ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

第10回「自分の恋愛観を語ると、炎上してしまいそうで怖いです」

チェリー誕生から6年。編集部平均年齢26歳で始めたこのサイトも、気づけばアラサーたちが運営するものに……
「童貞をひきずっている」というコンセプトで始め、その志は変わらないし、相変わらずひきずり続けてはいるものの、編集長の霜田に至っては34歳。このままアラフォーを迎えてはマズいのでは。「オトナ童貞」が「大人」になるための儀式、それはもしかして今まで考えることすら避け続けてきた「結婚」なのでは!?

そう考えた霜田と創設メンバーの小峰は、チェリー編集部内唯一の女性であり既婚者、2人の子供の母でもある菱山に教えを請うことにした。

前回、SNSウォッチャーであることが判明した小峰。最近気になる問題があるとのこと。

■自分の恋愛観を語ると炎上してしまいそう

小峰「前回、SNSで『恋愛あるある』系アカウントをよくチェックしているという話をしましたよね。何者にもなれなかった文化系男子が何者かになれる活路な気がしていて、自分にもできそう! なんて思っています」

菱山「小峰さんの恋愛あるあるツイート、見てみたいかも」

小峰「ただ問題があって。僕の恋愛あるあるってめちゃめちゃ炎上しそうだなと。『セックスのことばっか考えてんじゃねえ!』みたいな」

菱山「『童貞』という言葉自体がもはや危険ワードですからね……。自分たちの身を削りながら自称しているだけなのに!!(笑)」

霜田「その感覚も6年間で大きく変わった点ですよね」

小峰「だから、たとえSNSではなくても自分の恋愛観にまつわる発言や思想が実はアウトなのではないか!? と時々怖くなります。どこまで人に語っていいのかもわからないし、難しいなと」

菱山「たしかに。自分の恋愛観と社会とのズレには敏感にならないと、モテる・モテない以前に『人としてヤバい』域に達しそうですよね」

■なぜ炎上しないのか不思議なSNSアカウントたち

霜田「とは言えSNSを見ているとギリギリで炎上していない恋愛系アカウントもありますよね。最近僕が『大丈夫か!?』と思ったのが、海外のサーバーを使用してただただセックスを配信している美男美女。彼らが週刊誌に登場したりとか、もはやなにが正義なのかわからなくなります(笑)」

菱山「お互い顔出ししてメディアの取材も受けていますよね。単純にビジネスとしてスゴイと思っちゃいました。私は彼らに肯定的なのですが、2人とも顔出ししてリスクを負っているのがいいですよね。ありがちな彼女の方だけ写すとかではなく

霜田「たしかに。男性側もきちんとリスクを負っている」

菱山「そういう意味で女性を対等に見ているなと。逆に、Twitterでよくある「妻の名言」を呟くアカウント。女性たちの共感を生む目的なのでしょうけど、個人的にはそっちの方が女性を対等に見ていないなと気になってしまいます。
『妻を尊敬』という隠れ蓑を使い、『こんなこと言われちゃうダメで愛されている僕』という自分のイメージアップが目的な気がしていて。根本的に女性を『機能』として使っている感じが下に見ているなあと……」

小峰「あと、『可愛すぎる妻を晒す』みたいな妻自慢アカウントも結構人気ですよね。これも結局リベンジポルノ的に残るのって女性だけでは? と思います。
フォロワーは女性をエサにしているわけだし、女性がSNSに顔出しすることは、極端な話、男性が局部を晒すくらい社会的リスクがあるなと」

菱山「自分が矢面に立たないで、女性を客寄せパンダ的な役割にしているのはよくないですよね」

■SNSの「妻晒し」は承認欲求から?

霜田「で、僕自身が結婚して思ったんですけど、妻の顔をネットに晒すメリットって、本来1mmもないですよね」

小峰「たしかにリスクしかないですね。……でも、それはわかりつつも、もし可愛い女性と結婚したらSNSで自慢したいという気持ちはわからなくもない。そういう気持ちも女性をアクセサリー的に見てしまっているということなのかも」

菱山「いわゆるトロフィーワイフ的な」

小峰「ですね。『可愛い子と付き合えた俺スゴイ!』と、トロフィーワイフ・トロフィー彼女的な考えをしている男性は多いかもしれません」

霜田「最近、元ミスキャンのアラサー女性が、起業家などと結婚しています。彼らは元ミスキャンたちをトロフィーとして選んだんじゃなかろうか? と見えてしまう時はありますね」

菱山「たまたま愛した相手が美しかったってパターンももちろんあると思いますけどね。特に、ミスキャン×成功者の組み合わせは『ある一定の努力』を重ねた人間同士で意気投合したのだと思いますけど。ミスキャンって、華やかな世界にいるためにストイックな努力が必要ですし、ビジネスで成功するのもベクトルは違えど努力量が必要で」

霜田「ミスキャン専門家としては、彼女たちがトロフィーとして利用されているのではなく、単純に価値観が一致しているなら、応援できます!」

■数ある恋愛アカウントから、女性蔑視とは何かを考える

小峰「あと恋愛系SNSで言うと気になってしまうのが、カップルユーチューバー。あれは寝取られ欲求なんじゃないかとも思いました。コメントに『彼女さん何カップ?』とか聞かれて嬉々としてコメントを返していて。普通、そんなこと聞かれたら超嫌じゃないですか! 何が楽しくて彼女のプライベートを晒すんだろう?」

