当媒体“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”で連載中の脚本家・福原充則さんによるドラマ『まかない荘』で連ドラ初主演、さらにはチェリー男子のバイブル『LOVE理論』のドラマ版ではヒロインを務めるなど、チェリーが勝手にご縁を感じている女優・清野菜名さん。
そんな清野さんが、宮藤官九郎組に初参加!映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』で、地獄の鬼を演じることに。
初の宮藤組、地獄のロックバンド『地獄図(ヘルズ)』のベーシストという役どころで新たな魅力を爆発させている。
そこでチェリーでは本作の監督・宮藤官九郎さんと、ヒロインの森川葵さん、清野菜名さんに連続インタビュー!
お気に入りの宮藤監督作品から、撮影現場でのエピソード、デビューからこれまでの苦労などを赤裸々に語ってもらった。
宮藤監督作品をイッキ見 お気に入りは『I.W.G.P』
――初めての宮藤官九郎作品ですね。
「ええ、今回のお話が決まって、宮藤さんの過去の作品を借りてきて、たくさん見ました。もちろん、長瀬さんが出演されている作品は全部見て予習しました」
――宮藤作品で清野さんに特に突き刺さったものはありました?
「『池袋ウエストゲートパーク』は本当に面白かったです。実は序盤だけ見ようと思っていたんですけど、見始めたら止まらなくて、一気に全部見てしまいました」
地獄へのイメージが変わった
――そんな宮藤作品、今回出来上がった『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』を見て、作品としてどうでしたか?
「もう、とっても面白かったです。テンポもすごくよくて、最後まで笑いっぱなしでした。でも泣いちゃったところもありました」
――ちなみにどこですか?
「ラストのシーンですね。海をバックにしたシーンなんですけど、あそこでグッときちゃいました」
――あのラストは本当に素晴らしいラストシーンでしたよね。面白いと同時に、この作品は、死や生まれ変わりといったテーマを扱った作品でもありました。
「死んだり、地獄に落ちることって、怖いイメージだったんですけど、この作品を通してイメージが変わりました。地獄も楽しいかも、なんて思えるようになりましたね」
笑いの絶えなかった撮影現場
――そんな風に感じさせてくれるのが、さすが宮藤官九郎さんパワーですよね。現場の空気はどんな感じでしたか?
「セットに地獄を組んで撮影していたんですけど、毎日私は爆笑していて、本当に楽しい現場でした。監督のモニターがちょっと離れたところにあったんですけど、マイクを通じて、いつも笑い声が聞こえてきましたね。演技をした後に、監督の笑い声が聞こえてくると『よかった、面白かったんだ』と安心する感じです」
――宮藤組初参加で戸惑ったりはしませんでした?
「ちょっと舞台的な撮り方というか、カット割もそんなに多くなくて、ずっと撮っているのが印象的でしたね。あとは、他の皆さんが宮藤さん作品を経験されている方が多かったので、ついていけるかなという心配はありました」
――なかなか濃い宮藤組ですよね。現場に入ってみてからはどうでしたか?
「初回の撮影から、皆さんの思い切りの良さがすごくて、私も負けていられないと気が引き締まりました。最初は緊張していてなかなか喋りかけられなかったんですが、皆さんのほうから輪に入れてくれて、笑わせてくださったので、すぐに仲良くなれました」
――共演は主に神木隆之介さんと、長瀬智也さん、桐谷健太さんの地獄の鬼組が中心ですよね。
「はい、神木さんは歳が近いので、高校の友人のような感じで会話ができました。桐谷健太さんのことも撮影後半には『けんにい』って呼べるくらいになりましたよ(笑)。桐谷さん、長瀬さん、神木さんと4人で焼き肉に行ったり、ごはんにはよく行きました。撮影が楽しかった反動で、終わった瞬間は寂しかったですね」
ぶっ飛んだ役は宮藤監督による当て書き
――今回の役どころは、鬼だけど女子だし恋もするし……というなかなか特殊なものだったと思います。
「かなりぶっ飛んでる役でしたよね(笑)。宮藤さんが当て書きしてくれたということで、やる気も満々でした。当て書きしていただく経験も初めてだったので嬉しかったです」
――当て書きだったんですね! ちなみに、神木隆之介さん演じる大助に恋心を抱く役どころでもありましたよね。
若干痛めの童貞の設定でしたが、清野さん自身はああいう男性はどうですか?
