ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第14回「21世紀の連ドラ史」

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さて、今回は21世紀の連ドラの話である。
21世紀に入って、もう16年が経つ。気がつけば――90年代の連ドラはちょっと遠くになりつつある。『ロンバケ』や『踊る大捜査線』の話をしても、今の10代にとっては生まれる前の話なのだ。

今回、なぜ21世紀の連ドラ史の話をしようと思ったかというと――この連載初の試みになるけど、皆さんの好きな21世紀の連ドラを聞いてみたいと思ったから。そう、あなたにとっての「21世紀のマイ・フェイバリット連ドラ」。それを募集したいと思ったからなんです。

で、今回は、その露払いというか、ざっとこの16年間の主な連ドラを振り返って、皆さんの記憶を呼び起こす手助けになれば……という次第。
とはいえ、スペースの都合もあり、取り上げる連ドラにも限りがあるので、あくまでこの16年間の流れを掴む程度にお読みいただけると幸いです。

皆さんのご意見は集計して、来年1月のこの連載で発表したいと思います。応募方法は最後にお知らせしますので、しばし、お付き合いを――。

お仕事ドラマの夜明け

まず、21世紀の連ドラの特徴として、それまでの“純愛ドラマ”全盛だった90年代と比べて、“お仕事ドラマ”の時代となったことが挙げられると思う。
で、その扉を開けたのが、この作品――フジテレビの月9ドラマ『HERO』(1stシーズン)だったと。奇しくも2001年1月8日スタート。文字通り21世紀最初のクールの作品だったんですね。

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思えば、90年代の純愛ドラマの扉を開いたのは、91年1月スタートの『東京ラブストーリー』だった。それ以前、連ドラ界はトレンディドラマの時代だったのが、『東ラブ』以降は“純愛ドラマ”が大勢となったからである。

さて、そこで『HERO』。
主演は、ラブストーリーの旗手・木村拓哉。ヒロインは、かつて『ラブジェネレーション』(フジ系/1997年)でもキムタクと組んだ松たか子。
2人は息の合ったコンビワークを見せるが、決定的な恋には落ちない。互いに好き合ってはいるものの、ドラマの主軸はあくまで「検事」というお仕事――。
そう、これがお仕事ドラマである。

舞台裏でもう一つのお仕事ドラマ

このお仕事路線が以後、連ドラ界の大勢になったのは、ひとえに『HERO』が高視聴率を獲得したからなんですね。
なんと、11話全て30%超え。これは日本の連ドラ史上、今もって唯一の快挙である。

脚本は福田靖サン。この作品が彼にとって出世作になったんだけど、面白いのは、実は福田サンはピンチヒッターだったんですね。
初回は大竹研という、フジのヤングシナリオ大賞を取った人が書いていたんだけど、この方、1話で降りちゃったんです。聞くところによると、脚本をどんどん変えられることに耐えられなくなったからと――。

ま、連ドラの脚本って、そういうものだけど(その辺りの仕組みは三谷幸喜サンの映画『ラヂオの時間』を見ればよく分かります)、そこで急遽ピンチヒッターに呼ばれたのが、福田靖サンだったというワケ。で、フジの石原隆サンとのコンビワークで、類い稀なる傑作を書き上げたのだ。
そう、かの作品の舞台裏では、もう一つのお仕事ドラマが展開されていたんですね。

脇でキラリと光るキムタクの立ち位置

さて、この『HERO』の成功を機に、以後、キムタクは様々な職業を経験することになる。
2003年の『GOOD LUCK!!』(TBS系)ではANAのコーパイ(副操縦士)に、05年の『エンジン』(フジ系)ではレーシングドライバーに、07年の『華麗なる一族』(TBS系)では財閥系企業の経営者を務め、08年の『CHANGE』(フジ系)ではとうとう内閣総理大臣にまで上り詰める――。

この中で、僕が好きなのは、『GOOD LUCK!!』ですね。機長じゃなくてコーパイを演じた、かの作品。
思うに、ドラマにおけるキムタクの立ち位置って、センターにどっかり居座るよりも、脇でキラリと光るほうが向いているんじゃないかと。あの『あすなろ白書』(フジ系/1993年)の取手クンもそうだったし、『ラブジェネ』でエリート検事の兄貴と比較されがちな広告マンの弟クンもそうだった。『眠れる森』(フジ系/1998年)も、キムタク演ずる照明マンの直季は、中山美穂演ずる記憶喪失のヒロイン実那子を陰ながら見守る役だったし――。

