ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

佐藤江梨子 今振り返る “グラビア・出産を経ての 19 年”

サトエリ・出産後初主演映画は武正晴監督最新作

1998年にデビューして、現在35歳。グラビアアイドル時代を経て、数々のドラマや映画に出演。女優としての評価を高めてきた佐藤江梨子。
結婚・出産を経て初めての主演映画『リングサイド・ストーリー』が10月14日(土)より公開される。『百円の恋』『イン・ザ・ヒーロー』などで知られる武正晴監督の最新作で、瑛太演じる、同棲10年のダメ男の彼氏を支える女性・江ノ島カナコを演じる。
カナコの美しさと懐の深さ、ダメ男への受け入れ具合は“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”としても「こんな女性と同棲できたら」と願わずにはいられない、心動かされる内容となっている。

そこでこの度、チェリーでは、佐藤江梨子さんにインタビュー。デビューから19年、世代的にも女神として君臨し続けてきてくれた佐藤さんに、これまでのことを振り返りながら、最新作について語ってもらった。我々が“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”であることを告げると、開口一番ありがたいリアクションをしてくださり……!?

「私もひきずっている」

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――どうも、童貞をひきずっている男子向けのチェリーというサイトでございま……

佐藤「こないだ館山で、ハート型で【えりこ】って書いてあるハンコを見つけたんですよ。そういうの好き…ですよね? ハートのハンコだけでチェリーの読者は騙されたりしてくれるのかな、ってそのとき思って。今日持ってくればよかった! ごめんなさい」

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――そんなそんな意識していただいていただけでありがたいです!!

佐藤「まあ、私もひきずってるようなもんなんですよ。近所に中学と高校の男子校があるんですけど、それくらいの年齢の人を見るだけで切ない気持ちになりますもん。彼ら『今日チビっちゃった!』みたいな会話で大爆笑なんですよね。昔だったら感じ方が違ったかもしれないけど、そんな様子を見て、今は愛おしくてたまらないんです」

『腑抜けども~』の主人公と重なる

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――チェリーを理解し歩みよってくださりありがとうございます! さて今回の『リングサイド・ストーリー』の瑛太さん演じるヒデオは、役者として売れることを目指して奮闘中です。ときに人の財布からお金を取ったり、まっとうじゃないこともしてしまいます。佐藤さんが演じた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の主人公に少し被ってみえました。

佐藤「そう、私もそう思ったんですよ! やることなすことダメダメだし、金に汚い(笑)。でも、自分のことは信じている

昔グラビアを見てくれていた人の視線が……

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――『腑抜けども~』の主人公はお金を得るために友人に体を売ることも厭わなかったですもんね。

佐藤「最近、私も街中でベビーカーをひいて歩いたりしているんですけど、おそらく同じくらいの世代の男の人が、さも自分が元カレかのような目で私を見てくることがあるんですよ(笑)。たぶん『腑抜けども~』や昔のグラビアの印象を持ってくださってて、そういう目になっているんだと思うんですけど」

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――(笑)。もちろん知らない人ですよね?

佐藤「ええ、それなのに一緒に歩いていた息子さんに『パパ、あの女の人知り合いなの?』って聞かれて『いや、ちょっと……』みたいな答え方をしていて。『ちょっと』でもなくて全く知り合いじゃないんですけどね(笑)。ただ、今回ヒデオに寛容なカナコさんを演じたことで、そういう突然元カレのように接してくる方々にも、許すような目で返せるようになりました

ショックな一言「昔見てました」

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――まあ、それだけグラビア時代も、鮮烈なインパクトがあったということですよね。

佐藤「今回共演した武尊くん、20歳過ぎてる大人じゃないですか。それなのに『小学校の頃見てました!』なんて言われて大ショックでした! 最近よくあるんですよね。『一番最初の彼女がファンでした』なんて言われると『それっていつの話よ!』なんて思いますけど、もう何周か回って、好きという感情を持ってくれたなら何でも嬉しい、とは思っています(笑)」