「えーどうなんでしょう(笑)。でも、一生懸命なところはすごく好感が持てますよね。序盤はチャラチャラしたイメージでしたが、最後まで見ると、大助かっこいい、って思えました。生涯をかけてひとりの人を愛するって素敵ですよね」
――ちなみに、今回の大助たちのように高校のクラスで恋心を抱いたりするという経験は?
「私は、性格がサバサバしていて女のコっぽくないところもあってか、すぐ男子と友だちになっちゃうんですよ……。私も男子を恋愛対象として見ていないし、男子も私を恋愛対象として見ていないという感じでしたね」
まるで地獄?なバイト時代を越えて
――高校時代の話も出たところで、ちょっと過去のお話も伺えればと思います。『神話戦士ギガゼウス』でのドラマデビューから5年。女優さんとしてのお仕事も軌道にのってきているように見えます。
「『ギガゼウス』の頃は、演技をしたことがなくて、右も左もわからない状況だったんです。セリフをどう言ったらいいのかもわからず、自分自身の喋り口調になってしまったりして苦労しましたね。逆に、何も考えていないというか、素直に楽しんでやっていた時期という言い方もできますけどね」
――途中、スランプのような時期はありましたか?
「『TOKYO TRIBE』のオーディションの前の頃にありましたね。高校も卒業したばかりの頃で、私は大学にも行っていないので……。何のために東京に来ているんだろう、やめようかな、と悩んでいました。仕事もなくて、朝から夜までバイトしているような毎日だったんです」
――ええっ、バイトをされていたんですね。どんなバイトだったんですか?
「居酒屋です。大学生の集団が新歓コンパで100人くらいきて貸し切ったりするような規模のお店です。『TOKYO TRIBE』が公開された後、ドラマ『素敵な選TAXI』がオンエアされていた頃もやっていましたね」
――割と最近までバイトをされていたことも、働かれていたお店の雰囲気も意外です。まさに清野さんがヒロインを務められた『LOVE理論』の第一話に出てきそうな雰囲気ですよね(笑)。
「そうですね、酔いつぶれる方もいるような感じです。あるとき、掃除をしていてゴミ袋を捨てようと思ったら、中に嘔吐されたモノが入っていて、それが手にかかって……なんてこともありました」
――まさに地獄ですね……。
「ええ、地獄でした……(笑)」
そんな地獄から抜け出し、今や女優としての活躍がめざましい清野さん。つい1年半前まで、そんな地獄にいたなんてにわかには信じられない……。
……と、「地獄」を連呼してしまったが、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』は、安易に悪いものを“地獄”、良い場所を“天国”と呼べなくなるような、価値観の反転を起こさせてくれる傑作だ。
地獄の鬼の女子というとんだ設定と宮藤監督演出で、本人の清楚なイメージとはまた違ったインパクトも残してくれる。ちなみに、鬼メイクではない素の顔が見られるのは一瞬なので、見落とさないように!!
(取材・文:霜田明寛)
(写真:浅野まき)
【清野菜名】1994年、愛知県出身。2007年、雑誌「ピチレモン」の専属モデルとしてデビュー。園子温監督作品『TOKYO TRIBE』(14)でヒロインに抜擢され注目を集め、押井守監督最新作『東京無国籍少女』(15)で初主演を飾る。主な出演作に、ドラマ「素敵な選TAXI」(14/CX)、「ウロボロス〜この愛こそ、正義。」(15/TBS)、「コウノドリ」(15/TBS)など。
【関連情報】
TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ 6月25日(土)全国ロードショー
出演: 長瀬智也 神木隆之介/尾野真千子 森川葵/桐谷健太 清野菜名 古舘寛治 皆川猿時 シシド・カフカ 清/古田新太/宮沢りえ
監督・脚本: 宮藤官九郎
配給:東宝=アスミック・エース
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■公式サイト:TooYoungToDie.jp
■公式twitter : @TYTDmovie
■公式FB :https://www.facebook.com/TYTDmovie
<<STORY>>
フツーの高校生・大助は、同級生のひろ美ちゃんのことが大好き。
修学旅行中のある日、大助は不慮の事故に遭ってしまう。
目覚めるとそこは―――深紅に染まった空と炎、ドクロが転がり、人々が責め苦を受ける、ホンモノの【地獄】だった!!
なんで俺だけ!? まだキスもしたことないのに、このまま死ぬには若すぎる!!
慌てる大助を待ち受けていたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図(ヘルズ)を率いる赤鬼のキラーK。
キラーKによると、なんと、えんま様の裁きにより現世に転生するチャンスがあるという!
キラーKの“鬼特訓”のもと、生き返りを賭けた、大助の地獄めぐりが幕を明ける!!!