今も支持者が多い『恋ノチカラ』

そうそう、『GOOD LUCK!!』で思い出したけど、機長を演じた堤真一サンも21世紀、数々の名作に出演していますね。
中でも珠玉が、2002年1月クールの『恋ノチカラ』(フジ系)。広告の世界を舞台に、堤サン演ずる有名クリエイターと、深津絵里演ずる独身アラサーOLとのラブストーリー。お仕事ドラマではあるけど、恋愛要素も入ってて、今もこの作品をベスト連ドラに挙げる女性は多い。

ちなみに同ドラマのスタッフは、あの『やまとなでしこ』(フジ系/2000年)と同じ。そりゃ面白いはず。

試行錯誤の時代

そんな次第で、21世紀はお仕事ドラマの時代になるんだけど、実は21世紀を境に、スパッと純愛ドラマから移行したワケじゃないんですね。

前兆は既に90年代後半からあった。純愛路線がそろそろ飽きられてきて、連ドラ界全体が次はどうしようかと試行錯誤を始めていた時代――。
現に、あの『踊る大捜査線』(フジ系/97年)もその1つだった。かのドラマはいわゆる純粋な刑事ドラマとは違う。警察署を舞台にした、お仕事ドラマだったんですね。
前述の『眠れる森』も、連ドラのスター中山美穂と木村拓哉を起用して、野沢尚サンの脚本で、当時としては珍しい「ミステリー」に挑んだ佳作だったし、新機軸を模索していた。

で、この御仁――フジテレビの山口雅俊サンも、この時期、数々の話題作を輩出したのである。

異才・山口雅俊

山口雅俊。灘高から東大法学部に進み、卒業後にコロンビア大学に留学してMBA(経営学修士)を取得したのちフジテレビに入社という、テレビ界にはちょっと似つかわしくない(?)スーパーエリートだ。
だが、この人が本当に凄いのは、プロデューサーとして手掛けたその作品群なんですね。例えば――

『ナニワ金融道』(1996年~2005年)
『ギフト』(1997年)
『きらきらひかる』(1998年)
『タブロイド』(1998年)
『カバチタレ!』(2001年)
『忠臣蔵1/47』(2001年)
『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』(2002年)
『ランチの女王』(2002年)
『ビギナー』(2003年)
『不機嫌なジーン』(2005年)

――ほら、かなり異色作が多い。
中居正広を主演に起用した『ナニワ金融道』では“マチ金”の世界をリアルに描き、木村拓哉主演の『ギフト』ではキムタクを記憶喪失の「届け屋」に仕立てた。
『きらきらひかる』では井上由美子サンの脚本で重厚なミステリーを構築し、『タブロイド』では夕刊紙を舞台にお仕事ドラマの世界を切り開いた。『ロング・ラブレター~漂流教室~』に至っては、楳図かずおサンのSF漫画を大胆にラブストーリーに改訂した。

で、2005年に山口サンはフジを退職して独立するんだけど――彼のフジ時代の10年間の作品群を振り返ると、あらためてそのクオリティの高さに驚かされる。

クドカンの登場

そうそう、21世紀の連ドラを象徴する作り手で、この人も忘れちゃいけない。脚本家・宮藤官九郎だ。

連ドラのデビューは、21世紀直前――あの『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系/2000年)だった。略称・IWGP。今も語り継がれる名作だけど、放映前、同ドラマは『ケイゾク』(TBS系/1999年)の堤幸彦監督の作品として注目され、脚本のクドカンはノーマークだったんですね。

ところが――蓋を開けたら、小ネタ満載で超面白くて、クドカンの名を一躍メジャーに押し上げた。
いや、そればかりじゃない。この作品をキッカケに多くの若手俳優にスポットライトが当たった。主役の長瀬智也は別としても、窪塚洋介、山下智久、妻夫木聡、坂口憲二、小雪、佐藤隆太、阿部サダヲ、高橋一生――今見るとそうそうたるメンツだけど、みんな当時はほとんど無名だった。

さて、一躍人気脚本家の仲間入りをしたクドカンを、当然あの局が放っておくはずがない。フジテレビだ。
ところが――これが前代未聞の事件に発展する。

高視聴率のスタート

そのドラマは、奇しくも21世紀の幕開けと共にスタートした『ロケット・ボーイ』(フジ系)である。
主演は織田裕二。脚本・宮藤官九郎、演出・河毛俊作という華麗なる座組み。放映前、クドカンの脚本を読んだフジの大多亮サンは「なんにも事件が起こらない」と不満を述べたが、それこそがクドカン脚本の醍醐味であるのはいうまでもない。もしかしたら、既にそこからボタンの掛け違いは始まっていたかもしれない。

