ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

行定勲監督の名濡れ場3選 本人&新ロマンポルノ出演女優と振り返る

行定勲監督がロマンポルノに挑む

5人の映画監督が、日活ロマンポルノの生誕45周年を記念してオリジナル新作を撮る、ロマンポルノリブートプロジェクト。

11月26日より公開される第1弾は、行定勲監督の『ジムノペディに乱れる』。『世界の中心で、愛をさけぶ』『GO』『遠くの空に消えた』『ユビサキから世界を』といった青春映画を撮った行定勲監督と、日活ロマンポルノ。意外な組み合わせに感じる人もいるかもしれないが、行定監督の作品の幅は広く、大人の恋愛を描いたものも多数。

そしてそこには、情緒と色欲が最高のバランスを保ち続ける、名濡れ場が多く存在する。 そこで、今回は“行定作品・名濡れ場3選”と称して、かつての行定監督作品の名場面も振り返りながら、行定監督の濡れ場へのこだわりを聞いた。 “永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”が、『ジムノペディに乱れる』の主演女優に抜擢された芦那すみれさんとともに、行定勲監督の“濡れ場を撮る技術”に迫る。

ロマンポルノは“妙な感情”を抱けなくてはならない

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――まずは、それぞれ日活ロマンポルノを体験してみての感想をお聞かせください。

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行定「実は、普段やっていることと、あまり変わらなかったんですよね。もちろん、R18+でいいということは決まっていたので、局部さえ映らなければOK で、セックスを描写する上での自由度は高いわけです。ただ、だから、ひたすらエロチックに見せるように意識した、というわけではないんです。ロマンポルノなので“妙な感情をそこに抱けるようにする”ということを、主体にしないといけない。結果的には、普通の映画と同じように、セックスを撮っていたら、映倫という判断基準からすればR18+になるような描写になっていた、という感じですね」

オーディションで自ら脱いだ

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芦那「私は、お芝居を始めて1年半くらいなので、こういった形で抜擢していただけたのは非常にありがたいことだと感じています。『今度は愛妻家』をはじめ、行定監督の作品もたくさん見ていましたし、脱ぐことよりも、行定監督の映画に出られるということが、自分の中では大きかったです」

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――ではお芝居として脱ぐことにはそう抵抗がなかったのでしょうか?

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芦那「そうですね、ただ意味なく脱ぐのは嫌ですけど、人間を深く描くためには、人間の営みであるセックスの描写も必要だと私は思っているので。今回のオーディションのときも自ら脱いでしまったんです」

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――自ら?どういうことでしょうか?

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芦那「1次のオーディションで、私、偶然、順番が1番だったんです。台本に沿って、最初に演技をしたんですが、ト書き通りに脱いでしまって。監督に『脱がなくていい』って言われました(笑)」

本人を真横に解説!痩せた女のエロチシズム

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――女優魂を感じさせられますね……。監督からすれば、やはりロマンポルノのオーディションということで、体の綺麗さも判断材料になったのでしょうか?

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行定「オーディションで最後の審査まで残った人たちには、やはり一応、見させていただきました。芦那さんは、痩せていたので、細い腰がポイントだなと思いました。男が細い腰を持って、ガックンガックン動かしている瞬間を見せる。芦那さんの顔も見せずにね。その弓なりの状態から、声が聞こえて、顔が見たいと思った瞬間に顔が入ればエロいだろうな、とは思いましたね」

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芦那「そうだったんですね……」

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行定「例えばエゴン・シーレの絵のような、痩せている女のエロチシズムってあると思うんですよ。それが出たらいいな、と思ったので、あばら骨が出ているくらいの痩せ方がいいな、と思ったんです」

行定監督が本当に撮りたかった実話「私のパンツじゃないんだけど」

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――『ジムノペディに乱れる』は脚本の制作にも行定監督が入られていますが、物語としては、どう構築していったんでしょうか?