瑛太さんとは『KING』仲間

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――武尊さんは少し年下ですが、瑛太さんとは同世代ですし、過去に映画『銀色のシーズン』などで共演もされています。

佐藤「『銀色のシーズン』のときは、私が瑛太さんの幼馴染で、10年間片想いをしているっていう役だったんです。『やっと夢が叶いましたね』って冗談で話していました(笑)。実は当時、瑛太さんと同じ雑誌で連載もしていたんですよ」

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――講談社の伝説の雑誌『KING』ですね!『サトエリの5分で読める純文学』素晴らしかったです。

佐藤「『KING』に瑛太さんが主演映画で雪の中で撮影してるっていうレポートを載せてたんで、私も主演の瑛太さんについていってますという意図を込めて、場所教えてもらって、同じところでパジャマ姿で写真を撮って載せたんですよ。そうしたら『佐藤さんって本の読みすぎで頭がおかしいのかと思った』って言われたのを覚えています(笑)。『瑛太さんだって相当個性的だと思う!』とは思いましたけど」

急にお父さんモードになった瑛太

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――そんな瑛太さんと久々に共演されていかがでしたか?

佐藤「一緒に住んでいるという設定なので、映っていない部分も含めて、凝ってつくっていきました。例えば、鍵はどこに置く人なのか、なんてところまで。あとは夜の2人のシーンもあるので、テストでは瑛太さんが私の胸を触っていたんですよね。ただ、私が授乳中だったこともあって『揉んだらおっぱいが出ちゃって違う物語になっちゃうので、今回はごめんなさい』って言ったんです。そうしたら瑛太さんは急に冷静になって『授乳って大変ですよね』ってお父さんモードで接してくれました(笑)。でもこないだ瑛太さんの出演されている『ハロー張りネズミ』を見ていたら、若い女優さんの胸を触っていたので、触れてよかったなあ、って安心して見ていました」

出逢っていた武監督・柄本家との偶然

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――監督とはいかがでしたか?

佐藤「実はオファーをいただくよりも前に、一回柄本明さんのお家で偶然会ってるんですよね。(柄本)明さんや角替和枝さんもいらっしゃって。『紹介するよ、100円の監督!』って言われて『めっちゃ安そうじゃないですかー』って返したのを覚えてます」

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――すごい場ですね……。武監督の前作『百円の恋』主演の安藤サクラさんがいて、その夫の柄本佑さんのご両親である柄本明さんと、角替和枝さんがいらっしゃるという……。佐藤さんは今、柄本明さんの事務所に所属されているんですもんね。

佐藤「それも結構な偶然で。京都の撮影所で、偶然長男の柄本佑さんと会ったんですよね。『お母さん元気?』なんて話をしたら、『今ちょうど外国から帰って来て寂しいタイミングだと思うんで、電話します?』って言われて電話で話してたんですよ。ちょうど私は事務所を探しているタイミングだったんですが、その電話の流れで『ウチくる?』みたいな話になって、すぐ事務所が決まるという(笑)」

ポジティブ過ぎたデビュー初期

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――昔の話にもなりましたが、色々な変化があっての今なんですね。

佐藤「昔は、サイン会や握手会で男性の方に『あなたに会いにきました!』なんて言われると『私こそ!』みたいにポジティブ過ぎる返しをしていた時代もありましたからね。周りのアイドルのコに『ぜってえ、あんなん嘘だよ』って言われても『そんなこと言う方がヒドイ!』と思って頑張ってたんですよ。高校生の頃にデビューして、ハタチくらいまではそんな感じでしたね」

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――今の女優一本の感じからは隔世の感がありますが、たしかにそういう王道グラビア時代もありましたね。

「当時は演技だけじゃなくて色んなことをやっていたんですよね。だから、それぞれの世界でこだわりを持ってやっている人の前に、色んなことをやっている私みたいなのが現れると、ダメ出しをされることもありました。でも舞台をやるタイミングで、当時の事務所のマネージャーさんの判断でレギュラー番組をほとんど降りたことがあって。それで演技に集中できる環境を作ってもらえたのは、とてもありがたかったです。そのマネージャーさんとは今も仲がいいですけど、感謝していますね」

初めて「女性に好かれたい」と思った舞台

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――ちなみにそれで挑んだのはどんな舞台だったんですか?