織田裕二演ずる主人公は、旅行代理店で働く気弱なサラリーマン。そんな彼がひょんなことからユースケ・サンタマリアと市川染五郎演ずる仲間たちと出会い、3人の男の友情物語が始まる。初回視聴率は19.9%。どちらかといえば控えめな視聴率の多いクドカンドラマにおいて、この数字の高さは異例である。

前代未聞のトラブル

そうそう、2001年1月クールというと、冒頭のキムタクの『HERO』と同じだ。面白いことに、2つのドラマはどちらも渋スタ(渋谷ビデオスタジオ)で収録されていたんですね。しかも――『HERO』には松たか子、『ロケット・ボーイ』には市川染五郎と、兄妹揃い踏みだった。
――となると、両ドラマの出演者のニアミスもちょいちょい起きるわけで。なんとこの時期、キムタクと織田裕二も顔を合わせているんですね。ちなみに、両者の初顔合わせはこの兄妹が間を取り持ち、「ども、織田です」と男前に挨拶する織田裕二に対して、キムタクはひたすら照れていたそう――。

閑話休題。それはそうと、『ロケット・ボーイ』は開始早々、思わぬトラブルが起きる。
なんと、3話の収録中に、主演の織田裕二が椎間板ヘルニアで入院するという前代未聞の事態が起きたのだ。

再放送の『踊る~』が高視聴率

一時は打ち切りも検討されるが、織田裕二の回復を待って撮影を再開する方針となり、最悪の事態は免れる。だが、全11話を7話に減らさねばならず、休止の4回は同じ織田裕二主演の『踊る大捜査線』が再放送されることになった。ゴールデンタイムにドラマを再放送する前代未聞の事態である。
だが――さらに前代未聞だったのが、この再放送が本放送の『ロケット・ボーイ』を上回る20%台の高視聴率を連発したのだ。

撮影が再開され、3話が放映されたのは、2話から1カ月後の2月21日。その後はつつがなく進み、全7話をもってドラマは終了する。平均視聴率は18.8%と高視聴率。内容も僕は面白かったと思う。
だが、同ドラマはその後、再放送もされず、DVD化もされていない。そして以後――今に至るまでクドカンはフジテレビで連ドラを一度も書いていないのだ。

クドカンの軌跡

皮肉にも、フジテレビで高視聴率を出しながらも、クドカンは活躍の軸足を古巣のTBSをはじめ、他局へと移す。
以下が、『ロケット・ボーイ』以降、彼が手掛けた主な作品である。

 
『木更津キャッツアイ』(TBS系/2002年)
『ぼくの魔法使い』(日本テレビ系/2003年)
『マンハッタンラブストーリー』(TBS系/2003年)
『タイガー&ドラゴン』(TBS系/2005年)
『未来講師めぐる』(テレビ朝日系/2008年)
『流星の絆』(TBS系/2008年)
『うぬぼれ刑事』(TBS系/2010年)
『11人もいる!』(テレビ朝日系/2011年)
『あまちゃん』(NHK/2013年)
『ごめんね青春!』(TBS系/2014年)
『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系/2016年)

――と、話題作が満載だ。個別の論評は差し控えるが、作品名を見ただけで内容が思い出されるのは、やはり彼の作品が視聴率以上に記憶に残りやすい証しだろう。

日テレの逆襲

90年代、日テレのドラマはフジやTBSの後塵を拝していた。時々、安達祐実の『家なき子』(1994年)や酒井法子の『星の金貨』(1995年)などのスマッシュヒットはあるものの、全体的にはキャスティング力が弱く、若い女性視聴者が好んで見るドラマも少なかったと記憶する。

だが、21世紀に入ると、突如、日テレは反転攻勢に出る。その第一弾が、このドラマ――『ごくせん』である。

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時に2002年4月。主演は、堤幸彦監督の『TRICK』(テレ朝系/2000年)で阿部寛と名コンビを組んだ仲間由紀恵。脚本は『ナースのお仕事』(フジ系/1996年)の江頭美智留。正直、放映前はそんなに注目される作品じゃなかった。
ところが――始まるや否や、同ドラマは大反響を巻き起こす。初回視聴率は18.3%。

何より評判だったのが、その『水戸黄門』的な分かりやすい勧善懲悪なストーリーだ。あのフジテレビの石原隆サンをして、「うちのドラマかと思った」と言わしめたほど。
同ドラマがいかに傑作だったかは、生徒役を演じ、後にブレイクした役者陣が物語る。松本潤、小栗旬、成宮寛貴、松山ケンイチ、上地雄輔――皆、このドラマから巣立っていったのだ。

木皿泉という異才

不思議なもので、1つのドラマの成功が、局の風向きをガラリと変えることがある。
当時の日本テレビもそうで、『ごくせん』の翌年、一風変わったドラマが世間を賑わした。『すいか』である。

