今回はオチマンポコ論・特別編です。正確にいうと、特別編の番外編といいましょうか。えー、順を追って書くとですね、私がもうすぐ公開(19年2月22日)の『血まみれスケバンチェーンソーRED』という映画の脚本を担当している縁で、主演の浅川梨奈さんをゲストにお迎えして、お悩み相談を受ける。…という主旨の特別編をお送りすべく対談をしたのですが、悩み相談を受ける前に私がいろいろ悩むという出来事があったので、それについて書きたいなということで、特別編の番外編です。
ですので、詳しい対談の様子や浅川さんのお悩みに答えている様子はこちら→『「周囲を輝かせる人間のほうが、実は光ってる」浅川梨奈×福原充則 初対談』を読んで頂けると幸いです。そして、映画『血まみれスケバンチェーンソーRED』はいろいろ飛沫まみれの4DX版もご用意してますので、ぜひぜひご覧ください。
さて…、
(笑)の付くおじさん
普段、脚本家なんぞをしていましても、撮影現場に行かないと、なかなか役者さんに会う機会はありません。ま、少なくとも私の場合は、ですが。雰囲気を掴むために書き出す前に会うこともあることはあります。が、今回は特に、原作漫画がありますので、漫画の主人公ありきで脚本を書いたこともあり、浅川さんに会うのはこの対談の時が初対面でした。
そうなると当然、お決まりの質問がインタビュアー(チェリー編集部の霜田さん)のほうから出るわけですね。
霜田「浅川さん、今、福原さんに会った印象や、脚本を読んで福原さんに抱いていたことなど、なにかありますか?」
妥当な質問でしょう。私が進行役でも、そんなジャブ的質問から始めて、徐々に深い悩み相談を聞いていこうという流れにすると思います。それは僕や霜田さんだけじゃなく、浅川さんもそう思っていたことでしょう。だから、さらさらっと答えましたよ、浅川さんは。
浅川「脚本を読ませていただいた時に、お色気シーンが入ってるなぁって思って。だから、書いた人は、男性の方で、おじさんなんだろうなって思っていて、今、会って、そのまんまイメージ通りでした」
霜田「はい。では、福原さんは浅川さんについてどういう印象を持たれましたか?」
福原「そうですね。原作の三家本先生の描く女性はいつも強くて色気があるので、それを踏まえて……、」
こんな滑り出しで話は続きましたよ。もう1度、言いますが、その辺についての詳細はこちら→『「周囲を輝かせる人間のほうが、実は光ってる」浅川梨奈×福原充則 初対談』でどうぞ。
で、いろいろ話して、真面目な話題もいっぱい出たんですが、その間、私にはずっと引っかかっていることがあったんですね。
改めて、最初の質問に対する浅川さんの答えを要約すると、
「スケベなおじさんだと思っていたら、そのまんまスケベなおじさんでした」
ということになると思います。
それに対して、インタビュアーの霜田(敬称剥奪)は、「はい」の一言で済ませていますね。
いや、いいんです。私は実際43歳のおじさんですし、まぁまぁスケベですよ。「まぁまぁ」のレベルもかなりの「まぁまぁ」です。上の中です。だから、そう思われること自体はなんの問題もないんです。思うことはもちろん口に出すことも、それも「そのまんまスケベなおじさんでした(笑)」と笑いながら言ってくれたら、何にも気にしなかったんです。
今までも「すっかりおじさんですね(笑)」って言われたり、「いやぁ俺もすっかりおじさんだわ(笑)」と自ら言うことは何度もありましたから。だって43歳だから。キャラメルコーンが大好きな43歳だから。
なのに私はショックを受けている自分に気付いたんです。それは、「夏は暑いですね」とか「冬は寒いですね」とか言うのと同じように、事実の描写として「スケベなおじさんでした」と言われたからだと思います。俺はおじさんだけど真のおじさんではなく、(笑)の付くおじさんなんだと心の隅で思っていたのです。
だから普段メンズエステ嬢の「43歳?見えなーい、若ーい」というお世辞を、お世辞だとわかってるつもりで、「まぁ同世代の会社勤めの人よりは若く見えるかなぁ」なんて喜んでしまっていた自分への恥ずかしい思いも爆発しましたのです。
