『HEROES/ヒーローズ』でブレイクしてから9年。この度、新シリーズ『HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン』が始動ということで、マシ・オカも出演するという。
出演としては5年ぶりだが、その間にマシ・オカ自身も役者業だけにはおさまらないほどに、活動の幅を広げている。例えばハリウッド版『デスノート』のプロデューサーなどがそれにあたり、海外に日本文化を広める役割を担い始めているのである。
なぜ、彼は『HEROES/ヒーローズ』後に、そのようなキャリアを辿ったのか。そして、マシ・オカにとって『HEROES/ヒーローズ』とはなんだったのか。直接、話を聞いた。
(『HEROES/ヒーローズ』復活への想いを聞いた前編の記事はこちら!)
アクション映画ではなく人間ドラマになっている『HEROES/ヒーローズ』
――マシ・オカさんが考える『HEROES/ヒーローズ』の魅力ってどんなところでしょうか?
「チームで戦うヒーローものは『アベンジャーズ』など、いっぱいありますよね。でも『HEROES/ヒーローズ』は、それぞれが、もともと超人なのではなく、普通の人たちから始まったというところが一番の特徴だと思います。
それに、映画だと基本は1本で完結するので、どうしてもアクションシーンとヒーローになるまでの話がメインになってしまいます。もしくは、ひとりの人間の話に終始してしまったりします。でも、テレビシリーズだと長いスパンをかけて成長を描けますよね。特に『HEROES/ヒーローズ』は、誰にでも起きうる話として、超能力を持って、ヒーローになってしまった人たちそれぞれの、その後の人生と成長を描いた人間ドラマになっているんです」
ドラマがヒットして、さらにヒットするキャラクターを演じなければいけない
――それでは、開始から9年経った今、改めて振り返って、マシ・オカさんにとって『HEROES/ヒーローズ』とはどのような作品だったのでしょうか?
「人生の転機ですね。あの頃は、役者を辞める覚悟もできていた頃でしたし、この作品で道が拓けたという感覚がありますね」
――道が拓けたと感じたのは、出演が決まったときでしょうか、それとも、その後の反響を聞いたときなのでしょうか?
「反響を聞いたときですね。もちろん、決まったときもすごく嬉しかったし、母も泣いて喜んでくれました。でも、特に今は色んなドラマシリーズがある中で、世界的にヒットしないと結局は知名度を上げることができません。レギュラーのお仕事をもらえるだけでも、すごい難関なのに、今度はそれがシリーズ化するほどヒットしなくちゃいけない。
しかも、そのヒットした作品の中でもキャラクターがヒットする必要がある。だって『HEROES/ヒーローズ』の中でも他にもキャラクターがいっぱいいるのに、記憶に残るのはそれほどいないじゃないですか。どうしても、ヒロ・ナカムラとかチアリーダーとかサイラーとかピーターあたりに集中してしまう。凄い闘いですよね。だから、考えてみれば僕はすごいラッキーなんです」
もう『HEROES/ヒーローズ』は自分たちのものではない
――では、今回の復活もすごく思い入れが強くなりますよね。
「はい、でも今回の作品は、次の世代の道を開いてあげて、バトンを渡す感覚です。OBとも話したんですが、我々が築いた番組ではありますが、今の番組は我々のものではありません。だから、次の世代へ受け渡すために肩を貸す、という感覚です。あとは、ファンの方たちへの恩返しですね。特に僕は『HEROES/ヒーローズ』の前は何もなく、この作品『HEROES』がなければ今の僕はいないので。その考え方が無くて、戻らない人もいましたが、僕は少しでも恩返しできればいいなと思っています」
日本の文化をドラゴンボールみたいに汚されたくない
――『HEROES/ヒーローズ』の後はプロデューサー業にも進出されていますよね。ハリウッド版『デスノート』のプロデューサーまでされているというのは意外でした。
「日本の宝を汚されたくないというか、もう『ドラゴンボール』のようなものは見たくないじゃないですか(笑)。(※)日本のスタッフがひとりでもいれば、修正したり守ったりすることはあるんじゃないか、と思うんです。放っておくと、誰も日本人のことなんて考えてくれません。特に、プロデューサーという立場であれば、発言権もあるから『日本人キャストを入れてくれ!』なんてことも言えるじゃないですか。アメリカは日本よりもオーディションで選ぶ傾向が強いので、最終的にはやはり実力勝負にはなってしまいます。でも、内部に入り込むことで僕が機会を与えることはしたいんです」
(編集部注:2009年に漫画『ドラゴンボール』がハリウッドで『DRAGONBALL EVOLUTION』として映画化。日本のファンからは特に酷評を受けた)
考え方はアメリカ人だけど、心は日本人
――なぜ、そんなにも日本に思い入れを持たれているのでしょうか?
「東日本大震災が起きてから日本の素晴らしさを改めて実感したというのは大きいです。日本国内にずっといると素晴らしさは見えづらいと思うんですが、僕は海外にいることで、それがわかった。でも、日本人は自分たちのことを『俺たちはすごいんだ』とはなかなか言わない。自分のプロモーションやマーケティング、交渉といった点がビジネス的に海外に劣ってるんですね。
だから僕はアメリカから『日本はすごいんだ』と、言って応援したいんです。自分で言うのはなんですが、『HEROES/ヒーローズ』のおかげで、日本人役者としては世界トップ3に入る知名度は獲得できたと思っています。でも、そういう立場に立たせてもらったからには、そこには責任も生じると思うんです。もう僕も40歳ですしね」
――失礼な言い方かもしれませんが、マシ・オカさんがそこまで日本のことを考えてくださっているということに驚き、感動しました。
「考え方はアメリカ人だけど、心は日本人なんです。でも、不思議と、日本から見れば日本人扱いされないし、アメリカからも外国人扱いされちゃうんですけどね(笑)」
アメリカ人とも日本人ともとられない独特の立ち位置。それが、マシ・オカに成功をもたらしたことも確かだが、悩ませたことも事実だろう。だが、その悩みが彼を新たなフィールドへと挑戦させた。アイデンティティーが定まらない立ち位置だったからこそ、日本の素晴らしさに気づき、2つの国の架け橋になろうとしてくれている。そう、僕らにはアメリカから日本を応援してくれるマシ・オカがいるのだ。
(取材:小峰克彦 取材&文:霜田明寛 写真:浅野まき)
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「HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン」
Huluで独占配信中、毎週火曜日に一話ずつ追加配信予定
<STORY>
地球から、ヒーローが消えた―。
能力者たちと普通の人々が共存する世界。オデッサでは、この二種類の人類を結ぶ平和サミットが開かれようとしていた。しかし、何万人もの人が集まったその会場は、突如、大規模な爆発事故に見舞われる。そして、このテロ事件の反抗を疑われた能力者たちは、追われる身となったのだった。愛するものを爆発で失い、壮大な復讐計画を進める者たちも出現し、世界中に潜む能力者達は、その姿を消した。そんな時代に、突然新たな能力を手に入れ、困惑する者たちが現れる。巨大な陰謀が迫るなか、運命は新たな超能力者たちと、ヒロ・ナカムラら過去の偉大なヒーローたちを巡り合わせようとしていた。果たして、テロ事件の真犯人は誰なのか。そして、何故、何のために、世界には能力者達が増え続けているのか。
制作:NBCユニバーサル制作総指揮:ティム・クリング「HEROES/ヒーローズ」シリーズ
出演:ジャック・コールマン「HEROES/ヒーローズ」、ザカリー・リーヴァイ「CHUCK/チャック」、祐真キキ、マシ・オカ他
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