脚本は木皿泉サン。当時は無名の脚本家で、あの三谷幸喜サンの出世作『やっぱり猫が好き』の脚本家陣の一人だったくらいしか目立ったキャリアがなかった。
主演はその縁で小林聡美。信用金庫に勤める34歳のOLがある日、同僚の横領事件を機に家を出て風変りな下宿屋に入居する話で、そこで出会う住民たちとのハートウォーミングな物語である。

ハマる女性視聴者が続出

かのドラマ、大事件が起きるわけでも、濃密な恋愛劇が展開されるわけでもない。物語のベースは淡々と日常が描かれるのみ。

案の定、視聴率は平均8.9%と低迷する。だが――中盤あたりから口コミで同ドラマにハマる視聴者が続出。そのユルい空気感や、珠玉の台詞に癒される女性たちが増えていったのだ。

放映後、同ドラマは優れた作品に贈られるギャラクシー賞を受賞する。そして脚本を手掛けた木皿泉サンは、栄えある向田邦子賞を受賞したのである。

木皿泉が日テレにもたらしたもの

一躍スター脚本家に躍り出た木皿泉サン。
その素顔は、神戸在住のご夫婦である。木皿泉は2人合作のペンネームなのだ。打ち合わせは東京から日テレの河野英裕プロデューサーがその都度やってくるそうで、彼らの作品の独特の空気感は、そんなマイペースな創作環境に起因するのかもしれない。

ちなみに、『すいか』の後も、木皿サンは次々に話題作を輩出する。『野ブタ。をプロデュース』(2005年)、『セクシーボイスアンドロボ』(2007年)、そして『Q10』(2010年)――全て日テレだ。そして共通して、温かくもユルい空気感が特徴である。

すると、いつしかそんな空気感が日テレの他の枠へも飛び火する。

水曜10時の女性タイム

現在、連ドラで視聴率が取りやすい枠というと、『相棒』でお馴染みのテレ朝水曜9時枠と、『ドクターX~外科医・大門未知子~』や『DOCTORS』のテレ朝木曜9時枠。それに日テレの水曜10時枠である。
あっ、ここへきて『逃げるは恥だが役に立つ』のTBS火曜10時枠も注目されつつあるけど――まっ、もう少し様子を見ましょう。

中でも、日テレ水曜10時枠は、いわゆる「働く女性の応援枠」といわれ、女性が主人公のヒット作が多い。

マイノリティなヒロインに光

同枠が今のような路線になったのは、日テレの櫨山裕子プロデューサーの功績なんですね。篠原涼子と小林聡美が共演して、ギャラクシー賞を受賞した『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』(2004年)がキッカケ。
以降――『anego』(2005年)に『ハケンの品格』(2007年)、『ホタルノヒカリ』(2007年)といった女性に視点を当てたヒット作を連発して、現在の地位を築き上げた。
同枠の特徴は、そのヒロイン像にある。アラサーOLや派遣社員、干物女といった、世間からちょっとマイノリティに扱われがちな女性たちを取り上げ、やさしくも温かい光を当てたのだ。

その思想のベースに、かつて木皿泉サンが開拓した『すいか』路線が、脈々と同局に受け継がれていると推測する。

遊川和彦という劇薬

とはいえ、日テレの連ドラ全体がそんな温かい空気感に覆われているということではなく、時には劇薬も投与される。その代表格が遊川和彦サンの書くドラマである。

2005年、最初の劇薬が天海祐希主演の『女王の教室』だ。小学校を舞台に、全身黒装束の新任教師・阿久津真矢が、恐怖政治でクラスを支配する話。生徒役の志田未来が一躍脚光を浴びた作品としても知られる。
放送中、あまりに過激なシーンに批判が殺到するが、それも局側にとっては計算のうち。要は、真矢の恐怖政治は愛情の裏返しで、最終回で全て明かされるという構成。いわゆる「アンチクライマックス」の手法ですね。

そして、もう1つの劇薬が、2011年の『家政婦のミタ』。松嶋菜々子演ずる笑わない家政婦・三田灯が主人公。
こちらも『女王~』同様、物語の前半は彼女の過激な行動に視聴者は驚かされるが、それも全て意味があり、おかげでバラバラになりかけた家族は絆を取り戻す。最終回は、当の三田が過去のトラウマを乗り越え、笑顔を取り戻すというオチ。
ちなみに、最終回の視聴率40.0%は、『半沢直樹』(TBS系/2013年)に次いで今も21世紀の連ドラ視聴率第2位である。