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行定「1週間しか撮影に時間がかけられないっていうのは最初から決まっていたんです。男が5、6人の女の人たちを渡り歩く、というイメージは持っていたので、1週間の話にしてしまって、毎日、1日分をかけて撮っていけば終わるなあ、と思いながら脚本を書いていきました。ただ、本当はやりたかった実話があったんですよ」

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――ぜひ教えてください!

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行定「セックスしたあとって、パンツが落ちてるでしょ。僕は自分のパンツばっかり拾いに行くんじゃなくて、まず女の子のを見つけてあげたいタイプなんです。実は、若い頃、パンツがなかったことがあったんですよ。それで僕が探して、やっと出てきて『あったよ!』って見せたら、そのコが『これ、私のパンツじゃない』って言ってね」

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芦那「えーー!それはやばい……」

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行定「それで俺は『きっと、これだったんだよ!俺はこれを脱がしたような気がする!』って言ってたんだけど、『違う』って言い張り続けるんだよ。だから、しょうがないから『じゃあノーパンで帰れば?』って言ったら、それも嫌だ、と。まあでも、結局、そのコはそのパンツをはいて帰ったんだよね」

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芦那「いやー(笑)」

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行定「そうしたら、そのコ、翌日に連絡取れなくなって、そのまま失踪しちゃったの」

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――ええっ、今もまだ会ってないんですか?

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行定「そう、あの日からずっとね。あのパンツがいけなかったんだな、って思って。その話で、長編のシナリオを既に書いていたから、日活ロマンポルノの企画として出そうかな、と思ったんだけど、今回の規定である“10分に1回の濡れ場”にならないんだよね。パンツの主を探す話だから、別にセックスシーンがたくさん出てくるわけでもないからね」

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行定監督名濡れ場作品①『つやのよる』

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――ぜひ、映画として見てみたい話です。さて、ここからは、今回の作品はもちろん、過去の行定監督作品の名・濡れ場の数々を、行定監督に解説していただく、という形で進めていければと思います。
まずは、2013年に公開された阿部寛さん主演の『つやのよる ある愛に関わった、女たちの関係』。野波麻帆さん演じる不動産会社の女性が、岸谷五朗さん演じる男と関係を持ちます。お尻を背後から大きくうつして、そこから野波さんがパンツを徐々に下ろしていく場面が印象的です。

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行定「野波さんは、やっぱりお尻がいいんですよね。脚も長いし、いわゆるナイスバディの人です。あの作品は一般映画だし、さすがにバストトップは見せられない、ということはわかっていまして。ただ、野波さん側に『背後はOKです』と言われたときに、あのかたちが思いつきました。僕自身、胸フェチではなく尻フェチですし、お尻が大きい人の背後のショットはキレイになるんです」

服を脱ぐ過程にロマンはある

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――このシーンも、今回のロマンポルノにもそういう描写がありましたが、行定監督作品の濡れ場には、下着をゆっくりと脱いでいく描写が多いですよね。

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行定「やっぱり、服を脱ぐロマンってあるんですよ。男は服を脱がしているときがいちばんドキドキするし、女も服を脱がされているときがいちばんドキドキするんだと思うんです。特に、若い頃は理想があるというか、この人はどういう裸をしているんだろうと、想像したりする。
自分の背後で着替えている女のコの無防備な仕草を、見ないふりをしながら、実はガラスの反射で思いっきり見ていたり、とかね(笑)。服を脱ぐ瞬間や、服を脱ぐという行為が好きなんですよね。やっぱり、アダルトビデオでも試着室にカメラがある、みたいなシチェーションもあるし、あれはそういう願望の表れだと思うんだよね」

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行定監督名濡れ場作品②『贅沢な骨』

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――さて、次なる名濡れ場のある作品は、2001年公開の『贅沢な骨』。永瀬正敏さん演じる青年と、麻生久美子さんと、つぐみさんが演じる2人の女性との三角関係が描かれます。

