ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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「なぜ、やらせてくれないのか」いまおかしんじ監督が小槙まこに問う

いまおかしんじ監督の最新作『葵ちゃんはやらせてくれない』が公開される。
ヒロイン・葵とやれなかったことが心残りの映画青年が、幽霊になって現れ、学生時代に戻り、なんとかやろうとする……というタイムスリップラブストーリーだ。
「葵ちゃん」を演じるのは、今回が映画初主演となる女優・小槙まこ。

“あの日やれなかったこと”をひきずる物語は、“童貞時代をひきずる”をコンセプトに掲げた“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”にピッタリ!
ということで、チェリーではいまおかしんじ監督と小槙まこさんにインタビューをおこなった。

■なぜ“やらせてくれない”のか

――特定の女性とやりたくて、何度もタイムスリップする話です。タイトルから、やらせてくれないことを明言していますね。

いまおか「タイムリープものを何本か見ると、どうやら『人生はやり直してもうまくいかない』というテーマがあるみたいなんですよ(笑)。今をちゃんと受け止めろみたいな作りになっているんです。だから、うまくいかないけど、別のものを得るみたいな作品にしようとは思っていました」

――たしかに、最初うまくいくかと思いきや、なかなかうまくいきませんね。

いまおか「最初は葵ちゃんも裸になってくれるし、心としても許されてるんですけどね。あそこまでいったら、やったも同然ですよね(笑)。そこで満足してもいいはずなのに、男は挿入にこだわりますよねえ。挿入をしないと、童貞を喪失できないから、なのか……。女子はこだわるんですか? 挿入されて初めて非処女だ、みたいな」

小槙「うーん、どうなんでしょう……。そこにこだわるというよりも、言葉に引っかかるだけなのかなと思います。『処女』とレッテルをはられることに意識はしますよね」

いまおか「よくよく考えるとどっちでもいいし、お互いに裸になった時点で、相手を受け入れてるのにねえ」

――劇中では、タイムリープするたびに、うまくいきそうなときと、ハナから拒絶されるようなときに分かれます。葵を演じた小槙さんからすると、その成否を分けるのは何なんですかね?

いまおか「そうだよ、なんでヤラせてあげないんだよ。いいじゃねえか!(笑)」

小槙「雰囲気作りと、言い方ですかね……。頼まれてするものでもないといいますか(笑)。ガツガツ来られるのは嫌ですし。流れを“する方向”に自然にもっていくような感じにすればいいのになあ、とは思います」

いまおか「欲望をストレートにぶつけるのはダメなの?」

小槙「そうですね、我慢を覚えて欲しい(笑)」

■間違えっぱなしの20代

――実際のお二人はガツガツいけるタイプですか?

小槙「私は、気持ちを伝えるのが下手で。マメでもないので、男性に『連絡をして欲しい』なんて言われても、めんどくさいって思っちゃうんですよね……。お付き合いしている期間は『好きな気持ちがあるからつきあってるんだし、いちいち言葉にしなくてもよくない?』って思うんですけど、やっぱり言葉にするのって大事なんだなあ……って、うまくいかなかったときは感じますね」

いまおか「俺は、20代くらいのときは本当にわからなくて。22歳くらいで童貞を卒業したんですけど、その前はどう進めればいいかわからなかったんです」

――進め方、ですか?

いまおか「大学1年生のときに、好きになったコと、2回くらい映画見に行ってご飯を食べるみたいなことをしたんだけど、その先どうしていいかわからなくなって。キスをすれば恋人になれるのかな、って考えたんだよね」

小槙「告白もしてないのに、ですか?」

いまおか「うん(笑)。それで彼女が住んでいるアパートに行ったんだけど、いなくて。諦めて帰ろうとしたときに、彼女が銭湯から帰ってきて。慌てて隠れたんだけど、近づいてきたから、でていって。『こんばんは、好きです』って言ってキスしようとしたら、思いっきり突き飛ばされたんだよね。『こんなことしたらもう友達じゃなくなるじゃない!』って言われて、そのまま彼女は去っていったんだよね」

小槙「気まずいですね……」

いまおか「そう、同じクラスだったから、次の日以降、めっちゃ気まずくてね。そういうことはしちゃダメなんだ、って学習して。20代はずっと間違えっぱなしで、間違えては覚えるって感じでしたね。振られて、振られて、その度にどうしたらいいか考える

――なんだか劇中の男性2人みたいですね(笑)

いまおか「実は劇中の松㟢翔平くん演じる青年は僕を、そして葵ちゃんとやるために蘇ってくる森岡龍くん演じる先輩は、実際の僕の先輩を投影しているんです。その2コ上の先輩は、素人童貞だったんです。で、アル中に加えて躁鬱病で、40歳くらいのときに車の中で練炭を炊いて自殺しちゃうんです。よく僕に『しんちゃん、女紹介してよ』とか電話してきてくれたんだけど、なかなか会えなくて。それで、そのうちに死んじゃったんです。その先輩がもし蘇ってきたら何を言うかなって考えたときに『ヤリたいよ、しんちゃん』って言うかなと思って。そこから着想して話を作っていきましたね」

――そうだったんですね。ご自身を投影されて作った役にも関わらず、松㟢さん演じる青年には、なかなかキツめの人生を背負わせますよね。

いまおか「うん、僕ら底辺の監督はいつホームレスになってもおかしくないんですよ。昔から一緒に映画をやっている仲間は多くいますが、10年前くらいからすごく仕事が減って。機材車のドライバーになった奴もいるし。俺は、適当だから逆に怖くなくなってきたんだけどね。お金がなくてもなんとかなるか、みたいな」

小槙「かっこいいですね」

いまおかしんじ「……かっこいいのかな?(笑)」

■変わった見え方……監督が線で繋いでくれた

――小槙さんは映画初主演で濡れ場にも挑んでいます。

小槙「初めてだったので、不安はあったんですけど、抵抗はなかったです。この作品だったら、感情のままいけるな、と」

――台本を読んだ時点で全体のイメージがついた感じだったんでしょうか?

小槙「いい意味で、台本を読んだときの第1印象と、出来上がりの印象は違いましたね。コメディタッチかなと思っていたシーンが、ズシッとくるシーンになっていたり。私自身やりながら、どんどん見えてくるものがありましたし、それを監督が線でつないでくださった感じです」

――最後にいまおか監督、公開を前にして思うことがあれば教えて下さい。

いまおか「ここ1、2年、自主制作で映画を作って公開するっていうことをやっているんですが、本当に大変で。そこにコロナがやってきて公開延期があったりして、より映画を作って公開することの大変さを感じています。映画って、人に見てもらわないと存在しないのと変わらないので。やっと、見てもらうという終点にたどり着くんだな、とホッとしています。まだ安心はできませんが……」

実はこのインタビューの後、3度目の緊急事態宣言を受けて、さらに東京での公開は延期。
『葵ちゃんはやらせてくれない』は、6月11日よりシネマート新宿にて公開される。

■公開情報

映画
『葵ちゃんはやらせてくれない』
2021年/日本/98分/カラー/ステレオ
小槙まこ 松㟢翔平 森岡龍
佐倉絆 三嶋悠莉 増田朋弥 田中爽一郎 / 三上寛
監督 いまおかしんじ
配給:キングレコード
©2021キングレコード
公式サイトaoichan-movie.com 公式Twitter@EroticaQueen21
6月11日よりシネマート新宿、6月19日より大阪シアターセブンにて公開

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