ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

萩原みのりは実は●●!?【カウンセリング編集長・霜田明寛の女優映画相談所】

人生の悩みは、すべて映画が解決してくれる。
そう、あなたの出演映画も誰かの悩みを解決するのだ!

これまで多くの映画を紹介してきた“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”の新連載は、若手女優のお悩み相談企画。チェリー編集長の霜田明寛が、その肯定型インタビューとも称されるカウンセリング的なインタビュー術で、お悩みを聞き、その悩みに対して、ゼロ年代の日本映画で答えていくというコーナーです。さらには、女優の最新出演作を題材に、「その映画を見るとどんな悩みを解決できるか」まで一緒に考えます!

記念すべき初回のゲストは、『ハローグッバイ』で初主演を飾る、萩原みのりさん。2015年7月期金曜ドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)や、最近では映画『昼顔』などでも注目を集めています。
『ハローグッバイ』は、『ディアーディアー』で監督デビューした菊地健雄監督が描く、女子高生の世界。萩原さんは、派手なグループに所属しながらも孤独感を感じる少女・はづきを演じました。

【萩原みのり】

1997年3月6日生まれ。愛知県出身。
「放課後グルーヴ」(‘13)でドラマデビュー後、映画『ルームメイト』(‘13)で映画デビュー。その後、映画・ドラマなどで活躍。15年ドラマ「表参道高校合唱部!」でレギュラー出演し話題に。映画『昼顔』『心が叫びたがってるんだ。』『ゆらり』など今年公開の映画多数。
 
【主な出演作品】
『劇場版 零~ゼロ~』(‘14) 『人狼ゲーム クレイジーフォックス』(‘15) 『戦場へ、インターン』(‘17)
『ブルーハーツが聴こえる』(‘17) 『昼顔』(‘17) 『ゆらり』(‘17) 『心が叫びたがってるんだ。』(‘17)
所属事務所:ソニー・ミュージックアーティスツ

【霜田明寛】
1985年9月25日生まれ。東京都出身。
早稲田大学在学中に執筆活動を始め、23歳で、自身のアナウンサー就職活動への挫折経験をもとにした著書『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!』で作家デビュー。20代で3冊のマスコミ就活本を著し、就活生の一部から熱狂的な支持を得る。読者から多くのアナウンサー内定者を輩出した評判が広まり、大学や企業の就活セミナーに登壇するようになる。
また、ジャニーズ、日本映画、ミスキャンパスといった分野にも造詣が深く、自身が編集長を務めるWEBマガジン“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”で、それらを紹介する傍ら、テレビ・ラジオなどにも出演。映画監督や俳優への「肯定型インタビュー」には定評があり、映画イベントなどを中心に司会も務めている。
所属事務所:KNOCKS,INC.

『ハローグッバイ』の映像に嘘がない理由

霜田:まずは、萩原さんの演技、素晴らしかったですよ! はづきが、最初はホントに嫌なやつに見えて(笑)。でも、後半にかけて、徐々に浄化されていっていい子に見えるという。正直、脚本の設定でそうすることは可能だと思うんですけど、本当にそう見えるお芝居をされていて、すごいなと。

萩原:ありがとうございます! 嬉しいです。最初のシーンと最後のシーンは、本当に順番通り最初と最後に撮っているので、そう言ってもらえるのはありがたいです。でも、そう見えたなら、監督のお陰です。

霜田:といいますと?

萩原:クランクインの前に、監督が時間をとってくださって、お話をたくさんしたんです。そこで、はづきはどういうコなんだろう、っていうのを作り込んでおくことができて。だから、撮影現場に入ってからは「芝居をしよう」って思ったことは一度もなくて。ずっと、はづきとしてそこにいた感じです。撮影期間は休みもなくて、毎日朝から夜まで撮影していたので、萩原みのりに戻る時間もなかったですしね(笑)。だからこそ、映像になったときに嘘がないんだと思います。

初主演作! これまでと違ったこと

霜田:撮影期間中、はづきとして存在し、変化していったわけですね。ちなみに今回、萩原さんにとって初主演の作品となるわけですが、これまでとはやはり違うものですか?