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行定「あれはね、やっぱり、つぐみさんの胸がものをいってますよね。実はもともと、麻生久美子さんと、つぐみさんは逆の設定だったんです。もともと、つぐみさんが娼婦の設定だった。でも、スレンダーな麻生久美子さんに娼婦をやってもらって、どちらかというと引きこもりの内省的な女のコを演じたつぐみさんのほうが、胸が大きい、ということにしました」

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――おそらく、そのつぐみさんの胸の大きさの衝撃がはしるシーンとして、ギプスをしたままのつぐみさんと、永瀬さんが、金魚の入ったミキサーの前でおこなうシーンがありますよね。永瀬さんが、つぐみさんのパンツをゆっくり脱がしていきますが、ギプスにパンツが引っかかったため、一瞥して、またゆっくりパンツを下ろしていくという……。

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芦那「あそこは、僕の中で相当なベストショットです。ギプスにパンツが引っかかったあと、彼女は自分の意思で、ギプスをしていないもう片方の足をパンツから抜くんですよ。そして、ギプスにパンツは引っかかったまま、走っていく。そういうところにロマンを感じていましたね。あと、もうひとつこだわったのが、パンツのクルクル感」

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夏のパンツはクルクルするものだ

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――詳しく教えてください(笑)。

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行定「夏で、汗ばんでる設定ですよね。汗ばんでると、パンツはクルクルクルって巻かれるんですよ。下ろしている内にクルクル巻かれていく。そこにこだわって『クルクルなってない!もう1回』みたいな感じで撮ってました」

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芦那「わかります(笑)クルクルなりますよね。それにしても、つぐみさんは名演技でしたね……」

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――今回のロマンポルノリブートプロジェクトに参加された5人の監督のうち、行定監督、園子温監督、塩田明彦監督の3人が、以前、つぐみさんを撮られたことのある監督なんですよね。

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行定「実は今回、日活ロマンポルノを撮るにあたって、つぐみさんの顔が浮かんだんですよ。濡れ場じゃなくてもいいから、例えば、主人公の昔の奥さんみたいな役で出たら、意味があるよな、と思って。連絡したら、もう引退されていて『覚えてくれていてありがとうございます』っていうメッセージをもらいました」

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『ジムノペディに乱れる』の名濡れ場は……

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――つぐみさんの出演するロマンポルノ、見てみたかったです。では、最後に今回の『ジムノペディに乱れる』の中から特に、監督の印象に残っている濡れ場をお伺いできればと思います。

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行定「板尾創路さん演じる映画監督が、外で行為をしながら、女のコの口を押さえて『喘がないで』っていう場面があるんですよね。やっぱり、廃墟とか、ビルの隙間とか、そういうところで2人でドキドキしながらやるわけじゃない。そこで女の人は、恥ずかしいくせに、だんだん大胆になってきてしまう自分っていうのを発見して、面白くなっていくっていう部分があるような気がしてね。あの場面は、さらに2人が、向こう側でションベンをしている男の立ちションの放物線を眺めている、というところも含めて、凄く良かったなあと思うんですよね」

日本を代表する映画監督である行定勲監督に、ひたすら濡れ場のことだけを聞き続けるという、ある意味で貴重なインタビュー。今回の『ジムノペディに乱れる』では、ロマンポルノリブートプロジェクトの規定により、行定監督の美しい濡れ場を10分に1回のテンポで見ることができる。『ジムノペディに乱れる』は11月26日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

(取材・文:霜田明寛 写真:浅野まき)

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【関連情報】
・ロマンポルノリブートプロジェクト 公式サイト
『ジムノペディに乱れる』 11月26日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督: 行定勲
出演: 板尾創路  芦那すみれ  岡村いずみ ほか
脚本: 行定勲・堀泉杏

BSスカパー!にて11月26日(土) 劇場公開日同日、深夜0時から同作品の【R15+版】放送開始!(※公開後の深夜0時です。劇場公開は【R18+版】です)

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