映画批評家たちが中心になって選定を行う第26回日本映画批評家大賞授賞式が開催され、俳優の東出昌大が『聖の青春』での棋士・羽生善治役の演技で助演男優賞を受賞した。
授賞式に登壇した東出は「今日は他のところではしない話をしようと思います」と切り出して、言葉を選びながらスピーチを始めた。
『ごちそうさん』放送前に高畑充希と釣り
話は4年前に、自身の出世作ともなったNHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』で、妹役を演じた高畑充希とのエピソードに。同ドラマの放送が始まる前、2人は自転車で大阪の淀川にくりだし、たこ焼きやコンビニのおにぎりを食べなから、川辺で釣り糸を垂らしていたという。
そして、その後の4年間でそれぞれキャリアを重ね、この日、高畑は新人賞を受賞し、2人揃って列席。
東出は「今日こうやって会場で会えるとあの頃に戻れる」とした上で「こういう栄誉ある賞をいただけると、自分が何者かになれたんじゃないか、何者かになってしまったんじゃないかという危機感を抱くんですけど」と、自身が“何者かになってしまった”可能性への危機感を吐露。
ただ「本当にあの頃は何者でもなかった」と振り返りながら「実際のところ今も何者でもないのだと思います」と謙虚に現状を肯定した。
また「役者になって5年経ちました」とサラッと述べると、キャリアの意外な短さと、その濃さとの反比例に、客席をはじめ、受賞者席に座っていた樹木希林さんからもどよめきが起きた。
「全力で銀幕に存在したい」
どの作品もクランクイン前日は胃が痛いという東出。
「それが悪かったか良かったかはわかりませんが、全力ではあった」と振り返った。
これからのキャリアについては「たった1回目の俳優人生なので、若干の希望的な観測からしか予想は立たないのですが」とした上で「謙虚な気持ちと日々を感謝する気持ちをもって、今後ともおごりを持たずに進めればと思います」「全力で銀幕に存在したいと思います」と誓った。
その他の主な受賞者は以下の通り。
受賞者一覧
<アニメ部門>
作品賞 映画『聲の形』
監督賞 新海誠『君の名は。』
声優賞 野沢雅子
ダイヤモンド大賞 松本零士<実写部門>
作品賞 クロックワークス『湯を沸かすほどの熱い愛』
監督賞 中野量太『湯を沸かすほどの熱い愛』
主演男優賞 小林薫『続・深夜食堂』
主演女優賞 宮沢りえ『湯を沸かすほどの熱い愛』
助演男優賞 東出昌大『聖の青春』
助演女優賞 杉咲花『湯を沸かすほどの熱い愛』
新人賞 (小森和子賞) 高畑充希『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
(南俊子賞) 岩田剛典『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
新人監督賞 小路紘史『ケンとカズ』
ゴールデン・グローリー賞 (水野晴郎賞) 奈良岡朋子
(水野晴郎賞) 小松政夫
ダイヤモンド大賞 (淀川長治賞)樹木希林
ドキュメンタリー賞 日比遊一『健さん』
編集賞(浦岡敬一賞) 穗垣順之助『ちはやふる』
特別賞 岩波ホール
佐藤忠男
脚本賞 西川美和『永い言い訳』
映画音楽賞 加古隆『エヴェレスト 神々の山嶺』
撮影賞 北信康『エヴェレスト 神々の山嶺』
(取材・文:霜田明寛)