菱山「うーん……、私の場合は夫の顔をネットに上げたことがありますが、寝取られ欲求は全くなくて。ただ楽しかった思い出を公開という感じかも。高校生が撮ったプリクラを携帯の裏に貼っていた感覚の延長というか。性的な話題は絶対嫌ですけど」

霜田「グラデーションがありそうですよね。菱山さんのように『ただ楽しい』という無邪気な感覚もあるとして。で、僕一番対極にあると思うのが『妻の盗撮掲示板』だと思います」

菱山「何それ!?」

霜田「家の中で盗撮した画像をただ上げていく掲示板があるらしく『もっとください』とかコメントがあって、さらに過激になのを上げていくという……。そこに金銭が発生しているわけではないらしいので、ビジネスではなくただただ承認欲求で上げているのだと思います」

菱山「気持ち悪っ! 自分の局部を晒せよって思いますけどね。そう思うと、自分も晒しているセックス配信アカウントがマシに見えますね」

小峰「たしかに彼らがめちゃめちゃ良い人達に見えてきた……。純粋に楽しんでいる感もあるし」

菱山「私たちの世代って、中高生の時にSNSがまだなかったから色んな意味でリテラシーが少し低いのかも。携帯の裏のプリクラから、友達だけがつながるmixiになり、まだ人数が多くないTwitterになり、インスタになり……って、新しいツールが生まれては使ってみてという世代だから。あくまでプリクラ公開くらいのノリでSNSに自分たちを上げてしまっていることはありそう」

小峰「そうか。そう考えるとセックス配信カップルは、お互いが幸せそうですよね。逆に『妻の名言』アカウントは妻が幸せかわからない

霜田「裏方が消えてしまっている分、商品として女性を見ている感じが透けてしまう。一見すると健全に見えて、結構女性蔑視的思想なのかも」

菱山「整理すると、我々から見て女性蔑視度が一番低いものから①ツーショットを自分のSNSに上げる、②セックス配信アカウント、③彼女に対する性的な質問に返すカップルユーチューバー、④妻の名言集アカウント、⑤家庭内盗撮掲示板、といったところですかね」

霜田「相手のことまで考えている分、セックス配信している彼氏の方が妻の名言を語る男よりいい男な気がしてきた!!」

■ミソジニーにならないためには、絶えず自分を客観的に検証し続けることが大切

菱山「恋愛を語る我々も、女性蔑視的思想がないかはよく注意していかないとですよね」

霜田「そうですね。最近は、元々ヤリチンだった男性も過去の贖罪かのように『女性に気を遣えていますよ』『僕はフェミニストですよ』というオーラを出していますよね」

小峰「わかります。そういった作品を創る文化人も多いですよね」

霜田「でも、結局自分の罪の意識に向き合っているだけだったり、社会の流れに乗ろうとしているだけだったりのパターンがあるから恐ろしい」

菱山「フェミニズム語る男性がめちゃめちゃセクハラしてくるとか、悲しいあるあるですよね」

霜田「僕たちも彼らの意見に賛同することで、返って女性を傷付けることにも加担しそう。似非フェミニストをどう見抜いたらいいんでしょうかね」

小峰「でも実際、僕も性的なことの思考は終わっていても女友達は大事にしたいという振れ幅はあります。どっちを切り取るかもによって印象は変わりますし」

菱山「自分でも切り取り方を見誤ると危ないですね」

小峰「結局のところ、自分のミソジニー的な部分と向き合い続けることが大事ですよね。自覚し、検証し続ける。どこからがミソジニーになるのかは、僕達の視点ではなく、女性が正解を持っているから」

菱山「私も女性ですが、自分のミソジニーな部分にふと気づくことがあります。
私、10年くらい前にコラムで『女子の音楽の趣味は9割過去の男の影響』みたいな発言をして炎上したことがあって。いま思うと背筋が凍る発言ですが……。
当時、自分の中で女性をバカにしていた部分があった証拠だと反省します。やっぱり年齢を重ねて様々な経験をしてきたからこその気付きはありますし、良い悪いの判断も変わってきます。女性であっても自分の感覚は変わる。
『ビッチ女子大生』と言って自分をエンタメ化することで、女性全体の価値を下げてしまっていたのかもしれないと、今になって思うこともあるんですよ。その時の自分を否定するわけではないですが、ギャグだとしても後世の女子大生へ呪いをかけてしまったなとか。それに気づくことで、自分も成長するし、社会も良くなる」

小峰「たとえ結婚した後でも、自分が思う女性観のズレに自分で気付かないと、男性はモラハラ旦那になってしまう。例えば学歴にしても『俺はこの大学出たから一生頭良い』は違うじゃないですか。検証が大事」

菱山「ネットの炎上もすぐ忘れ去られますが、発言者がただ叩かれるだけではなくて、一回一回検証していくことで、炎上に意義が生まれるのかもしれませんね」

霜田「……あとは基本中の基本ですが、発言する時は主語を大きくしないこと。主語大きくして言い切ったほうがバズるイメージはありますけどね」

小峰「それは大事ですね。なんだか今回は意図せず社会的な内容になってしまいましたね」

霜田「『大人』に近づくための連載ですからね。しかし、このことに気付いてしまったら、僕ら一生SNSでバズれないですね……! WEBメディアなのに!!」

ROAD⑩ 表面ではなく根本にどんな感情があるかに敏感になっていこう。

(構成・菱山恵巳子)

ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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