ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

日活ロマンポルノ会見で行定勲監督がピンクでグレーな衝撃発言

日本映画史に残る、伝説のレーベル“日活ロマンポルノ”が45周年を迎えるにあたり、『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』として復活する。
日活の女性社員を中心に提言されたというこの企画では、旧作の上映のみならず、人気監督による新作が5本公開されることが決定。

新作は、かつてのロマンポルノ同様、“10分に1回絡みのシーンを作る”、“低予算”、“70~80分の尺”という制約のもと、制作された。
8月24日、監督を務めた塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲らが日本外国特派員協会で行われた記者会見に出席。
海外メディアや新聞社に囲まれる中、新作が生まれた経緯、先行上映された映画祭での反応などについて語った。

園子温監督「自分のために作ったので観なくていいです」

1

園子温監督は自身の作品『アンチポルノ』に対して「今、アダルトビデオ業界はあるけど、ポルノ業界は存在しません。そんな時代に、ポルノを撮る必然性はないので、最初は断ったんです。でも日活さんから『必然性がないことを映画にしたらどうか』と提案され、『アンチポルノ』が生まれました」と経緯を語った。

2

「かつてロマンポルノが作られていた時代にあった“センチメンタルな意味でのポルノ”は壊滅しました。そんな今の時代に、女性の裸がどのように消費されたのか、“女性の権利と自由”について考えて撮りました」と本作について振り返る。

続けて「昨年は怒ることばっかりでした。この国に対してもだし、いろいろ。その怒りをぶつけたのがこの作品です。自分のために撮ったので、誰も観なくていいです」と発言。
園子温監督が爆弾発言をする度に、横の白石和彌監督と会場の外国人記者たちが嬉しそうに笑うのが印象的だった。

20代~60代の女性が塩田監督の作品を支持

3

塩田明彦監督の作品『風に濡れた女』は、第69回ロカルノ国際映画祭の国際コンペティション部門で、先行上映され、若手審査員賞を受賞。
映画祭での反応について塩田監督は、「ロカルノでは、20代から60代まで幅広い女性に支持をいただき、女性もこのような作品を求めていることを実感しました」と振り返る。

新聞記者から「いまの日本映画業界に不自由さや制限を感じるか?」と質問を受けると「映画業界で監督が完全に自由であることなんてありえない。黒澤明監督が撮った真夏を舞台にした傑作『天国と地獄』を実際には真冬に撮影したように、不自由との向き合い方に、監督の力量が問われるんです」と返答。
“不自由さ”の話に付随して、“枠を作って、映画監督の作家性にゆだねる”日活ロマンポルノの体制を賞賛した。

行定監督のボツになったテーマはスカトロ!?

4

今回の日活ロマンポルノについて行定監督は、「かつて田舎の映画館で神代辰巳監督の『悶絶!!どんでん返し』を観て、衝撃を受けたので、オファーが来た時、本当にうれしかったです。助監督になろうと、上京して日活に行ったら、募集が終わっていたので、当時のロマンポルノには、関われてはいないのですが……」と自身とロマンポルノのなれ初めについても語った。

今回撮った『ジムノペディに乱れる』について「実は今回、2本脚本を書いたんです。1本目は自分が観たいものを書きました。『自由に書け』と言われたのに、ボツになってしまって……僕の個人的な“性の目覚め”を書いたものだったのですが……スカトロものなんですよね……」と衝撃発言が飛び出す。

5

「2本目は、女性の脚本家に入ってもらいました。彼女の視点のお陰で、男の独りよがりなどうしようなさを描いた作品も、女性が共感できるものになったと思います」と『ジムノペディに乱れる』についてもきちんと宣伝。
最後には、「でも1本目を観て欲しかったな……自分で作ります!」と発言。会場はその日で一番の笑いが生まれた。

ロマンポルノの血を継ぐ、人気監督たち

旧作のロマンポルノに関わっていた中田秀夫監督はレズビアンをテーマにした『ホワイトリリー』を制作。
脚本を書く際に曽根中生監督の『続・レスビアンの世界 愛撫』を参考にしたという裏話を披露した。

6

また、白石和彌監督はロマンポルノの巨匠・田中登監督作品で映画の勉強をしていたという過去に触れる。
白石監督のデビュー作『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で田中監督の『(秘)色情めす市場』をオマージュしたことを明かす場面も。

7

その場にいた誰もが、日本映画のバトンが繋がれていることを実感する、貴重な会見となった。

日活ロマンポルノだけが照らし、保存する“日本”

会見が終わった後、記者たちに向けて、神代辰巳監督の『四畳半襖の裏張り』の上映がはじまった。
大正時代の遊郭を舞台にした本作を、多くの外国人記者が観て、衝撃を受けて帰っていく姿を見て、筆者は誇らしく思った。
性という人々の本質が出る描写がメインの日活ロマンポルノには、その時代の人々の“むき出しの生活や文化”が深く刻み込まれている。

例えば、白石監督のデビュー作『ロストパラダイス・イン・トーキョー』のオマージュとなった『(秘)色情めす市場』は、大阪・西成を舞台にした作品だ。

70年代の日雇い労働者の生活、二階が売春宿になっている飲み屋街、障害者の弟と暮らす売春婦の姉弟……。
今では誰も思い出さない、“かつてどこかで生きていた彼ら”の営みはこの映画の中でしか観ることができない。
日活ロマンポルノには、このレーベルしかスポットライトを当てていない、ここでしか見ることのできない日本がたくさん映っているのだ。

今回、製作された5作品は、リニューアル中の新宿武蔵野館で、11月中旬に公開され、全国にて順次ロードショー。
映画ファンはもちろんのこと、“ロマン”がつまった男女の営みは、すべてのアダルトビデオ世代が衝撃を受けるはずだ。

また、チェリー編集部では、今後のロマンポルノの現場潜入レポなどをアップ予定! 乞うご期待。

(文:小峰克彦)

ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
PAGE TOP