萩原:ええ、今まで私は現場の隅っこにいるタイプで、引っ張るようなタイプではなかったんです。でも監督に「W主演ではあるけど、この映画を引っ張るのは、はづきなんだよ」と言われて。それで、クランクイン前から、劇中と同じようにSNSでグループを作ったり、ひとりひとりと連絡をとったりしていました。

霜田:勝手な予想ですけど、たぶん萩原さん自身は普段はそういうタイプの方ではないですよね?(笑)

萩原:ええ、全く(笑)。もちろん、連絡が来たら嬉しいので返しますけど、自分発信でいくタイプではないんです。ちょっと小心者なので、「SNSのグループに自分で送って、全員既読になったけど、返信が来ない」みたいな状況が怖いんです。

周りの見方に合わせてしまう

霜田:わかります……。劇中でもSNSに関する描写がありましたけど、その恐怖はちょっと近いですよね。特にトイレの中で、自分を除いた友だちのSNSグループが鳴り続ける中、それを察して、無理な笑顔を作るシーンは、萩原さんの名演技もあいまってグサッときました。

萩原:あれはやっててつらかったです(笑)。ちょっと、私に近いところがあるからかもしれません。普段の私は、基本的には“大丈夫なフリ”をしてるんですよね。

霜田:“大丈夫なフリ”ですか?

萩原:私、“心配されることほど面倒くさいことはない”って思ってるフシがあって……。だから、強い感じでいちゃうんですよね。強く見られることも多いので、そっちに合わせていっちゃう。

霜田:それ、このお仕事をされてるとパブリックなイメージもあると思いますし、周りのイメージにあわせようとしちゃって大変にならないですか?

萩原:ええ、「しっかりしてそう」って言われると「しっかりしなきゃ!」って思うし、「ボーイッシュ」みたいな形容をされると「男らしくしなきゃ!」って思うし……。

霜田:よ、余計なことを言わないようにします!(笑)ではでは、萩原さんの内面も垣間見えてきたところで、お悩みを伺えればと思うんですが……。

萩原:はい、私、周りに自分を合わせるほうがいいのか、合わせないほうがいいのかわからないんです。特に中学生・高校生の頃に悩んでいたんですが、今も形を変えてある悩みかもしれません。

霜田:お悩みありがとうございます。ということは、その悩みの原体験は中学生の頃にあるということでしょうか?

萩原:中学校2年生のときに、初めて“人に合わせない”ことの怖さを知ったんです。「あのコ、ムカつかない?」って同意を求められたときに、「え、なんで?」って言っちゃったんですよ。そうしたら「あのコにむかつかないあなたは嫌い」みたいな感じになって、私に対する攻撃がはじまったんですよね……。

霜田:おお……。でもその話、群れることに疑問を感じる今回のはづきにも通ずるところがありますね。高校生になると萩原さんはどういうスタンスになったんですか?

萩原:合わせる日も合わせない日もあって、ブレブレでしたね(笑)。高校生の頃って、なぜか、みんなで教室で集合して、教室から教室の移動も一緒にしたり、それこそトイレも一緒に行くし、授業が終わったら集まって一緒に帰るのが当たり前、っていう感じがあるじゃないですか。私は周りと一緒に行動する日もあれば、そうじゃなくひとりでいる日もあって、ブレブレだったんです。それを理解してくれる距離感の友だちがいたので、そこには感謝してますけど、いまだに、合わせたほうがよかったんだろうか、とモヤモヤします。

霜田:わかってくれる仲間がいたのはめちゃくちゃよかったですよね。オトナになった今も近い悩みを感じることがあるんですか?

萩原:そうですね、撮影現場とかでも馴染みにいったほうがいいのか悩みますね。もちろん、もうだいぶオトナになったので、合わせようと思えば合わせられるんですけど、それだけでいいのかな、と我に返ってしまうんです。ひとりでいるときと、誰かといるときの自分って絶対違うじゃないですか。2人でいるときの自分と、3人でいるときの自分も違う。だから人が増えれば増えるほど、その悩みは大きくなっていきますね。

霜田:承知致しました。真摯にお悩みを吐露していただき、ありがとうございます。合わせる器用さももった萩原さんが、合わせることで失うものとの間で揺れる葛藤が伝わってきました。では、このコーナーの趣旨である、“悩みに答える映画”をご紹介できればと思います。

萩原:はいっ!

