『クソすばらしいこの世界』で長編デビューし、ジャパニーズホラーの新鋭として期待されている朝倉加葉子監督。ホラーファンの多くが待ちわびていた新作の主演はなんとニューウェーブアイドル・ゆるめるモ!だった。
ノイズバンドとコラボするなど、“普通のアイドル”とはかけ離れている印象の彼女たち。それゆえにアイドルの中でも、朝倉監督が撮るホラーの世界との親和性が高いように思える。そこで、このゆるめるモ!主演作『女の子よ死体と踊れ』が絶賛公開中の朝倉加葉子監督にインタビューを行った。
ゆるめるモ!の“素に近い魅力”が映画を引っ張る
――『ゆるめるモ!で映画を撮りませんか?』と言われた時、どんな心境でしたか?
「ゆるめるモ!のことはなんとなく知っていたんですけど、今回しっかり向き合って改めて魅力的な女の子たちだなーと思いました。彼女たちの魅力は、個性が強くて変わっている子たちなのに、“普通の女の子が抱えていること”を隠そうとしないところ。
加えて、現代に生きる女の子特有のほがらかさも持っている……そこが面白いです。
今回の作品は色々ジャンルを詰め込みながらも、王道の青春映画を目指したつもりなんですが、私がやりたかったことを彼女たちだったらできると思ったし、映画を撮り始めたら、実際にその世界を彼女たちが広げてくれました」
――役名を付けず、劇中の登場人物の名前がメンバーと同じだったのが印象的だったのですが、劇中のセリフも現場で生まれたアドリブが入れこまれているのでしょうか?
「アドリブはほぼありませんでした。彼女たちがこういうのだったら言いやすいかなーと思って作っています。でもシナリオを書く前に彼女たち一人一人と話す時間をもらい、人となりを知ってから、セリフを書くようにしました」
ゆるめるモ!だから撮れた!残酷さに対してライトな少女の世界
――普通の女の子に残酷描写の必然性を伝えるのに苦労しませんでしたか?
「今回 “女の子は残酷さに強い”というテーマもあったので、『かわいい顔して残酷なことやひどいこと言っちゃおうぜ』という雰囲気は現場でも作れたと思います。
実際にメンバーのみんなも銃を撃つシーンなど、ノリノリで演じてくれていました。グロテスクなことを女の子が平気な顔して行っている方が可愛くないですか?(笑)」
――たしかに……! ゆるめるモ!さんの持つ、ユルい部分が効いていました(笑)。
最後にお伺いしたいのですが、今後朝倉監督はどんな作品を撮りたいですか?
「そうですね……映画はずっと好きだったんですけど、そもそも映画監督ってなれるものだとは思ってなかったんです。いまでも撮影の時なんかは自分に『映画監督なんだぞ』って言い聞かせている部分があります。
ただ高校生の時にジョニー・デップ主演の『アリゾナ・ドリーム』という映画を観た時に『こういう少女漫画みたいな映画だったら自分で作ってみたいかも』って初めて思ったんです。『女の子よ死体と踊れ』はいままで撮った作品の中では、あの時作ってみたいと思ったものに近いかもしれません。
今後は物凄く怖い作品も撮りたいですが、ホラー映画に限らず、とにかく“エモい”映画が撮りたいですね」
本作には、メンバーがそれぞれ独白をするシーンがある。
1人1人の言葉に現代を生きる女の子の本音が強く描かれていて、メッセージ性の高さに鑑賞後しばらくたってもそのセリフを反芻してしまうほどだった。
新世代のホラー映画にして、現代に生きる女子の憂鬱をありありと映しだした『女の子よ死体と踊れ』。ぜひ公開期間中に映画館で目撃して欲しい。
(文:小峰克彦)
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『女の子よ死体と踊れ』
10月31日(土)よりシネマート新宿、11月14日(土)よりシネマート心斎橋、名古屋シネマスコーレ、12月5日(土)より仙台・桜井薬局セントラルホール、12月12日(土)より広島・横川シネマ、12月19日(土)より福岡・中洲大洋映画劇場ほか全国順次公開!
配給:日本出版販売
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