ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

vol.0 告白のススメ

“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”新連載が開始!新連載を担当してくれるのは映画『こっぴどい猫』『サッドティー』『知らない、ふたり』などで知られる今泉力哉監督。
恋愛映画の名手・今泉監督がおくる“告白”をテーマにした連載の今回は第0回。本編に入る前に「告白とは?」「つきあうとは?」を考えます。

告白のススメ

これは私が好きになった12人の女性への告白の記録である。
私はこれまで好きになった人には、1人を除いて、すべての人に告白してきた。
好きです。と伝える。
そして、ごめんなさい。とふられる。
そうしないと次にいけないから。
まあそうしたところですぐに次にはいけないのだが。
でも整理はつく。
まあ別の誰かを好きになるまでは好きで居続けることも多いのだが。

自分の気持ちを伝えることが相手を困らせても。
自分の気持ちを伝えることが相手にとってどうでもよくても。
それでも。
好きです。と伝えてきた。
そして、ごめんなさい。とふられてきた。
たまにOKされたりもした。

12人の女性を好きになって、
12回告白して、
5人の女性とつきあって、
その5人目の女性が今の妻。

結婚して3人のこどもの親になった今思うのは、好きになった人たちに告白してきて本当によかったということ。もちろん、拙作『知らない、ふたり』の劇中の台詞「好きって伝えればいいってもんじゃないからね」という意見があるのもわかる。告白なんてしなくてもいいのかもしれない。好きな人がいればそれでいいのかもしれない。それもわかる。でも私は自分の気持ちを伝え続けてきたことに何の後悔もしていない。なぜなら、つきあうことはできなかった人たちと自分との〈ふたりだけの時間〉があったことを今でも憶えていられるからだ。

ううん、伝えた瞬間のことを憶えていない人もいる。それでも告白した意味はあったと思う。告白は、その人のことを好きだったこと自体の証明でもあるから。〈好き〉なんて結局はとてつもなく曖昧なものだ。12人の女性を好きになって、と書いたが、好きになった人なんてもっともっとたくさんいた気がする。でも、憶えているのは、好きだったと言えるのは、告白したからだと思う。ひとりを除いてだが。

告白の瞬間。その前後の時間。その場所。音楽。季節。台詞。胸の高鳴り。吐きそうになったこと。それはどれも痛くて苦しいかっこ悪いものだったけど、ああ、なんかその人を好きになってよかったなって思うものばかりである。こんなやつ、好きにならなければよかった、という相手はいない。それはそれは奇跡なのかもしれないが。そして、それはちょっと、つまらないことなのかもしれないが。

今まで好きになった人、そしてその告白の瞬間や前後に起きた諸々を綴るこの連載“赤い実、告白、桃の花。”が、これからの自分の映画づくりにおいてなにかしらのプラスになれば、と思う。また、そうなる保証はないが、多くの片想い人が、好きな人に告白するきっかけになれば、または告白を踏みとどまるきっかけになればと思う。

告白の結果。そんなことは実はオモテの話でどうでもいいことなのだ。
告白という行為そのものが、いかに滑稽で、かっこ悪くて、でも美しくて、ということについて書こうと思っている。

あ、そうそう。妻に、こういう連載をはじめることになりそうなのだが、と話したら、誰があなたのそんな話を読みたがるのよ、と言われた。妻はいつも正しい。そしてそういうところがいいんだと思う。

人生最初の告白にいたるまで

ところで。まずは告白といえばこの台詞。
「好きです。僕と(私と)つきあってください」
について、考えてみたい。この台詞は非常に強引で不思議な言葉だ。
「好きです」

「つきあってください」
のあいだにはとてつもない距離がある気がするのだ。
「好きです」はわかる。好きなのだろう。わかるよ。でも、だからと言って「つきあってください」は急すぎやしないだろうか。「え、なんで?」となる。
相手があなたのことを好きである可能性はものすごく少ないのだから。

だいたい、“つきあう”ってなんだろう。“つきあっている”ってどういう状態を指すのだろう。
たとえば、やるやらない、が、つきあっているつきあっていない、だとは限らない。
年齢にもよるだろう。
小学生の“つきあう”とは。
中学生の“つきあう”とは。
高校生の“つきあう”とは。
大人の“つきあう”とは。
100歳の“つきあう”とは。
では、なぜ告白するのだろう。
小学生が好きな人に告白して、どうなりたいのだろう。
一緒に帰る?一緒に映画にでも行く?一緒に勉強する?将来、結婚する?
ぜんぜんわからない。
〈好き〉も曖昧ならば、〈つきあう〉も相当に曖昧なのだ。

でも、小中学生のとき、つきあっている、とか、彼女がいる、とか、そういうクラスメイトへの憧れはあった。私にも好きな人がいたから。そのこと仲良くなりたかった。その子に好きになってもらいたかった。キスしたいとか触れたいとか、そういう感情はあまりなかった。ただ、その子の好きな人になりたかった。その子の特別になりたかった。だからと言って、好きなことを伝えようなんて思ってなかった。そんな勇気もなかった。

私の人生最初の告白は自らの意志でしたものではなかった。
いや、結果的には自らの意志でしたのだが。
私のはじめての告白は小学校の卒業式当日に行われた。
次回は、その相手「ほ」さんについて。大好きだった。

(つづく)

(文:今泉力哉)

『赤い実、告白、桃の花。』連載開始記念で、3本一挙公開!vol.0 に続いて【vol.1「ほ」さん 〜初恋と呼べる恋〜】はこちら!

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