チェリー誕生から5年。編集部平均年齢26歳で始めたこのサイトも、気づけばアラサーたちが運営するものに……。
「童貞をひきずっている」というコンセプトで始め、その志は変わらないし、相変わらずひきずり続けてはいるものの、編集長の霜田に至っては34歳。このままアラフォーを迎えてはマズいのでは。「オトナ童貞」が「大人」になるための儀式、それはもしかして今まで考えることすら避け続けてきた「結婚」なのでは……!?
そう考えた霜田と創設メンバーの小峰は、チェリー編集部内唯一の女性であり既婚者、2人の子供の母でもある菱山に教えを請うことにした。
連載6回目では、最近話題の「女性用風俗」への疑問。利用者の深層心理から見えた多くの夫婦が抱える問題。そして、理想の夫婦でいるための教訓まで、議論は盛り上がる!!
(※この企画は「恋愛事情」に同時掲載しています)
■既婚者の「女性用風俗」利用が急増!?
小峰「最近、『女性用風俗』って聞くじゃないですか。初めて知った時『なんてものを作ったんだ!?』と驚いてしまったんです。でも実際、僕の周りにも利用している女性が複数いて、さらに衝撃!! どういう気持ちで通っているんですか?」
菱山「流行っていますよね。仕事で利用女性や働く男性に話を聞くこともあります(※菱山の職業はフリーランスのライター)」
霜田「そもそも女性用風俗って何をするんですか?」
菱山「色んな業態がありますが、男性の風俗と同じですよ。ホテルやマッサージ店で密着して、ハグして、キスして、胸触られて、指入れられて……女性が気持ちいいと思うことを全部してくれる」
霜田「え、それって男性側も興奮しちゃうんじゃないですか!?」
菱山「利用者いわく、男性が勃起している……! というのはあるあるだそうです。でも、もちろん風俗店での本番行為はNG」
小峰「やっぱり働いている男性はイケメン?」
菱山「イケメンを謳うお店もありますが、顔面偏差値だけではなく、トークや気遣いも含めて『おもてなし』も含めてサービスなので。そこはホストクラブと一緒ですかね。男性用風俗と違って、働いている方の見た目で高級店、大衆店とわかれていることはないみたいです」
小峰「一瞬、顔さえよければお金をもらって女性とエロいことできるなんてズルい! と思ってしまいましたが、そういうことでもないんですかね」
菱山「女性って、日常のセックスでも『おもてなし』する側のことが多いじゃないですか。感じている演技をしたり、男性がしたいタイミングに従ったり、自分の要求を通せなかったり。女性用風俗は、そういった女性が感じるセックスの『めんどくささ』を取り除いて解放できる場、という印象です」
霜田「日常にセックスの機会はあるけど、自分本位で楽しめないからあえて女性用風俗に行くと。だとすると、夫や彼氏がいる女性でも通っている!?」
菱山「利用客の5割は既婚者という話も聞きましたよ」
■男女で非対称な、セックスレス問題
霜田「ええっ!!」
菱山「でも、男性だって結婚していようが風俗に行く人は行くじゃないですか。そこに男女差はないのかも」
小峰「それもそうか……。男性だと結婚すると『妻にはもう性欲ない』とか言って外注しているような奴も多いですよね」
菱山「男性側にそう言われてしまったら、女性はセックスの機会を奪われてしまいますからね。もちろん逆も然りですが、そういった受け皿として女性用風俗があるのも当たり前として受け入れるべきですよ」
菱山「だから既婚男性がよく言う『愛があるから妻とセックスできない』も、女性側の性欲を無視した自分勝手な理論ですよね」
霜田「でも実際、男性が言う『愛があるからセックスできない』は体のいい嘘だと思っています。ただ慣れて性欲がなくなったことをオブラートに包んでいるだけなのでは」
菱山「そもそもなんですが、男性はなんで慣れると性欲なくなるんですかね? 私個人は別に同じ人とセックスすることに飽きないんですけど。というか、同じ人ならばセックスによるリスク(妊娠、事件に巻き込まれる等)が少ないから安心もできる。違う人とするスリルより、同じ人とする安心感を取りたい。そのために結婚したし」
霜田「僕的にはそれが女性の真実だと思っていたいんですけど、その話と既婚者が女性向け風俗を利用することって矛盾じゃないですか?」
菱山「だからこそ不倫ではなく、プロのお店に行ってお金で保険をかける。で、セックス一歩手前を楽しむんですよ! プロなら、変なトラブルに巻き込まれたり、傷付けたり傷付けられたりする心配がない」
霜田「なるほど。あくまで“沼らない”前提で通うと」
菱山「“沼る相手”は目の前の夫や恋人で十分ですから」
■男女の「セックス非対称性」はなぜ起きる?
