴者からの応援コメントが続々と寄せられ、脇でみなみかわら“戦友”たちもエールを送り、本人も「次はイケる!」とやる気を見せるも……イケない(笑)。基本、この繰り返し。「…と言いつつ、最後の最後で飛び込んで、感動モードで終わるんでしょ?」といぶかしがる視聴者をよそに、本当に飛べずに生放送は終わった。
そう、同企画で『水ダウ』はまた、新たなステージにたどり着いた感がある。そして、もっと重要なコトは――これまで同番組が新たな伝説を残す(例えば、「名探偵津田」が話題になる)度に、その功績は演出の藤井健太郎サンと共にダウンタウンのキャリアにも数えられたが、松本サンの地上波復帰が見通せない中、藤井サンの存在感のみが更にクローズアップされる様相に。実際、今回の「きしたかの高野10m高飛び込みリベンジ」企画、MCの浜田サンが出演するスタジオパートを設けず、TBSの日比麻音子アナの進行によるオールロケで行われたのである。
ヘンな話、今や『水ダウ』こそ、「ダウプラ」の前に立ちはだかる最大のライバルとも言える。そして、同じ座標軸で見た場合、「ダウプラ」のやりたい方向性の多くを、既に『水ダウ』が実証済みだったりする。今回のリベンジ企画を急遽、(視聴者の応援をリアルタイムで高野サンに届けるために)生放送でやった柔軟性も、本来なら「ダウプラ」が率先してやりそうな案件だった。
今後、「ダウプラ」が辿る未来は、正直まだまだ見通せない。先のお笑い界の3人のカリスマ――「ラジオのカリスマ」オードリーの動員力、「SNS時代のカリスマ」粗品のバズり力、「バラエティのカリスマ」藤井健太郎の企画力に並ぶのは、正直しんどいとは思う。
ただ、元はと言えば、この3人のカリスマの遥か前を開拓して、お笑いの世界の可能性を切り開いたのがダウンタウンだったワケで。今こそ、初心に帰るじゃないけど、かつてのプレイヤーとしてのダウンタウンを取り戻してほしい。
そのカギを握るのは、僕は「コント」だと思ってる。