『相棒』の登場

さてさて、2001年1月――『HERO』と『ロケット・ボーイ』がスタートした同じ時期、奇しくも、あのドラマも22.0%という高視聴率を記録して、視聴者の脳裏に深く刻まれる。
テレビ朝日の『相棒』である。

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当時はまだ土曜ワイド劇場の単発枠で、スペシャルドラマの2回目だった。この成功を機に、3回目のスペシャル放送を挟み、翌02年10月からレギュラー放送へと昇格する。そして以後、毎年のようにシーズンを重ね、現在15シーズン目が放送中である。

目の肥えた40代がハマった

『相棒』の成功は、従来の刑事ドラマに、警察署の「お仕事」的要素と「謎解き」の面白さを加え、現代的なスタイリッシュな演出を施したからである。これに、連ドラに目の肥えた40代がハマった。

そのクオリティを支えるのは、メインライターの輿水泰弘サンをはじめ、櫻井武晴サンや戸田山雅司サンといった実力派の脚本家陣だ。その数、のべ40人以上。あの『リーガル・ハイ』(フジ系/2012年)の古沢良太サンもその中の一人と思えば、クオリティの高さがお分かりいただけると思う。

社会派ドラマのリノベーション

さて、『相棒』の成功は、連ドラ界に目の肥えた40代の視聴者を呼び込んだ。すると――それと呼応するかのように、社会派ドラマの時代が訪れる。

社会派ドラマとは、例えば松本清張や山崎豊子といった有名作家たちの小説を原作とする重厚なドラマである。
1970年代以前は、その種の連ドラは散見されたが、連ドラの主要ターゲットが若者層に移った80年代以降、それらは2時間ドラマの単発枠でしか見られなくなっていた。

ところが――21世紀に入り、再び連ドラとして復活したのである。但し、21世紀流にアレンジされており、それは女性層、主にF2層(35~49歳女性)にも見てもらうためだった。リメイクというより、建築用語でいうところのリノベーションに近い。

『白い巨塔』と『砂の器』

2003年、唐沢寿明を主役に、山崎豊子原作の『白い巨塔』(フジ系)が始まった。ご存知、かつて70年代に田宮二郎の主演で作られた有名ドラマの21世紀版だ。
新作では、旧作に比べて教授夫人会の「くれない会」のウェートが増すなど、各所に女性目線を意識したのが特徴だった。そのかいあって、平均視聴率は20%を超え、最終回は堂々の32.1%。

また、2004年に登場した松本清張原作の『砂の器』(TBS系)の21世紀版も、アレンジが施された。こちらの場合、主人公をベテラン刑事の今西から天才ピアニストの和賀に変更し、それを中居正広が演じた。初回視聴率26.3%は、女性視聴者がハマった結果である。

その種のアレンジは原作ファンからすると、賛否両論あるかもしれない。だが、連ドラは時代の鏡。視聴者の嗜好に合わせて変化し続けるのも、ある意味、連ドラの「宿命」なのだ。

NHKの社会派ドラマ

NHKの社会派ドラマについても触れておきたい。
基本、民放が90年代に若者路線に走る中にあっても、NHKだけはそれなりに社会派ドラマを作り続けてきた。
21世紀もその姿勢は変わらない。ただ、視聴者側の意識が変わり、以前よりも社会派ドラマを受け入れる間口が広がっていた。

NHKはこの好機を逃さなかった。そこで、かつて「山田太一シリーズ」や「向田邦子シリーズ」などを輩出した名門枠「土曜ドラマ」を復活させる。

復活・土曜ドラマ

2005年、土曜ドラマ復活第一弾として放送されたのが、横山秀夫原作・大森寿美男脚本の『クライマーズ・ハイ』である。
あの1985年の日航機墜落事故を題材に、地方新聞社の記者の奮闘を描いた傑作である。主役の佐藤浩市や岸部一徳の好演に加え、硬派な演出も光り、ギャラクシー賞を受賞した。

この成功を機に、土曜ドラマは以後、帝国ホテルの料理長・村上信夫の生涯を描いた『人生はフルコース』(2006年)をはじめ、IT社会における企業買収の攻防を描いた『ハゲタカ』(2007年)、プロ野球の名コーチから高校教師に転身した高畠導宏の実話を高橋克実が好演した『フルスイング』(2008年)、国際テロリストと公安の情報戦争を古沢良太サンが脚色した『外事警察』(2009年)など、数々の傑作を輩出する。

阿部寛と草彅剛の確変

ここで、ちょっと話題を変えて、21世紀に“確変”した、代表的な2人の俳優を取り上げてみたい。
阿部寛と草彅剛である。
片や『メンズノンノ』のモデルから俳優の道へ、片や国民的アイドルながら数々のドラマに出演――と、キャリアは長い。
だが、2人が真にオンリーワンの役者に確変したのは、21世紀に入ってからである。