小峰「逆に男性って、妻や恋人に“沼らない”人が多い気がします。相手の感情の機微に気付かないし、そもそも『彼女がどこか行ってしまうのではないか』と不安にさえ思わない。言い方悪いけど『俺のものだぜ!』みたいな感覚がある。だからセックスの主導権も自分にあるし、自分の風俗の話は武勇伝になるけど、女性の風俗は想像がつかない」
菱山「なんでそう思えるんでしょう」
小峰「多分、幼少期からのメディアや教育現場での刷り込みも大きいと思います。以前、演技指導をしている方の話を聞いたのですが、小学生の子役に『男女の別れのシーン』の演技をさせると、何も言わずとも男子は命令口調になる。そして女子もそれを許容する。そういうことってもう無意識下で刷り込まれ、固まってしまっている。男性は女性を所有・支配することに安心感を持っているし、女性も支配されることを良しとするように刷り込まれている」
菱山「たしかに、少女漫画でも男性がオラオラで、女性がそれにキュンみたいなのは鉄板。あらゆる作品って女性が都合よく扱われていますよね」
小峰「そういった男女の非対称フィルターを通して見てみると『東京リベンジャーズ』ですら、デートすっぽかして男はケンカに行っちゃう。しかも彼女はそれを応援している。いや、まず怒りなよって思いますよね(笑)」
霜田「たしかに(笑)」
小峰「セックスだって本来は毎回、個人間で交渉が生じなければならないはず。でも、なんとなく男性は『俺のものだからいつでも大丈夫』と思ってしまう部分があるのではないのかなと」
菱山:「『俺のもの感』を出すならば、きちんと愛情を証明してほしいですよね。ちょっと不思議なんですけど、逆にパートナーに性欲がなくなっても愛し続けられるんですか?」
霜田「……愛し続けられると信じたいです。というか、もし性欲がなくなり、セックスが一切なくても一緒にいるだけで楽しそうな人がいいという観点で、結婚相手を探していました」
菱山「でも、一緒にいて楽しいだけじゃ友達でいいじゃないですか。やっぱり「特別」の証明としてセックスはしてほしいかなあ」
霜田「この問題って年齢を重ねるごとに問題が大きくなりますよね。男性の性欲は落ちる一方。でも、セックスがなくなってくるとお互いの愛の証明って難しいのかも」
菱山「かと言って『セックスしたい!』と妻から夫に話すと、性欲強い人と思われそうで言いたくない。……これも女性側がかけられている幼少期からの刷り込みなのかな。いっそ夫には『セックスしたい宣言』しても案外引かれない?」
霜田「どうでしょう……言い方やタイミングは吟味したほうがいいとは思います(笑)。男性はセックスにファンタジーを求めてしまいがちなので……」
菱山「そう思うと『ビッチ』を名乗っている時代は楽だった! ヤバイ女っていうキャラ設定をしておけば、自分本位でセックスを楽しめましたから!」
小峰「僕達が怖がっていたビッチの心の奥には、そんな寂しさがあったなんて」
菱山「ビッチとは、社会が生み出した悲しきモンスターですよ……」
■「女性用風俗」は夫婦の味方説
霜田「問題を整理すると、セックスに女性の主導権がない。だから女性用風俗に行く既婚者が増える。そして夫婦間のセックスが減ることで夫からの愛情の証明も受け取りづらくなっていると」
菱山「悪いのは女性用風俗そのものではなくて、それ以前の女性への抑圧、男女の根本的な性欲のすれ違い」
霜田「もちろん、男性が刷り込みによって勘違いしている女性像を正すことは必要ですが、当人同士じゃどうしても埋められない、年齢による男女の根本的な性欲の違いは女性用風俗があることで埋められるかも」
菱山「セックスレスが原因での離婚は防げそうですよね。お互いが割り切って受け入れられれば、ある意味夫婦円満の秘訣になるかも」
■曖昧さを楽しむ余裕で、夫婦を越えていけ!
霜田「とはいえ、受け入れるのは難しそうですよね。自分の性欲がなくなって妻の要求に応えられなくなった時、『じゃあ女性用風俗行ってきて』と言えるか」
菱山「そうはっきり言われてしまうのも、突き放されているようで悲しいですね」
小峰「でも、極端な話ですけど、何人もセックスのパートナーがいるけどお互い幸せみたいな夫婦もいるじゃないですか。そういった曖昧な関係って世間に出た瞬間、「不倫」だのカテゴライズされ、罪に問われるところがありますが、当人同士で曖昧さ含めてちゃんとコントロールできていることが幸せの秘訣なのかなって」
菱山「夫婦になっても『曖昧さを楽しむ余裕』みたいなのがあった方がいいのかもしれないですね。女性も焦り過ぎはよくない。男性が持つ恋人への根拠のない自信を女性側も少し見習って『私が夫を愛しているからセックスくらいなくても大丈夫』という気持ちを持って、曖昧さを不安に思うのではなく、楽しむ余裕も必要かも」
霜田「極論、世の中に理解されなくて良いですしね」
小峰「理解されない関係性が深まれば深まるほど、唯一無二感は出ますよね。代替不可能な相手になる」
菱山「共犯者だ」
小峰「本来、恋愛のはじまりって共犯的なところから始まるじゃないですか。周りに言わないでこっそり付き合うとか。そういう部分がずっとあった方がいいのかも」
霜田「本当は相手との関係性なんて多種多様なのに、世間一般論の『結婚』『夫婦』という言葉にあてはめようとするからバグが生じる」
小峰「あらゆる曖昧さを規定するのではなく、受け入れ、乗り越えていくのが理想の夫婦像かもですね」
霜田「今回、小峰君が大人すぎて前回からの間で一体何があったんだと心配にもなりました(笑)」
小峰「そこは曖昧にしておいてください」
ROAD⑥ “沼る相手”はあくまで夫。曖昧さを楽しむ余裕が幸せの秘訣。
(構成・菱山恵巳子)