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山田五郎が映画『黄金のアデーレ』を解説 ヒトラーを歪ませたのはオーストリア!?

『黄金のアデーレ 名画の帰還』が11月27(金)より公開。公開を記念し、美術評論家の山田五郎氏と『美術手帖』編集長の岩渕貞哉氏によるトークイベントが行われた。

この映画は、自身の叔母の肖像画を取り戻そうとする女性・マリアの実話を描いたもの。肖像画は、ナチスに略奪されて、長い間オーストリア・ウィーンの美術館に所蔵されていた。ナチスによる略奪も、裁判による“名画の帰還”も実際に起こった話。当時、オーストリアにとっては国の威信をかけた戦いになることもあり、大きく注目された裁判となった。トークイベントでは歴史の背景も踏まえた解説が行われた。

オーストリアがヒトラーを作った

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岩渕氏は「オーストリアはプライドが高くて、自分たちがヨーロッパの中心だと思ってますから。(新興国であるアメリカ在住のマリアに)絵を取られるのは屈辱だったんじゃないですかね」と背景を紹介。

そこから、学生時代にオーストリアに留学経験もある山田氏による解説が始まる。
まずはヒトラーと、物語の舞台ともなるオーストリアの首都・ウィーンの関係性について。
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「ヒトラーはウィーンで売れない画家をやっていたんですよ。ヒトラーの絵は普通の絵なんです。でも、自分の絵をユダヤ人の画商に買ってもらえないから、怒りが溜まっていって歪んでいったんじゃないですかね。その意味ではオーストリアがヒトラーを作ったとも言えますよね」

オーストリアだったからこそ可能だったロケ

この映画は、アメリカ在住のマリアの視点で描かれるため、裁判の相手となるオーストリアは、簡単な言い方をすれば敵ということになる。その点に関して、山田氏はこう語る。

「この映画ではオーストリアが相当な悪者に描かれていてちょっと可哀想ですよね。オーストリアの人たちは、文句を言うんじゃないですかね。『サウンド・オブ・ミュージック』の次に、彼らに評判が悪い映画になるんじゃないでしょうか(笑)。『サウンド・オブ・ミュージック』のことを彼らは嫌いなのに、それで飯を食っているという複雑な構造なんですよね」

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と、“オーストリアのジジイ”たちを若干批判。ただ、劇中のロケ地に関してはオーストリアの寛大さを褒め称える部分も。
「劇中に、ウィーンの市庁舎にナチスの旗を立てるシーンがありましたよね。ウィーンの人々は、旗を掲げてナチスを歓迎していますし、オーストリアだったからロケが可能だったんじゃないですかね。ドイツなら絶対無理ですよ」と語る山田氏に、「時を経て、過去を改めて見つめ直そうと政府が考えたのかもしれないですね」と岩渕氏が加えた。

ナチスがいなければウィーンはすごいことになっていた

劇中では、ナチスに支配される前の、オーストリア・ウィーンの豪華絢爛な様子も描かれる。

「逆に言えば、ナチスの美術品略奪がなければ、つまりナチスがいなかったら、ウィーンやドイツはどれだけ発展したんだろう、と考えますよね。当時のウィーンには、フロイト、シェーンベルク、マーラー、ウィトゲンシュタインといったすごい人たちがたくさんいたんです。彼らをみんなナチスは追っ払ってしまった。だから、あのまま彼らが追い払われなかったら、ウィーンはすごいことになったでしょうね」
と、山田氏は映画をきっかけに、“あったかもしれない未来”にも思いを馳せた様子。

映画をさらに歴史にひも付けて見る、様々な視点を与えてくれるトークショーとなった。映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』は渋谷シネマライズ他で11月27日(金)より全国ロードショー。

(取材 小峰克彦・霜田明寛 文:霜田明寛)

■関連リンク
・映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』公式サイトhttp://golden.gaga.ne.jp/11月27日より全国ロードショー

◆監督:サイモン・カーティス 『マリリン 7日間の恋』    
◆脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
◆出演:ヘレン・ミレン『クィーン』(アカデミー賞主演女優賞受賞)、ライアン・レイノルズ『あなたは私の婿になる』
ダニエル・ブリュール『ラッシュ/プライドと友情』、ケイティ・ホームズ『バッドマン ビギンズ』  ほか
配給:ギャガ  提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ
©THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

【STORY】
20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らす82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)が、オーストリア政府を訴えたのだ。“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画<黄金のアデーレ>を、「私に返してください」という驚きの要求だった。伯母であるアデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。弁護をするのは、駆け出し弁護士のランディ(ライアン・レイノルズ)。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは──?

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