まず2003年、草彅剛が『僕の生きる道』(フジ系)と出会う。脚本は橋部敦子サン。余命1年を宣告された教師が残された人生に向き合い、周囲に変化をもたらす話で、草彅は役作りのために9㎏減量して撮影に臨んだ。最終回の視聴率は21.6%。
ちなみに、同ドラマの主題歌が『世界に一つだけの花』である。

3部作へ――

一方、阿部寛は2004年、尾崎将也サン脚本の『アットホーム・ダッド』(フジ系)と出会う。
突如、会社をリストラされた広告マンが“主夫業”に挑む話で、ゴミ出しや娘の送迎、掃除に洗濯と奮闘する姿がとにかく笑えた。洗濯機を前に10分間格闘する場面は日本のドラマ史上屈指の名シーンといっていいだろう。バスター・キートンばりの笑わないコメディアン――阿部寛の誕生である。

その後、草彅剛は翌04年に『僕と彼女と彼女の生きる道』に、06年には『僕の歩く道』にも出演。いわゆる橋部敦子サン脚本の“僕シリーズ3部作”が完成する。そしてオンリーワン役者・草彅剛へと確変する。

一方の阿部寛もその後、『結婚できない男』(2006年)に『白い春』(2009年)と、尾崎将也サン脚本の3部作で不動の笑わないコメディアンの地位を確立する。

全ては「冬ソナ」から始まった

2004年、21世紀の連ドラ史を揺るがす歴史的ドラマがNHKで放送された。
韓流ドラマの『冬のソナタ』である。毎週土曜夜11時台の深夜の放送ながら、平均視聴率14.4%、最終回は驚異の20.6%。多くの女性視聴者を虜にして、この年、日本列島に「冬ソナ」ブームが吹き荒れる。

だが、それはほんの序章に過ぎなかった。
時に、ネットの世界ではブロードバンド革命が起こり、20代と30代の男性がテレビから離れ始めていた。結果、相対的にテレビ界では女性視聴者の比率が上がり、これ以降、テレビは彼女たちを中心に大変革を巻き起こす。

大河ドラマに女性視聴者が進出

『冬ソナ』から2年後の2006年、NHKの大河ドラマ『功名が辻』が放映された。脚本は大石静サン。主演は仲間由紀恵と上川隆也である。
かのドラマ、原作は司馬遼太郎だが、主人公・千代は戦国の女に徹した原作から設定を大きく変えられ、反戦思想を内に秘めた現代的な女性になった。

古参の大河ファンや司馬遼太郎ファンはその“脚色”に難色を示すが、逆に視聴率は4年ぶりに20%台を回復する。
そう、従来の大河の主要視聴者ではない、女性たちが見てくれたのだ。

そして、その流れを受け、さらに2年後の2008年――あの大ヒット大河が登場する。
『篤姫』である。

スイーツ大河極まる

大河ドラマはオンエアの2年前に、内容やキャストがほぼ固まる。
2006年の『功名が辻』が、04年の『冬のソナタ』の大ヒットを受けて女性目線になったのは、ひとえにそういう事情である。
だから07年の『風林火山』は、前年の『功名が辻』の影響を受けていない。ゆえに大森寿美男サン脚本の骨太の大河になった。個人的には大好きなんですけどね。

さて、2008年の大河『篤姫』――。
『功名が辻』のヒットに触発され、女性脚本家による、女性が主人公の、女性目線の大河になった。いわゆる「スイーツ大河」である。
これが当たった。大当たりした。最高視聴率29.2%は、今も21世紀の大河最高値である。篤姫を演じた宮崎あおいは大スターとなり、徳川家定役の堺雅人も、その演技力が高く評価された。

2005年のパラダイムシフト

俗に、先の『冬ソナ』の大ヒットを受け、テレビの視聴者の構造が女性主導に変わった現象を「2005年のテレビ界のパラダイムシフト」と呼ぶ。
現に映画界でも、05年に邦画の興行収入が洋画を逆転。そこから邦画主導の時代になるが、それも映画の観客が女性主導になったからである。以来、邦画の新作は基本、女性向けに作られるようになった。

さて、2005年のテレビ界のパラダイムシフト――。
大河ドラマは、2015年の『花燃ゆ』までスイーツ路線が主流になるが、民放でも、05年あたりから、特に若い女性ターゲットの連ドラが急増する。それは、イケメンばかりが出るドラマだったり、同世代のモデル出身の女優が出るドラマだったり――。
以下が、その一例である。

