ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第十二回 「やれなくていい。やれそうでいてほしい」【お悩み相談⑥】

こちらは、脚本家・演出家の福原充則さんによる“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”の連載『オチマンポコ論』です。松坂桃李さん主演の日本テレビ系ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』、関ジャニ∞・安田章大さん主演の舞台『俺節』を経て、久々の更新です!

これまでの『オチマンポコ論』はこちら

「世の中の事象を下半身を絡めて書く」連載です

みなさま、お久しぶりです。前回の更新からだいぶ経ちましたね。その間に、私、42歳になりました。まぁおじさんですよ。しばらく書いてなくて色々忘れていますが、この連載は確か「世の中の事象を下半身を絡めて書く」というテーマの読み物だったはずです。なので、私が42歳になったということを下半身を中心に語るとですね……。

筋肉痛になりますね、42歳は。セックスをすると!

若い頃には想像もしなかった

やっぱりいくら嫁だ、愛人だ、妾だ、風俗だという豪快な私もですね、回数は減りますよ、この年だと。で、たまにセックスして、普段使わない筋肉使うとですね、2日後くらいに痛いんですね。全身が。これ、若い頃には想像もしなかったことです。
今はまだ筋肉痛程度で済んでますけどね、これからどんどん年を重ねていくと、ほんと心臓とかに負担がかかって、命がけの行為になってくるんでしょうね。前戯の意味も変わってきますよ。自分自身がしっかりウォーミングアップをしておかないと、ベッドの上でアキレス腱切ったりするかもしれませんから。ま、いつまで勃つのかっていう別の問題もありますけど。

性欲とは生きてることの証明

それで思ったことがあるんです。
昔は、ドラマとかに出てくる「スケベおじいさん」みたいな登場人物、苦手だったんですよ。老いたら執着から解放されたいと言いますか、枯れたじいさんに憧れてましたから。伊丹十三映画の大滝秀治より小津映画の笠智衆みたいな。
でもやっぱりね、老いを感じる=死を悟るってことだと思って、だったらやっぱりね、その執着には命の爆発がありますよ。性欲とは生きてることの証明ですよ。まぁ「これ、性欲じゃないのよ、生命のやりとりの話だからね?」って言いながらキャバ嬢の手を握ったら「はぁ?」って顔されましたけど。あの日、錦糸町は雨だった。一緒に行ったY君はその話で泣いてましたけどね。で、Y君と握手してハグしてね。キャバクラ行って、結局男同士仲良くなるってことをもう20年くらいやってますよ、俺は。はい。
ま、とにかくこれからは相手にもね、セックスしながら死を感じて欲しいと思いました。そういう年齢の人がいいです。若い子、俺に冷たいし。

【お悩み】やらせてないのにヤリマンと言われる

前置きが長くなりました。ウォームアップ大事。死んじゃうから。
さて、お悩み相談ですよ。これはいつものようなメールで来たんじゃなくて、少し前に仕事の打ち上げで飲んだスタッフの女性の方のお悩み。要約すると、

「私は27歳の、見た目はそこそこの女です。男の人を誘惑するのが大好きでやめられません。でも、やらせません。いつか罰が当たりそうで怖いですっていうか、周りでヤリマンと噂が立っていることを知りました。やらせてないのに!……とはいえ誘惑はやめられません。どうすればいいでしょうか?」

それなりの数いる精神ヤリマンたち

ま、最後の「どうすればいいでしょうか?」とは言ってませんでしたけど。興味深い話題だったんで、勝手に質問風に紹介して、そしてお答えします!

あなたのような、実際にはやらせない“精神ヤリマン”って子はそれなりの数います。
 軽く誘惑する→相手が自分に関心を示す→自己承認欲求が満たされる→満たされたので、それ以上の関係には進まない。
ということだと思うんですが、まぁ悪いことじゃないですよ。
「あれ、俺に気があるの? これ、いつかやれんじゃねぇの?」って女性は、想像力が膨らんで素敵です。結果的にいつまでもやれなくても、男は男で得るものありますから。

“積ん読”のようなやらせない女

例えば、読書好きの間で“積ん読”という言葉があります。本が好きで買ったはいいけど、読む時間がなくて部屋の隅に積んでるだけ。周りからは「無駄な出費は控えろ」と言われますが、無駄じゃないんです。
読まずに積まれた本の背表紙から広がる想像力。それらが実際に読むよりずっと贅沢な時間や経験をくれることだってあるんです。今、これを書いているパソコンデスクの脇に積んである、私の“積ん読本”の背表紙を紹介しますと『アーサー王宮廷のヤンキー』、『血液と石鹸』、『切株映画の世界』……。
ほら、読まなくたって想像力が広がります。少なくとも世の中にはいろんな本がある=いろんな価値観があるということを知るだけでも得るものがあります。実際に読んで、「この価値観、納得出来ん!」と否定的な立場になるより、ずっと建設的かもしれません。

だから、あなたが男を誘惑するってことは、“女としての魅力”を背表紙程度にチラ見せするってことですから、そのことで男性はやれなくたって想像力が刺激され、有益な経験が出来るんです。そして、時間が経てば経つほど、あの時やれたかもしれないあなたへの幻想は深まり、それがその男の生活を支えることもあるのです。
想像と幻想だけが救いになることが、人生にはあるのですから。

あなたはこれからも人助けだと思って、世の中に想像力の種を蒔き続けてください。

(文:福原充則 イラスト:佐藤由紀奈)

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