佐藤「Bunkamuraシアターコクーンでの『トンカツロック』っていう20th Centuryさんの主演舞台で。私は井ノ原快彦さんの恋人を演じました。パッと見は派手なお姉ちゃんなのに実は硬派、みたいな役で。『もし自分がいることで邪魔になったらいつでも消えるし、このおっぱいが邪魔だったらおっぱいを潰すよ』なんて言って、おっぱいをポンポンって叩くんです。ファン心理と重なったのか、見に来た女性の方にとても共感してもらえて。その後、そういう女性に共感してもらえるような役も増えたんです。それまではグラビアのお仕事で男性を向いていることが多かったんですけど、あのとき初めて女の人に好かれたいなって思ったのかもしれません」

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――今日は昔の話も振り返っていただきました。

佐藤「変な話、これだけの期間やっていると、もちろん周りにやめちゃうコもいるし、亡くなっちゃうコもいるんです。亡くなったコのお墓参りにいって、そのコのお母さんに『もううちのお墓来る時間あったら、実家に帰って顔みせな!』なんて言われるとね。親孝行しなきゃな、まだまだ頑張らなきゃなって思います。一緒に頑張ってきた人や、同世代で応援してきてくれた人がいて、今があるので。……真面目な話しちゃってごめんなさい!萎えちゃいました?」

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――いえいえ、とんでもございません!(笑) 真面目な佐藤さんも素晴らしいです。

佐藤「でも、ふざけられる大人ってかっこいいなって、みうらじゅんさんやいとうせいこうさんを見て思うんですよね。本気でふざけるって結構大変なことだと思うんですけど、素晴らしく、神々しいじゃないですか。だから決めました! 私、ふざけた大人になります!(笑)」

終始「チェリー的には大丈夫?」と気遣ってくださいながら話を進め、最後は我々向きに締めてくれた佐藤江梨子さん。19年の経験による余裕なのか、その優しさに触れ、佐藤さんに持ってもらったキャラクター・チェリーくんも心なしかいつもより発光しているように感じた。

(取材・文:霜田明寛 写真:中場敏博)

関連情報
映画『リングサイド・ストーリー』
10月14日より全国公開
キャスト 佐藤江梨子 瑛太
監督 武 正晴


〇佐藤江梨子
1981年12月19日生まれ。東京都出身。
1999年の高校在学中、「大磯ロングビーチキャンペーンガール」に選出され、芸能界入り。 『キューティーハニー』(04/庵野秀明監督)では、抜群のプロポーションを生かし、強烈な印象を与え話題を集めた。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07/吉田大八監督)では、第29回ヨコハマ映画祭主演女優賞を受賞。
『口裂け女』(07/白石晃士監督)、『秋深き』(08/池田敏春監督)、『斜陽』(09/秋原正俊監督)、『すべては海になる』(10/山田あかね監督)、『その街のこども 劇場版』(11/井上剛監督)など主演を務め、また『日本沈没』(06/樋口真嗣監督)、『R100』(13/松本人志監督)、『猫忍』(17/渡辺武監督)など話題作に出演している。
最後の昼ドラ『嵐の涙〜私たちに明日はある〜』(15/CX)では主演を務め、「セシルのもくろみ」(CX2017年7月期ドラマ)に出演しており、映画のみならず、ドラマ、舞台、CMと幅広いジャンルで活躍中。

ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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