『花より男子』(TBS系/2005年)
『ドラゴン桜』(TBS系/2005年)
『のだめカンタービレ』(フジ系/2006年)
『ギャルサー』(日テレ系/2006年)
『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジ系/2007年)
『プロポーズ大作戦』(フジ系/2007年)
『モップガール』(テレ朝系/2007年)
『パパとムスメの7日間』(TBS系/2007年)
『ハチミツとクローバー』(フジ系/2008年)
『ROOKIES』(TBS系/2008年)
『絶対彼氏 〜完全無欠の恋人ロボット〜』(フジ系/2008年)
『ラスト・フレンズ』(フジ系/2008年)
『オトメン(乙男)』(フジ系/2009年)

――という具合。
この時期、新垣結衣や北川景子、鈴木えみ、榮倉奈々といったモデル出身の女優が急増したのは、ひとえにテレビ界のパラダイムシフトに起因する。

ところが、不思議なことに、2009年あたりから徐々にこの種のドラマが減り始める。そして、入れ替わるようにあの大ヒットドラマが登場する。
『JIN-仁-』だ。

復活・TBS日曜劇場

よく「人が歴史を作るのではなく、歴史が人を作る」といわれる。
織田信長や豊臣秀吉が天下統一を成し遂げたのではなく、戦国の乱世を収めたいと願う民衆のエネルギーが彼らを生んだと。
その説に従えば、2009年10月クールに連ドラの流れを変える名作が生まれたのも、歴史の必然だったのかもしれない。

TBS日曜劇場『JIN-仁-』は、脚本・森下佳子サン、演出・平川雄一朗サン、プロデュース・石丸彰彦サンの座組みである。主演は大沢たかお、Wヒロインに綾瀬はるかと中谷美紀。ちなみに坂本龍馬は内野聖陽が演じた。
いわゆるタイムスリップものだが、よくあるSFコメディじゃない。重厚な歴史ドラマであり、人間ドラマである。視聴率は平均19.0%、最終回は25.3%。

長らく低迷期にあったTBSは、このドラマの成功を機に、復活への手応えをつかむ。
その原動力になったのは、50代以上のF3の女性視聴者たちだった。

震災の翌月

2011年4月クールは、忘れられないクールになった。
未曾有の東日本大震災の翌月のスタート。まだ日本人の震災の傷は癒えておらず、娯楽を提供するテレビの立ち位置は微妙だった。
だが、そんな中、2つのドラマが脚光を浴びる。奇しくも日曜9時の裏表。TBSが『JIN-仁- 完結編』、フジが『マルモのおきて』である。

初回は『JIN-仁-』が23.7%、『マルモ』が11.6%とWスコアの差が付いた。だが、ここから『マルモ』が奇跡の追い上げを見せる。芦田愛菜と鈴木福の子役コンビに癒される人々が続出。先の震災でも活躍したSNSの口コミ効果もあり、最終回の視聴率は驚異の23.9%――。

2011年のパラダイムシフト

だが、この話の肝はそこじゃない。一方の『JIN-仁- 完結編』の最終回は26.1%。平均値も前作を上回る21.3%だった。

これは何を意味するか?
そう、SNSにもびくともしない50代以上のM3(男性)やF3(女性)層の存在だ。『マルモ』がお祭り客だったのに対し、『JIN-仁-』は馴染みの常連客だったのだ。

祭りが終われば、人は引く。『マルモ』の次のクール、フジの日9枠は4年前に平均17.0%を取った『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』のリメイク版『~2011』が放映されるが、平均7.1%と惨敗する。

そう、時代は変わっていた。既に若い女性たちはテレビから離れ、その関心はスマホに移っていた。テレビの視聴率を左右するのは、スマホに依存しない50代以上の層にシフトしていたのである。

この年、フジテレビが7年続けた三冠王の座から陥落する。

『半沢直樹』を支えたF3層

フジの苦戦をよそに、TBSの日曜劇場は常連客――M3やF3層を大切にした。
その成果が最も現れたのが、2013年の7月クールだった。そう、今も語り継がれる伝説のドラマ『半沢直樹』である。
脚本・八津弘幸サン、演出・福澤克雄サン、プロデュース・伊與田英徳サンの座組みは、よく『JIN-仁-』の石丸チームとライバル視される。

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驚くのは、その視聴率だ。初回の19.4%から一度も下がらずに、最終回は驚異の42.2%。この数字、平成以降の連ドラ視聴率の1位なんですね。

なぜ、こんな高視聴率が取れたのか、演出の福澤サンは、あるインタビューでこう答えている。「よく、恋愛要素がないと女性はドラマを見てくれないといわれますが、このドラマの視聴率を支えてくれたのは女性たちでした。大事なのは、自分たちが面白いと思うものを作ることです」