霜田:まあこういうスクールカースト的な悩みには『桐島、部活やめるってよ』を紹介するのがスタンダードかもしれませんが、さすがに橋本愛さんリスペクトを公言されている萩原さんにそれは野暮じゃないですか。

萩原:ええ、まあ……見てますね(笑)。

霜田:そこでちょうど10年前、2007年の映画なんですけど『檸檬のころ』です! 豊島ミホさんという作家さんの原作で、高校生活の機微が切り取られている、小さな名作です。

萩原:えっ、知らない!

霜田:よかったです! 『桐島~』もスクールカーストの下の方からの反乱が起きますし、それこそ『ハローグッバイ』はスクールカーストの上のコと下のコの交流が始まる話じゃないですか。ただ、この『檸檬のころ』は、ほぼ下と上とが絡まないんですよ。

萩原:へえ~。

霜田:ただ、スクールカーストの下の方の谷村美月さんが詩を書き溜めていたノートを、上の方の榮倉奈々さんが偶然拾って影響を受ける、みたいな描写があるんですよ。すなわちですね、直接絡むことによってアドバイスするとかしなくても、それぞれがきちんと生きてると、種族が違う人たちにもちゃんと影響を与えられるっていう話なんですよ。

萩原:見てみたいです!

霜田:なのでですね、萩原さんも、きっと無理に合わせずとも、自分のまま、ちゃんと生きていれば、女優さんとして世界にも影響を与えられて、分かってくれる人がちょっとずつ集まってくるんじゃないかと思います。些末な例で恐縮ですが、僕も今回、萩原さんの演技に引き寄せられてやってきたので。

萩原:わー、ありがとうございます。絶対見ますね!

霜田:ありがとうございます! ちなみに、僕の中で『檸檬のころ』と『ハローグッバイ』は、“学校の中での鏡と、鏡に反射する光の描写のグッとくる映画ベスト2”です。こちら、差し上げますね!

萩原:ありがとうございます!

「友達ってなんですか?」から考えたこと

霜田:ということでですね、最後に、今度はこの『ハローグッバイ』が、どんな悩みを解決できるかっていうのを考えていければと思います。いや、もちろん映画見てね、ってことではあるんですけど、とっかかりとして!(笑)萩原さんは、この作品を通じて考えたことってあったりしますか?

萩原:作品の宣伝コピーに「友達ってなんですか?」って書かれてるんですけど、それについてはものすごく考えましたし、今後も定期的に悩んでいくんだと思いますね。

霜田:この作品を見て、少なくとも「私たち友達だよね」って言葉にして確認しないといけないような関係は、友達ではないよな、と感じました。

萩原:そうですよね。私、実は連絡取る人がほとんどいないんです(笑)。でも、友だちがいないか、と聞かれるとそうではなくて。会ったら話せるし、すごいつらい時には連絡できる人もいるんですよ。

霜田:そっちのほうが、ずっとつながって いなければならない関係よりも、友だちに近いかもしれないですね。萩原さんが、そういう20歳にしてはある種、達観した状況にいけたのは何かきっかけがあったんですか?

萩原:やっぱり、役者のお仕事をするようになって、学校以外の大人の方々とも触れ合うようになってからですね。「世界はここだけじゃない」って気づけたときに、どうして私も含めて、みんなこんなにこの場所で悩んでるんだろう、って思えたんです。学校で嫌われても、他の世界があるから大丈夫。そんな小さな世界にいて、それが全てだと思わなくていいよ、って。
大人になった人の過去の友達関係や、親子関係なんかも描かれているので、寂しさを感じている人にはぜひ見てもらいたいですね。

今日のまとめ『ハローグッバイ』は……


(文:チェリー編集部  ヘア&メイクアップ:宇賀理絵 スタイリング:瀬川結美子 写真:浅野まき)
衣装:ブランバスク/バスク
RAINBOW下北沢店

■関連情報
映画『ハローグッバイ』
7月15日(土) ユーロスペースほか全国順次公開!
キャスト:萩原みのり 久保田紗友
もたいまさこ ほか

監督:菊地健雄

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