念のため言っておきますけど、浅川さんは終始とても丁寧な対応でお話をして頂き、その場のスタッフさんにも細やかな気配りをしていました。
そんな浅川さんの気配りをもってしても、私を「スケベなおじさん」と言い切ってしまうことは回避できなかったんですね。なぜなら事実だから! 「殺人はよくない」と同じくらい当たり前の言説だから。「殺人、よくない(笑)」とは言わないもんなぁ……。
お父さん、来たよ
まぁ「おじさん」については事実ですし、浅川さんは19歳なんでね。19歳からみた43歳はおじさん以外の何者でもないわけで、私がごちゃごちゃ言ってるだけなんですが。
で、対談の帰り道にもうひとつ、似たような話を思い出しました。
少し前に、とある20代の女優さんの出ている芝居を見にいきまして。終演後挨拶に行ったら、楽屋前にいたマネージャーさんが私をみつけると、「○○ちゃん、お父さん来たよ」って言ったんですね。そのマネージャーさんともよく知った仲でしたので、私をその女優さんの実のお父さんだと勘違いした可能性はゼロなんです。だからその時、
「あ、この女優さんはいつもマネージャーさんと、俺のことをお父さんみたいって話しているんだな」
と察したわけです。
これについてはなんというか、若く見られたいという話ではなくて、男として見られたいってことですね。「お父さん」と呼ばれてる時点でもうその女優さんからは、異性として見られてないわけですよ。父性ですから。
もちろん私もね、こんな顔でこんな体型で43歳で、おまけにこの先も仕事をする可能性のある女優さんとね、本気で恋仲になりたいわけじゃないんですよ? でも、お父さんはいや……。
全部ダメ
グチグチ書きましたね。繰り返しますが、別におじさんと認めたくないわけでも、若さを取り戻したいわけでもないです。若い頃から、スケベだと思われていたし、お父さん扱いされなくても、結局、異性として見てもらえるわけでもないし。
中身は変わりません。
変わりたくても変わりません。
〝永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン〟なんてテーマのこのニッチなサイトが、いつまでも私に原稿料を払ってくれるのも、「童貞の大人が沢山いるから」ではなくて、「いつまでも童貞気分の抜けない大人が沢山いるから」な訳ですよね?。童貞捨てても、中身の童貞気分が変わることはないんですね。
だったら、いやおうなしに変化するものを愛でたい、という気持ちに私はなります。生きてさえいれば、おじさんには確実になれますから。
若い頃から自分が嫌いで、別の自分になりたくて、でもいつまで経っても自分のまま。そんな私が実現できた数少ない変身が〝おじさん〟なのです。
私は暗くて長い思春期を抜け出し、今、おじさんを手にいれました。
必死でもがいてたどり着いた場所なら、どんな場所でも愛せると思います。そういう意味で、私は戦って戦って戦った末にエル・ドラド、〝おじさん〟にたどり着き、やめられないタバコに火をつけ、痛い腰、上がらない肩をさすりながら、スカッとする映画でも見ようかなという気分です。出来れば4DXで。
(文:福原充則 写真:中場敏博)
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『血まみれスケバンチェーンソーRED』 映画情報
2019年2月22日(金)公開
【STORY】
自前のチェーンソーを持ち歩く鋸村ギーコ(浅川梨奈)はうぐいす学園に通う女学生。ある日、同級生の碧井ネロ(あの)が創り出した改造死体たちに襲われ始める。迫り来る改造死体たちを撃退して行きながら首謀者のネロのアジトに乗り込み直接対決を試みる。なぜ、ギーコを執拗に襲うのか!? それには衝撃の理由があった! ネロとの苦闘、そして鎧をまとった新たな敵との遭遇。彼女はうぐいす学園新生徒会ガーディアンズの総長ネメシス(護あさな)。ギーコ絶体絶命のピンチに!!
監督:山口ヒロキ
脚本:福原充則
出演:浅川梨奈 あの 護あさな ほか
配給:プレシディオ
公式HP:http://www.vap.co.jp/chimamire/
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