朝ドラの変革

実は、そんな2011年のパラダイムシフトをいち早く予見し、先に手を打って乗り切ったのが、NHKの朝ドラである。
21世紀の朝ドラは長期低落傾向にあった。時々、『ちゅらさん』(2001年)や『てるてる家族』(2003年)、『ちりとてちん』(2007年)といったスマッシュヒットは出るが、下落が止まることはなかった。
2009年に至っては、AK(東京放送局)制作の『つばさ』も、BK(大阪放送局)制作の『ウェルかめ』も、共に平均13%台と過去最低に落ち込んだ。

そこで2010年、NHKは朝ドラの一大改革に打って出る。
放送開始時間を15分繰り上げ、8時からに。扱う題材も、かつての昭和の女性一代記に戻した。漫画家・水木しげる夫妻をモデルにした『ゲゲゲの女房』である。

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戦争が物語を作る

朝ドラ『ゲゲゲの女房』は初回14.8%と朝ドラ史上最低視聴率で船出するが、その後、視聴率は上昇を続け、平均18.6%で終える。この数字、07年の『どんど晴れ』以来、6作ぶりの快挙だった。

よく「戦争が物語を作る」といわれる。同ドラマは、漫画家の夫は戦争帰りで片腕がない。片腕のない漫画家――こんな設定はフィクションでは思いつかない。しかも、そのカセは夫婦が二人三脚で歩む原動力になる。

『ゲゲゲ~』以前、朝ドラは現代ものが続いて低迷したが、現代ものだからダメという単純な話じゃない。物語がないからダメなのだ。

朝ドラの視聴率を支えるのは、2011年のパラダイムシフトが物語る通り、50代以上の目の肥えた視聴者である。『ゲゲゲ~』以降、好調を維持しているのは、彼ら常連客向けに、物語を提供できているからである。
いや、何もそれは戦争ものに限らない。『あまちゃん』(2013年)では東日本大震災を、『あさが来た』(2015年)では明治維新の混乱期を描き、これら2つの作品は視聴者に“物語”を提供したのである。

モテキ到来

最後にテレ東だ。
現在、同局には「金曜8時のドラマ」枠と深夜の「ドラマ24」枠がある。が、前者は『三匹のおっさん』シリーズ以外、どうにも視聴率が取れない。目の肥えた50代以上の視聴者が満足できる作品が、安定して供給されないからである。

その点、深夜ドラマのほうがまだ可能性はある。
近年では、2010年に大根仁サンが脚本・演出を担当した『モテキ』の人気が思い出される。

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かのドラマ、森山未來が30前のヘタレな草食系男子を演じ、満島ひかりや菊地凛子らのリアルな芝居も話題になった。視聴率は2~3%台に留まるが、ギャラクシー賞を受賞し、翌11年には続編が映画化された。

鈴木先生のリアリティ

同局には一時期、月曜22時の連ドラ枠があり、2011年、長谷川博己主演で、中学校を舞台にした『鈴木先生』が放送された。脚本は『リーガル・ハイ』や『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジ系/2015年)の古沢良太サンである。
視聴率は平均2%台と低迷するが、ギャラクシー賞をはじめ、日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組部門最優秀賞を受賞するなど、そのクオリティは高く評価され、13年には映画化もされた。

同ドラマの珠玉は、そのリアリティにある。例えば、クラスに性体験の早い女子生徒が登場するが、正直あまり可愛くない。そういうディテールの積み重ねが独特の空気感を生み、視聴者や専門家から絶賛されたのだ。

テレ東が教えてくれること

先の『モテキ』と『鈴木先生』は2つのことを教えてくれる。
1つは、作り手が信念を持って作ったドラマは、視聴率はどうあれ、評価されること。
もう1つは――テレビドラマはもっと自由になれること。

毎週1本の物語を3カ月にわたってオンエアする――このスタイルさえ守れば、テレビドラマほど作り手にとって自由なキャンバスはない。それは、小説にも漫画にも、映画にも演劇にもないものだ。
現に、『空飛ぶ広報室』(TBS系/2013年)や『掟上今日子の備忘録』(日テレ系/2015年)、そして『逃げ恥~』と、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの脚本家・野木亜紀子サンの作品を見ていると、最新のクリエイティブがそこにはある。

実は、低視聴率で打ち切られるドラマは案外、少ない。打ち切られるとしたら、それは志が足りないからである。
思われているほど、テレビ局の上層部やスポンサーの頭は固くない。今はタイムシフト視聴率など、作品を評価する基準も広がった。そう、テレビドラマはもっと自由になれる――。

21世紀の連ドラの歴史は、まだ始まったばかりである。

(文:指南役 イラスト:高田真弓)

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